模型戦士GPフレンズ ちょっと変わった、僕らのトモダチ   作:来迎 秋良

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今回新キャラ数名と新たな組織名が登場します。
また、キャラクターに元のイメージを書いてみることにします。
伝わればいいのですが……。

それと、最後にちょっとしたコーナーを用意してあります。
今回もお楽しみいただけると嬉しいです。


02 バンディッツ

AGE-2が人間のようになり、ザクと戦った翌日。

睦月は早くから起きると部屋のパソコンを起動し、

インターネットに接続して調べごとをし始めた。

 

「へぇ……ガンダムのモビルスーツってこんなにあるのか。

 戦車なんかと同じで仕様変更があったりマイナーチェンジ、なんかが

 多くある機体もあるんだな……この間のザクは、っと……」

僕が調べていたのはガンダムのモビルスーツの事。

この間のバトルで他のガンプラと戦わなければいけないと思った彼は

せめてMSのスペックを調べておこうと思ったから。

でも、元々メカ好きの僕はその設定にどんどん引き込まれていく。

 

「『MS-06 ザクⅡ』。ジオニック社が開発した初の戦闘用MS『ザクⅠ』の

 後継機、か。AGE-2が戦ったのは、脚のミサイルポッドからJ型かな」

ついでにその横のウィンドウではガンダムAGEの本編を流して、

戦闘シーンを飛び飛びで流してAGE-2の動きなんかを研究。

そうやって四時間が経ち午前九時。ベッドからAGE-2が起き上がってきた。

その姿は昨日バトルした時の装甲のようなアーマーを着ているのではなく、

青いベストを白くてフワリと袖が広がったシャツの上に羽織り、

前が白、後ろになるにつれて青く長くなる独特なスカートを着た状態、

『ヒューマンモード』の状態で(ちなみに僕は床に布団を敷いて寝ていた)。

 

「ふぁ……おはようございます、マスター」

「あ、起きた? おはよう、AGE-2」

「はい。 ……マスター、何を調べていたんですか?」

「ちょっと他のモビルスーツについて、ね。 また戦うこともあると思うし、

 そのときのためにちょっとでも、AGE-2が戦いやすい装備を作らないと」

僕の台詞にAGE-2は頭を下げてくる。

 

「ありがとうございます、マスター。私、頑張ります!」

目を輝かせる彼女の頭を撫でてやり、僕は立ち上がる。

 

「僕が朝ご飯作ってくるよ。AGE-2はもうちょっと寝てて」

「わっ、私がやります! マスターにそんな手間を……っ」

慌てて立ち上がろうとする彼女だけれど、ふらりとふらつく。

そんな彼女を僕は慌てて支え、ベッドに座らせた。

 

「いいって。昨日いきなりの初戦闘であれだけ動いて疲れたでしょ?

 今日はゆっくり休みなよ。君は僕の娘みたいなもんなんだからさ」

僕は彼女を無理になだめ台所へ移動。そのままやかんを出しお湯を沸かす。

 

(とりあえず飲みやすいカップスープと、食べやすいクロワッサンでいいかな。

 お湯を沸かして、パンはオーブンでちょっと焼いて……)

彼が台所で鼻歌交じりに料理をしていると、後ろから何かが倒れるような音。

そちらを見ると、AGE-2が倒れこんでいた。

 

「だから寝ててって言ったのに。AGE-2、大丈夫?」

「すみません、マスター。やっぱり、ご迷惑を……」

「いいさ。座ってれば大丈夫?」

頷く彼女を手助けし椅子に座らせ、焼きあがってから少し冷ましたクロワッサンと

少しぬるめに沸かしたお湯で作ったコーンスープと一緒に彼女の前に置く。

そして僕も彼女の向かいに座り、自分の分を前に手を合わせる。

 

「それじゃ、いただきます。ほら、AGE-2も食べなよ」

「は、はい。それじゃあ、いただきます……はむっ」

クロワッサンを両手で持って一口、ついばむように食べるAGE-2。

 

「……あ、美味しいです」

「あ、よかった。今日はつい調べごとに熱中しちゃってこんな物しか用意

 できなかったけど。AGE-2がパンとか嫌いじゃなくて良かったよ」

僕はちょっとずつパンを食べていく彼女を見ながらスープを飲む。

それを見た彼女もコップを両手で包み込むようにしてスープを一口。

 

