問題児たちが異世界から来るそうですよ? 出来損ないの陰陽師の異世界録   作:カオス隊員

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第十章

 

 

「って、あぶねぇぇぇぇぇええええっ!?」

 

 

龍騎達が入ってきた瞬間、館を揺るがす獣の咆哮を上げ、突進を仕掛けてくる。龍騎だけなら本来、危なげなく躱すところなのだが後ろに飛鳥と耀がいるのを躱す寸前で思いだし、慌てて五芒星の魔法陣を展開する。龍騎の魔法陣とガルドの突進が均衡し、力は逃げ場が無くなっていき、衝撃波が発生し周囲の打ち倒されていた家具が吹き飛んでいく。後ろにいる飛鳥と耀も衝撃波に巻き込まれ、家具の二の舞にならないように足に力を入れ耐え続ける。しばしすると衝撃波が止むが、未だに龍騎の魔法陣とガルドは均衡し続けている。再度、ガルドが咆哮を上げ龍騎の魔法陣をその剛腕で殴り続ける。ガルドが魔法陣に向かって剛腕を振るうたび、金属音っぽい音が部屋に鳴り響く中、龍騎は余裕そうに今の状況をどうするか考えだした。

 

 

(あー。思わず受け止めてしまったけどコレどうしようか?“契約書類”のルールによって俺達の攻撃は指定武具じゃないと傷一つすら付けられないんだった。ガルドの背後にある白銀の十字剣、あれが指定武具なんだろう。俺がこのまま抑えたまま二人の中でも一番速い耀に指定武具を取ってもらうのがベストなんだが………何故か嫌な予感(・・・・)がするんだよな)

 

 

そう思いふけながら龍騎の視線はガルドではなく白銀の十字剣に向けている。これまで戦い抜いてきた経験と勘が、あの白銀の十字剣は罠だと勘づいた。………だが、後ろの二人は戦いに関しては素人同然。

 

 

「………今のうちにっ!」

 

 

今の現状を理解した耀は自分の出来る役割を行う為、白銀の十字剣に向かって駆け出す。勿論、耀はあの白銀の十字剣が罠だとは気付いていない。

 

 

「待て、行くな耀!」

 

 

白銀の十字剣に向かって駆け出す耀を呼び止めようするがガルドの猛攻により鳴り響く金属音によって龍騎の声は聞こえていないようだ。龍騎は白銀の十字剣がある方へ視線を移すと、窓の先にある空間が不自然に歪んだ(・・・・・・・)のを感知した。耀自身は白銀の十字剣にしか目に入っていないようで、気づかないまま白銀の十字剣に向かって手を伸ばす。

 

 

「………っ!『火花よ、弾けろ!』」

 

 

最悪な展開が頭によぎった龍騎は魔法陣を破棄し、掌をガルドの瞳に向け言葉を放つ。すると、掌から眩い火光―――閃光が発現し、ガルドの瞳を襲う。突然のことに真面に喰らったガルドの視界は一面が白に埋め尽くされた。視界を奪われたガルドは眼を抑えながら悲鳴を上げ、暴れだす。その隙に龍騎は飛鳥を無言で後ろに下がらせ、ガルドの脇を横切り、耀の後を追いかけるように跳ぶ。龍騎は一瞬で耀に追いつき、白銀の十字剣が手に触れる一歩手前の耀を庇う様に抱きつく。

その瞬間、窓が音を立てながら割れて破片と見えない刃(・・・・・)が龍騎と耀を襲う。

 

 

「………ぐっ!?」

 

 

龍騎が耀を庇ったおかげで耀には特に傷一つなく無事であったが、代わりに龍騎がガラスの破片と見えない刃を全て受けてしまった。龍騎のブレザーは無残に切り裂かれ、体にガラスの破片が突き刺さっていく。そして、そのまま龍騎は抱きついた耀を庇う様に体を捻り、地面に倒れこむ。

 

 

「………っ!?龍騎!?」

 

 

耀は一瞬の出来事に頭の中が真っ白になるが、龍騎の惨状を見て悲鳴を上げるように叫ぶ。龍騎の状態はブレザーは切り裂かれ、体にガラスの破片が突き刺されており、その傷口から血が流れていき服が真っ赤に滲んでいく。平和な生活をしていた耀には目を逸らしたくなるような惨状だ。

