だけど内容はやっぱり手抜きです。すみません。
まともなバトルがないとウチの主人公使えないなあ……まったく、この役立たずめっ!
さっさとマイナス戦ぐらいまでに話を進めたい所です、はい。
「世界は平凡か? 未来は退屈か? 現実は適当か?」
全校生徒の前で今、めだかが演説をしている。
「安心しろ、それでも生きる事は劇的だ!」
実に98%という驚異の支持率で新生徒会長となっためだかの言葉に、誰もがそのカリスマ性を感じ取り。
「そんなわけで、本日より、この私が貴様達の生徒会長だ」
そして奏丞もまた、それをつくづく再認識した。
「学業、恋愛、家庭、労働、私生活に至るまで、悩み事があれば迷わず目安箱に投書するがよい」
黒神めだか。
今も昔も変わらずブッ飛んだ奴だな、と。
「24時間365日、私は誰からの相談でも受け付ける!!」
「(ここ、笑うとこ?)」
「ぶはっ!」
「んっふ……」
「(キoンかお前はぁ!)」
「(ちょっ、宇城くん笑わせないでよ!)」
「(あっ、悪い悪い)」
壇上のめだかにジト目で睨まれた奏丞だった。
☆ ☆ ☆
「しっかしあのお嬢様、全校生徒を前によくあんな啖呵が切れるもんだよ。人前に立つのに慣れてるっつーかさー♪」
「カッ、ありゃあ人の前に立つのに慣れてんじゃねーよ。人の上に立つのに慣れてんだ!」
「お前何ウマい事言ってんだ」
「自分でもいい事言ったと思う」
「あひゃひゃ! まーそりゃそーだね。そーでなきゃ一年生で生徒会長になんかなれっこないか♪」
昔から謎のカリスマとスペックを持つめだかだった。
不知火曰く、全国模試では常に上位をキープ、偏差値は常識知らずの90を記録、手にした賞状やトロフィーは数知れず、スポーツにおいてもあらゆる記録を総なめ状態、実家は世界経済を担う冗談みたいなお金持ち。
「全長263.0メートル。高度6万フィートをマッハ2で飛行! インテル入ってる!」
「いや、途中から人類じゃなくなってる……」
「インテル以外はわりとできそうだぞ、あいつ。将来的に」
「ねーよ! いくらあいつでも流石にそこまで人間やめねーよ!」
「と信じたい人吉なのであった……」
「不知火までやめろぉ! なんか不安になってきただろ!?」
善吉で遊ぶ奏丞と半袖。
わりといつもの光景である。
「で? 二人はどーすんの? お嬢様が当選したって事はとーぜん二人も生徒会に入るわけ?」
「カッ! なわけねーだろ! これ以上あいつに振り回されてたまるかっての」
「右に同じく。ま、そもそもバイトや部活で忙しい俺にはそんな時間もないしな。
つーわけで」
奏丞と善吉は声を揃えて、
「「俺達は絶対! 生徒会には入らない!!」」
「…………」
それを聞きながら、無言で奏丞の背後を見ている半袖。
次の瞬間。
「そうつれない事を言うものではないぞ、二人とも」
「おわっ!?」
「めっ、めだかちゃん!」
奏丞の首元に、まるで蛇の様に腕が絡みついてきた。
背後をとったその人物の正体は、今まさに話題になっていた黒神めだかだ。
「まったく、二人ともひどいではないか。一人頑張っている幼馴染みの誘いを口を揃えて断るとは」
「あのー、めだかさん? (頸動脈に)当たってるんですけど……」
「ふふふ、(頸動脈に)当てているのだよ」
「お前まさかさっきの集会での事を」
キュッ(絞めた音)。
クタッ(力が抜けた音)。
「奏丞ェーッ!?」
「うわぁ、キレーに落ちた……」
恐々としている善吉と半袖の視線を受けながら、めだかは奏丞の身体を肩に担ぎ上げ。
「善吉。貴様も来い」
「…………ハイ」
合掌する半袖を残し、善吉を伴って悠々と立ち去ったのだった。
☆ ☆ ☆
「……で、俺は気絶してる間にここに連れ込まれたと」
「そうなる。ああ、ちなみにここは生徒会執行部室な」
「気分はどうだ。後遺症が残る様な締め方はしていないが」
「んー……大丈夫そうだ」
奏丞は首を動かしながら応える。痺れなどもないし、どうやら問題はなさそうだ。
……いや、一つ問題があった。
「……ところでめだか、お前はなんで下着姿なんだ」
「奏丞もおかしいと思うよな!?
ほら見ろ、やっぱりお前おかしいんだって!」
「くどいぞ善吉。先も言ったが、私と貴様達の間に恥じらいなど何の意味がある。練り上げられたこの肉体、写メで撮られようと額縁に飾られようと、憚る事など何もない!」
凛っ!
