いや、確かに強いけど   作:ツム太郎

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青年は、間違った方に行ってしまった。


総帥

総帥

 

「それで、アンタはこれからどうするの?」

 

一悶着あった後、彼女は僕に正座をさせてそう聞いて来た。

これからどうするか、か。

最優先なのはサテライトに帰り、灰村さんを捜す事だ。

だけど、今の僕には戻る方法がない。

 

頼みの不動はどこにいるか分からないし、自分で戻るとしてもどのようにしたらいいか分からないんだ。

 

「んー、そうだね 一度サテライトに戻ろうとは思うんだけど、方法が無くて困ってるんだ だから、サテライトへの道を探す、っていうのがこれからすることかな」

 

「そ、そう 帰っちゃうんだ… あ、アンタが帰るんなら別に止めたりは『貴様、姫との契りを蔑ろにする気』アンタは黙ってなさい ああなりたいの?」

 

途中で話に入って来たシエンさんを前に、彼女は部屋の隅で頭をボコボコにされて転がっているザンジさんを指差した。

彼は意識を失っており、見るも無惨な格好になってしまっている。

 

(ていうか、ディレさんの家はやっぱり六武衆の人達をモチーフにしてるんだ 余程のコスプレ好きと見える)

 

そんな事を考えていると、彼女はため息をついていた。

 

「はぁ、どうして私の子達はみんな勝手に動くのかしら」

 

『それは心外ですぞ、姫 我らは勝手に動いているのではなく、常に姫を考え、姫のために動いている所存』

 

「その結果があれでしょ! 全く、鈍器で済んであり難いと思いなさいよ 刃物だったら切り刻んでたんだから… それで、アンタはどうやって行く道を探すっていうのかしら?」

 

「え?」

 

僕はボーッと彼女達の会話を聞いていたから、いきなり話をふられて驚いた。

そんでもって悩んだ。

 

そう言えばそうだ。

探すのはいいけどどうやって探そうか。

なんか最近吐き気がするときが多いし、無理はしたくない。

となると。

 

「んー、ここに戻る時に不動って人に頼ったんだけど、その人に会うしかないかな」

 

「不動…、ねぇ、もしかしてその人って女?」

 

「え、別に男だけど 何か問題あった?」

 

「う、ううん 別に何も無いわよ …、よかった…」

 

何かよく分からない彼女の問いに応えながら、僕は具体的にどうやって彼を捜すか考えていた。

生憎、僕には携帯なんて便利なものは無い。

それに不動が持っていたとしても、番号が分からない。

自力で探すとしても、この広いシティの中どうやって探すというのか。

 

「うーん…」

 

「何考えてんのよ …もしかして、探す方法が無いとか言うんじゃないでしょうね?」

 

彼女は鋭いなぁ。

 

「…お恥ずかしながら」

 

僕は頭を下げて小さな声でそう言った。

だってしょうがないでしょ、こんな状況になるなんて考えてなかったんだから。

いや、出発前に不動に帰りは保障できないって言われたけどさ。

あー、考えて行動できない自分が恨めしい。

 

「アンタ…、本当に何にも考えてなかったのね はぁ、なんでこんなヤツをボクは…」

 

「え? なんだって?」

 

何か小声で言っていたので、耳を彼女に近づけてみた。

そしたら頭を殴られた、痛い。

顔真っ赤だし、ホントどうしたのこの子。

 

「ぼ、ボクに近づくな変態! 知らないうちに色んな女に手を出して…、ホント見境無いんだから浮気者!」

 

「え、浮気ってどういうこと?」

 

「五月蝿い! アンタには関係ない!」

 

彼女はキーキーと僕の言葉を遮りながら叫んでくる。

刀を持ち出しそうな程の勢いだ。

本気で怖い。

 

「ちょ、ちょっと落ち着いてくださいって! 確かに何も考えてなかった僕が悪かったけど、浮気とかあらぬ事を言われるのは心外な訳で…、そもそも僕には相手もいないんだから浮気も何も無いんだよ!」

 

とりあえず僕は彼女に言い聞かせるために大きな声を出して抗議した。

かなりテンパってたと思う。

 

