手を振った先に何故か困った表情のコウ君とまた何故か顔をしかめる少女がいる。
なんだか微妙そうな表情でこちらを見る少女はコウ君と共に発見保護した少女だ。
それはいいのだけれど、何故そんな表情を?
と二人に近づいたところ。
「……ママじゃない」
なんて言葉を投げかけられた。
「う、うん?」
いや、まあ、この歳でこんな子供をもった覚えは無いけど。
…………いや、私が無意識の内にコウ君と!?
いやいや、無いよ。無い無い。
そんなの忘れるはずがない。
そんな幸せな事……っ!
「こー、ママじゃないよ。やっぱりこーがパパで」
「パ、パパ!?」
聞き捨てならない言葉だ。
パパ、コウ君がパパ。
な、なんて良い響き。じゃなくて!
「コ、コウ君!どう言うこと!?誰との子なの!?」
「は、はあ?」
「産んでない、産んでないよ私!」
もしやティアナ!?
いや、年齢的に若すぎる。
フェイトちゃんやはやてちゃんの可能性もあり得る。
まさか、離れているうちに新しい女性と?
コウ君は、コウ君が、コウ君に、私は、わ、わた、私、私に、助けて、って、うぐ、うぎ、ぃ。
ぐにゃりと視界が歪む、そう感じた時、クスクスと笑う声を聞いた。
「あはは、面白いね、この人。ヴィヴィオのママじゃないのに」
「俺もパパじゃないけどな」
「こ、コウぐんっ!!」
「お前も泣かされるなよ」
ふっ、ふぐ、コウ君は、コウ君はぁ!
※
気が付くと私は正座をさせられてはコウ君の話を聞かされていた。
自分をヴィヴィオ言った少女はコウ君の膝の上。
………………羨ましい。
「つうわけでこの子、ヴィヴィオは俺をパパと呼びたいとか言っているだけで実子でもなけりゃ産んでもない」
「へぇ、つまり真の妻はこの高町なのはって事だね」
「いやいやいや」
何故そうなる、と若干頬を赤く染めて照れるコウ君。
何だかんだいって照れ屋な所もかわって無い。
ティアナに悪いけどこういうのは私だけの利点だなぁ。
しかし彼の膝の上の少女は納得がいっていないようで……
「パパ、パパ。絶対ヴィヴィオのパパの方がいいよ」
「…………」
「パパ?」
既にこーと言う馴れ馴れしい呼び名すら呼ばなくなったヴィヴィオにコウ君は面倒臭そうにため息を吐いた。
「あー、パパって誰かなぁ?どこの誰にいってるんた?」
「パ、パパ」
「なあ、なのは、パパって誰?」
「え?あっ、ああ!誰だろうね!ここには私とコウ君とこの子しかいないし、ねぇ?」
「う、うぅーっ」
突然、知らん振りをし始めたコウ君。
意図はわかるし協力もするけど、なんだか本当に子供を躾ているような感じだ。
しかしどうやらヴィヴィオはこちらの言いたい事に気付いている様子。
子供にしては賢いようだけど。
「こ、こー」
「どうしたヴィヴィオ?」
「こーは嫌なの?ヴィヴィオのパパ」
「さあ、どうだろう。でも、俺じゃあまだヴィヴィオのパパには相応しくないかな」
「ふさ、わ?」
「わかんないか。まあ、大きくなってからわかればいいさ」
そう言ってヴィヴィオの頭を撫でるコウ君。
こう言うところを見せられると本当の親子ようなんだけどな。
「さ、そろそろ戻ろう。それでこの子、ヴィヴィオの今後は?」
「えっと、とりあえず六課で預かる事に」
「レリックとかの関係か?」
「まあ、ね」
それに両親も探してあげなければならない。
この子が、いったい誰なのかレリックとの関係は何なのか、気になる事は沢山ある。
でも、子供は親といるべきだ。家族といるべきだ。
私みたいになっちゃだめだ。
「そうだ!」
「うん?」
声を上げた私に不思議そうな二人の目線が向けられる。
それに対し私はにっと笑いヴィヴィオを見た。
「君はヴィヴィオ、そういう名前だよね?」
「う、うん。ヴィヴィオはヴィヴィオ」
「私はなのは、高町なのは。よろしくね」
「なのは?」
「うん、それでヴィヴィオにいい提案があるんだけど」
「なぁに?」
「私の事をママだと思ってくれたら、コウ君の事を一日決まった数だけパパと呼んでもいい権利をあげる!」
「はぁっ!?」
驚きの声をあげたのはコウ君。
コウ君には悪いけど私はいいと思うんだ。
例え偽物でも、両親が側にいるのは。
「どうかな、ヴィヴィオ?」
「…………なのはママ!」
ぱぁ、とヴィヴィオの顔に笑みが広がる。
逆にコウ君はひきつっているけど。その辺りは気にしない。
「それじゃあ、行こっかパパとママと一緒に」
「うん、いこう!パパ!」
「お前達は……まったく」
ごめんね。最近の私、我が儘なんだ。だからしっかりついてきてね。
私のために頑張って、パパ?
くすり、と笑う。
改めて思うけど、
私って面倒な女のようだ。
短いけど投稿。
他の話を書くとなんでかこっちを書かなきゃって気持ちになります。
不思議ですね。