目高箱と幽波紋!!   作:人参天国

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 携帯投稿できる様になったので、にじファンで書いていた『異常と過負荷と悪平等と幽波紋!!』を改訂して投稿します。
 気まぐれに更新していきますが、エタらない様に頑張ります。




第一話:目高箱と幽波紋!

 

 

 ふと気付けば、俺はそこにいた。

 ひたすら白い空間だった。果ては見えず、上もわからず、地面に立っているのかも定かではない程白で染まり切った場所。

 この世の光景とは到底思えず、俺はただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

 

「まあ、実際はこの世ともあの世とも違うんだけどね」

「!?」

 

 聞こえてきた声でようやく我に返る。振り返ると、そこには見知らぬ男がいた。金髪碧眼の……美青年。今にも「世界が愛で満ちればいいのに!」と言わんばかりの穏やかな微笑みを浮かべ、その神秘的な雰囲気はこの場にこれ以上なくマッチしている。イケメン爆発しろ。

 

「……君、結構余裕あるね。混乱が一周して冷静になった? ま、とにかく座って座って」

 

 見れば、その男が座る真っ白なソファの対面にはもう一脚同じソファがある。ふんわりしていて、実に座り心地が良さそうなソファだ。

 

「……いやいや、その前にあんた誰? ここどこ? 何で俺はこんな所にいんの?」

「一言で言うとテンプレ乙」

「なるほど」

「悲しくなるほど理解が早いね……これから詳しい事情を説明するよ」

 

 再度座るよう促され、ようやく自分も対面のソファに腰かける事に。

 

「さて、じゃあさっきの君の質問に答えていくとしようか。もう察しがついてるみたいだけど、僕は神様をやっていて、普段は自分が担当する世界を管理するのが仕事だ。君がいた世界も僕の管理世界だったんだよ」

「それはつまり、創造神的な……?」

「ちょっと違うな。確かに僕が新しい世界を創る事はできるけど、実は世界って勝手にポコポコ生まれてきちゃうものでね。それを管理してるだけだから、創造神っていうわけじゃないな」

「はあ……」

 

 まあ、日頃SS巡りをしている自分にとったら話の展開としては意外ではなかったが、しかしいざ本物に出会ってみるとスケールがでか過ぎて反応に困る。たぶん、気にする様な問題ではないと思うが。

 

「それで、ここは結局どこ……なんですか? 死後の世界で、自分は既に死んでいる、とかですか?」

「それも違うね。君が考えているのは天国とか地獄の事だろう? それがあるのは『天国・地獄がある世界』であって、そこは『現世』も含めてあくまで一つの世界として成り立っているんだよ。

 でも、ここは君がいたその世界の外。普通なら絶対に来られない場所なんだ」

 

 わかるようなわからないような話だが、とにかく凄い所らしい。

 

「そして、確かに君は既に死んでいる。本来なら君の世界の天国なり地獄なりに行く所だったんだけど、故あって僕がここに連れて来たんだ」

「やっぱり、死因に何か問題があったんですか?」

「さっきから口調が堅いなあ、もっと気楽に話していいよ。でも君の予想は当たっていてね、これが実に申し訳ない話なんだ……」

 

 決まり悪そうにこちらを見てくる。まさかあれか、死ぬ筈じゃなかったけどミスしちゃって、って話か。

 うーむ、確かに殺されたなら納得出来ないが、こう申し訳なさそうにされるとこちらとしても怒りにくい。わざとじゃないならそれも尚更だ。

 ともかく話を聞いてみよう。出来るだけ怒らず冷静に……

 

「実は世界群を使ってビリヤードしてたら、キューが君の世界を貫いちゃって。そのせいで規模は小さいんだけど次元震が発生しちゃって、君だけ運悪く巻き込まれたんだ。ほんとゴメンネ?」

「歯ァ食い縛れコラ」

 

世界の平和を乱す奴に正義の鉄槌を!!

 

「待って、とりあえず話し合おう。暴力反対」

「殴るだろ! そりゃ殴るだろ!! 死因が世界を使ったビリヤードって何なんだよ、もはやスケールがでかいのか小さいのかわかんねーよ!」

「しょうもないって事だけは確かだねー」

「唸れ俺の右拳!!」

 

 渾身のストレートだったが顔を反らしてあっさり避けられてしまった。この澄ました表情がまた一段とムカつく。

 

「まあまあ落ち着いて。怒るのももっともだけど、それより君の今後の事を話すよ」

「チッ……」

 

 殴れなかったのは非常に残念だが、どうやら相手が悪そうだ。仕方ないので再びソファに座り直し、聞く体勢になる。できればぶん殴ってやりたいが、今は我慢だ。

 