しかし、明らかに重傷である容体なのに龍騎は顔を歪めながら耀に笑いかける。

 

 

「つぅっ………!大丈夫か耀?」

 

 

「喋らないで!今、応急手当するから!」

 

 

焦りながら応急手当をしようとする耀だが、龍騎は右手で制す。

 

 

「落ち着け、耀。此処でやっても余計な被害を受けるだけだ。まずは一度、一時退却するべきだ。ちゃんと目当ての物は手に入ったしな」

 

 

そう言いながら龍騎は耀に左手に握っている白銀の十字剣を見せつける。龍騎はあの一瞬の中、きっちりと手に入れていたようだ。

 

 

「そろそろガルドの視界も元に戻る。その前にこの館を出るぞ。俺の血で汚すわけにはいかないから、耀は厳しいと思うが飛鳥とジンを頼む」

 

 

「それはいいけど………龍騎は?」

 

 

「この程度の傷、どうってことはないって。俺はこの剣を持ちながら耀の後を追いかけるさ」

 

 

耀に心配掛けないようにもう一度笑いかける龍騎。どう見ても重傷である龍騎に心配するなとは無理な話だ―――だが、耀は龍騎の笑顔を見ると不思議と安心していき、自然と力強く頷いてみせる。

二人はゆっくりと立ち上がりながら、飛鳥がいる扉まで駆け出す。重傷であるとは思えない程の速度で龍騎は耀の後ろを追いかけていき、あっという間に飛鳥の元に辿り着き、耀は右腕で飛鳥を抱き上げ、龍騎と共に部屋から抜け出す。

 

 

「龍騎君!?大丈夫なの!?」

 

 

「話は後だ。剣も手に入れたことだし、とりあえず一時退却するぞ」

 

 

龍騎の容体を見て心配そうな声音で話しかけてくる飛鳥を制し、階段を飛び降りる。龍騎と耀は無事着地に成功し、今度は一階で退路を守っているジンの元に駆け出していく。ジンはすぐに見つかり、耀は空いた左腕でジンを抱き上げる。

 

 

「りゅ、龍騎さん!?その傷は」

 

 

「察しろ!」

 

 

龍騎は心配そうにしているジンは無視し、耀の前に躍り出る。

 

 

「『火よ、爆ぜろ!』」

 

 

龍騎は壁に向かって掌をかざし、言葉を再度放つ。すると、今度は壁から小規模の爆発が発生し大きな穴が空く。龍騎を除く耀達は爆発の威力に驚愕しながらも穴を潜り、森の中に消えていった。

 

 

 

 

「此処まで来れば一先ずは大丈夫だな。耀、すまんが周囲の警戒を………っ!」

 

 

「喋ってないで座りなさい!今、応急手当をするから!」

 

 

龍騎達は“フォレス・ガロ”の本拠から数km離れた森の中まで退散することに成功し、龍騎は耀に指示をだすが傷口からの痛みで顔を歪め、飛鳥に木に腰掛けるように言われる。龍騎は少し面倒くさそうな表情を浮かべるが、飛鳥達の顔が真剣だったので渋々と腰を下ろした。

 

 

「まずは止血をしなくてはいけないわね………ジン君、回復系のギフトみたいのはないのかしら?」

 

 

「す、すみません。今は持っていな」

 

 

「いや、そんなもの必要ない」

 

 

ジンの声を遮るように言うと龍騎はポケットに手をいれる。ポケットから出したのは一枚の御札。龍騎はその御札を胸に貼り付けた。

 

 

「これは貼り付けてさえいれば傷は治っていく代物だ。暫くしたら完治とは言えないがある程度は回復するさ」

 

 

龍騎が言った通り、しばし待つとガラスの破片は龍騎の体から追い出され、傷がみるみると塞がっていく。その光景に飛鳥達はまた驚愕し、飛鳥が代表として問いだす。

 

 

「………凄まじい効果ね。それが龍騎君のギフトかしら?」

 

 

「そういえば俺の力について何も言ってなかったな。俺は陰陽師で御札の力は副産物的なものだ」

 

 

「陰陽師って、あの陰陽師?」

 

 

