人参「ゴミ処理場で(参考資料を)スパーク(焼却)!」
作品「紙書籍太郎ーッ!」
人参「勝ったッ! 『目高箱と幽波紋!!』完!」
???「ほーお、それでだれがこの主ネタのかわりをつとめるんだ?」
人参「あッ!」
電子書籍太郎「まさかてめーのわけはねーよな!」
作品「電子書籍太郎ッ!」
つい先日行われた部活動対抗水中運動会の後、箱庭学園生徒会執行部には新しく『会計』が加入した。めだかから直々にスカウトされた、喜界島もがなである(ちなみに日当320円)。既に奏丞とも顔見せはしてあるのだが……実はまだそれほど打ち解けているわけではない。せいぜい生徒会での役割の話を済ませたくらいだ。
「なのに今日は二人で留守番とかよ……不安しかねぇ」
めだか、善吉、高貴の三人は別の仕事で出動している。奏丞ともがなはその間の留守を任されたのだが……さて、どう対応したものか。
「まあ、なんとかなるか。邪魔するぞー」
そう言って奏丞が生徒会室の扉を開け--着替えの途中だったもがなの裸体を見ることになった。
「……ッ?!」
「なっ、何ィーーッ!!」
奏丞は直感した。あと数秒もしないうちに、もがなは間違いなく悲鳴をあげる! そうなれば人が駆けつけてこの状況を見るだろう。弁解できる可能性は皆無、奏丞はめでたく前科持ちだ。
だがしかし、ここで事態に対処できないようなヤワな鍛え方もしていなかった。
「(アクア・ネックレスをッ! 口中に発現!)」
水と同化したスタンド、『
「ゴハァッ!」
「--えええええ、なんで吐血?!」
覗きされた衝撃を別の衝撃で上書きし、うやむやにしようという作戦である。まあ、一応悲鳴は阻止できたようだ。
「(俺の作戦としてはちょいと残酷趣味だが、修行の成果があげた判断力ってとこだぜ、喜界島!! 真黒さん、あんたのしごきに対して礼を言うぜ……
女性のあられもない姿を見ておいて全力で誤魔化そうとするこの男、これでもこの物語の
「だ、大丈夫なの?! なんで血を吐いたの?!」
「いや、大丈夫だ……悪いな、ちょっとストレスで」
「この人超失礼だ!」
自慢ではないが、もがなとしてはそこまで自分が悪い身体つきをしているとは思っていなかったのだが。しかし奏丞の方は、そのまま何事もなかったかのように机に書類を広げ始めた。
「……そっ、そんなにあたしの体、見苦しかった?」
「イヤ、普通に眼福だったが……」
「えっ」
「あっ」
ドグシャアッ。
「ぐええ……」
「人のハダカしっかり見てるんじゃない! お金払って! 目の保養料で450円!」
「450円? カッカッカッカ、バカにしちゃあいかんよ君ィー!」
「……ぐすっ」
「千円あげます……」
「ほ、ほんと? わーい、ありがとっ!」
流石に泣かれてしまっては値段交渉どころではなかった。それでも驚きの安さだが。もがなはめだかのお眼鏡にかなうくらいの会計適正があったが、それとは別に少々変わった金銭感覚があるようだ。ちなみにそれを知って不埒な考えを持った奴には、屋久島と種子島というもがなの先輩達が会いに来る、という噂である。
「さっ! じゃー仕事しよーかな。パソコンどこ?」
「そんなもの、ウチにはないよ」
「はいっ?」
「ソロバンか、俺が個人的に持って来てる関数電卓しかないぞ」
「じゃあ今までの会計どうしてたの?!」
「めだかに任せれば全部暗算で済ませてたよ」
「どれだけ高性能なのあのヒト! わ、わかった。じゃあ関数電卓貸してもらえる?」
「ほら。そっちの仕事は頼んだぞ。俺はこっちの仕事を片付ける」
「うん、任せて」
奏丞ともがなは各々の仕事を始める。外の雨音と作業の音だけが部屋に響いていた。……少々気まずい沈黙の時間だった。
「(静かになっちゃった、どうしよう! 仕事してマジメなトコ見せようとしたのは失敗だったかも?!)」
もう少し和気あいあいとした時間にしたかったのだが、そうもいかなくなった。目の前の奏丞をチラリと見ると、向こうもマジメに仕事モードのようだ。正直意外である。
「(もう! 宇城はもっと軽薄キャラでも良かったのに! 仕事中だけど別に話しかけられても大丈夫だからさ!?)」
こうなったら自分から話題を振るしかないと、もがなは決意した。生徒会に入る前、先輩達から友達を作れと言われたことを思い出す。
「(そうだ、あたしは
そういえば、昔本で読んだことがある。たしか、天気の話題だけは誰が相手でも外すことがないと。ならば話題は決まった!
