生物兵器の夢   作:ムラムリ
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13. 殲滅ミッション 1

 機関銃を載せた車にそれぞれ、自分達と人間が乗り込む。もう、プロテクターを着ていても音を立てずに移動は出来る。
 そして、片目を含むファルファレルロ達はもう既に広く周りに散らばっていた。
 最初の破壊は前と同じく人間がやる事になっていた。派手なお出迎えがあったとしたら、このプロテクターがあろうとも何も出来ない。
 自分達がすべきなのは、そのお出迎えの後に、敵に迎撃体制を整えられる前に素早く蹂躙する事。逃げる隙も与えず、殺す事。
 ファルファレルロ達がすべきなのは、その自分達が取りこぼした、逃げる敵を駆逐する事。
 ただ、それはファルファレルロ達の性分に合ってなかった。が、逆らう事は出来ずに渋々とその命じられた通りにミッションに就いている。
 無難に終わったら、何か嫌な予感がするな、と思った。
 それは、本当の危惧すべき嫌な予感ではなかったが。要するに、ファルファレルロ達の鬱憤を晴らす為に色々疲れる事になりそうだ、と言う事だった。
 実際、そうなってくれた方が嬉しいのだけれども。

 何の変哲も無い地面に、タイラントを木っ端微塵にしたロケットランチャーが多数打ち込まれた。
 あの時はタイラントが木っ端微塵になった所しか見ておらず、実際どういう武器なのかは知らなかったが、やっと理解した。
 それ自体が飛ぶ、とても強力な爆弾を打ち出す武器だった。
 このプロテクターも自分ごと木っ端微塵にするんだろうな。そんな事を思っていると、その地面の下に地下へ続くらしき道があった。
「どうして今までばれなかったんだか」
 人間が独り言のように呟いた瞬間、一気に車が加速した。
 隣の車に座っていた色欲狂いが転がったのが見えた。
 斜面を走り抜け、頑丈なシャッターをまたロケットランチャーで破壊する。トラップのようなものは見当たらず、二度、壁を破壊するとその先にはコンテナが大量にある倉庫があった。
 タイラントと戦った時を良く思い出した。
 そのコンテナが、容赦なく更にロケットランチャーで破壊されていく。機関銃が破壊されたコンテナの後に大量に撃ちこまれる。
 爆発し、粉塵が舞い、焼け焦げた人間の手が吹っ飛んでいくのが見えた。多少は待ち構えていたらしいが、これは自分達がする蹂躙よりも一方的だった。
 視界が開けてくると人間達が先に降りて、あったそれぞれの扉を、爆弾を貼り付けて破壊した。
 直後、迎撃。機関銃の音がした。
「……これは、そのプロテクターでも無理だな」
 人間が武器のスイッチを切り替えて、銃身だけを出して一発、発射した。
 発射の時に、やや気が抜けるような音がしたのは、その銃に取りつけられたグレネードランチャーだった。
 爆発が起きて、機関銃が止まった。
 瞬間、自分と中堅複数体が一気に飛び込んだ。
 爆煙の中、壊れた機関銃の背後でうめき声を上げる人間に爪を薙いで止めを刺し、先のT字の角で止まる。
 爆弾を取り出させてそれぞれの方向に投げさせたが返ってきた反応は特になし。死体を持ってきて頭を少し覗かせてみれば、片方から狙撃銃でその頭が撃ち抜かれた。
 自分が別の爆弾を取り出し、投げた。
 小さめな爆発の音と共に広く煙幕が張られ、狙撃銃が何度か発砲された。
 止まった瞬間に角を曲がった。
 煙の中を、音を立てず、迅速に。手を握り、爪を手の甲の後ろに隠し、腕で目と首を守りつつ。
 前は、こんな物を身につけず、銃弾に晒された、死んだ仲間を盾に進んだ事もあった。それでも、その仲間ごと貫かれたのも居た。
 今は、そんな事しなくて良い事は、とても良い事だった。
 従わなくてはいけないのは、変わり無いが。
 煙幕を抜けると、構える人間の姿が腕ごしに見えた。隣を走っていた中堅が跳躍した。自分は身を低く伏せた。
 弾丸が一発、中堅の腹に当たった。中堅は仰け反り、だが血は全く出さなかった。
 握っていた爪を開き、自分に狙いを変えた銃身を片腕で払いながら、首を裂いた。
 喉を抑えるその人間の胸を貫き、引き抜いた。
 銃弾を腹に浴びた中堅が腹を押さえながら起き上がった。プロテクターに傷は付いていたが、貫通はしていなかった。
 先には下に続く階段があった。

