生物兵器の夢   作:ムラムリ
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α. 壊滅

 遠方の町の夜、若干酔っ払いながらホテルへ戻ろうとすると、B.S.A.Aが見えた。
 軍隊との見分け方は、組織に属していた頃に何となく分かった。まず、火炎放射器とかを使うのはB.S.A.A程度のものだ。他にも武器の種類とかから色々と。
 一瞬で酔いが覚め、連中を注視すると、中々規模がでかい。戦車とかまでは流石に無いが、車は装甲で覆われている。装備も本格的なものだった。
 そして、目の前のでかいビルへ突入して行った。
 その直後に規制が掛かった。
「……帰った方が良いかな」
 ホテルに戻り、荷物を纏めてチェックアウトしようとすると、背後から肩を掴まれた。
 一瞬、体が強張った。
「おい」
 振り返ると、屈強な男の姿が目に映った。外からは銃声が聞こえていた。
「中に居てくれ。外は今、危険だ」
 ……そうだよな。目的はB.O.Wを隠し持っている俺じゃないだろう。
 外に居るB.S.A.Aは、たった一体のただのB.O.Wに割く数じゃない。
「何が起きてるんですか? あんた達B.S.A.Aでしょ?
 その位教えてくださいよ」
「……」
「ここで留まってる方が危険かもしれないじゃないか」
 他言しない事を条件に、手短に言われた。
「多くない数だが、ハンターと言うB.O.Wがあのビルの地下に潜んでいるらしい」
 ハンターという種には知らない事にしておいた。
 安心しておけと言われたが、安心出来るかよ。銃器でも持っていなきゃ、あれから逃れる方法なんて見当たらない。
 けれど反論はせずに、部屋に戻った。

 窓からそのビルの様子が見える。そのB.O.Wを手に入れていた組織から出てくる人間には既に死んでいる人間も多いが、生きたまま捕らえられた人間もある程度は居た。
 B.S.A.Aの犠牲は今のところ、酷くて車椅子生活になる人間が居る程度。
 どこにでもB.O.Wを使う組織ってのはあるんだな。
 一昔前までは考えられなかった事だ。
 元凶であるアンブレラが地に堕ちてから、特にそれが顕著になり始めていた。地に堕ちたアンブレラの財産は様々な場所に散り、世界中で使われるようになった。
 ラクーンシティで何が起きたかも、隠匿されていようがある程度予想が付くものだ。テラグリジアで起きた事と似たような事だろう、と。
 B.S.A.Aが幾ら奮闘したところで、もうB.O.Wは世界から消える事は無いだろう。
 一度蔓延ったら滅菌するしかない。
 世界は、綱渡りで生き延びているようなものだ。元々そうだったかもしれないが、今は、その綱はもっと細い。

 ビルの高所のガラスが唐突に割れ、中からハンターが一匹飛び出してきた。
 装甲を身に着けていた。外で待機していたB.S.A.Aが銃撃を浴びせるが、装甲に弾かれている間に壁を伝って屋上へ逃げられ、そして逃げ始めた。
 続けて、二体、三体。散り散りに逃げ始める。
 ……?
 何かおかしい。そう思ったのは一瞬。すぐにその違和感の正体は分かった。
 何故、逃げる? B.S.A.Aの持っている銃も弾いている程の高品質な装甲まで身に付けて、それは明らかに戦闘用としてのB.O.Wだった。
「……まさか」
 あのハンター達はもしかしたら、俺が盗んだあのハンターと同じ所に居たハンターなのか?
 どうやってかは知らないが、妙に知性を身に付けたハンター達。高度な連携を組み、銃の脅威を知っており、人間の言葉を解し、そして俺を娯楽目的で犯す奴さえも居る。
 無駄に命を散らしていく馬鹿じゃないのだ。
 いや、だとしても。爆発する首輪が付けられている筈だった。
 少し考えて、また、一つの可能性に辿り着く。
 組織は本拠地に攻め込まれて、ハンター達を完全に解放した。首輪があれば、その装置を奪われれば全て一瞬にして死んでしまうから。
 B.S.A.Aが焦って散っていく。
 もう、捕えるのは難しいだろう。

