うちは一族として生き残る!   作:黒百合

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忍者学校編
チャクラを練ってみる


「ダメだ。まるで取っ掛かりがつかめない。」

 

そんな嘆きを込めてうなだれる幼女が居た。

彼―――いや、彼女の名はうちはヒビキ。

前世では日本人で、死んだらうちはとして生まれた一般人である。

色々ツッコムところはまだあるにせよ、彼女はとりあえずの目標を決めた。

 

もちろん、修行である。

このままではうちは一族はサスケを除いて殺される。

なればこそ、生き残るために修行が必要だ。

とはいえ、ついこの前に4歳になったばかりの幼女が修行したいなどと言えるはずも無く、新しいこの世界の両親に散歩と言って、演習場にきている。

 

そしてここで日課の写輪眼の開眼訓練を行っていた。

ところがどっこいもちろん現実と言うのはそんなに甘くない。

写輪眼の開眼は早くても12歳前後。遅くとも成人する前には開眼するもので、4歳の、それもチャクラがどんなものかすら分からないような幼女が開眼出来るほど甘くは無いのである。

 

ヒビキがやった訓練と言えば、単にじっと物を見るということだけ。

これではさすがに無理と言うものであろう。

 

「くそぅ・・・サスケはこれで写輪眼を開眼したはずなんだけどなぁ・・・やっぱり窮地に追い込まれないとダメなのだろうか?」

 

彼が言っているのは抜け忍、白とサスケの戦いのことだ。

この際、サスケは白の氷遁のスピードを見切るために開眼した。

自分も何かを見切ろうと思えば開眼できる・・・と思い、空を飛ぶ鳥やトンボなどの昆虫の後をじっと追ったり、羽の動きを見切ろうとして一週間ほど見つめていたのだが、開眼の気配はまるで無かった。

 

サスケが開眼したのは窮地に追い込まれていたこともあって、そちらも条件に含まれるのかもしれないと考え直すヒビキ。

実際、カカシの親友、オビトは見えない敵に追い詰められた際に開眼している。

 

見ようという強い意志。

そして生存本能が開眼の鍵を握ると思われた。

 

だがしかし。

 

「窮地ってどんなよ?ていうか普通に嫌だし。」

 

窮地。

命の危険が迫るような窮地に望んでツッコミたいとは思わないし、そもそも痛いのは誰だって嫌である。

出来れば地力でどうにかしたい。

手裏剣や体術の前に写輪眼を開眼しようとしたのだって、写輪眼を開眼したものはどんな動きも見切り、模倣が可能だと言うから最初に開眼して模倣と習得(コピペ)してしまえばそんなに頑張らなくてもあっという間に強く―――という楽したい思いから来ていたのだから。

 

何よりも効率が良い。

ヒビキはいまだ知らぬことであるが、彼女は普通に天才だ。

普通の忍に比べてうちはは天才と呼ばれるが、その中でも特に天才と呼ばれる類の人種である。

これは嬉しい誤算であった。

が、しかし、それでもうちはの鬼才。

イタチには適わない。

彼は鬼才である。

無駄を省いて効率よく修行。

そして娯楽にわき目も振らずに修行、修行、修行でようやくイタチを確実に殺せる実力をもてるのである。

もちろん彼女としてはイタチの悲劇は知っている。

が、しかし新たな両親。

何よりも自身の命のためにはイタチを倒す、殺す、退ける、逃げ切る。

この四つのどれかの目標を講じるしかないのだ。

さらにイタチと一緒にやってくるうちはマダラの脅威もある。

 

効率を突き詰めてひたすら修行をしてもどうなるかはまだまだ不安要素が残るところである。

 

 

ともすれば、今から躓いていてはどの道、死の未来しかない。窮地に飛び込んででも開眼を急がねばならないのだがやはりそこは―――この世界に来てまだ日の浅い日本人。

 

 

「とりあえずチャクラの扱いだけは覚えないとだめかな・・・よし、明日聞こうか。父さんは・・・任務でいないから母さんあたりに。」

 

甘い部分は出て当然と言えよう。

 

☆ ☆ ☆

 

「ふむむむむ。」

「そうそう。しっかり出来てるわ。」

 

うちはヒビキの母親。

うちはミコト監督の下、チャクラを練る修行をするヒビキ。

その顔は真剣そのもの。

 

「・・・すごいのね。

この歳でこのチャクラとは。」

 