 殲滅は驚くほど順調に行った。
 プロテクターがあるから多少強引に攻められる。そして犠牲は出ない。
 爆弾は敵が使わなかったのを補充出来て、そして手に持っている必要も無く、手に持っているより多く、保持していられる。
 もう、下手な武器を持った人間でさえも、脅威では無かった。
 二つ下の階の、奥の方には自分達が小さい頃に居たような研究施設があった。
 爆弾でも破壊出来ないガラスの奥に、人が、一人だけ残っていた。机に突っ伏して、白衣を着た人間。
 自分達が小さい頃に、外に居たような人間。
「くそっ、くそっ、くそっ、くそっ」
 その手には注射器があった。仲間達は、どうにかしてガラスを壊そうとしていた。
 ……。嫌な予感がした。
 さっきとは違う、本物の嫌な予感だ。
 広い場所に仲間を避難させた。
 自分だけ残っていると、顔がぐるりと自分の方を向いた。
 溜息を吐いて、言った。
「そんな大層なプロテクターまで身に付けて。良い身分だこと」
 その言葉に不快そうに窓を叩くと、表情をやや嬉しそうに変えて言った。
「おお、言葉も分かるのか。爆弾も使ってたし、纏め役のお前は頭が良さそうだな。
 そうだな……良い事教えてやろうか」
 ……?
 その人間は、自分の首を指さして、言った。
「首輪、付けてるんだろ? プロテクターの膨らみで分かる。
 それな、外側のネジを二か所外すと、爆発せずに首輪自体が外れるんだぜ」
 …………え?
「嘘じゃないさ。私はもうすぐ死ぬだろうからね。せめてあんたらの組織で混乱が起きるように願ってる。
 それに、本当に本当だよ。
 そもそも、首輪を無理に外そうとすれば爆発すると分かっているB.O.Wが、まさかネジを外そうとは思わないって事は、誰も疑わないからね」
 その時、近くから足音が聞こえた。
「何を聞いている」
 ファルファレルロと自分達を戦わせた男がそこに居た。
 驚き過ぎて、意識がその白衣の人間だけに集中していた。
 ……気付けなかった。
 大口径のショットガンを自分に向けていた。それは、実演でプロテクターを破壊出来なかったショットガンとは全くの別物だった。凶悪な大きさだった。
 完全に、自分を危険視していた。
「よくもそんな事教えてくれたな。ああ?」
 いつも聞く声とは全く違う声だった。本気で怒っていた。
「お前の言う通りだ。こいつは頭が格段に良い。
 タイラントに対してさえも仲間を連携させて殺しかけた程だ。
 爆弾を扱うだけじゃなく、使い分けさえ出来る。ルービックキューブ何てもので遊んでやがる。
 味方からの信頼さえある。こいつの指示には誰だって従うさ。
 その価値をお前は分かってるのか?
 しかしな、こいつは逃げたがってる。
 賢くて、逃げたい、一番重要な奴がそれを聞いてどうなるのか分かってるのかよ!」
 白衣の人間は、その怒鳴り声を受け流すように言った。
「分かってるよ。リーダー的な事もね。だから言ったんじゃないか。
 それと、もう一つ良い事教えてあげようか。
 後ろから、そのリーダーを殺そうとして怒ってる奴等が迫ってるよ」
 それは、嘘だった。
 白衣の人間が、そのでかいショットガンを突きつけられて動けない自分を助けようとして言った嘘だった。
 その人間の背後には、誰も居なかった。
 しかし、人間は一瞬、隙を見せた。銃口がぶれた。
 足を踏み出し、ショットガンを掴んだ。人間は、即座にショットガンを放し、背後から狙撃銃を取り出そうと手を回した。
 奪い返すよりそっちの方が早い判断は、正しかった。
 そして、自分がその人間を叩き倒すのは、それよりも早かった。
 取り出そうとした狙撃銃は、背中の下にあるまま、手は離れ、自分がその上に圧し掛かった。
 自分達と同じく、プロテクターを身に付けていたが、顔には何も無かった。
「ま」
 顔面に爪を突き刺した。
「ぶぇ」
 二度、三度。
 地面に届いた。
 完全に動かなくなった。
 …………。自分は、混乱していた。
 首輪がそんな簡単に外せるという事実。
「他の誰かと一緒の場所に置いて、爆弾でも使って木っ端微塵にすれば、ばれないだろうね」
 そんな事を言ってから、注射器を弄び始めた。
「帰った帰った。死ぬとしても、この注射器、出来れば使いたくないんだ。
 G-ウイルスってものが入っていてね。あんた達ハンターαを作ったり、タイラントを作ったりしたウイルスよりももっと危険なウイルスなんだ。
 無理に壊して来なければ使うつもりも無いよ」
 溜息を吐いて、うつ伏せになった。
「頑張ってくれよ。そうじゃないと僕が助けた意味が無い」
 それっきり、何も言わなくなった。
 死体を引き摺って、仲間の元へ戻った。
 ……心臓が、高鳴っていた。



ファルファレルロと戦わせた男:
犯罪組織の中で結構上に居る。権力も結構ある。けれど実動の方に良く居る。
主人公の価値故に殺すのを躊躇っていたが(情は無い)、その白衣の男に隙を作らされて反撃され、顔面に爪を突き刺されて死亡。

首輪の外し方はネジを2か所外すだけ。