「たでーまー。」
「ま…またお邪魔します。」
再び比企谷家へ。
気づけば夕方になっていた。
依頼達成の報告を奉仕部にした後、私と比企谷君はみんなよりも早めに帰らせてもらった。
私は早く帰るつもりはなかったのだが、今回一番依頼達成に貢献した私は疲れているため、今日は早くに帰らせるべきだ、と比企谷君が言ってくれたのだ。
と、ここまで聞くとただの気が利く優男。
そのあと私はみんなに挨拶をして帰ろうと部室を出たのだが、
『すいません、ではお先に失礼します。』
『ええ、お疲れ様。』
『またねっ、冬華ちゃん!』
『んじゃな。』
『ちょっと待ちなさい。』
何故か比企谷君を引き留める雪ノ下さん。
それもそのはず。一見普通の挨拶をしていたかのように思えるが、
『何あなたまで帰ろうとしているの比企谷くん?』
私に便乗して、比企谷くんまで帰ろうとしていたのだ。
確かにね?確かに第三者からすればこの行動はおかしいと思うのは当然。
しかし、私にとっては比企谷くんと共に帰ることは必須事項なのである。
何故なら、私は学校まで比企谷くんの自転車に乗ってきたため、道を覚えていないのだ。
流石比企谷君。状況判断能力が凄い。ナチュラルに帰ろうとしたのも、私と帰ることを深く追及されないためにわざとだったのか。
『いやほら、そもそも今日は土曜だし、早く帰って寝たいんだけど。』
マジで帰りたいだけかよ。
ということはこの男、私を変える理由のために利用したの!?
『百歩譲って帰ることはいいとして、何故橙山さんと一緒に?』
『あっ!そういや朝も一緒だったよね!?』
由比ヶ浜さんは今朝のことを思い出し、さらに追及してきた。
めっめんどうなことに……
…………
…………
…………
……なんてことは少しも思わない。
私一人なら面倒な展開になっていたかもしれないが、こっちには必衰の専業主夫希望がいる!
『お話しするのが遅くなりましたが、私と比企谷くんは親戚でして。今は比企谷家に泊まっているんですよ。ね、比企谷君?』
以前小町さんが私に使った嘘。それをあえて使うことで話を合わせてほしいことを伝えた。……おっと、その顔はわかってくれたようだ。よし、これで比企谷君がホントのように演技をすれば──
『おっおお…、そっそうなんだよ…。こいつはそう…親戚でさ。』
下手かおい。
これだと余計に疑われる……。何か他の、、
『小町さんも、この件も承認してくれているので。』
咄嗟に言ってしまったが、苦し紛れもいいところだ。
たかが中学生一人介入させたところで────
『小町さんが?なら問題ないわね。』
『小町ちゃんが知ってるなら安心だねっ!』
部員である兄よりも信頼されている、小町さんなのであった。
* * * * * *
小町さんのおかげで比企谷君も帰ることができたので、話は冒頭に戻り私は無事比企谷家に着いた。
「おーい小町ー。……あれ?いないのか?」
「しーっ。比企谷くん、ここにいるよ。」
「えっ?…ああ、なるほど。通りで。」
私たちに反応できなかったのも無理はない。
受験生である小町さんは、勉強で疲れたのだろう。ソファーですやすやと寝ていた。
「起こすのもあれだし、今日は俺がご飯作るか。」
そういうと、比企谷くんは渋々キッチンへ向かった。
自分で高スペックと言い張るだけあって、料理もできるようだ。
「ちょっと待って。流石に何もしないまま住まわせてもらうのもあれだから、ご飯は私が作るよ。」
思い返してみれば、昨日今日と私は何もしていない。いくらこの人たちが気にしないと言っていても、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。せめて、何か役に立ちたい。
「いや気にすんなよ。普通に生活してるけどお前記憶喪失なんだろ?休めるときは休んどけ。」
「じゃ、じゃあ、リハビリの一環として、ね?以前の私がよく料理してたのなら、調理中に何か思い出すかもしれないし。」
「おっおお、そうか?……じゃあ、頼んでもいいか?」
「…っ!う、うん、まかせて!」
言っておいてなんだが、比企谷くんの性格なら最後の最後まで断ると思っていた。もちろん、そうなっていたとしても意地でも料理するつもりではあったが、、
私に料理を任せたあと、比企谷君は「ちょっと自室で休む」と言って二階へ上がっていった。どうやら相当疲れていたようだ。
さて、キッチンに来たまではいい。問題はここからだ。
果たして私は、ちゃんと料理できるのか……?