「凛っ、じゃねーよ痴女かお前は。見ろ、そのせいで善吉はさっきから血圧が上がりっぱなしじゃねーか」
「あってめっ」
「?」
自身の裸体が健全な男子高校生にどんな影響を及ぼすのか、めだかにはわかっていない様だった。
この脱ぎ癖はめだかの数少ない悪癖の一つである。
「さて奏丞。目を醒ました所で、例の件について、貴様のこれからの扱いを話しておこう」
「例の……ああ、生徒会入りの話か?」
奏丞が生徒会に入るか否かである。
奏丞は前々からめだかに勧誘されていたのだが、しかし奏丞は部活に入っていればアルバイトもしている身。残念ながら生徒会役員として働いている暇はない。
それについてはめだかも一応納得していたのだが。
「善吉には正式に生徒会に入ってもらうとして」
「いや、入らないけどな」
「奏丞に関しては外部協力者、客員の様な扱いにするつもりだ。時間がある時に手伝ってもらえればいい。
速筆速読が得意な奏丞には書記職を任せようと思っていたのだが……まあ、これでも私は全校生徒に選ばれて生徒会長に任命された身。無闇矢鱈に親しい者ばかりで周囲を埋めても生徒の不信感を煽るだけだろうし、正式な加入については潔く諦めるつもりだ」
「んー、まあ、それくらいなら別にいいぜ。仕事自体も正員程忙しくはならないだろ?」
「できれば俺の事も潔く諦めてくれませんかねェ……」
「善吉は部活もバイトもしてないんだろ。付き合ってやれよ、幼馴染みなんだし」
「だったらお前部活辞めて生徒会に入れよ」
「無理だ、そんな理由で抜けたら
「お前どんな部に入っちゃったの!?」
合言葉が『魂を賭けよう』な部だ。
「善吉……ダメ?」
「ぐっ……」
善吉が一瞬見せためだかのデレで更に赤くなる。
善吉が言葉を呑んでいる隙に、奏丞は話を進めた。
「で、わざわざ善吉も連れて来たからには、他にも話があるんじゃねーの?」
「うむ、これを見てくれ」
そう言ってめだかが持って来たのは、土蔵の様な形の箱だった。
奏丞はそれに見覚えがある。選挙戦におけるめだかの公約の一つに関わる物だ。
「これについては貴様達も既に知っているな」
「たしか『目安箱』だろ。生徒の悩みを解消する為に設置したっていう」
「……ああ、そういやあったな、そんなかったるいの」
「その通り。
さてその目安箱に、本日早速第一号の投書があったわけだが」
めだかが紙を取り出し、その内容を読み上げる。
「『三年の不良達が剣道場を溜まり場にしていて困っています。どうか彼らを追い出してください』……だそうだ」
「剣道場ねェ……って、よく考えてみたら巻き込まれる流れだコレ」
「うむ、というわけで二人ともついて来るがいい!」
「あ、俺ムリ」
「「おい」」
コンマ一秒で断った奏丞にツッコミが入った。
「むぅ、やはり部活か? この栄えある依頼第一号に関われないというのか?」
「ついでにその後はバイトもあるしな。悪いけど今回はパスだ」
「という事は俺一人で付き添いかよ……」
「頑張れ、俺も明日なら時間あるからさ……」
落ち込む善吉の肩をポンポンと叩く。
多数の不良が絡むとなると、めだかはその更生にも乗り出す事だろう。おそらくは、超スパルタな手段によって。
そしてそれに巻き込まれる事がわかっていれば、善吉の落ち込み具合にも頷けよう。
「では行くぞ、善吉。人を助けにな!」
「…………ハイ」
めだかに連れて行かれる善吉に向けて、奏丞は合掌する。
奇しくもそれは、先程教室で半袖がとったポーズと同じ物であった。
☆ ☆ ☆
その翌日である。
部活が休みで時間ができた奏丞が、早速件の剣道場へ向かっていたところ。
「……善吉ー、生きてるかー?」
「…………お陰様でな」
頭から血を流して倒れている善吉を見つけた。
返事はあまり期待していなかったが、しかしどうやら意識はある様だ。
「経緯がサッパリサッパリなんだが、とりあえず誰にやられたんだ?」
「わかんねェけど、剣道場に行きゃわかると思う。……おっ、悪い」
「いいってことよ」
奏丞の手を借りて善吉は起き上がり、壁に寄りかかる。
「俺も一緒に行くけど、いいな?」
「いいけどよ、その前に俺の鞄から包帯取って……あれ?」
「どうしたのかなー(棒)」
「いや、なんか……痛みが消えた? まさか痛みを感じなくなる程重傷なのか?」
「あー、そりゃアレだ、脳内麻薬がドパドパ出てんだよ、たぶん。見た所、大した傷じゃあないぜ」
といってもクレイジー・ダイヤモンドでこっそり治してしまったので、傷自体が既にないのだが。結構な出血もあり、傷をそのままにしておく程、奏丞も薄情ではない。
「ほら、包帯だ。巻きながら行きゃあいいだろ」
「……そうだな。んじゃ行くか」