「この件は完全にこっちに非があるから出来れば生き返らせてあげたいんだけど、実はもう既に君の世界では『突如発生した空間の亀裂に巻き込まれた不幸な少年』って話題で賑わっていてね……」

「それって……」

「うん、君の事。その瞬間を目撃した人がいたみたいで、亀裂自体も塞ぐのが遅れちゃってね。もう世界規模で有名になっちゃったけど……それでも生き返る?」

「いや、やめとく……」

 

 報道陣の人波に飲まれていく自分の姿が容易く想像出来た。すっかり有名人になってしまったらしいし、もはや普通の生活は望めそうにない。俺はそこまで目立ちたがりではないのだ。

 

「それで、君の選択肢はこのまま君の世界の天国なり地獄なりに逝くか、もしくはお約束的な転生をするかのどっちかだけど……どうする?」

「転生で」

「だよねー。なので転生特典として三つ願いを叶えてあげよう。好きな事言ってよ」

「……マジ?」

「マジマジ。あ、でも願い事増やせってのはダメだからね。あとあんまりマズイ内容だったら制限ぐらいはつけるけど」

「マジか! じゃあアレだ……『あらゆるスタンド能力を自由自在に使いたい』って願いは」

「君、思いっきり趣味に走ったね」

 

 ジョジョ好きの俺にこれ以上の願いがあるだろうか。いや、ない!

 

「うーん、まあ、趣味とはいえ十分チートな願いだね。全てって事はレクイエムも?」

「もちろん!」

「自由自在っていうのは?」

「具体的にはスーパー・フライとかチープ・トリックとかヘビー・ウェザーとかを制御できる様に」

「チート乙」

「それほどでもない」

 

むしろできなきゃ死ぬしかないし。

 

「でもその願いならある程度制限をつけさせてもらうよ。

1:二体以上のスタンドを同時に扱う事はできない。

2:スタンドの能力は別のスタンドを出したら解除される。例えばゴールド・エクスペリエンスで生物に変えた物は別のスタンドを使ったら元に戻る。ただし、体の一部にしていた場合は解除されない、みたいな例外は有り。エニグマも紙にした物は解除されない様にしてあげる。

3:発現に条件があるスタンドは条件を満たさないと発現できない。例えばタスクのACT2以降は黄金の回転が必要。レクイエムは本来矢が必要だけど、そこはオマケしよう。

4:影響範囲が自由に決められないスタンドもある。わかりやすい奴では時間関係のスタンド、あとグリーン・デイ、ボヘミアン・ラプソディー、C-MOONなんかもそうだから、注意して使ってね。

5:フー・ファイターズは独り歩きかつ遠隔操作型にする。ダメージは共有されず、出しているフー・ファイターズが全滅しても新しく出せる。ただし出したフー・ファイターズは一定量からは増殖しなくなるし、同時に二体以上を人型にして運用する事はできない。基本的には君の意向に添うし操作もできるけど、意思はあるし視覚共有もできない。長距離君の下を離れる事はできるけど、フー・ファイターズをしまうか全滅するかしないと別のスタンドを出す事はできない。

 ……やれやれ、こんな所かな」

 

 随分長くなったが、その程度の制限は問題ない。これ以上を願ってはバチが当たるってもんだ。今でも十分に跳ね回りたい程嬉しい。

 

「ウッヒョー!!」

「跳ねてる跳ねてる」

 

 ……つい取り乱してしまった。とりあえず落ち着こう………………よしっ、じゃあ次の願いは……って待てよ?

 

「転生先はどうなんの?」

「先にそれを聞くべきだと思うんだけどね……悪いんだけど、都合がつかなくて選択肢が五つしかないんだ。一応有名な所を選んだから、この中から選んでほしい」

 

 という事は、突然誰もいない世界に放り出されるわけじゃないって事か。

 よし、とりあえずその選択肢って奴を見てみよう。

 

「まず一つ目、バイオハザード」

「ふむふむ」

「二つ目、サイレントヒル」

「ほうほう」

「三つ目、呪怨」

「うんうん」

「四つ目、不安の種」

「へえへえ」

「五つ目、めだかボックス」

 

 なるほどなるほど。

 

「めだかボックスで」

「だよねー」

 

 選択肢なんてなかった。

 

「ってフザケンナ! 何だそのチョイスは!? むしろ豊富だよ、選択肢が! 悪い意味で!」

「と言われても、ここ以外にはないし……」

「そこはほら、東方とかリリなのとか、そういう選択肢は」

「そこら辺は人気があってねぇ、既に他の転生者達がいるから無理なんだ」

「お前そんなにミスしてんの!?」

「ミスをする神が僕だけだと思わない事だ!」

「何でこんな時だけ感嘆符付けてんだお前は!」

 