いやね?勢いで言ってしまったけど、自信はミジンコもないんですよ。
仮に料理がダークマターになってしまったらコンビニに行って買いに行こう、うん。
「さてと、まずは食材の確認っと…」
冷蔵庫を確認してみると、ある程度の材料三人分あった。恐らく小町さんが買い物に行ってくれたのだろう。
「あんまり遅くなってもあれだし、簡単にできるものにしよっかな。」
そう呟き、私は調理を進めた。
* * * * * * *
「ふぁ~……ん?これは…全部冬華が作ったのか?」
ほぼ全ての料理をお皿に盛りつけていた時、二階から比企谷君が下りてきた。
「はい、どれも簡単なものですけどね…。よく眠れましたか?」
「ああ、おかげさんで。全部任せて悪かったな。大変だっただろ?」
「ううん、さっきも言ったけどホントに簡単なものしか作ってないから。」
何の謙虚もなく、ホントに簡単なものしか作っていないので苦笑いしながら答える。
比企谷君はキョロキョロしたあと、「小町は?」と聞いてきたので、またも苦笑いしながらまだ寝てる、とだけ言った。はぁ、とため息をした後、比企谷君はソファーへ向かう。
「ほれー起きろー。飯だぞー。」
ぺしぺし、と小町さんの頬を叩きながらそう言ったあと「ふにゃ?」と聞こえた。めちゃ可愛かったです まる
「わーご飯できてるー。」
「いつまで寝ぼけてんだよ…。早く座れ」
「はーい。」
「あはは……、じゃあいただきます。」
いただきます、と私に続いて二人もいいお箸と手に取る。だが、私は料理に手が伸びない。
なぜなら料理を作るのに必死で味見をしていなかったのだ。もし変な味だったらどうしよう…と気が気でなかった。
二人はなんの躊躇もなく私が作った料理を口に運ぶ。
…ダメだ、胃が痛くなってきた……
「んー!こへすほくほいひいへふほ!」
「先に飲み込め、何言ってんのかわかんねぇよ…」
そう言われ、小町さんは急いで口の中のものを飲み込んだ。
「これ凄く美味しいですよ!料理得意だったんですね!ねっ、お兄ちゃん!」
「ああ、マジで美味い。家庭的っていうか、なんか馴染みある美味しさだ。」
ふぅ……どうやら大丈夫だったみたいだ。それを聞いて安心したせいか、私も一気に空腹感に襲われる。
「いやー、こんなに美味しいものができるような食材買ってたかな?」
「まあ、ホントに料理上手いやつはどんな食材でも関係ないってことだろ。」
思っていた以上に高評価のようだ。だが、最も料理の味に驚いていたのは、
「うっ美味い…!」
私だった。
え、うそ、料理までできるの私!高スペックすぎてそろそろバチが当たるんじゃない?