「こっちも美味しいです。それに、暖かい……」

コクン、コクンとこちらも一口づつ飲んでいく。

 

「はぅ~っ……。落ち着きましたぁ~っ」

「それはよかった。もう少し要るかい?」

「い、いえ! もう大丈夫ですっ!」

慌てふためく彼女を見て思わず笑う僕。と、その時彼女がふと窓を睨む。

 

「どうしたの、AGE-2?」

「マスター、この近くにGPヒューマンが居ます。

 恐らく、私達を襲う気でしょう。至急、戦いの用意を願います」

その台詞に僕は気を引き締めAGE-2のほうを見る。

 

「僕は準備できてる。キミは?」

「勿論……いつでも、大丈夫です」

彼女はその場で光に包まれ、武装状態『バトルモード』へと変化するが、

少しふらついてしまっていて、僕にもやせ我慢だと理解はできた。

しかしバトルモードになったことによって装甲を纏った姿になり、

自身が倒したザクのマシンガンを構える。

 

(この武器、正直倒した私が使って良いものか判りませんけれど……)

「ワン・ツー・スリーで僕がドアを開ける。 その時にザクのマシンガンを撃って

 その弾幕に乗じて飛び出せ!」

「了解です!」

「ワン、ツー、スリーッ!」

ドアを蹴り飛ばし開け放つ睦月。そして飛び出し物を壊さないように、

空に向けマシンガンを連射。直後に遮蔽物に身を隠す。

 

彼女が身を隠した時上空からなにやら物々しいMSが降りてくる。

 

「あれは……ビシディアンのMS『Gサイフォス』?

 ということは、彼が今回の相手か!」

「そのようですね……っ、後ろから人が!」

「なんか海賊みたいなバンダナしてるな……あれがマスターかな」

僕は言いつつ家から顔を出す。AGE-2にとめられたが、僕は相手に声を掛ける。

 

「いきなりなんなんですか! バトルならまず話してから……」

「うるせェ! オマエ、この間のオレのエモノのザク、横取りしやがっただろ!

 その分、テメェのガンプラパーツ寄越しやがれ! ローグ!」

「了解した。バンディッツフラッグ・発振!」

シャルドールローグは右腕のドッズバスターHを上に向け、ビームを発射。

すると家の上空でドクロのような形状にビームが広がり、

それを目印にしたのか黒いMSが飛んでくる。

 

「バトルマスター……いや、違う?」

そのMSはビギニングがベースのようだが、頭部はザクのようなモノアイ。

さらに真っ黒なマントを羽織っており、この間の機体とは明らかに違った。

 

「我は、バンディッツマスターである! バンディッツフィールド、展開!」

その声と共に、この間バトルマスターが展開したフィールドが黒くなったような

物を周囲に展開、その中に僕とAGE-2、相手の二人(?)は閉じ込められた。

 

「やっぱバトルですか……」

「ひゃひゃ、ただのバトルじゃねーぜ? 負けたら強制的にパーツを奪われる

 『バンディッツバトル』の始まりだぜ! ヤっちまえ、サイ!」

「悪いが、マスターのためだ。お前を倒させてもらうぞ。アァァァクション!」

サイと呼ばれたGサイフォスはドッズバスターHを構え、射撃を仕掛けてくる。

AGE-2は辛くもその射撃をシールドで受け止めるが、シールドの半分が消し飛ぶ。

 

「っ……!」

「AGE-2! さすがに、いきなりこれは……っ!」

(調べたデータによれば相手の装備は普通のはずだけど、それでも同程度の

 性能はある。それで戦闘経験が少ない僕らだと、かなり不利なはず……)

 

睦月が考えている間にAGE-2は押され、高出力ヒートソードを喰らってしまう。

AGE-2は反射的にシールドで受け止めようとするが、彼女はすでにシールドが

無くなっていたことを忘れていた。さらに回避動作をしようとするも、

先日の戦闘で弱っていたためにふらつき回避に失敗する。

 

「しまっ……!?」

「AGE-2!!」

二振りのヒートソードで両腕を斬りおとされるAGE-2。彼女はガンプラ状態に戻り。

申し訳なさそうに視線を伏せるサイフォスに対し、相手の男はけらけらと笑う。

 

「ひゃひゃ、高性能なAGE-2のパーツをこうも簡単に貰えるたぁなあ!」

その声に合わせるように地面におちているAGE-2の両腕が男の手元へ飛んでいく。

さらにダブルバレットの腕部パーツも召喚され同様に飛んでいき、

男の手元に納まった。

 

「なっ……返せ!」

「へへっ、嫌だね。 コレがバンディッツバトルの鉄則『負けりゃ奪われる』だ!