「耀の知っている陰陽師が俺の陰陽師と同じかどうかは分からんが俺の家系は代々人間に害する怨霊や妖怪を退治していったんだ。まあ、俺には才能なくて出来損ないと言われていたけどな」

 

 

心底どうでもよさそうに肩をすくめる龍騎。その表情は周りの評価など気にしないと言っているようだった。しかし、飛鳥達は触れて欲しくなさそうな過去を聞いてしまい、少し気まずそうにする。少し気まずい雰囲気に気付いた龍騎は慌てて本題に戻す。

 

 

「そ、それよりか今はどうやってガルドを倒すかだ。ガルドは剣を手入れたことでどうにでもなるが問題はさっきの風の刃だ。状況から見ればガルドの部下が潜んでいたと考えるべきだな」

 

 

「でも、猫耳の店員は傘下のコミュニティと部下は追い出したって言ってなかったかしら?」

 

 

「ああ、だが猫耳店員が言っていたのは殆ど(・・)だっただけどな。保険として何人か潜ませていたんだろうさ」

 

 

「………そうでしょうね。それにしてもこの状況はかなり不味いです。ガルドは“契約書類”で守られていて、その部下はこの生い茂った森の中で奇襲………指定武具を手に入れたとはいえ不利には変わりません」

 

 

ジンが唸るように打開策を考える。龍騎と耀がいるとはいえ森の中に何人の部下がいるか分からないと無理にガルドの討伐に動けば囲まれる可能性がある。龍騎はともかく飛鳥達は経験が浅いので囲まれたとなると龍騎一人では守ることが出来ないのだ。飛鳥も耀も打開策を考えるが良い案は浮かばないまま時が経った。しばしすると、腰を下ろしていた龍騎が立ち上がり飛鳥達に作戦を伝えだした。

 

 

「なら、こんなのでどうだ?俺がガルドの部下全員を足止めしてそのうちに飛鳥達がガルドの討伐ってことで」

 

 

龍騎の作戦に驚愕と戸惑いを感じる三人。今、目の前にいる少年は御札の力で傷が治ったとはいえ全治ではないのだ。それなのに一番厳しい役割を自分が引き受けると言うのだ。当然、三人はこの作戦に反対の声を上げる。

 

 

「な、何言ってるのよ!貴方は怪我人なのよ!?そのような作戦認めるわけにはいかないわ!!」

 

 

「そうですよ!龍騎さん一人で何人いるか分からないガルドの部下を相手するのは無茶です!」

 

 

「龍騎は安静にするべき」

 

 

「じゃあ、これ超える最善の策はあんのか?」

 

 

「「「うっ………」」」

 

 

言葉に詰まる三人。正直に言うと龍騎の提案した以上の作戦など思いつかないのだ。だが、龍騎だけに負担を背負わせるのは三人共心苦しいのだ。

 

 

「で、でも………」

 

 

「そう心配すんなって。この中でも俺が一番戦い慣れてんだからキツい役割するのは当たり前だろ?。それに“契約書類”にはガルドの部下を守るような項目なんてなかったから俺のギフトも効くしさ」

 

 

ニシシ、と笑う龍騎。だが、三人は心の中では後悔の念にかられる。ジンは“契約書類”の不確認によって不利なギフトゲームを挑むことになったこと、飛鳥は自分が提案したせいで龍騎が苦しい思いをしていること、耀は自分の軽率な行動のせいで龍騎に重傷を負わせたことにとそれぞれ自分達の不甲斐なさを責めるのであった。龍騎は未だ重たい雰囲気が和らがないことに苦笑いで頭を掻きながらこの状況をどうするか考える。暫く考え込むと、龍騎は妙案を思いついたのか面白そうに再度笑いかける。

 

 

「それでも申し訳ないと思っているんだったら………そうだな、このギフトゲームが終わった後何か一つお願いでも聞いてもらおうかな?」

 

 

「………お願いって?」

 

 

「グヘヘ、それはお前らの体を―――痛いっ!?嘘です、冗談です!だから傷口を木の棒で抉らないで!」

 

 

結構痛いのか必死に懇願する龍騎。飛鳥と耀は呆れながら溜息をこぼし、龍騎の傷口を突いていた木の棒を地面に放り投げる。

 

 