 数時間も経たない内に銃声は聞こえなくなった。捕えられた人間も多いが、犠牲になったB.S.A.Aもそれなりに居た。見える限りだと、人が死因となったものよりも、ハンターが死因になった方が多そうだった。
 逃げたハンターが数体。
 そして、死んだハンターが二十体程。
 あの組織が所有していたハンターはもう少し多かった気がする。
 やっぱり、思い違いか?
 そう思いながら、ちょっとでも何か聞ければと、ホテルのロビーに向かった。
 男は未だにそこに居た。苦々しい顔をしていた。
「銃声が聞こえなくなったって事は、帰って良いという事ですか?」
 銃声しか聞こえていなかった振りをして聞くと、当然のように断られた。
「いや……少しの間ちょっとここに留まっていて欲しい」
 男の片耳にはイヤホンが付いていた。今も何か聞いているようだった。
「はあ……大丈夫なんですか?」
「ここに居ればな」
 詮索するなというような拒絶だった。
「そうですか」
 なら、盗聴でもするか。




 翌々朝にやっと戻って来ると、寝転がっていたソイツが、空になった食料袋を見せて来た。腹を空かせているという事だ。
 玩具とされている、俺が喉を潰した人間は虚な目のまま、俺を何の感情も無く見て来るだけだった。
 口も尻も、体中が白濁塗れだ。嫌な臭いだ。
「それよりも色々とあったから、少しだけ話しておきたい事と、聞きたい事がある」
 何だ? と喉を鳴らして目を向けて来る。
「お前の居た組織が壊滅した。ハンターも大半が死んだ」
 目が見開かれた。
 こいつのここまではっきりとした感情を見るのは初めてだった。
「……お前はNo.13だよな?」
 数瞬の間の後、頷いた。
「それ以外に生き残りが少数居る。お前、それ以前に逃げた四体、その壊滅した時に逃げ延びた二体。
 四体は、選りすぐりのハンター達だそうだ。
 タイラントをも凌ぐであろう戦闘力を誇るNo.1。
 戦闘力も知能も優れているNo.6。
 俊足で傷を負う事が最も少ないNo.10。
 下手したら人間並みの知性を誇るNo.27。
 それから、程々に優れているNo.128、No.139。
 全員、知っている奴等か?」
 頷かれた。
「その組織にとってかなり重要な戦力だった、ナンバーの少ない四体は、別の組織が捕えたB.S.A.Aと、力量を計る為の戦闘をしている最中に逃げたらしい。
 もう、結構前の事で、どこに居るのか分からないとの事だ。どこかに出没したとか、そんな話も全く無いらしい。完全に逃げ延びている。
 お前もナンバーが少ないよな」
 正直言って、少し驚いている。
 俺を犯した奴は、ただの有象無象ではなく、選りすぐりの中でも特に優れた方だったという事に。
「……それだけだ」
 瞬きを何度かして、そのNo.13は座って考え込むような素振りで固まった。
 部屋に戻る前に言った。
「布渡しておくから、汚いそれを拭っておけよ。
 飯やらんぞ」

 結局の所、あいつを捕えたからと言って、俺の中のモヤモヤとした感情がどうにかなる事も無かった。
 かと言って、殺すつもりにも、B.S.A.Aに渡すつもりにもなれない。
 これ以上俺があそこに閉じ込めていようが、俺の中のその感情がどうにかなる事も無いだろうし、そしてもしばれてしまったらその時点で俺は何らかの罪に問われるだろう。
 元々犯罪組織に居た身だから、余り変わらないかもしれないが。人も何度も殺した。
 あいつ、No.13をどうするか、もうそろそろ決めるべき時が来ているのだろう。
 かと言って、野に放す訳にもいかない。
 そのどこかへ消えた仲間と合流させる事が出来たとしても、だ。その仲間がひっそりと自由を謳歌していようが、あいつもそうなるとは限らない。他の誰かを襲う可能性だってある。
 妙な悩みだった。
 



次にやる作品が決まった。いつやるかは分からないけど。
二次創作というより、オリジナル要素全く入れずにまんまノベライズする感じ。

つい最近発売されたあの作品です。