そしてミコトの隣にいるのはイタチ、サスケの母親である。

彼女は目を見開いて驚いていた。

ヒビキのチャクラ量に。

しかしこれは別に凄いことではない。

 

チャクラは精神と肉体。

この二つのエネルギーから作られる。

ヒビキの場合、日本で学生の身分とは違って色々なストレスに耐えなければならない社会人を二年とはいえどもやっていた上、この世界に来てさらに4年ほどを過ごしている。

そんな彼女は精神エネルギーが同年代の子供に比べて桁違いに多い。

肉体は歳相応だが、肉体エネルギーは細胞一つ一つから掻き集める力。

当然だが細胞一つに含まれるエネルギーには個人差があり、これが個人個人のチャクラ量の変化に大きく影響する。

もともとチャクラ量に恵まれたうちは一族であるからして、この細胞エネルギーは例え体が小さい幼女と言えどもバカには出来ない。

 

すなわち本来であるならば例え肉体エネルギーに恵まれたうちは一族と言えども精神エネルギーが足りず、あまり多量のチャクラは練れないとされる。

が、ヒビキは中身が社会の荒波に多少なりとも揉まれた成人男性ゆえにこそチャクラを同年代の子に比べて練りこむことが出来るのである。

 

今でこそ驚きの対象であるが、年齢が上がるに連れ差はそこまでのものではなくなっていくだろう。

そもそも、女性はチャクラ量が男に比べて少ないとされる。

将来的にはむしろ多少の見劣りすらする可能性が高い。

 

「凄いわね・・・チャクラコントロールも良い。」

「でしょでしょ?」

 

イタチの母に自慢げに答えるミコト。

ちなみに彼女の見た目は女子高生と言った感じの肩くらいの黒髪で切りそろえられた快活少女といった感じである。

どこから見ても一児の母には見えなかったりする。

 

チャクラコントロールもまた女性の方が良いとされてる。

これは量の多い傾向にある男性に比べて女性の方が少なく扱い易いからだ。

さらに子供の時は一度に練り上げられるチャクラの量もそれほどではない。

ゆえにこそのコントロールのよさ。

もちろんヒビキの才能も多分に入っているけれども。

 

「・・・これで大丈夫?」

「きゃーっ!可愛い!!大丈夫よ!!ヒビキ!!」

「・・・親ばか過ぎないかしら?」

 

小首を傾げて不安げにたずねるヒビキ。確かに見た目だけなら可愛いと言っても良い。

そして、それに抱きつく女子中学生に見えないことも無い童顔の母。

傍目から見れば歳の離れた姉妹に見えないことも無かった。

ヒビキとしては子供っぽい仕草を意識してやっているだけである。

口数が少ないのは中身がばれないようにとのこと。

 

ヒビキの容姿は目つきが若干鋭く、耳を覆うくらいの黒髪。そして言わずもがな整っているので将来的にはクールビューティーになるだろう。

鋭いのは父親であるうちはギタンの遺伝だ。

彼も親ばかだったりする。

 

「っと、それはそうとアンタ、子供産んだんだって?」

 

満足したのか、ミコトはヒビキを存分に頬擦りした後にイタチの母に向き直る。

 

「ええ、イタチって言うの。」

「・・・っ!?」

 

思わず無口キャラを演じてるのに変な声が出そうになったヒビキ。

いや、演じてるというほどでもないが。

 

「・・・早すぎる・・・死亡フラグが・・・」

「ん?何か言った?」

「な、なんでもないよ。」

 

つい口に出た言葉を慌てて誤魔化す。

これは困った。

こんなに早いとは。

 

ヒビキは冷や汗ダラダラである。

いっそのこと殺してしまおうか?とも思ったがそれは論外だ。

そうすると色々な問題が発生してしまう。

まず産まれたばかりの子供を殺す。

日本の感覚が抜けてないヒビキには土台無理な話だし、仮に可能だったとしても殺した後で母親、父親に殺される。だけならばまだしも、母親にまで迷惑がかかる。

 

わずか4歳で人を殺す忌み子の親と言うことで。

いや、これはまだ良い方だろう。

下手をすればミコトが子供に命じて殺させたという疑いもかけられる。

むしろそれが自然だ。

そうなれば少なくとも拷問、尋問コース行き。

そんなのはもちろんのこと嫌である。

 

親バカな彼女のこと。

最悪なのはそのままヒビキをつれて抜け忍になってしまうかもしれない。

もう色々と最悪な将来への道(ロード)へまっしぐら。

 

うん。無理。

 

そう結論付けたヒビキである。

 

 

 


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