Idol meets cars   作:卯月ゆう

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ep35

「いや〜、今回もいい車に乗れました!」

「景色も良かったし、ドライブはこうあるべきだな」

 

 秋も深まって、木々は鮮やかに色づいた頃。長野県の山奥にある旅館でスタッフの皆さんと食事を楽しんでいます。

 ジャケットがないと肌寒いですが、そんな中、プロデューサーさんと二人で駆り出したのはオープンカー。いい車といい景色。そして美味しいご飯。なんとも充実した時間です。あぁ、炊き込みご飯おいしい……

 

 

「で、なんでまたこんな季節にオープンカー企画なんて考えたんだ?」

「だって、オープンカーなら景色独り占めですよ? 秋冬は寒いから屋根開けない、なんてもったいないってのを是非とも理解してもらいたいんです」

「確かに、山間をぬけるワインディングを屋根開けて走るのは気分がいいが、やっぱ寒いもんは寒いんだよなぁ」

 

 今回、プロデューサーさんが選んだのはモデルチェンジした911カレラ ロードスター。風の巻き込みは皆無で、エアコンの効きもいいはずですが……

 

 

「なんかな、風景が寒いんだよ。バイク乗ってる感覚に近いだろ? 実際はエアコンでぬくぬくしてても、フロントウィンドウ以外はなにもないし、澄んだ空気はやっぱ寒そうに見えんだ」

「むぅ、そうですかねぇ? それこそ、駆け抜ける喜び、ってヤツだと思うんですけど」

「そう言われればそうかもしれんが、車なら車でちゃんとクローズドな囲まれ感が欲しいな。俺は」

 

 

 そんなあたしの車はこちらもマイナーチェンジモデルのマツダ ロードスターRF。2Lエンジンの豊かなトルクが1.5Lとの差別化ポイント。こっちも、首元を温めてくれる機能はなくても十分あったかいクルマだ。

 

 

「美世はどうんなんだ? 普段と違って後ろに壁があったわけだろ?」

「うーん。確かに違和感はありましたけど、慣れれば良いもんですね。それこそ、囲まれ感が丁度いいですし、リトラクタブルトップがカッチリ閉まるのも"いいモノ感"がありますよね」

「確かに、ポルシェの1/3の値段で買えるとは思えない質感はあるな。もちろん、絶対値はポルシェだけど、ロードスターも値段以上にいい車だと思う」

 

 プロデューサーさんの言うことはあたしにも理解できて、ロードスターは限られた材料を高い技術で組み合わせた感じ、ポルシェは高い技術はもちろんですけど、使える材料もいいモノ。それがそのまま値段に乗っかってる感じですね。

 ロードスターの原点は普通の人が乗れて、買えるスポーツカー。だけれど、その中で妥協のない作りがロードスターならではの良さだとも言えると思います。

 ポルシェは、その時代で最高のスポーツカー。最先端の技術を集めて詰め込んで、それでいて普段使いもできる。そんな違いがこの2台の間にはある。気がする。

 

 

「明日は公道塞いで遊べるんだ、さっさと寝ておけよ」

「プロデューサーさんも、騒いだりしないでくださいね」

「んな、ガキじゃあるまいし」

 

 とは言いつつ、スタッフさんたちとの打ち合わせもさっさと終えてお酒飲んでるじゃないですか。

 時には駐車場まで行ってお酒飲みながらカメラ回して。プロデューサーさんのSNSでやたらといいねされてますもんね!

 たまにはあたしも混ぜてください!

