イリヤさんの魔法少女戦記   作:イリヤスフィール親衛隊

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SNのイリヤさんは姉と妹を演じわけられるから最強だと思うんだ……。それと、毎回の後書きに意味はありません。スペースが寂しいから各所から迷言を引っ張って来てます。


凛「あんたたちの存在って本当に魔術師泣かせよね……」

 

 

 

∇∇∇本編∇∇∇

 

 

 

円蔵山がその内部に擁する龍洞と呼ばれる大空洞。そこにはとある魔法陣が敷設されている。魔術師たちが大聖杯と称する超抜級魔術炉心。

 

その機能は、冬木の土地を聖杯降霊に適した霊地へと整え、且つ、冬木の霊脈を涸らさないように六十年という時間を掛けてマナを吸い上げ、聖杯戦争に必要な七騎のサーヴァントを召喚するのに充分な魔力を蓄えること。

 

そして、聖杯降霊の時期が近づくと「聖杯の意思」によって選ばれた、マスターに相応しい人物へと令呪が授けられ、その令呪が英霊召喚機能を行使する権利となる。

 

【イリヤ】はライダーのサーヴァントを下したその日の内に、鏡面界を離脱したその足で龍洞へと赴いていた。

 

存在するだろうとは思ってはいたが、実際にこうして目の当たりにするとなんとも言えない気分になる。大聖杯があるということはこの世界でも聖杯戦争は行われていた。否、これから先だって行われる可能性もあるということだ。

 

しかし、そんな【イリヤ】の曖昧な表情は仮面で隠されている。一方の【ルビー】は大聖杯を見てうむうむと唸る。

 

『これは……おそらく製作にはあのジジイも関わってますね~』

 

「魔導元帥ゼルレッチ。アナタの生みの親よね?まあ、もっとも、元の世界ではの話だけど……」

 

キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。有名な呼称は宝石翁。あるいは大師父であろうか。第二魔法とされる平行世界の運営に至った、魔術師ならもぐりでも知っているような数少ない偉大な魔法使いのひとりである。

 

『これは魔方陣というよりも魔術回路ですよね~?』

 

「ええ。冬の聖女、ユスティーツァ・リズライヒ・フォン・アインツベルンの魔術回路を拡張・増幅したものだと聞かされているわ」

 

『アインツベルンといいますと……』

 

「私のご先祖様。正確に言えば同型機のホムンクルス、そのヒナガタよ」

 

【イリヤ】はそこで話を打ちきり、仮面を外して大聖杯へとゆっくりと近づいて行く。

 

「さて、じゃあ、さっそくジッケンを始めましょうか?」

 

仮面を外した【イリヤ】の顔には、とても楽しそうな笑みが浮かんでいた。

 

 

 

∇∇∇

 

 

 

【イリヤ】が去った後のことを簡潔に示せば。イリヤは美遊と、凛はルヴィアとそれぞれ邂逅を果たし一悶着あったとだけ。

 

鏡面界を脱出後、時間帯が時間帯だけあって、イリヤを帰宅させた凛はイリヤに着いていこうとしたルビーをひっつかまえて引き摺り、遠坂邸へと帰還していた。

 

しかし、残念ながら休息をとる暇はない。なにせ、ここに至るまで問題は山積みだ。大半は自業自得の節があるものの、目下最大の問題だけは凛の預かり知らぬところであった。

 

凛はルビーと正面から向かい合うようにソファに腰かけて足を組み、腕を組んだ格好でなにやら不機嫌そうに眉をひそめて話を切り出した。

 

「で?」

 

『はい?』

 

ルビーは器用なことにクエスチョンマークのエフェクトを頭上に灯した。

 

「はい?じゃないわよ!あれは、一体、なんなわけ?」

 

ルビーの態度にイライラを募らせた凛は机を手の平でバンバンと叩く。

 

『凛さん、あれと言われましても~?ルビーちゃんと凛さんの間には主語なしで通じ合えるほどの絆はないといいますか~』

 

相変わらずふざけたような調子のルビーに凛は手近にあったテレビのリモコンを投げつけるも、綺麗に避けられてしまう。

 

「あんたとの絆とか、そんなもんこっちから願い下げよ!!そうじゃなくて、あれっていうのはあの魔法少女よ!ルヴィアのヤツが見つけてきた子はまだわかるけど、どうして」

 

『どうして三本目のカレイドステッキがあるのか、ですか~?』

 

ルビーが真面目トーンで凛の疑問の続きを告げたことに面食らった凛は頭から血の気が引いていくように冷静さを取り戻し、ソファに深く腰かけ直して、足を反対に組み直す。

 

「……わかってるんじゃない」

 

『いやぁ~、今回ばかりはイレギュラー過ぎて流石のルビーちゃんも困惑気味なんですよね~?』

 

「一応聞くけど、大師父の手掛けたステッキは三本あるの?」

 

『いいえ~!あのジジイが手ずから手掛けたステッキはルビーちゃんともう一本、かわいいかわいいわたしの姉妹機であるサファイアちゃんだけですよ~?』

 

「じゃあ、あれはなんなのよ?」

 

『正直言って、ルビーちゃん自身もまだ半信半疑といいますか~?』

 