 このパーツはオレのモンだぜ。悔しかったら、また次のバトルでこのオレ、

 『次皿 奪人(つぐさら だつと)に勝ちな! 行くぜ、サイ!」

「すまないな、少年。 だが、私もマスターへの恩義があるのでね」

それだけ言うと男……次皿は板のような飛行機を取り出し、

サイと呼ばれたGPヒューマンと一緒にその上に乗る。

そしてどこかへと飛び去って行った。

 

 

「くそっ……AGE-2の腕部パーツを持っていかれるなんてっ!

 なんとか、なんとか直さないと。でも、パーツなんて持ってないしな……」

睦月は悩みこむ。と、丁度その時家のチャイムが鳴り数人が入ってくる。

 

「戻ったぞ、睦月。元気にしてたか? はっはっは!」

「よう、睦月。留守の間何があったか?」

「睦月兄ぃ、アタシが帰ってきてやったぞーっ!」

睦月の部屋に入ってきたのは睦月の家族。

母親の四季(しき)と父親の(こよみ)、そして妹の卯月(うづき)だった。

 

「父さん、母さん、卯月……」

「ん? どうした、睦月。ん、その手に持ってるのはガンプラじゃないか?

 でも腕が無いんだな。一体どうした?」

父親に声をかけられ、睦月は思わず父親の腕を掴む。

 

「お、お? どうした睦月?」

「父さん! あのっ、相談があるんだ!」

 

 

「そうか、そんな事があったのか……」

僕から告白された内容を聞き眉をひそめる暦父さん。その顔には深刻さはあれど、

僕に言われたことが嘘でないかと疑ってはいないらしかった。

 

「父さんは信じるの? 僕が言うのもなんだけど相当嘘っぽい話だよ?」

「じゃあ、お前は嘘を言ってるのか?」

「そうじゃないけどさ」

言葉をなくす僕に父さんは笑いかける。

 

「それじゃ、そのAGE-2に新しいパーツを提供すればいいんだな?

 それじゃあ、この箱の中から好きなパーツを選ぶといい」

言いつつ父さんが出してきたのは大きな箱。その中を見ると大量のガンプラの

ジャンクパーツがあり、その中のあるパーツを僕は手に取った。

 

「この腕、バトルマスターのに似てる……」

「ソレか? それは確かビギニング30ガンダムの腕だな。

 ……丁度接続軸もそのままだし、使ってみるか?」

「そうする。 あとはパーツもこうして、ああして……」

「あ、手首はこれに変えたほうが良いぞ。 好きな形に変えられるからな」

父さんの指南に従い僕は改造を加えていく。

 

 

まずはビギニング30の肩パーツの左右を取り替える。これにより青のパーツが

前に来て、色の整合性が取れる。手首パーツは自由に動く『極め手』へ交換。

さらに前腕部の赤い三角のパーツとその基部を外し、手首の可動を上げる。

次にジャンクから掘り起こしたフォーエバーガンダムのファンネル部分を二つ、

ジョイントごと両肩に移植。これでショルダービームキャノンとなる。

それと頭部をAGE-2からビギニングに交換し、ツインアイ部分にバイザーを付け、

また耳部分の後ろの小さなパーツの色を水色に変更しアクセントをつける。

脚部はダブルバレットの物を使用し、カーフミサイルを使えるようにする。

 

さらに防御のため左腕にビギニング30のビームシールド基部を装備。

武器はこれもジャンクから掘り起こしたコトブキヤのダブルブレードの柄と

パイルバンカーから杭のパーツを取り除いた物の上部を接着剤でくっつける。

しっかり接着剤を乾かし、先端部の穴にガトリングガンをパイルバンカー先端の

杭があった穴に取り付け、新たな武装『ブレードボウ』が完成した。

 

 