 

 

「おはようございます。2日目の朝です。早起きして峠に出向いてきましたが、なんと、なんと!」

「公道封鎖しました! ただし、2時間だけ。さっさと走り回ってロケを終わらせようじゃないか」

「もちろんです! 合法的に峠遊びなんてめったにできませんからね」

 

 エンジンをかければ澄んだ山間にエキゾーストノートが轟く…… なんてことはなく、合わせて5Lちょっと10気筒のサウンドは驚くほど静かです。

 ロードスターオーナーとしては、2Lの太いサウンドは1.5と違う力強さを感じて好ましいものでしたが、マイナーチェンジで給排気系を見直したことでそのサウンドは更に心地よいものに。パワーも上がってフィーリングは上々。もっと攻め込んでみてどうなのか。楽しみですね。

 

 

「慣れたものと思ってたポルシェ。実際2台乗ってたけど、最新のポルシェが最高のポルシェとはよく言ったもんで、991でも気にならなかったRRっぽさが全然ない。2駆のカレラでも嫌な頭の軽さは無くて、どっしり構えた後ろを良いようにコントロールしてくれる。リアステアがついてないのもあって、本当にニュートラル。4Sじゃなくてもいいな」

「20馬力アップは回したときに違いがでるんですね。低回転のトルクはあんまり変わらないんですけど、上の伸びが良い! 低いギアで引っ張ったときの気持ちよさが全然違います。吹けきってから次のギアで踏み込む、この一連の動作がより美しく流れていきますね。いやぁ、このエンジンでフルオープンならなぁ!」

 

 山間のワインディングをハイペースで走り込むと、なかなかタイヤが負けて滑るようなシーンがありません。意図的に滑らせれば滑るけど、普通に走る分にはなかなか限界が見えない。プロデューサーさんのポルシェを追い回しても、こういうタイトでトップが使えないステージならロードスターで十分。

 まぁ、ポルシェからすれば気持ちよく流すペースかもしれないけど。

 しかし、こうしてみるとブレーキを踏んで、ハンドル切って、アクセルを踏むって同じ動作なのにポルシェとは車の動きが違う。ポルシェはリアエンジンらしく、車が平行に沈む感じが外から見てもわかる。それに対してロードスターはしっかり頭が沈む。ターンインしたときのロールも大きいし、踏み込んだときもすべてのアクションが大きい。そういうわかりやすいキャラクターこそがロードスターではあるけれど、ある程度以上、具体的には制限速度超えた領域では物足りない。

 ま、いじる楽しみってのもロードスターのポイントだよね。

 

 

「結構ついてきてたけど、だいぶ頑張ってたんじゃないか?」

「そんなこと無いですよ。このくらいなら余裕です。ポルシェは使い切れなくてつまんないんじゃないですか?」

「いや、その使いきれない余裕を味わうんだよ。もうひと踏みすれば置いていけるんだぜ、ってな」

「やらしいですねぇ。だからマクラーレンとか乗ってるんでしょ?」

「うぐっ。まぁ、スーパーカーなんてもんは基本見栄だ。うん」

 

 そんないやらしいプロデューサーさんはさておき、そろそろお昼ごはんを求めて下山しましょう。

 長野だからって安易にそば、と行かないのが我々。秋の山に来ているんですから、山菜天ぷらの丼を求めて道の駅へ。

 揚げたてアツアツの天ぷらに、甘じょっぱいつゆ。サクサクの衣の内側には歯ごたえのあるきのこ、うーん。素敵じゃないですか。お昼時とはいえ、外の風は冷たいので、お味噌汁の暖かさも体に染み渡ります。

 

 

「お腹も膨れて、暖かくもなりました。少しさみしいですが、東京に帰りましょうか」

「だなぁ。こうも美味しいもの食べて体温も上がると眠くなっちまうが。安全運転でな」

「あはっ、ですね。次は諏訪湖ICで早めの休憩にしましょうか」

 

 なんならお昼寝してもいいですしね。

 うーん、あたしも少し眠くなってきたけどまだまだ。お家に帰るまでがドライブですから。コーヒー飲んで、ガム噛んで、2時間は頑張れる!




半年以上空いてしまいましたが、久しぶりの美世ちゃんです。
今年度から私も社会人になり、休日はあってもやる気が無いみたいな時間が多かったですが、今後も合間を見つけてちまちまアップしていければ。

しかし、半年も開けると文章が下手くそに…
知らない機能も増えてるし、練習あるのみですねぇ

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