と、心の中でドヤ顔を決めていた。
そして食後。
私は皿洗いまでするつもりだったが、小町さんが作るのは寝ていてできなかったからお詫びに片付けはしたい、と言ってきた。だが、そもそもこれは居候している私のせめてもの恩返しのつもりだったので、ホントは一人でしたかったが、間を取り二人ですることにした。
「ホントにすいません冬華さん。料理だけじゃなくて片付けまで。」
「ううん、何もしないで住むわけにもいかないし、何なら明日からも私が作るよ?」
「では当番制にしましょう!また冬華さんの料理食べたいですし!」
「ふふっ、わかった。頑張るねっ。」
ここが私の家ではないことはわかっている。しかし、ここはとても心地がいい家庭であることを再認識した。
今回の料理、美味しく出来たことは良かったのだが、肝心に記憶に関しては何も思い出せなかった。さて、これからどうするか…
「しかし、ホントに助かりましたよ。兄一人では、少し不安なところもあったので。」
「あ、今回はね、無理を言って私一人で作ったの。比企谷君も相当疲れてたみたいだし、お役に立ててよかったよ。」
「えっ?」
え?えって…あれ?
何かおかしなことを言っただろうか……?
「おーい、風呂入ったぞ。」
私が戸惑っていると、洗面所から比企谷君の声が聞こえてきた。
それを聞くと、小町さんは「はっ…!」と声を出し、表情を切り替え、
「今日は冬華さんから入ってください。部活に料理まで疲れたでしょう。あとは小町におっまかせー!」
と、私の背をぐいぐいと押し、私を風呂場まで連れて行ってくれた。
確かに、少しウトウトしてきている。ここは、素直に小町さんに片付けを任せ、先にお風呂に入らせてもらおう。
入浴中、今日の出来事を振り返っていた。
実際に部活動をしたこと、
部員や生徒会長に会ったこと、
依頼人が共感覚の持ち主だったこと、
名前で呼び合える後輩ができたこと、
本気の恋をしている人を間近で見たこと、
そして、泥臭くも美しい友情を初めて見たこと。
色々あった。
初めは退部する気で学校に行ったのに、帰ってくる頃にはこの部活も悪くないかもと思ってしまった。
我ながら笑ってしまう。当初は一人でいることこそが正解という風に考えていた。
実のところその考え自体は変わっていないと思う。
しかし、他の人に……部員や後輩、先生と接していく中で、誰かと一緒にいるのも良いと思い始めている。
この感情は、元の私のものなのだろうか…。
だとするなら、一人で頑張ろうという考えは、初めから間違っていたのか?
やはり、もっと人に頼っていくべきなのか?
事実、昨日今日と、人に頼ったことで困ったことは解決できた。
考え方を変えるべきなのかもしれない。
そう結論に至ったころには、疲れがピークに達していた。
早々にお風呂から出ようとしたとき、ヘアピンを取るのを忘れていたことに気づいたが、今更洗いなおすのも面倒だ……。すぐに寝ることにした。
「ねぇ、お兄ちゃん。今日冬華さんが料理してるの見てた?」
「ん?いや、昨日ちょっと遅くまで起きててな。眠気がヤバかったから、料理は任せて自分の部屋で寝てた。」
「そっかぁ…。う~ん…。」
「どうした、どうやって料理作ってたのか気になるのか?」
「んー……、一人で作ったっていうのがちょっと…」
「そんなにおかしいか?」
「だって、────────────」
何やら一階から会話が聞こえてきたが、すぐ意識を手放した。
* * * * * *
皆さん午前中だけ心身ともに休める日曜日。
なんか午後になったら明日のこと考えちゃうよね。
昨日は早めに寝たおかげか、疲れが一気に取れていた。心なしか体が軽い。何か無駄なものが抜けていった感じだ。
さて、今私は制服を着て学校へ向かっている。もちろん日曜の朝6時から好き好んで外に出ようとは思わない。だがいい加減、学校までの道のりを覚えておかないと今後また比企谷くんに迷惑をかけるかもしれない。というか、学校までの道は覚えていなかったことが不思議だった。