「…はっ! そ、そうよね 何を言ってんのよボク… よし、話を戻すわよ! それで、サテライトに行く方法だったわね!」

 

露骨な話題転換だった。

いや、僕としても助かるから別にいいけどさ。

 

「そうね…、だったらボクのパパに掛け合ってもいいわよ?」

 

「え、ディレさんのご父兄に?」

 

「そう、アンタも覚えてると思うけどパパは結構顔が広いから、もしかしたらサテライトに行けるかもしれないわよ」

 

そうだ、確かに彼女の親は有名な会社のトップだった気がする。

サテライトに人一人送るくらい問題ないかも。

 

「ほ、ホントに? だったら是非お願いしたいんだけど、頼める?」

 

「えぇ、任せておきなさい あ、でもね、そのかわり…」

 

「ん? なんだい?」

 

彼女は言葉を詰まらせると、自分の髪をクルクルといじりながらいつものように顔を赤くしていた。

んー、こう見ると彼女はとても可愛らしい子だ。

表情豊かだし、リアクションも可愛い。

多分惚れている男子も多いのではなかろうか。

正直、彼女があと数年経って成熟した女性になったら、自分も意識せざるを得なくなるだろう。

ていうか、今でも結構危ないんだから自重してほしいッス。

 

これが同学年の男子にも向けられていると思うと、不安でしょうがない。

いつ誤解されて襲われてもおかしくないだろうよ、まったく。

 

 

 

そんな事を考えていると、いきなり何かが起きた。

 

 

 

「ぼ、ボクと付きあ…」

 

突然の轟音。

 

彼女が何かを言おうとした瞬間、庭に繋がるであろう扉が爆発し、周りが煙でいっぱいになったのだ。

煙が充満し、視界が狭くなる。

 

「な、なんだこれは、一体なんだぁ!?」

 

「!? 先生下がって! シエン、ザンジ!!」

 

『『ハッ!』』

 

彼女の号令に応え、傍にいたシエンさんと力なく横たわっていたザンジさんが飛び起き、獲物を構えた。

そして皆が警戒する中、煙のうちよりそれは現れた。

 

 

 

『シギャアアアアア!!!』

 

 

 

青白い、海洋生物を思わせる肌。

鋭い爪、金色の瞳。

全身を覆う強固な鱗。

 

その姿に見覚えがあった。

 

「り、リチュアビースト!?」

 

そう、突然の攻撃の正体は、儀式モンスターが主体であるリチュアデッキで使われるリチュアビーストであった。

ヤツは僕たちの目の前に現れると、そのまま僕の方向に一直線に向かって来た。

 

「ッ! シエン!」

 

しかし、それを彼女の従者であるシエンさんが疎外した。

突撃する道を断たれ、ビーストは後ろに大きく飛ぶと、ディレさんとシエンさんを睨みつけた。

 

『…ヤツは一体…、ッ!? お下がり下され、山崎殿!!』

 

そんなビーストを見ていると、今度は反対方向からザンジさんが叫んだ。

彼は僕を部屋の奥に放り投げると、獲物である刀を抜き、その一本を何も無いはずの煙の方向へ飛ばした。

 

一見無意味に思えたその行為、しかしその行為のおかげで状況はますます混乱していった。

 

 

 

『アアアアァァァァアアアアア…』

 

 

 

「…え、ゴブリンさん?」

 

虚空を切るであろうと思われたその刀は何かによって弾かれ、そのままザンジさんの手元に戻って来たのだ。

そしてその煙の淵より、見覚えのあるモンスターが出て来た。

そう、何を隠そう自分もよくお世話になっているゴブリンゾンビであったのだ。

 

しかし、何か様子がおかしい。

僕のゴブリンはあんなに聡明そうな顔はしていないはず。

いや、正直モンスターの顔とかよく分からないけどさ、とにかく雰囲気が違いすぎる。

 

「ディレさん、これって一体…もしかして、何かの出し物だったりするの?」

 

「敵は一体…、でもアイツらだったらくるのは夜のはずだし…でもこの感じ、どこかで…」

 

ダメだ聞いてくれない。

さっきのコスプレ六武衆さんがいるし、寸劇みたいな何かだとは思うんだけど、どういったものか全然分からない。

 

いや、でもあのビースト達、着ぐるみにしては精巧すぎるし、まるで本物のようだ。

しかも、僕の目の前まで来たあの時に感じたプレッシャーは、まさしく本物のモンスターのようだった。

 

(なんだ、どういうことだ? …、もしかして、本物…?)