「……と、まあこんな物だな。 お前もちゃんとスミ入れなどはしていたし、

 これで組み合わせれば問題は無いだろう。色もなかなかあってるしな」

暦の台詞に頷き、AGE-2に先ほど作った腕パーツ『ビギニングウェア』を装備。

そして睦月はAGE-2に呼びかける。

 

「AGE-2、聞こえる? ……起きてよ」

その声に応え、AGE-2が光を放ち、睦月と暦は思わず顔を覆う。

光が収まり二人が顔を覆っていた手を外すと、そこにはバトルモードのAGE-2が。

しかし服の腕部分がガントレットを付けたようになっており、

また顔にはバイザーを、頭には某ボーカロイドのつけているような形で

後ろにブレードアンテナのようなパーツが伸びた水色のヘッドホンをかけていた。

 

「あ……おはようございます、マスターとマスターのお父様」

「良かったな、睦月。 お前の努力が実を結んだわけだ」

「う、ん。 よか、った……」

張り詰めていた緊張の糸が切れ、ぱたりと倒れる睦月。

AGE-2は慌てて睦月に駆け寄り彼に呼びかける。

 

「マスター? 起きてください、マスターッ!」

「大丈夫だ。 睦月は君をずっと心配していたようだからね。

 根を詰めすぎて疲れたんだろう。 寝かせてあげてくれ」

暦の言葉にAGE-2は頷き睦月を抱き上げる。

その腕力に驚く暦に一礼し、睦月を自室へと連れて行き、ベッドに寝かせる。

 

 

「うあぁ……ねむ~……」

「マスター! 目が覚めたんですね!」

ベッドで目覚め声を上げる睦僕に抱きついてくるAGE-2。

 

「うわっ、と。 AGE-2、僕はいいけど、君は大丈夫?」

「はい、調子はいいです。ですけど、負けてしまった私は、もう……」

「そういうことを言わないように」

落ち込むAGE-2を今度は僕が抱きしめる。

 

「君はもう僕の大事な友達なんだから、一人で無茶はしないでよ。

 アイツとの戦闘のとき、ふらついてたのくらい気付いてるんだからね」

僕の言葉で一瞬驚き、苦笑するAGE-2。

 

「ばれちゃってましたか……。私、もっとマスターの役に立ちたいんです。

 そのために、ここで寝ているわけにはいかなくって……」

「バカっ!」

今度は僕が彼女を抱きしめた。

また驚く彼女にただ、自分の心を吐き出す。

 

「無茶して、ボロボロになったら意味ないじゃないか。

 君は僕が丹精込めて作ったガンプラ。それは君しか居ないんだから。

 ……君が大事なんだよ、僕は。無茶しないで。約束だよ」

彼女の眼を見て言う。彼女はきょとんとしていたけれど。

 

僕は本当に怖かった。あの時、彼女がもう起きないんじゃないかと。

たった一日居ただけなのに、僕は彼女の事が無視できなくなっていた。

なんでかは判らないけど、僕にとって彼女が大事なことは純然な事実。

 

「え、っと。マスター。私……その、いいんですか? 負けてしまった私で。

 私、結局あの局面ですぐにミスをしてしまって……」

「そんな事関係ないんだよ。僕は君がいい。それだけさ」

僕の言葉はAGE-2に届いたようで、彼女は顔を輝かせる。

 

「はい……。ありがとうございます、マスター」

「ん、じゃあついでに一つ。僕の事は『睦月』でいいよ。他人行儀だし。

 話し方もそんなに堅苦しくしなくていいからね。君は大事な『家族』だ」

「あの……うん。睦月さん」

「ん、オッケー。それと……そこのドアで聞き耳立ててる人ら、入って来て」

僕の声にドアの外から『ギクリ!』と声が聞こえドアが開く。

そこには四人……父さんと母さん、卯月に加えて麗流まで居た。

 

「ほぅ、やっぱりお前はその子とそういう……」

「睦月、お前も隅に置けんな! はっはっは!」

「あの睦月兄ぃがここまで入れ込むなんて、相当だねぇ」

「良いもの見せてもらったぁ~。あ、録画済だから」

四者四様の反応で、僕らは自分の状況を確認する。

……つまり、まあ、抱き合っているワケで。

それを理解した僕らは顔を真っ赤にして慌ててお互いに背中を向ける。

 

「れ、麗流! いつの間に来てたんだよっ!?」

「というかみなさん、いつから聞いてたんですかっ?」

「睦月の『バカっ!』辺りからか? 言うようになったじゃないか睦月。

 そこまで言うならどこまでもその子を守ってやれよ」

笑いながら言ってくる母さんの言葉で、僕は自分の言った台詞を思い返す。

……うわぁ、告白しちゃったみたいな内容だぁ。

 

「ねえねえ睦月兄ぃ、その子なんて名前なの?」

「え、私はAGE-2ですけど……」

「ダメダメ、そんなの名前じゃなくて認識番号みたいじゃない!」

卯月が言うとおり、確かに無機質だよね……うん、決めた!