そういえば、気づいたとき私は廊下の真ん中に立っていて、いい加減教室までの通路を覚えろ、と平塚先生に言われたことがあった。道を覚えるのが苦手なのだろうか……。
今日のことは、朝すでに起きていた小町さんに伝えてある。散歩のついでに、何か手掛かりになることも探すことにしよう。
まずは学校。
携帯で道を確認しながら歩いていき、数十分でたどり着いた。なるほど、確かにこの距離なら自転車通学にするべきだね。
さて、メインの目的は達成されたわけだが、ここである発見があった。
学校に行くまでにある公園や公共施設、小中学校の場所は覚えていた。
場所を覚えているということは、この付近に住んでいたのか?と思い、交番で“橙山”という苗字の家があるかどうか聞いてみたが、少なくともその交番でわかる範囲にはいなかった。結局はまた振出しに戻ることになった。
今は少し歩き疲れ、公園のベンチで休んでいる。
日曜日だというのに、それなりに人がいる。みんな元気だなぁ……。お家で休もうとは思わないのかね。
「あっ、冬華先輩!」
「…っ!?」
名前を呼ばれると思っていなかったので体がびくついてしまった。
呼ばれた方向を見ると、先日私の後輩となった麻奈美だった。
「ごっごめんなさい!急に声をかけてしまって…」
「気にしないで?!私の気が抜けてただけだから。」
割と気にさせたみたいで、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。自然と苦笑いで返答した。
「あ、あの!昨日は本当にありがとうございました。昨夜からずっと言おうと思ってて…、今日会えてホントに良かったです!」
「部活動の一環だけどね。けど、最後のほうは個人的に行動してた…かな?まあでも、凄いことだよ~。基本無気力な冬華さんがここまでするなんて滅多にないんだからっ。」
少し暗い表情だったので、私なりに和ませようと試みる。
といっても、基本無気力はホントのことですけどね。…あれ?冗談言ったつもりが全部ホントのことだった てへっ
「ふふっ、先輩って冗談お上手なんですね。」
冗談であってほしかったよ。
「そういえば、先輩なんで今日も制服なんですか?」
着る服がこれしかない、と言ったら余計に心配されそうだなぁ…。
「ちょっと学校に用事があってね。転校して間もないから色々とやることがあるんだよ。」
理由としては十分だろう。もちろんやることなどないが。
「あー、そうだったんですか。大変そうですね…、だからここで休憩を?」
「うん、そんなとこっ。」
ここまで何でも信じちゃう子に嘘をつくのは心苦しいが、これは心配させないための嘘だ。罰は当たらないだろう。
「家も、この辺りなんですか?」
実は君の大好きな先輩の家に居候してて、昨日は手料理をご馳走したんだZE!なんて言えるわけがない。
記憶喪失のことは話したが、どこで住んでいるかとか、そのあたりの話はしていないのだ。
「まあそうだね。麻奈美も?」
必殺質問返し。これであわよくば話題変更ができる。
ちなみにこれは奉仕部部長様には効かない、ソースは比企谷君。
「いえ、私の家はここから少し離れてまして…」
「え?じゃあどうして─────」
そう言おうとしたとき、後方からキャンキャン、と1匹の子犬が麻奈美の足元に群がる。
麻奈美はそのことをわかっていたかのように餌を用意しており、餌を与えていった。
「あーなるほど。この子に会いに来てるってわけね。」
「はい。ホントは買ってあげたいんですけど、父がその…犬アレルギーでして。」
「それにしても、ずいぶん懐いてるんだね。ペットとして飼ってる人でも中々こうはいかないんじゃない?」
「そうでしょうか?何度も会いに来てて、気づけばこうなってたものですから。」
麻奈美は嬉しそうに笑いながらそう言うと、私の隣に座った。
「冬華先輩」
私を呼ぶその声には、初めて会ったときにあった警戒心や若干の恐怖心といったものは一切感じられない。
「私、なんだか今楽しいんです。」