 

そんな事を考えていると、突然肩を掴まれた。

ディレさんだ。

 

「…先生、よく聞いて 後ろにある掛け軸はね、実は抜け道になっているの そこを通ると、スタジアム近くの排水溝に出るわ」

 

「え? え?」

 

変な事を考えていたので、何を言っているのかよく分からなかった。

 

「そこから出て左手にまっすぐ進むとカードショップが見えてくるの そのお店の裏側は一直線になってて、出るとパパの会社の前に出るわ そこの人にこれを見せて、後はパパがなんとかしてくれるわ」

 

彼女は僕の耳元で小さくそう呟くと、「招集、ボクの部屋」とつぶやき、僕を掛け軸前まで突き飛ばした。

その瞬間、屋敷中がガタガタと音を出し、今まで気配を静めていたのであろう何かが出てくる。

よく見ると、六武衆の面々であった。

 

「い、いきなりどうしたのディレさん?」

 

「…ごめんなさい、相手がダークシグナーかすら分からない今、先生にこれ以上邪神を使わせないにはこれ以外方法が無いの 行って、早く!!」

 

「うぇ!? な、ちょおおぉぉ!!」

 

そう言うと、僕は訳の分からない事を言うディレさんにそのまま掛け軸に押し付けられ、その勢いで真っ暗な道を転がっていった。

 

先程の変な考えは、なぜか真っ黒に無くなってしまっていた。

 

 

 

 

 

「…、さぁ出て来なさいよ不法侵入者」

 

ディレは山崎が脱出した事を確認すると敵の方向を見据える。

リチュアビーストとゴブリンゾンビは山崎を追おうとしたが、それを後より出現した六武衆の面々に邪魔された。

各々武器を構え、一斉に敵を睨みつける。

 

『覚悟せよ、異形の者よ ここは我らを束ねしディレ家の城 入れば最後、生きては返さぬぞ』

 

刀を構え、シエンは部下達に開戦の号令をかけようとした。

しかし、それは思いもよらない存在によって邪魔された。

 

『うりゅ! うりゅううう!!』

 

『なっ、神炎皇殿!? なぜ止めるのだ!』

 

その正体はディレを守り、守られる存在であるウリアであった。

ウリアは突然シエンのもとに現れると、彼の号令を止めたのである。

 

『…ヨイチ、ウリア殿はなぜ殿を止めたのだ?』

 

『私にも分からぬ しかしヤリザ、武器の構えは解くなよ 奴らがいつ仕掛けて来るか分からぬ…』

 

『ふむ、訳ありという事じゃな… 師範殿、我らも念のために出られるよう準備をするぞ』

 

『分かっておるわい、エニシ 場合によっては儂らが先陣を切るぞ…』

 

いきなりの事に、他の者達も困惑してしまっていた。

各々話をしながら、それでも警戒を怠らない。

 

 

 

そんな中、いきなり煙が散っていった。

まるで意思があるかのようにスウーッと消えてくと、襲撃の犯人が見えて来た。

その姿に、ディレは困惑した。

 

見覚えのある制服。

自分が通う学校の制服だ。

しかも、自分と同じ学年のデザインだった。

 

(同学年!? 分からない、一体誰が…)

 

やがて視界が完全に見えるようになると、そこには見覚えのある者がいた。

 

「ま、さか… 藤原さん… それに、レインさん?」

 

「あら、見た事がある子だと思ったら貴方だったのね、ディレさん」

 

「…観察対象が消失 しかし幻魔の持ち主との接触に成功 第二目的を最優先に切り替える…」

 