「心配して損したわ。じゃあ、龍騎(へんたい)君の作戦通りに私達はガルドの討伐。龍騎(へんたい)君はガルドの部下の足止めね」

 

 

「………今、飛鳥に息するように罵倒されたよな?俺、言い返してもいいよな?」

 

 

「………何か間違っている?」

 

 

「やめてっ!?本気で俺が変態だと思って不思議そうに首を傾げないで!?」

 

 

恒例になりつつある漫才をする三人。その様子をジンは苦笑いで静観する。だが、龍騎の戯言のおかげで先程の重い雰囲気はいつの間にか霧散していたのだった。

 

 

「はあ………。俺の威厳の復位はこのギフトゲームが終わり次第、じっくり話し合うとして………そろそろ傷口も塞がるし作戦決行っと行きますか」

 

 

そう言いながら龍騎は胸に貼り付けた御札を剥がしながら、その場から腰を上げる。龍騎の容体を見ても先程よりかは顔色も良くなっており、殆ど傷口も塞がっていた。

 

 

「そうね。さっさとあの外道を成敗しに行きましょう。龍騎君、ちゃんとガルドの部下を足止めしておきなさいよ」

 

 

「任せろ。飛鳥も恐れずに自分を信じてガルドを倒せよ」

 

 

飛鳥は龍騎の返事に満足げに頬を緩めながら耀とジンを連れて森の中に消えていた。龍騎はそれを見送りながら、手元にある御札を握りつぶしながら済まなさそうにそっと呟く。

 

 

「………嘘をついて悪いな、飛鳥、耀、ジン。今のお前達では俺のことを知るには早すぎるんだ」

 

 

龍騎は発動(・・)しなかった御札を適当に投げ捨てる。そして後ろを振り返り、森の中へと消えていった。

 

 

 

 

「………ようやくお出ましか」

 

 

しばし森の中を彷徨う龍騎は気配を感じたのかその場で立ち止まり、森特有の静寂に包まれながら周囲を警戒する。すると、突然上空から数多の風の刃が降り注ぎ龍騎を襲う―――が、既に気付いていた龍騎は後方に下がることで紙一重で躱す。だが、背後から草むらが擦れる音が鳴ると同時に巨大な影が龍騎に突撃を仕掛ける。

 

 

「奇襲としては及第点だが―――それは敵に勘付かれていたら悪手だ!」

 

 

しかし、これも龍騎のカウンター気味の後ろ回し蹴りにより不発となる。足を半円を描くように体を旋回させ、相手の脳天に踵を蹴り込む。それをもろに喰らった敵らしき巨大な影は横方向に吹き飛び、巨樹に激突する。そこらの雑魚なら今の一撃で気絶はするものなのだが、龍騎は硬い鉱石を蹴ったような手応えを感じ、まだ警戒を解かない。すると、今度は別方向から奇襲を仕掛けてくる。先程の奇襲より素早い速度で龍騎を襲う。

 

 

「おっと!」

 

 

これも横一歩ずれることにより難なくと躱す龍騎。だが、続けて攻撃を仕掛けてき、上空からも風の刃が降り注ぐ。龍騎が躱し続けるその間に巨躯の敵がゆっくりと立ち上がる。龍騎は避けながらも襲ってくるガルドの部下らしき獣を観察する。

 

 

「上空には遠距離から攻撃可能な風のギフトを持った鴉、地上戦では素早い狼、そしてパワータイプのサイか………。此処は動物園か何かか?」

 

 

姿を目視した獣は直立二足歩行でガルドに劣らない剛腕。頭部には1本の硬い角を持ち、皮膚は非常に分厚く硬質で、体全体を鎧のように覆っているのが一体。灰色の体毛に何でも切り裂きそうな鋭い爪。唸り声を上げながら獲物を狙う視線で龍騎を睨む一体。上空から漆黒の羽を舞わせながら、鋭い瞳で龍騎を目視しながら翼を羽ばたかせ浮遊して様子を見ている一体。これらは少し姿が違うが、龍騎の世界でもいた鴉、狼、サイなのだ。ガルドのコミュニティに在籍していたとしたら、この獣達も獣系のギフト持ったを獣人なのだがガルドと同様、理性は無くなっているようだ。

 

 