 

「それじゃ、AGE-2。これから君は『ツバサ』。この名前、どうかな。

 君が空中を自由自在に飛びながら戦ってるの、綺麗だったから」

「ツバサ……うん。ありがとうございます、睦月さん!

 私はツバサ! 神田ツバサです!」

満面の笑みではしゃぐ彼女を見て、自然に僕ら全員も笑顔になっていた。

父さんや母さんは「娘が一人増えた」なんて話していたし、

卯月は遊び相手が増えるからって喜んでいた。

麗流はというと、こっそりと携帯で動画を撮影していた。

まあ、こんな日常が記録できるからいいけど……後でデータ貰おう。

 

 

「で、だ。睦月、彼女のパーツを奪われた、ってどういう事だ?」

「ん……話せば長いような、短いような」

僕はみんなにバンディッツの事を話した。

一通り話してリベンジをいつでも受ける、という事を話し終えたとき、

母さんはいつの間にか居なくなっていた。

 

「あれ、四季お母さんは?」

「……あっマズい、いつもの『悪い癖』が出るかも」

僕が慌てて立ち上がったときはもう遅かったらしい。

ドアが開き入ってきた母さんの腰には愛用の日本刀『冬雪丸』が帯刀されていて、

その目と背後には炎が燃えているようだった。

 

「で、そいつは今どこに居る?」

「……だと思ったよ。母さん、少し自重してね? 危ないし。

 で、そいつにリベンジしてくる。ツバサに新装備も作ったし、

 しっかり休ませるし。もうツバサに無理はさせないから勝てる」

僕にはかなり自信があった。親バカ(?)になるけど、万全のツバサが

あんな奴が作ったガンプラなんかに負けるわけがないから。

 

「そ、そうか。だが、必要ならいつでも言えよ睦月。

 お前はその子の主人である以前に、私たちの息子なんだからな」

「そーだそーだ、睦月兄ぃはなんでもできるけど、一人でやりすぎだー」

「卯月、生意気な事を。うりうり」

「痛い~、頭ぐりぐりすんな~!」

神田家の皆の優しさにも触れ、ツバサは心から微笑むことが出来たみたいだ。

 

「皆さん……ありがとうございます」

彼女の笑顔に僕らも笑う。そして最初にしたことは、彼女を休ませる事だった。

 

 

「よし、ツバサ。丁度良いから私の剣術の練習に付き合ってくれ。

 久しぶりにまともに相手してくれそうだからな」

母さんがいきなり彼女にそう切り出した。

 

「何言ってるのさ母さん。ツバサは今休んで体力を回復させるって言ったのに」

「はっはっは、そう過激にはしないさ。それに彼女なら大丈夫だ。

 バトルでもしないかぎり、多少の運動をしても体力は回復するだろうからな」

「……やけに詳しいね、母さん」

「そうか? それよりどうだ、ツバサ。受けてくれるか?」

母さんの申し出にツバサは頷き、うちの裏庭に出る。

僕は溜息をついて物置から竹刀を二本持ってきて、母さんとツバサに渡した。

 

 

「じゃあ、とりあえずツバサも人間の状態でやってもらうとして。

 母さん、あんまりやりすぎちゃダメだよ」

「はっはっは、わかってるさ。さぁ、何処からでも来い!」

竹刀を構え高笑う四季に対し、ツバサは少し考え込んでいた。

 

(私は仮にもGPヒューマン。普通の人を相手にしたら……)

そんな事を考えながら、加減しつつも普通の人間なら全力ので竹刀を振るが、

四季は軽々と受け流し逆に切りかかる。

 

「加減するなと言った筈だがな、ツバサ! 今度は全力で来い!」

四季は余裕綽々。ツバサの方は驚いていた。

 

