模型戦士GPフレンズ ちょっと変わった、僕らのトモダチ   作:来迎 秋良

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お久しぶりです、秋良です!
ほんっと長い間インターバル開いちゃったよ……
継続して読んでくれてる方は申し訳ありません!

さて、今回は以前登場したバンディッツの少年との話。
それとまた新たな相手の登場です。


06 処刑人

「うーし、完全復活だァ! もういいぜ、サイ」

「マスター……すまない、私が弱いばかりに負けてしまった」

「いや、俺がお前を適当に作ってたのが悪かったんだ、気にすんな。

 それより、今回の調子はどうだ?」

以前ツバサに戦いを挑み、結果逆襲された奪人とGサイフォス。

あの戦いに負けた後で、奪人はサイの大幅な改良・改修を始め、

それが今日、ようやく完成したのだった。

 

改修後のサイは素組みではなくちゃんとパーツの接着とシール部分の塗装が

なされており、さらに両肩をダークハウンドのパーツに取替えることで

ショルダー部のバインダーとフックの使用を可能にするなど、出力の向上と

トリッキーな機動・操作を可能にするものだった。

 

「最高だ、マスター。体が思うとおりに動く。これなら彼女にも引けは取らない」

「あいつら、か」

呟くと奪人はその『あいつら』、睦月とツバサの事を思い出しムッとする。

 

「なあ、そろそろあいつらにリベンジに行くか? 面白そうじゃねーか」

「それもそうだが、そろそろ連絡の時間だろう」

「そうだったか。んじゃ繋いでくれ」

その声を受けてサイは頷き、ノートパソコンのような端末を操作する。

するとその画面にはバンディッツのマークが表示された。

 

[次皿、お前について面白い報告が入っている。

 バトルで負け、パーツを奪還されたそうだな]

「ああ。だが、今度は負けやしねーよ。ガッチリ改修したしな」

自信満々に言う次皿だが、返ってきたのは嘲笑だった。

 

「ハッ……何を言うかと思えば。負けた貴様にはもう用はない。

 役立たずには、消えてもらわねばな!」

通信越しだったはずの声が肉声で聞こえ、次皿とサイは飛び退る。

その瞬間、彼らが通信に使っていた端末がビームで打ち抜かれ派手に壊れる。

そして、二人の目の前の空間がゆらめいたと思うと、

何もなかったところから突如GAT-X207『ブリッツガンダム』が現れたのだった。

 

「テメェ……ブリッツか!」

「ミラージュコロイドとは厄介な相手だな」

語気を荒くする次皿と違い、冷静にマスターである次皿を庇うサイ。

そんな彼らに対し、ブリッツは外見どおり機械的に話しかける。

 

「フン、フルスペックも出さずにこの私に勝てるものか。

 キサマのようなハンパなヒューマンモードは好かんのだがな」

明らかに見下しているブリッツの口調だが、サイは鼻で笑う。

 

「生憎と、私は相当の捻くれ者なのでね。

 それに、お前のような破壊マシーン扱いされるのは好きではないからな」

サイからの皮肉に、余裕ぶっていた態度を崩し戦闘態勢に入るブリッツ。

が、ちょうどその時ブリッツの眼前を、回転するビームが通り過ぎる。

 

「お前、誰だ! 次皿に何をする気だよ!」

「睦月さんのご友人に、手出しはさせません!」

ビーム……ハイパードッズライフルを発射したのはツバサ。

ツバサと睦月は、次皿の様子を見にふたたび廃墟へ来ていたのだった。

 

そこで臨戦態勢になっているサイとブリッツを見て、

速攻で介入したのである。

「次皿、大丈夫!?」

「お、おぅ……ってお前何しに来た!」

「そんな話は後です! 来ます!」

 

 

僕は次皿を引っ張って物陰へ移動、ツバサはサイの隣に立ちマスター二人を守る。

「君とは共に戦ってみたいと思っていたが、まさかこうも早くに実現するとはね」

「私もビックリです。それで、あの機体は?」

ツバサの質問にサイは目線も動かさないで返す。

 

「アレはバンディッツ内部で役立たずと判断された者に口封じをする

 いわば『処刑人』だ。甘く見ていると怪我では済まないぞ」

その言葉を言っている間にもブリッツはビームライフルで攻撃してくる。

ビームは二人がかわした足元に着弾して土煙を巻き起こして、

それが晴れた頃にはブリッツの姿は消えていた。

 

「逃げた、のか?」

「いや、違う! アイツは『ミラージュコロイド』っつー装備で姿を消せるんだ!