「………一応、バランス良くチーム構成は出来ているみたいだな。まあ、連携はまだまだだけどな」

 

 

後方に大きく下がり、軽薄そうに笑いながらも警戒を緩めない龍騎。獣三匹も龍騎を睨みつけるだけでお互い冷戦状態が続く。だが、ザッ、と風が吹くと同時に獣達の視界から消え去っていた。

 

 

「残念だけど、お前らの相手する程時間はないんだ。さっさと終わらせるから」

 

 

龍騎の声は獣達の真上から聞こえてくる。慌てて自分の上を見上げると龍騎は鴉の背後に現れており、既に攻撃体勢に入っている。鴉はその場から逃げようとするが、時は既に遅し。右手を鴉に向けながら霊力を収束させ、鴉にとって死神の囁きを放つ。

 

 

「『滅せよ、爆炎!』」

 

 

瞬間、館の時とは桁違いの威力の爆発が上空に咲き乱れ、轟音が鳴り響く。爆発を喰らった鴉はそのまま灰と化し、この世界から消え去っていった。突然の同胞の死に焦りだす狼とサイ。しかし、あの爆発だと龍騎も巻き込まれているだろうと思い警戒を解く獣達。だが、

 

 

「まずは一体」

 

 

今度は狼とサイの背後に佇む龍騎。後ろを振り返り、龍騎を視界に入れると獣達は驚愕と恐怖という感情に駆り立てられる。あり得ない速度、霊力の保有力と人間とは思えない程の力を秘めている―――が、それよりも獣達を恐怖に駆り立てられるのは龍騎自身の存在(・・)なのだ。獣の勘なのだろうか、今、獣達の瞳には人間は人間の皮を被った何か(・・・・・・・・・・)に見えてしまうのだ。自分達がどんな手を使っても勝てない上に逃げ出しても殺される………その事実が脳内によぎり、獣達の動きを止める。しかし、それは致命的な隙となり自分の首を締める行為―――それを龍騎は見逃すはずがなかった。

 

 

「『切り裂け、鋼鉄!』」

 

 

龍騎が言葉を放つと同時に龍騎の腕に1mはある黒光りした鋭利な刃を発現させ、一気に獣達の距離を詰める。龍騎の行動に我を取り戻したサイは無我夢中で剛腕を振るおうとする。だが、龍騎にとっては欠伸が出るほど遅すぎる一撃でありまた紙一重でその剛腕を避け、サイの懐に入り込む。サイが次の攻撃体勢に入るが、龍騎が腕に発現させている刃で薙ぎ払う。その一撃は鎧のような皮膚を持っているサイの上半身と下半身を離れさせる程であった。

 

 

「二体目。残りは一体」

 

 

死神を彷彿させる言葉と既に息絶えた同胞の死体を見た狼は一目散に逃げだす。龍騎の姿も見ずにひたすら逃げ続ける………生き残るために。しかし、龍騎は見逃すはずもなく刃を破棄し地面に手を付けながら狼の最期の言葉を放つ。

 

 

「『搾り取れ、大樹!』」

 

 

その言葉に狼の周囲にある木々の根が狼を拘束する。振り解こうと暴れる狼だが解けるどころか更に絡まっていき、それでも暴れ続ける狼だが、力が抜けていく感覚を感じ、徐々に抵抗が出来なくなっていく。視界も薄れていく中、自分の前足を見てみるとその足はミイラのように枯れ果てていたのだ。龍騎によって操られている木々は狼を養分として捕食しているようだ。それを理解した狼だが既に体から力が入ってこなくなり、そのまま木々の養分として吸い取られ続けた狼は枯れ果ててしまった。役目を終えた木々の根は狼ごと地面に還っていき、元の状態へと戻ったのだった。

 

 

それを確認した龍騎は昨日の夜中と同じように炎を発現させ、サイの死体を処理する。作業が終わると、ゲーム終了を告げるように木々が一斉に霧散していった。

 

 

「どうやら飛鳥達もガルドに勝ったようだな。これで暫くゆっくり出来るといいんだが………」

 

 

この先も厄介事が起きる予感を直感した龍騎は疲れた表情を浮かべながらも、無事ギフトゲームを終えたことに安心しながら飛鳥達と合流するために歩き出していったのだった。

 

 

 


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