Fate/Grand Order 正義の味方の物語 作:なんでさ
いや、もうちょい簡単だと思ってたんですよ。士郎に比べりゃ楽だろうって。
改めて、キャラクターの再現の難しさを思い知りました。
もし、これは違うって思う方がいましたら、遠慮なくお申し付けください。修正できるよう善処いたしますので。何卒ご容赦を。
それでは、5話目どうぞ。
無数の情報の渦。
記憶という名の海に潜る。
--何も見えない。
映り出すものはなく、暗い世界が広がっている。
--まだ、足りない。
記憶を探る程度では届かない。
更に奥深く潜らなければ。
--そうして、俺は自己に埋没する。
溢れ出る言霊。
映し出される映像ーー知っていたはずの世界。
正義の味方 ■■バ■ ■金の別■ ■て遠き■■郷
■杯■争 ■霊 遠■■ ■桐■ イ■■■フィ■ルフォ■ア■■■ベルン■■りの■■家
投■ 固■結■ 魔■■会 時■塔 ■堂教■ 封■指■ 執■■ ■行者 魔■■殺し
殺■貴 ■■鬼 ■■二十■祖 ■■の姫君 ■血の■■姫
■■使い 第■■法 並■■界
■ラ■ ガ■ア 守■■ ア■■マ■
抑■■の介入が遅すぎる。
・・・・・遅い、とはどういうことだ。
ぷつん、という音。
意識が浮上する。
・・・・・ここまでか。
再び、暗闇に包まれる。
あの情報が何を意味するのか。思考しようとする頭に霞がかかる。
思い出そうとしても、何者かの意思が妨害する。
これ以上は無駄だろう。
・・・・・経験が残っているだけマシか。
先の戦闘の際。
自身の動きは、素人のものではなかった。
寧ろ戦い慣れていたと言っていい。
振るう剣も正確で、敵の行動もすぐに対応できた。
--何故、そのような技術があるのか。
武道に精通していたのか。戦場にでもいたのか。
推測するも、答えが出ることはない。
・・・・・誰なんだろうな、お前は。
そんな、何度目かわからない自問自答をしていた時。
「マスター、あと少しで指定ポイントに到着します」
傍らの彼女が、話しかけてきた。
「ああ、分かった」
「ここまでの移動で疲れたりしてませんか? 足が腫れたりは?」
「いや、大丈夫だ。体は頑丈みたいだし。心配してくれてありがとな」
「いえ。マスターの健康管理もサーヴァントの役目ですから」
そこまで行くと、本当に使用人<サーヴァント>な気がするが・・・・・・ここは気にしないでおこう。
それにしても--
「未だに信じられないな。マシュがあんなに強くなるなんて」
言って、さっきの事を思い返す。
あの時。殺されそうだった俺を助けた後、骸骨の化け物を一蹴したのが彼女だった。
最初はかなり混乱したが、彼女と通信をしてきたドクター・ロマンの説明で事態を理解したのだった。
その後、彼の指示で霊脈というものがある場所を目指し今に至る。
個人的には、あっさり話の内容を理解した自分に驚いた。彼らから聞いた話は、荒唐無稽なものだった。
普通は信じられない話。それを疑うことなく受け入れられたのは、直前に、同じく異常な存在を見たおかげか。
「確か、デミ・サーヴァントだったか」
「はい。ちゃんと、覚えられているようで何よりです」
--デミ・サーヴァント
英霊という、霊長類最高峰の存在を人間に融合させ、擬似的な英霊とする存在。
カルデアでは、長らくこの研究が行われていたらしいが、悉く失敗していたとか。
しかし、今回の騒動でマシュの中にいた英霊から、この事態の解決を条件に力を譲渡されたらしい。そのおかげで、彼女は一命を取りとめたのだ。
そして、そんな彼女を使役する存在。それが、マスターというものであり、自分はそれに選ばれたらしい。
原因は不明だが、あの爆発の際、俺と彼女の間に魔術的な繋がりができたとのことだ。しかし--
「いまいち、実感がわかないな」
事態を理解はしたが、驚きがないわけではない。
これだけの異常事態。すぐに対応できる方が稀だろう。
その上、マスターなんてものになったのだから、尚更だ。
「そこは時間の問題ですね。徐々に慣れていくしかありません。ご安心を。先輩の身は、私が必ずお守りします」
「守ってくれるのは嬉しいけど、無理はするなよ。怖ければ逃げてくれていいからな」
強大な力を手に入れた彼女だが、それは肉体だけの話で、精神はそのままだ。
彼女とて、戦闘や敵に恐怖を抱いてるはずだ。
実際に、戦闘の際に彼女の瞳が揺れていたのを、俺は見逃さなかった。
「先輩、サーヴァントはマスターの使い魔で、謂わば道具のようなもの。ですので、そのような気遣いは無用かと」
その言葉に怒りを覚えた。
「なに言ってるんだ。マシュはデミ・サーヴァントって以前に一人の人間で、可愛い女の子だ。そんな自分を蔑ろにするようなこと言うもんじゃない」
つい語気を強めてしまった。