 今も近くのどこかで透明になって隠れてるハズだぜ!」

その言葉通り、ツバサの近くにある柱の影からランサーダート……槍が

三本連続で飛んできてツバサはあわててシールドで防御する。

しかしその槍は想像以上に鋭く、連続で攻撃を受け止めたシールドは砕けてしまった。

 

「シールドが!?」

「落ち着けお嬢さん、不意打ちをシールドで受け止められるなら大したものだ」

こんな状況でもわりと余裕ぶっているサイ。

そして彼は周囲を見渡すと、いきなりスネークソードで横薙ぎに近くの柱を切る。

するとその柱の後ろからスラスターの噴射炎が見えた。

 

「バカな、私の位置が判るだと!?」

「当然だろう? 私はビシディアンの機体だ。『見えざる傘』にすら対応できる

 私の特殊センサーを舐めないでもらおう。

 それに、ミラージュコロイドでは音や熱反応は消えないからね」

サイはその言葉通りそれなりに的確にブリッツを攻撃する。

 

「ツバサ、キミも熱反応を見るんだ! キミにもセンサー強化はしているから!」

「はい、睦月さん!」

僕が改造したツバサのヘッドパーツは、ビギニングの頭部をベースにバイザーと

後頭部パーツを斜めに延ばしアンテナとして追加している。

そのため、特殊な能力として索敵能力などがあがってしているのだった。

ツバサが高機能センサーを起動すると、彼女がかけているゴーグルにデータが

表示され、熱源の位置や粒子の流れが表示される。

 

「私にも、確かに見えます。……そこっ!」

ツバサは銃身をガトリングに換装したブレードボウでその空間をなぎ払う。

するとビームライフルがいきなり空中に現れ、穴が開いたそれは爆発を起こした。

「睦月さん、あの機体ってフェイズシフト装甲のはずですよね?

 でも、ふつうに実弾のガトリングが効きました。なんででしょうか」

ツバサの言葉に次皿は笑い飛ばす。

 

「当たり前だろ、ブリッツはミラージュコロイドを使ってる間はPS装甲が使えないんだ。

 ま、だからあんなに必死になって俺らの攻撃をかわしまくってたんだけどな。

 処刑人だかなんだか言うからどんなもんかと思ってたが、拍子抜けだなオイ」

「貴様……っ!」

次皿に言われて頭にきたのか、ブリッツはミラージュコロイドを解除して

PS装甲をふたたび展開、サイに向かって突撃してきた。

 

「へっ、安い挑発にカンタンに引っかかりやがって。サイ、組み付いちまえ!」

「力技は主義に反するのだが、この場合は的確だな!」

サイは突っ込んでくるブリッツの腕を受け止め、がっぷり四つに組み合う。

しかし、そのうちサイの顔には苦しそうな表情が浮かんできた。

 

「な、何だ? 力が、抜ける……いや、エネルギーが、吸われている?」

「エネルギーが? ……まさか!」

驚く次皿。その表情を見て、ブリッツは余裕を取り戻したようだった。

 

「私も挑発にやすやすと乗るだけではないのでな。能ある鷹は爪を隠すものだ。

 見せてあげよう、この私の『爪』をな」

ブリッツが言うと、彼の背中に大きな装備が現れる。

それは爪というより、大型のウイングのような装備だった。

「マガノイクタチだと!? やっぱお前、ノーマルのブリッツじゃねェのか!」

「そう。私はノーマルのブリッツに非ず。ネブラブリッツに近づける

 コンセプトで改造された『(アマツ)ブリッツ』だ!」

誇らしげに語る天ブリッツ。そうこうしている間にも、サイのエネルギーは奪われている。

 