 まさか世界を丸ごと使ってビリヤードする様な神が複数いるというのか。実はこいつらこそが世界を混乱させている元凶じゃないのか。世界の管理をしているとは言うが、この分だと普段どんな管理の仕方をしているのかわかったもんじゃなかった。

 

「でも君はまだ幸運な方だと思うよ? この前なんか『最強の肉体』と『無限の魔力』と『ネギまの全技術』を持った転生者(笑)が『生徒会役員共』の世界に転生してたし」

「めだかボックスで」

 

 そんな事になったら、俺は泣く自信がある。生きる気力を失う自信もある。ホラー系とは違う意味でシャレにならない転生先だった。

 ……しかし、俺の転生先のめだかボックス、これはこれでまずい。

 確かにめだかボックスは嫌いではないし、スタンド能力も場違いと言う程ではないだろう。むしろかなり便利な筈だ。

 しかし問題は……

 

「あの世界ってジャンプも『ジョジョの奇妙な冒険』もあるよね」

 

 そうなのだ。もうこれでもかって程ジャンプが普及しているのだ。

 しかも作中では承太郎の名前すらはっきり出てしまっている。確実にジョジョもあるだろう。

 そんな所へスタンド能力なんて持って行けば……

 

「安心院なじみにあっという間に目をつけられて色々調べられて最終的に漫画の世界だと気付かれると。改心フラグ見事にブチ折ってない?」

 ……やべぇえええ!! あんなのまともに相手したくないって!

 細かい数は覚えてないけど、スキル1京個以上も持ってる超絶チートキャラだぞ!? 全スタンド使っても勝てねーよ馬鹿っ。

 そもそもめだかボックス自体クリスマスの生徒会選挙が終わった所までしか読んでないから、最近どんな展開したのかも知らねぇし!

 

「程よく混乱してるね。ちなみに正確には1京2858兆519億6763万3865個だ」

「どっちにしろ絶望的だよチキショウ!」

 

 くそっ、まさかジョジョそのものが死亡フラグになるとは! どうにかならないのか!?

 

「……一応探せばジョジョが存在しないめだかボックスの世界もあると思うけど?(ぶっちゃけスタンドを諦めれば手っ取り早いんだけど)」

「……えっ、マジか!?」

「面倒だけど、願いの一つって事なら何とか探してみるよ」

 

 それはこの上なくありがたい提案だった。しかしそんな都合のいい世界があるんだろうか。

 

「探せばあると思うよ。主要人物が全員男になってる世界があるくらいだし」

「なんかイヤに生々しい例だ……」

 

 しかし今はただただ感謝するばかりだ。ピンポイントで悪い世界で軽く絶望していたが、これで少しは生き易くなる筈だ。

 

「どうする? 『ジョジョのないめだかボックスの世界に転生』って願いにする?」

「……ああ、それで頼む。あんなヤバイ奴と敵対するなんて冗談じゃない」

 

 しかし、あの世界には安心院なじみ以外にも理不尽な能力を持った奴は大勢いる。そうなると当然対策は必要だろう。スタンドだけでは対処できそうにない能力の奴もいるし。

 ……よし、こうなったら。

 

「じゃあ最後の願いは『スキルを防ぐスキル』が欲しい」

「それはどういう?」

「無許可で干渉してくるスキルを完璧に無効化できるスキルだ。こっそり記憶を読まれたりしない様にな」

「ふーん……」

 

 下手すりゃスタンドを奪ったり、問答無用で消したりできるスキルもあるだろうし。本当に理不尽な世界だな、あそこ。

 

「わかった、その願いも叶えよう。制限は……特になし。スタンドとスキルは転生後に使える様にするよ。これならちょっとやそっとじゃ死なないだろうし、向こうでも頑張ってね」

「ああ、ありがとう」

 

 激励を受けて感謝を告げると、何故だかだんだんと眠気が襲って来た。どうやら早速転生するらしい。

 ひどい目にはあったが、次の世界でも楽しく生きていこう。まどろみの中で、そう静かな決意を固めた。

 

 

 

 

「0才児からリトライか。心を強く持って生きてね。本当に」

 

……さっそく心が折れそうになった。

 





 スタンドの設定を更に細かくしました。しかも下手すりゃ増えるかも……
 フー・ファイターズまじ面倒!

(注)考えてみたらあまりに不便なので、エニグマについて付け足しました。
 ご都合主義ばっかりでごめんネっ☆


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