けど、今の言葉は絶対に認められない。
魔術の世界では、彼女の言ったような考えが当たり前なのかもしれない。だが俺はそんなの知らないし、そんな考えに賛同する気はない。
彼女は飽くまで、マシュ・キリエライトという一人の少女なのだから。
で、その彼女はというと--
「か、可愛い・・・・・!?」
なにやら、目を白黒していた。
「どうかしたか?」
呼びかけるも反応はない。
「おーい」
再び声をかけるも、結果は変わらず。
ここまで無反応だと、逆に心配になってくる。
「おい、大丈夫か?」
そう言って彼女の肩に触れると、彼女の体が、ビクッ、と跳ねた。
・・・・・触っただけでその反応は、流石に傷つくぞ。
しかし。もしかしたら体調を崩しているのかもしれない。
「どうした、体調でも悪いのか?」
これまでの経緯を考えれば、体調不良の一つや二つ起こっても可笑しくはないだろう。
「だ、大丈夫です、問題ありません!」
「そ、そうか」
ものすごい気迫で、健康をアピールしてくる彼女につい気圧される。
とはいえ、本当に体に異常があったら問題なので、通信が繋がるようになったらドクターに検査だけはしてもらおう。
「ーーまぁ、何かあったらすぐに言ってくれ。俺でよければ力になるから」
「は、はい。わかりました」
ようやく落ち着きを取り戻したのか、出会った時と変わらない彼女だ。
その様子を見て、大丈夫だな、と判断した。
「それじゃ、改めて進むとするか」
言って、歩を進める。
目指す地点まで、あと僅かだ。
とある場所。
霊脈というものが集まっている地点の一つ。
「--ぁ」
彼女--オルガマリー・アニムスフィアは、そう漏らす精一杯だった。
何も理解できなかった。何も理解したくなかった。
若い身空で、身に余る地位と重責を死んだ父から受け継いだ彼女は、多くの苦しみを味わってきた。得られなかった才能。周囲への劣等感。それらに押し潰されそうな毎日をなんとか耐え抜き、責務を果たしてきた。
そして、今日この日。遂に、彼女の悲願たる実験の実行にこぎつけた。
--これで、やっと認められる。これで、みんな褒めてくれる。
そのために、頑張ってきた。それだけのために、耐えてきた。
様々な出来事に追い詰められた彼女はいつしか、周囲に異様な劣等感を抱くようになった。
それは常に彼女を苦しめており、そこから脱することを願い続けてきた。
自分の無力さ。周囲への劣等感。誰も見てくれない苦しさ。
その全てから解放される。今までの苦労がやっと報われる。これで、胸を張ることができる。
--その思いの全てが、崩れ去った。
順調だったはずの実験は。しかし、突然の爆発によって、失敗することになる。
気が付けば、予定されていた特異点におり、周りには誰もいなかった。
そして、その代わりとでも言わんばかりに、無数の化け物が彼女の近くにいた。
「--ぁ」
化け物の一体が、動いた。
その手には、凶悪な刃が握られている。
「Gi--GAAAAAAAAAA!」
「ひっ・・・・!?」
化け物の形容しがたい叫びに、思わず後ずさる。
しかし、背後には瓦礫があり、これ以上の後退はできない。
「ぃや--いやぁーーーーーーっ!!!!」
何度目かの叫び声が響く。
彼女が悲鳴を上げたのは、これが初めてではない。
化け物の姿を見たときも、それらがこちらに向かってきたときも、彼女は悲鳴を上げている。
しかし、それを聞き、助けにやってくる者はいない。何故なら、この特異点に現れたのは二人の人物を除いて、"彼女だけ"なのだから。
「ぁ、ああ・・・・・」
彼女の口から言葉にならぬ声が漏れ出す。
もはや、まともに言葉を発する余裕も無い。
恐怖に塗れた精神は、とっくに限界を迎えていた。
一歩、一歩、化け物が近づいてきているのに、恐怖に竦んだ体は少しも動かない。
--ここに、死は決定された。
体の動かない彼女に、目前の死から逃れる術はない。
生還するには、他者の助けが必要だ。
しかし、ここには彼女以外の人間はいない。
彼女を助けることのできる人間は存在しない。
故に、彼女は逃れようのない死を甘受するだけだ。
仮令、彼女を助けられる人間がいるとすれば、それは--
--正義の味方だけだろう。
「----------え?」
今まさに、彼女目掛けて剣を振り下ろそうとしていた化け物が、赤い閃光に貫かれた。
そして--
「ーー待ってろ、いま助ける」
聞こえるはずのない声が聞こえ、その直後。
涙で滲んで、殆ど何も見えない視界の中。
--赤い背中が、映り込んでいた。
メンテ明けすぐにガチャへ逝ったら、黒騎士ブラドが。久しぶりに、狙いが当たったのでかなり興奮しました。ただ、贅沢を言えば、ドスケベマシュ欲しかったorz。皆さんも狙いのものを引けるよう祈ります。