訳が分からず二人を睨むディレ、そんな彼女を余裕の表情で見つめる藤原、そして状況を細かく分析するレイン。

そんな三人が膠着する中、その空気を壊す存在がいた。

 

『うりゅう! うりゅうりゅう!!』

 

『ヴァーい! ヴァヴァヴァーい!!』

 

『ビエェール! ラビィ!!』

 

手を取り合ってクルクルと周り、楽しそうに鳴き合う幻魔達であった。

 

「ウリア、なんで…まさか…」

 

ハッと何かを思いつき、ディレは藤原とレインをもう一度見つめる。

 

「フフ、やっと分かったようね さぁ、今は恵一の事は置いておいて、あの子達を遊ばせてあげましょう」

 

「…私も同意する 今はいずれ戦う存在に対して、友好を結ぶべき」

 

そう言って、彼女達は楽しそうにふれあう幻魔達を優しい目で見つめた。

因みにリチュアビーストとゴブリンゾンビは、温かくなった空気を楽しむかのようにその場に座り、楽しそうに談笑している。

ディレは一気に毒を抜かれ、深くため息をつくと、従者達に武装を解かせて同じようにウリア達を見つめる。

 

「…アンタ達の目的は?」

 

「フフ、まったく、無粋ね 私は貴方の幻魔と私の相棒を合わせるのと恵一の奪還、かしらね」

 

「私もほとんど同じ ただ、私は山崎先生と話がしたかっただけで、奪おうとまでは思っていなかった」

 

「なっ!? レインさんはいいとして、藤原さん どういう事か説明してもらおうかしら!!」

 

幻魔達を見つめながら、彼女達はそんな会話をしていた。

先程の緊張感は、すでになくなってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、そんな事はさておき。

ディレによって突き飛ばされた山崎は、排水溝を出た後に彼女が行っていた通りにカードショップまで歩いていた。

 

「えーっと、此処まで来たら…あとどうだったっけ?」

 

なぜ彼女に追い出されたのかよく分かっていなかったが、とりあえず彼女の父親に会えば何とかなるのだろう。

そう思って、なんとか彼女の父親が経営する企業ビルまで行こうとして、カードショップにまで至っていた。

 

「確か、裏側に行ったら良かったんだっけ… でも…裏側ってどっちだ?」

 

しかし、ディレは知らなかった。

常に発展するネオドミノシティ。

その勢いは凄まじく、常に変化し続けている。

 

そのせいで、カードショップの裏道は二つになってしまっていた。

 

彼は迷った。

正解はどちらか、ヒントも手がかりも無い。

しかも道先は光り無く、数分で出られる様な距離ではないようだ。

 

(ま、まぁ間違っていても戻ればいいし ディレさんの企業名なんて分からないけど、とりあえずデカイビルに辿り着ければ成功なんだ!)

 

そう思い、彼はとりあえず動こうと思った。

てきとうに道を決め、そのまま歩を進める。

 

そして何十分か歩いた後、大通りに出た。

光が射し、眩しく感じる。

 

「うぇ、まぶし…て、あれか?」

 

その先に、山崎はビルを見つけた。

そのビルは大きく、まさしく大企業のもののように思えた。

 

「やった、とりあえずこっちで正解だったのかな よし、行くとするか」

 

そう言って、彼はそのままビルの中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、実を言えば彼の進んだ先は不正解だった。

正確には彼の選んだ方ではない裏道。

それを一直線に進んだ先にあるビルが、正解のビルであった。

 

では、彼の入ったビルはなんなのか。

 

そのビルの中では、ある男がエレベーターにて下に向かっていた。

ある歪んだ決意を胸に、世界の改革を夢見る者。

そんな男は、自分の障害となり、同時に強力な武器になり得る存在を考えていた。

 

強大な力を持つもの。

なぜそのような力を手に入れたのか全く謎であり、何が目的なのかも分からない。

神と呼ばれる力を持つ彼をどうしたら我が物として使えるのか、そんな事を考えていた。

 

(しかし、どう転がろうともまずは接触が必要だ… 早急にヤツの居場所を見つ…け…)

 

そう思った時にエレベーターが開き、目の前の光景にあぜんとした。

自分の悩みの種であった存在、それがなぜか自分の目の前に現れたのである。

 

「うぇ? 貴方はここのビルの社員さんか何かですか?」

 

青年は、何食わぬ顔でそう言って来た。

男は困惑した。

 

なぜ、こんな所に彼がいる?