(さっきの一太刀、普通ならあそこまで軽く受けられないのに……凄い)

「それでは、全力で行きます!」

今度は正直に面ではなく身体能力を活かし小手や胴も鋭く狙う。

しかしそれらはことごとく流され、逆に竹刀を上に弾き上げられる。

 

「しまった!」

「甘いっ! めェェェェェんっ!」

その隙を突いて竹刀がツバサの頭に直撃、ツバサは地面に倒れ伏す。

 

「ツバサっ! 母さん、だからやりすぎるなって言ったのに!」

「すまんすまん、久々にこういう相手とやると、な。つい本気を出してしまった」

「睦月さん、そんなに心配しないでも大丈夫ですよ。よいしょっ、と」

慌てて駆け寄る睦月と苦笑いしつつ謝罪する四季、自力で起き上がるツバサ。

確かに彼女は怪我などしておらず、むしろ生き生きとしていた。

 

 

その後三回試合をしたが、結局ツバサは全敗した。

そして倒れている状態から起き上がると母さんにむかって頭を下げる

 

「お母様! あのっ、私に稽古をつけてください! 私、もっと強くなりたいです!」

「よく言った、ツバサ! よし、さっそく素振り百回だ!」

「はいっ!」

並んで素振りを始める二人に僕は呆気にとられてしまった。

 

「母さんは知ってたけど、ツバサも凄い体力……」

「ツバサちゃんたちは僕ら普通の人間と違って、体力が底なしだからな。

 その代わりエネルギーを食う武器なんかは相当体力を使うみたいだぞ」

縁側に座って二人を見ている僕の横に父さんが座る。

やけに詳しい父さんに、僕は一つ思っていたことを聞いてみた。

 

「ねえ、父さんはなんでそんなにツバサ……というか、人になったガンプラについて

 詳しいの? 実は昔そんな人達に会ったことがある、とかだったりする?」

睦月の質問は笑ってはぐらかされた。僕はさらに深く聞こうとするけど、

丁度その時ツバサと母さんの素振りが終わった。

 

「よし、今はこんなところだ。刀は腕で振るにあらず、心で振るう物だ。

 それを覚えておくといい。それと、私はこの後剣道教室に出るが、

 うちの子らと一緒についてくるか? 多少は教えもできる」

「はいっ! お願いします、お母様!」

いつのまにやら意気投合している二人に僕はまた苦笑、

父さんはにこにこと笑いながら二人にタオルを渡す。

 

「それじゃあ睦月、卯月に声を掛けてくれ。そろそろ準備できてる頃だ」

「わかったよ、父さん。それと僕も準備してくる」

僕は卯月に声をかけてから部屋に戻ってカバンにタオルや胴着を押し込み、

いざという時のためにパーツバッグも持ち、部屋を出る。

 

 

僕と卯月、母さんとツバサの四人で近くの公民館へ。

そこには近所の奥様方が、母さんに剣道や薙刀を教わるために集まっていた。

 

「あっら~、久しぶりね睦月ちゃんと卯月ちゃん!

 ちょっと見ない間にずいぶん大きくなって~。あら、そっちの子は?」

ツバサは話しかけてくるおばさんの大きな声に驚いて僕の後ろに隠れていた。

 

「あら~、恥ずかしがり屋さんねえ。 睦月ちゃん、この子だあれ?」

「ちょっと事情があってうちで預かることになった子で、ツバサって言います。

 ツバサ、この人は優しい人だから大丈夫。ほら、挨拶」

僕が頭を撫でるとようやく彼女はおばさんにおじぎ。

 

「あの、初めまして。ツバサ、です」

「良い子じゃないの~。睦月くん、もしかしてチャンスじゃな~い?」

笑うおばさんに言われて僕は思わず赤くなる。

そんな間に周りの人も準備ができ、母さんが剣道の模擬試合を始めた。

 

 

「……もう良い時間ですね。今日はこのくらいで終わりにしましょうか。

 では皆さん、お疲れ様でした」

「「「お疲れ様でした~」」」

結構時間が経って、練習はお開きとなる。

練習を見るだけではなく素振りなんかをしていたツバサも僕の横へと戻ってきた。

 