「それでいいから教えなさい」

 

『……凛さんはあのジジイが魔法使いだってことは知っていらっしゃいますよね~?』

 

「ええ、第二魔法……ってまさか…………ウソ……?」

 

『それがホントかもしれませんよ~?おそらく、あのセンスの塊のような装飾のステッキさんは、平行世界から来たルビーちゃんなんです~!』

 

「カレイドステッキって第二魔法そのものを使えるの?!」

 

『少なくともルビーちゃんとサファイアちゃんに第二魔法を行使する機能はありません~!ですが~、試したことはありませんけど、おそらく平行世界への渡航くらいならば決して不可能ではないかと~!鏡面界なんてのも言ってしまえば平行世界一歩手前なわけですからね~?別に不思議ではありませんよ~?』

 

「あんたたちの存在って本当に魔術師泣かせよね……」

 

はあ~頭痛い!と凛は額に手を当てて、ソファの背もたれに全体重を預けるように天井を仰いだ。

 

 

 

∇∇∇

 

 

 

「うぅぅ、眠れないよ~……明日も学校なのに~…………」

 

帰宅して家族に気づかれないようにベッドインしたものの、闘争の熱は未だ冷めず、眠気などこれっぽっちも感じられない。これは眠れない夜になりそうだとイリヤは諦めの念を抱いた。

 

仰向けになってなにもない天井を眺めながら、自身の魔法少女初日を振り返る。思い出されるのは黒紫の衣装に身を包み、綺麗な白銀の髪を風に靡かせて戦場を駆け、敵を圧倒した仮面の少女の後ろ姿。

 

イリヤは自分の白銀の髪を一撫でして熱の籠った溜め息を漏らした。

 

「かっこよかったなぁ……」

 

それは憧憬。なあなあで魔法少女になったイリヤ。あの戦場でどうしようもできなかったイリヤ。だからこそ、あの少女の強さに憧れ焦がれてやまなかった。

 

「わたしも……がんばらなきゃ…………」

 

 

 

∇∇∇

 

 

 

「ミユは明日から学校なのですから、睡眠は可能な限りとっておきなさい」

 

「はい、ルヴィアさん……」

 

ルヴィアに言われた通り、美遊は自室のベッドへと入ったものの、やはりというか眠れない。

 

目を閉じる度に、仮面から覗くあのルビーの瞳を思い出す。

 

「……ッ」

 

気圧されはしたが、感じていたのは恐怖ではなかった。あの時に感じたのはもっと別のなにか。瞳と瞳が合った瞬間に感じた予感めいたもの。覚えのない懐かしさ。喩えるなら、そう、生まれて始めて鏡を見た時のような、そんな不思議な感覚。あの人と自分はきっと互いを理解し合える。美遊は理屈でなくそう思った。

 

「これは……運命…………」

 

 

 

∇∇∇解説∇∇∇

 

 

 

*大聖杯

 

大聖杯を介した英霊召喚の儀式に関して調べたところ、正直よくわからなかったので、令呪を召喚システムを行使する権利を持つ者の証ということで捏造してみました。

 

 

*ユスティーツァ・リズライヒ・フォン・アインツベルン

 

第三魔法を実現した魔法使いの弟子によって作られた、第三魔法を再現するためのホムンクルス。魔法使いと同等か、それを上回る性能を持っていたとされる。第三魔法を使用できるものの、しかし、コストが悪く、何十年をかけて人間一人にしか使用できない。そのため生まれたのが彼女の魔術回路を分解し魔術式に置換した人体宇宙、大聖杯であるらしい。いまだ大聖杯には彼女の身体が収まっており、拡大・増幅された魔術回路は、直径1キロを越えるクレーターの表面をびっしりと覆っている。

大聖杯の炉心となった後は人格と呼べるような機能はもう残っていないが、アイリスフィール・フォン・アインツベルン、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンといった、後継機達との魂の繋がりが残っている。

 

 

*【イリヤ】さんについて

 

小聖杯である【イリヤ】さん。聖杯戦争における優勝賞品である願望機。小聖杯は器が魔力で満ちればおおよそあらゆる願いを叶えることが可能です。つまり、【ルビー】による無限の魔力供給を利用すればいつでも奇跡を行使できるということ。ですが、それが言うほど簡単には出来ない理由があります。本来なら小聖杯とは脱落したサーヴァントの魂を魔力として納めていき、六騎分の魔力で満ちて始めて願望機として機能し、七騎分の魔力で根源の渦へと至る孔を開くことができます。しかし、器に魔力が満ちて小聖杯に近づいていくほど、【イリヤ】さんの人としての機能が剥がれ落ちていくことになってしまうのです。つまり、小聖杯化イコール【イリヤ】さん廃人化となってしまうため、【イリヤ】さんが自ら進んで器に魔力を蓄積することはありません。

 

 

*イリヤと美遊

 

なんだかある意味で不穏な展開になってきた。【イリヤ】さんの受難が始まる?始まらない?まあ、とりあえず “ ゆるゆり ” させようか。

 

 

 




魔法少女・凛「お待たせ!魔法少女カレイドルビー、ここに誕生!どうシェロ?初めての変身にしては上出来でしょう!?」

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