「く、ダメだ……パワーが、無くなる……」

「その人を放しなさい! 天ブリッツ!」

ツバサが攻撃をしかけようとするけど、天ブリッツはぐったりしているサイを

左手でつかみ、こちらに向けて盾にしてきた。

 

「なっ、卑怯な!」

「フン、コイツはどうせ処分するガンプラだからな。だが、貴様が

 こいつを倒したというガンプラか。丁度いい。

 パワーもなかなかのようだからな。貴様のパーツも奪わせてもらうぞ」

そう言って来る彼に対して、僕とツバサはいいかげんカチンと来た。

 

「ツバサ、あの装備を使って。サイは傷つけないようにね」

「判りました、睦月さん。サイさん対策のあの装備ですね!」

ツバサはそう言うと両手を大きく横に広げ、腰リアアーマーを展開解除する。

そしてそこには長いパーツにifsユニットが複数装備された物がつながり、

ケルディムのGNドライヴのような形状のテールバインダーとして装備された。

 

+(プラス)ユニット『ifsドライヴ』装着完了です。サイさん、今助けます!」

ツバサが言うと、バインダーからifsユニットが飛んで行き、

二基がサイをビームの膜で包み込むと一基が天ブリッツの手に突撃し、

手を離したところでツバサが突撃してサイから天ブリッツを引き離した。

 

「お嬢さん、私の剣を使いたまえ。威力と強度は折り紙つきだ」

サイはそう言ってスネークソードを投げ渡してくる。

それを受け取ったツバサは鞭のような状態にしつつ天ブリッツにまきつけ、

天ブリッツの動きを封じ、ハイパードッズライフルを構えた。

 

「そろそろ決めます。ifsユニット、バレルモード」

彼女の声とともにマウントされていたifsユニットがライフルの銃口前に集まり

ビギニング30の強化射撃のように、銃身を作るように回転し始める。

 

「ハイパードッズライフル・ブラスター……発射ぁぁぁァァッ!」

ドッズライフルから発射されたビームは、ifsユニットにより回転を加速。

さらにより細く集中され貫通力・威力をさらに増す。

とっさにスネークソードを振りほどきトリケロスで受け止めた天ブリッツだが

トリケロスを貫通され片腕を吹き飛ばされ、片足も傷つくという大ダメージを

受けていた。

 

「く……っ、まさか、敵対していたお前らが協力するとは、想定外だ。

 次皿、今は生かしておいてやる。いずれ会った時が貴様の最後だ!」

それだけ言うと天ブリッツは地面を思い切り殴りつけ土ぼこりを巻き上げる。

そしてその土煙が晴れた後には、天ブリッツの姿はどこにも見えなくなっていた。

 

「ベッタベタな三下の捨て台詞だなおい」

次皿はそう言い笑って、ツバサとサイは周りをスキャンする。

 

「熱源反応はありません。動いてもないみたいです」

「それどころかミラージュコロイドの反応もないな。

 つまり、もうこの場にはいないということだろう」

その会話を聞いているうちに僕はあることに気づく。

 

「そういえば、今日はバトルマスターとかバンディッツマスターが来なかったね」

僕の疑問に答えたのは、意外にも次皿だった。

 

「ウチの組織はバトルマスターの干渉をある程度制御できるらしいぜ。

 だがどういう仕組みかは知らねェけどな。

 あー、あと何だ。その……助かった。サイも無事に済んだし、ありがとな」

そっぽを向いて言って来る次皿に、僕とツバサは顔を見合わせて小さく笑う。

 

「あははっ、仲良くなれたみたいでよかったですね、睦月さん」

「そうだね、ツバサ。次皿、キミはこれからどうするの?