不思議そうにしていた善吉を促して、奏丞も剣道場へ向かう。
友達を傷つけた犯人がいたなら、一発ぐらいはブン殴ってやろうと考えながら。
☆ ☆ ☆
「へっ……やっぱお前は妨害すんのな♪」
「……別に。そこの連中が立ち上がらなかったらほっとくつもりだったんだけどな」
「保健室に連絡してきたぞー。不良の八人や九人ぐらい、問題なく受け入れてくれるそうだ」
「お前、宇城!? なんでここにいんだよ、お前に至っては完全に部外者だろ!」
「あ~ん? 人のダチ襲っといて、何ナメた事言ってやがる」
剣道場に行くと、そこにいたのは倒れ臥した不良達と、それを踏みつけるクラスメートの日向だった。返り血を浴びた制服を着て木刀を持っている姿は、どう見てもこの惨状を作り上げた犯人としか思えない。
そして正しく、善吉や不良達を襲ったのは日向だった。
「で、なんか弁明する事はあるか?」
「弁明? ハッ、学園施設を不当に占拠してる雑草どもをむしってやってんだ! 僕は正しいだろうが、あァン!?」
「テメー頭脳がまぬけか? 未成年じゃなきゃ一発でしょっぴかれる様な暴力事件起こしといて……正しいもクソもねーぜ」
「おいこら、ちょっと待て奏丞。ここは俺がめだかちゃんの正しさを語る所じゃ」
「日向! 俺の気持ちを聞かせてやる……紳士として恥ずべき事だが、正直なところ今の宇城奏丞はダチを襲われた恨みを晴らすために、日向! テメーを殴るんだッ!」
「いや、そう言ってくれんのは嬉しいけども! 俺! 俺の出番!」
「顔面はお前に譲るぜ、善吉。俺は腹を蹴っ飛ばす」
「聞けよ、話を! ああくそ、わかったよ! ったく、タイミングしっかり合わせろよ!?」
「ケッ、どいつもこいつも面倒くせえ!
お前ら! 剣道三倍段って知ってっかっ!?」
木刀を振りかぶった日向に、奏丞の蹴りと善吉の拳が同時に突き刺さった。
鼻血を撒き散らしながら、日向が吹き飛ぶ。
「「知るかっ!」」
☆ ☆ ☆
「で、結局日向は剣道部(仮)で不良達の指導を務める事になった、と」
「そーいう事。聞いた話だと、あの後あいつにきついお灸を据えられたみたいだ」
「めでたく純朴な剣道少年が一人誕生したってわけだ」
「まあ、要するに日向もあいつの事を好きになっちまったって事だろうな……」
「ライバルは増える一方だなぁ、善吉?」
「うっせ!」
からかわれてそっぽを向く善吉。
二人が今話しているのは、善吉がめだかから聞いて来た事の顛末についてだった。
どうやら今回の相談は、どれもジグソーパズルの様に納まるべき場所へ綺麗に納まったらしい。最初の依頼がどうなる事かと思っていたが、終わってみれば満点の結末になったのではないだろうか。
「それに、もう一つ言う事があるよな?」
「……カッ、見ての通りだよ」
奏丞は善吉の腕を見る。昨日まではなかった物が、そこに巻かれていたのだ。
「庶務、か。まあ、いきなり副会長になれるわけもないか」
「『手柄を立てて這い上がれ!』だとよ。カッ! 上等だぜ、副会長ぐらいあっという間になってやんよ!」
「おー、その意気だ。応援してるぜ」
目の前で気合いを入れている善吉を見ながら、奏丞は考える。
この世界にやって来て、実に十五年が過ぎたのだ。
イレギュラーな存在である奏丞はこれまで各所で影響を与えて来たが、基本的にハッピーエンドだった原作がこれから先一体どうなるのか。
一抹の不安は確かに感じる。しかし奏丞は、それでもより良い未来がやって来る事を願わずにはいられないのであった。
――『めだかボックス』。
ついに原作開始の時期が訪れた。
奏丞「すみませーん、ちょっと遅れ……」
陀尾(兄)「四時だ! 二度と間違えるな! 部活の開始は四時なんだ! 五時でも三時でもない!」
奏丞「」
陀尾(弟)「何度も言うが遅刻して私の時間を削るのはやめろと忠告したい……。
いや遅刻だけではない。もしこの私がワックス塗りたての廊下で滑って頭を打ったり、ショットガン・シャッフルをつまらせたり、ポテチの空き袋のパン! と割れる音で心臓マヒで死んだとしても……部活の時間はあの世へ飛んでいく」
奏丞「え、それ先輩の責任じゃ……」
三羅「仮に今……あの天高い空からここに隕石が落ちて来たとする……そして仮にそのせいで遅刻したとしたら。あんたは……『「隕石のせいだから遅刻は無効だ」』、そう納得させる……あたしをじゃあなく『自分自身』を……。
それでいいのか……? 自分の心に対してあんたは『ルール』を破ったのではないかと……そう思えるのなら、遅刻をすればいい……」
奏丞「……今日はバイト先のラーメン屋の一玉無料券を賭けようかと思ってたんですけど」
三人「「「グッド!」」」
奏丞「クソッ、なんて部だ!」