「…うん。」
そう思った理由は容易に想像できるが、どれも単純なものばかりだ。
「初めて、友達とか好きな人とか頼れる先輩とかに出会えて、とても楽しいんです。」
「…そう。」
そんな人たちはいて当然、とほとんどの人は思うのではないだろうか。
それは普通だと。
けど、彼女は普通じゃない。
他でもない麻奈美自身が誰よりもそう感じてきたんだろう。
そんな彼女が、初めて得た普通の“本物”。
どれもすぐに消えるかもしれない。友情なんて特にそうだ。
人は平気で裏切るし、嘘をつく。見られたくない自分を隠し、都合のいい部分だけ見せ騙しとおす。
それでも人は、友達という存在に期待する。
恐らく、生きてる中で本物を目にしてしまうのだろう。本音を言い合える、互いが互いをわかり合っている、本物を。
そんな関係を人は美しいと感じる。
だから欲する。自分だけの美しい関係が。
少なくとも私は、あの日夕焼けの陽が差す教室で、泣きながら抱き合う二人を美しいと思った。
「冬華先輩?どうしました?」
「え…!?ああ、ううん。なんでもないよ。」
麻奈美は私を心配しながら、私の顔を覗き込んでいた。くっ…なんて純粋な目をしてるの…!?純粋さで言えばそこの子犬と───────
「って、さっきまでいた子犬ちゃんは?」
「え?あれ!?どこに行ったの?」
子犬がいないことに気づいた麻奈美はすぐ立ち上がり、周辺を見渡した。
麻奈美があげた餌はなくなっていたので、この場からいなくなってからそう経っていないようだ。恐らく公園内にまだいる、はず。
「あっ、いました!」
麻奈美が声をあげ指さしたほうを見ると、確かにさっきの子犬がいた。公園の出口へ元気よく走っていている。ここから見えるということは、どうやら私は目が良いようだ。
「っ!」
目が良いことがわかると、私は全力で子犬のもとへ走っていった。
「冬華先輩!?」
目が良いと思ったのはベンチから子犬が見えたからではない。そもそもここの公園はさほど大きくないので出口を言っても距離はそんなにない。
私が見えたのは犬ではなく、公園の向かいにあるミラーだ。
そこに映る、
今の時間帯は人が少ないから、車はそれなりに速度を出しているだろう。ぶつかれば子犬なんてひとたまりもない
。
「っ……間に合って…!」
何も考えずに全力で走る。後のことなど考える余裕がなかった。
とにかく走り、精一杯子犬へ手を伸ばす。
そして、公園の出口ぎりぎりで間に合い、子犬を捕まえることができた。
「やった…!……あっ」
間に合ったことへの喜びも束の間、全力で走った上に気が抜けたため、スピードを殺せていない。
早い話、道路に出てしまい、黒い車にぶつかる寸前だった。
目の前には法定速度ギリギリまで出している車。確実に無事では済まないんだろう。
せめてこの犬だけは…!
私は体を丸め、子犬を抱きかかえる。
ぶつかる寸前だというのに色々なことが頭によぎり、世界がスローモーションのように感じる。
………
……………
………………理由はない
………………だがなぜだろう
ふと、今何時か気になった。
理屈じゃない。
ただ単に、今の時間が知りたかった。
車にぶつかるまでもう一秒足らず。
そんな中で、公園にある時計を確認するため、後ろへ振り返る。
─────7時35分
今の時刻を知ることができた。
他には何もない。
ただそれだけ。
その瞬間、私は私の全部を
そうか、
そうだったのか。
やっぱり、
やっぱり私は、最初から間違っていた。
それを理解することができた。
私は酷く後悔した。
悔やんでも悔やみきれない。
もし、“あの時”別の行動をとっていれば…
しかしもう遅い。
子犬を抱え、車にぶつかりそうになっており、そんな中後ろに振り返っているこの状況。
まずい、
まずい、
このままでは私は、
伝えなきゃ、
誰でもいい、
もしも、
もしも私の考えが届くのなら、
どうかお願い、
比企谷君、
あわよくば貴方が私を、
“私”を殺して───────
次話から新章です。