 ここもボロボロになっちゃったし」

そう言って見渡した廃墟の中は弾痕だらけなうえに埃まみれ、柱も折れて

今にも崩れそうな有様になっていた。

 

「あ゛~……だなぁ。つっても、行くあてもねーしまた別んトコ探すぜ。

 あと、だな! 今日は助けられたが今度あったときは負けねえぜ!」

「無論、私もそのつもりだ。次皿、私も忘れないでくれよ?」

サイも次皿に同意し、次皿は大きなバックパックをかついで歩き出す。

 

「次皿、家には帰らないの?」

「今帰っても、また襲われるだけだろ。ウチには俺の大事なモンもあるしな。

 巻き込めねェだろ、いろいろと。じゃな、お前も気をつけろよ。

 俺のせいっちゃ俺のせいだが、目ェつけられたと思うしな。

 ……行くぜ、サイ」

「判った、マスター。神田睦月、それにツバサと言ったね、キミたちの無事を

 祈っているよ。では、また会おう。その時は負けんがね」

次皿とサイの二人はそれだけ言うと、どこかへ歩き去っていったのだった。

 

 

「バンディッツの力に、処刑人か……意外に大きな組織みたいだ。

 ツバサ、これからは僕たちももうすこし気をつけたほうがいいかも知れないね」

「そう、ですね……でも、私たちならきっと大丈夫ですよ。

 私、睦月さんと一緒なら絶対に負けません!」

悩んでいる僕に、ツバサは笑いかけてきてくれる。

彼女の力強い笑顔に、僕も心配するのはやめることにした。

 

「そうだね、ツバサ。僕は君を信じてる。僕とツバサなら絶対に負けないよ。

 でも、とりあえず今日は休もうか。あんな相手と戦って疲れたと思うし。

 帰るよツバサ。そろそろ夕ご飯の時間になっちゃう」

「はい、睦月さん!」

そうして僕と睦月は家に帰るのだった。

 

続く。




「睦月と」「ツバサの!」
「「Gペディア!!」」

 睦月「面白かったよねえ、ビルドファイターズ!」
ツバサ「はい! でも、私(AGE-2)は出られないので残念です……」
 睦月「AGEは放送局が違うからねー……OOはちょうど出れたけれど。
    最後のアメイジングエクシアリペアには感動したよ。
    10月ごろから二期も始まるみたいだし、さらに楽しみだよ。
    テスト終わったらアメイジングエクシアを買いに行こうって
    作者さんは意気込んでるらしいよ(いまさらだけどね)」

 睦月「さて、今回のGペディアは『修復とエネルギー』についてです」
ツバサ「私たちは人間の姿とはいえバトルするガンプラである以上、
    ダメージを受けるときはいっぱいあります。
    その時の傷を癒す手段はいくつかあるんです」

 睦月「一つは自己修復。人間より頑丈な身体を持つツバサたちGPヒューマンは
    けっこう大きい怪我でも時間がたてば治癒するようになってます」
ツバサ「でも、治すには治癒に専念しなきゃいけないし時間もすごくかかります。
    それに、大きな損傷だと治らずに後遺症が残ることもあるんです……
 睦月「それが以前出てきた、ボロボロのザクⅡだね……。
    さて、二つ目は『ガンプラ状態に戻って修理してもらう』です」
ツバサ「ガンプラ状態に戻ると自分で動けなくなる代わりに感覚も消えます。
    その間に傷ついた部分を修理してもらうと直るんです。
    私はパーツを奪われてガンプラに戻ったとき、代わりのパーツで
    修理してもらって復活しました。これも修理の一種ですね」
 睦月「あの時は焦ったよ……でも、これも限界があります。
    大きなダメージを受けると元のパーツ自体がボロボロに
    破損してしまって、修復不可能になることがあるんです。
    大出力ビームに巻き込まれて消滅したりすると残骸すら残らないから
    修理もできずに死んでしまうことになるんですよね……」

 睦月「そんなこともあるから、
    僕はツバサにはあんまり戦ってほしくないんだけどね」
ツバサ「本能みたいなものですから、私は他のガンプラとバトルしたいんですよ。
    ビルドファイターズのガンプラバトルだって壊れちゃうでしょう?」
 睦月「そういう問題じゃないんだってば……まあ、ツバサがバトルしたいなら
    僕はそれを全力でサポートするけどね」

 睦月「それじゃ、今回もそろそろ終わりにします」
ツバサ「はい! では、また次回お会いしましょう!」

 睦月「……次の更新は来年かな」
ツバサ「そういう不吉なこと言わないでください!」

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