「ツバサ、何かの参考にはなった?」

「はい! 私は刀の振り方なんて知らなかったし、お勉強できました!」

目を輝かせる彼女に僕は思わず微笑んで頭を撫でる。

彼女も笑顔でそのまま撫でられてる。撫でられるの好きなのかな。

 

「そうか、やはり連れて来て良かったな。

 ……それで、勝てる見込みはあるんだな」

真剣な母さんの言葉にツバサも真顔になり頷く。

そして彼女は僕が作った新装備『ブレードボウ』を取り出し、

ブレードモードで装備してみせた。

 

「はい。形は刀とぜんぜん違いますけど、何処を狙えば良いかは判りました。

 それに、睦月さんにも相手のガンプラの事、いろいろ教えてもらいましたし」

僕のほうを見てくる彼女に母さんは笑いかける。

 

「それはよかった。どうやら体力も戻ったようだし、そろそろ良いだろう。

 睦月、リベンジはいつにする気だ?」

「ん~……ツバサ。明日、日曜でどう?」

「はい、判りました。絶対に勝って見せます!」

ぎゅっと手を握り気合を入れる彼女に僕は頷き母さんを見る。

 

「判った。絶対に勝てよ、睦月、ツバサ。負けたら承知せんぞ。はっはっは!」

母さんは笑いながら防具の袋と竹刀を担いで家に戻る。

僕らはその後に続いて家に戻り、部屋で明日の作戦を考える事にした。

 

 

「GサイフォスはガンダムAGE-2と並ぶほどの性能を持った機体。

 でもあの動きを見た限り、正直君より動きが良いとは言えなかった。

 それに微妙に動きがぎこちなかったし、多分パチ組みだと思う。

 今回は切札のブレードボウやビギニングの軽いビームシールドもあるし

 ツバサの体力も戻ってる。負ける要素は無いだろうね」

僕はツバサに言ってプラモ状態の装備を確認する。

ブレードボウはコトブキヤのダブルブレードを閉じることで大きな双剣

『ブレードモード』に、それを展開することで下部に付けられている

パイルバンカーを改造したランチャーに装備したオプションを発射する

ボウガンのような『ランチャーモード』に変形することができる武器。

 

ドッズライフルとビームサーベルだけではそれを放したときに無防備になるし、

オプションバレルを換装することでガトリングやビームブレード、パイルバンカー

などに仕様変更できる汎用性の高さを持っている。

 

「はい。それに相手の得意な距離は格闘戦ですけど、私だってそうです。

 それにこちらもウィングが無いとはいえAGE-2、機動力なら負けません!」

胸を張る彼女に僕は頷き返し、戦術を固めて行く。

 

「アイツの指定してきた場所は廃工場、遮蔽物はいくらでもあるよね。

 でもドッズライフルに対してそれはあんまり意味を成さないし、

 アイツと違って大型のバインダーを必要としないIFsユニットならなお有利。

 あとはAGE-2、君の頑張り次第だよ。……ふぁあ、そろそろ夜も遅いね。

 ツバサ、今日はもう寝ちゃおう。絶対勝つために、頑張るよ!」

「はいっ! 睦月さん。……でも、私がベッドを占領しているのも悪いですし、

 ベッド使ってください。私が布団で寝ますから」

昨日と同じ様に布団で寝ようとした僕をツバサが止める。

 

「いいっていいって。僕は別に気にしないからさ」

「え、えっと……じゃあ一緒に寝ましょう! このベッド大きいですし、

 二人で寝ても大丈夫ですよ!」

「えっ!? ちょ、ツバサ……」

「私と一緒はいや、ですか?」

彼女は少し暗い顔になりしょんぼりとしてしまう。

 

(うわぁぁぁ反則でしょ、そんなしょんぼりされたら断れないって~っ!)

 

「……判った。それじゃ、えっと……うん。お邪魔します」

僕はツバサの隣に寝転がる。

彼女は僕が横に来ると安心したらしく、にっこりと笑ってそのまま寝てしまった。

 

(寝つきが良すぎるっ!? うわぁ、女の子って良い匂いするんだなあ……って

 何考えてるんだ僕は! ええっと、無心無想無心無想……)

冷静になろうとするけれど近くで寝息が聞こえるしもぞもぞ動いているのも判る。

結局僕が寝たのはそれから30分近く後の事だった。

 

続く。




「俺が作った『サイ』に勝てると思ってンのかよ!」
「アンタなんかに『ツバサ』は負けないよ!」

光とともに舞い踊るガンダムAGE-2『ツバサ』と、
黒いボディを影に溶かすGサイフォス・フルウェポン。
一度は負けた相手に、ツバサの新たな力が通じるのか。

次回・模型戦士GPフレンズ

第三話『光と影』

ツバサ、今度こそ勝つよ!