目的は?

味方になるのか?

 

多くの疑問が彼の中を駆け巡ったが、とりあえずは平静を保てた。

此処に来る目的は分からなかったが、狼狽えて弱みを見せるのは得策ではないと思ったのだ。

いるのならば都合がいい。

この得体の知れない存在、御すのはこの自分だ。

笑みを浮かべ、男は応えた。

 

「えぇ、そうですよ 初めまして、私の名はディヴァインと申します」

 

「あ、これはご丁寧に 僕は山崎恵一と申します どうぞ宜しくお願いします」

 

友好のため、ディヴァインは得体の知れない青年、山崎に握手を求めた。

山崎は一瞬戸惑ったが、すぐに握手に応じた。

その様子を見て、ディヴァインは満足げな表情を浮かべた。

 

恐らく、今の山崎に敵意はない。

今ならば、間違いなくアルカディアムーブメントの一員になるだろう。

そう思ったのだ。

しかも、ディヴァインには十六夜アキという手札が存在する。

 

「それではこちらに 私達アルカディアムーブメントは貴方の事を歓迎します」

 

「へー、ここってアルカディアムーブメントって言うんですね…ん? アルカディア…どっかで聞いた様な…?」

 

そんな答えを返す山崎を見て、ディヴァインは恐れを感じた。

山崎は、迷いこんだ一般人として此処に来た「フリ」をしていると思ったのだ。

ドレッドルート、すなわち邪神の存在を世間に見せた後だというのに、なぜそのような事をするのか分からなかったが、とにかく今の山崎は完全に普通の一般人のように感じた。

 

それが、逆に恐ろしかったのである。

 

(あれだけの闇を操る者が、これだけの静けさ… 一体どんな裏を持っているというのだ)

 

何食わぬ顔で周りを見る彼を見て、そう思った。

 

「では、こちらに…」

 

そんな恐怖を隠し、ディヴァインは山崎をエレベーターに誘った。

その中で、彼は十六夜の話を持ち出した。

山崎という男に楔を打ち込むために。

 

しかし、その行為は逆に彼の行動を間違った方向に進ませる事となったのである。

 

「…そういえば、十六夜アキという子をご存知かな?」

 

「え? えぇ、確かに知っていますよ…って、あ! 思い出した!」

 

山崎は手をポンと叩くと、ディヴァインに向かってこう言った。

 

 

 

「確か、アルカディアムーブメントって大きな演劇のグループなんですよね! いやぁ、ここまで大きなビルを持ってるなんて知らなかったです! …あれ、でもディレさんの親は企業をやっているはず…あれ?」

 

 

 

その言葉を聞いて、ディヴァインは冷静さを一瞬で失ってしまった。

知らぬ間に、拳を握りしめてしまっていた。

 

(今、この男は何といった? 演劇? 私の行為を、劇と言ったのか? この私の、復讐の改革を! 劇と!!?)

 

自らの目的、それを侮辱されたと思ったのである。

復讐こそ、今のディヴァインにとって全てである。

それを馬鹿にされ、冷静でいられるはずが無かった。

 

「…貴様は、私の行為を劇の類だと…お遊びでしかないと言うのだな?」

 

「え、何か雰囲気が…ていうか、実際そうなんじゃないのですか?」

 

「そうか、あくまで態度を変えないのだな …計画は変更だ、貴様は此処で殺す 降りろ!」

 

「は? ちょ、痛い!?」

 

彼はエレベーターを途中で止め、山崎を突き飛ばした。

腰を強く打ち、痛そうにする山崎を尻目に、ディヴァインは徐にデュエルディスクを構えた。

その目はすでに光を宿していない。

 

 

 

「構えろ、邪神の王 復讐の力を見せてやる!」

 

 

 




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