「う、宇城! きょーは! いーてんき! だね!」
「天気?」
奏丞は外を見た。あいにく本日は雨模様だ。……こんな日は、まだ夭歌が『黒神くじら』だった頃を思い出す。
--気付かなかっただろ、奏丞! 玄関で降り注いでいたのは雨水じゃねェ、俺様特製の『環境
「おちおち外も出歩けねぇ!(バンッ)」
「なになに! 突然机叩いて?!」
「いや、大丈夫だ……悪いな、ちょっとトラウマで」
「体も心もボロボロだよこの人?!」
さっきから血を吐いたりトラウマを見せたりと、傍から見ていてかなり不安なヤツだった。生徒会室ではなく保健室に行くべきではないか、ともがなは思った。
「んん、いやホント大丈夫大丈夫。めだか達とつるんでる時はもっとひどいことになってるし」
「それはそれで怖い話なんだけど……会長さんって、昔からあんな感じなの?」
「あんな感じってーと?」
「ほら、その……他人のために働くとか……キキ、キスとか」
「あー」
例の水中運動会で、もがなは感極まっためだかにズキュウウウンとされている。善吉曰く、黒神めだかの真骨頂その③『行き過ぎ愛情表現』というやつだ。
「まあ今も昔もあんまり変わってないな、あいつのハチャメチャさは。キスの方は……小学校に入る前はよくやってたんだ。流石に俺と善吉で早い段階で止めさせたから、今じゃ滅多に見ないけど。善吉のファーストキスもめだかじゃなかったかな」
「もしかして宇城くんも?」
「俺のとこに来たら(スタンドで)蹴っ飛ばしてやったからな、まだ清い体だよ」
「それってあたしが汚されてるって言いたいのかな? うん?」
「……来世があるさ!」
「よ、汚れてないもん! あたしだってまだ清い体だもん!」
「うんうん、そうだといいな」
「ウガー!」
「(コイツ面白れェ)」
水中運動会ではかなり素っ気ない様子だったのだが、話してみると結構ノリがいい感じだ。からかいがいがある。
「お節介焼きなのも昔からだな。子供の頃に善吉に会って感化されてああなった。……まあそれ以前も色々あったみたいだけど」
「……なんかすごーくはしょったよね? あたしからしたら、見返りもなくああして人を好きになれるなんてしんじられないよ……」
「お前だって屋久島先輩や種子島先輩のこと、見返りなくたって好きだろ?」
「え……あっ」
「あいつにとっては全人類がその対象なんだよ、たぶんな。だからお前のことも大好きだろうさ」
「…………」
そう言われて、もがなは生徒会に誘われた時のことを思い出していた。めだかに正面から、見返りではなく助けを求められたことを。ギブアンドテイクの世の中だと思っていたもがなにとって初めての経験なので、随分戸惑った覚えがある。
「しっかしアイツはもう少し落ち着きってものを……」
「(って……あれ? あたしいつの間にか宇城くんと結構話せてない? これって……友達作るチャンスじゃない?!)」
だが、ここで意識してしまうと変な失敗をしかねない……。そう考えたもがなは、ここで妙案を思いついた。他の人を参考にするのである。
「うっ、宇城っ!」
「あ? どーした」
「お……お前に惚れてしまった、からっ! ちゅーするぞ!!」
だからといって黒神めだかを参考にするのはどうなのだろうか……
「…………おま」
----奏丞ぇ?
----宇城くん?
「ぐっ?!」
その瞬間! 奏丞は圧倒的な殺気を感じ取った! 薬品臭の怪物と腐臭の化け物の存在感! しかし勿論周りにそんなモノはいないし、頭が茹だってそうなもがなが何かに気づいた様子もない。だが、それでも気のせいで済ませられるほど、奏丞は楽観的ではなかった。
「今の感覚はどう考えても……!」
「しっつれいしまーす☆」
「ゲェッ、古賀先輩!?」
「へっ、誰? お客さん?」
突然生徒会室に入って来たのは、改造人間古賀いたみだった。中学校でも奏丞の先輩だった人であり、そして、夭歌のマブダチでもある。
このタイミングで彼女がやって来たのはほかでもない。
「宇城くーん、名瀬ちゃんが用事できたから来てほしいってさ☆」
「アイツ色々と隠さなくなってきたなぁ!」
「えっえっ、宇城くん知り合い? 誰誰?」
「俺の先輩だ……悪い、めだか達にはよろしく言っといてくれ!」
「ちょっ……」
グワシャアッ! ガラスの割れる音が響いた。奏丞は躊躇なく窓をブチ破り、逃げ出したのだ。呆気にとられたもがなだが、慌てて窓際に駆け寄った。雨が降っている中、既に遠くにいる奏丞は、特に怪我をした様子もなく全速力で走っている。
「なっ、何やってんのよー?!」
「おおっと逃がさないよ! 名瀬ちゃんの前で弁解してもらわないといけないからね!」
いたみの方も奏丞を追って窓から飛び出して行ってしまった。もはや何が何だかわからないもがなは、呆然とそれを見送るしかなかったのであった。
「二人とも、留守番御苦労だった!(凛っ)」
「えっあっ、みんな!?」
「……ん? 窓ガラスが割れているな。怪我はないかい?」
「奏丞もいねー……何かあったのか喜界島?」
「そのっ、あのっ! 宇城が! なんか! ちゅーしようとしたら、先輩?! に追いかけられて!」
「「「…………」」」
状況が読めない三人だったが、しかし生徒会では窓ガラスが割れる程度のトラブルはよくあることだ。なので結論は一つ。
「「「……まあ大丈夫だろう」」」
「それでいいのー?!」
もがなが生徒会に慣れるには、もう少し時間がかかるかもしれない。
この作品のノリをすっかり忘れてしまいました……
あの頃の自分を思い出しつつ、完結できたらいいなぁ、という意気込みで再開いたします!