 睦月「睦月と!」
ツバサ「ツバサの!」
 二人「「Gペディア!!」」

 睦月「毎回終わりにちょっとだけ、この小説の用語を紹介します」
ツバサ「今回は私達『GP(ガンプラ)ヒューマン』とその主『GP(ガンプラ)マスター』についてです!」

ツバサ「GPヒューマンは、ガンプラが人間に良く似た姿へ変わることができるように
    なった、私達のような存在です。
    身体能力は普通の人間より数段高いし、反射神経も高いですけど、
    自分の作り手である『GPマスター』に逆らうことは出来ません」
 睦月「そして僕らGPマスターの中にも、今回登場したバンディッツのように
    GPヒューマンを悪事に使う人たちも居ます。
    僕は絶対に、ツバサにそんな事をさせないけどね」
ツバサ「あ、ありがとうございます……。
    えっと、それで私達GPヒューマンには数個の姿が存在します。
    元々のガンプラの状態と、
    人間が装甲の形のアーマーを着たような『バトルモード』、
    その姿でガンプラと同程度のサイズになる『ドールモード』、
    そして人間とまったく同じ体になる『ヒューマンモード』と、
    ガンプラと全く同じ姿で人間大になる『MSモード』ですね」
 睦月「基本的にツバサたちはヒューマンモードで生活してるけど、
    いざバトルになるとバトルモードに即座に『変身』できる。
    でも、完全にロボットの状態にはなりたくないみたいだね」
ツバサ「はい……。あの状態だと、人間にみてもらえなさそうで」
 睦月「なるほどね。……さて、と。それじゃそろそろ終わりですね。
    みなさん、ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
    それでは、また次回まで」
ツバサ「次もよければ、読んで下さいね!」
    

△キャラ紹介
◇次皿 奪人(つぐさら だつと)、
イメージキャラ:坂之上 逆門(ファイ・ブレイン)
イメージCV:福山潤
睦月の前に始めて現れたバンディッツの構成員であり、立場的には下っ端。
燃えるような赤い髪と同じく真っ赤なジャケットが特徴。
自身が作ったGサイフォス『サイ』とAGE-2を戦わせ腕部ウェアパーツを奪う。

◇BMS-005FW『Gサイフォス・フルウェポン』:通称『サイ』
イメージキャラ:ロジャー・スミス(THEビッグオー)
イメージCV:宮本充
Gサイフォスにシャルドール・ローグとGエグゼス・ジャックエッジの武装を
取り付けパワーアップしたもの。紳士的な物腰で、自分のマスターがバンディッツに
所属し他人のパーツを奪うことには正直反対している。

◇神田 暦(かんだ こよみ):年齢・不詳
モデルキャラ:阿良々木暦(化物語シリーズ)
イメージCV:神谷浩史

睦月と卯月の父親で、かなり肝が据わっている。
若い頃はそれなりにヤンチャしていた上、修羅場をくぐっているらしいが
今は平凡なサラリーマンとして働いている。
特徴は片目を隠す形で、襟まで伸びる長い髪。

◇神田 四季(かんだ しき):年齢・不詳
モデルキャラ:坂本美緒(ストライクウィッチーズ)
イメージCV:世戸さおり

睦月と卯月の母親で、暦の妻。
大抵の事に動じない豪胆な女性で『はっはっは』という高笑いが特徴。
とある事情により、剣術や薙刀術などの戦闘能力に長ける。
主婦をする傍らご近所の人たちに剣道や薙刀などの教室を開いている。
宝物と呼んで良いほどの名刀『冬雪丸』をどこからか取り出せる。

◇神田 卯月(かんだ うづき):年齢・ひみつ(中学一年生)
モデルキャラ:新井ミナミ(爆走兄弟レッツ&ゴーMAX)
イメージCV:渕崎ゆり子

睦月の妹。かなりのマイペースでイタズラ好き、遊びたい盛り。
ツバサが遊んでくれるためわりとすぐに懐いた。

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