Fate/kaleid stage   作:にくろん。

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エクステラ、ポケモン、FF、7章…ゲームラッシュで執筆時間が足りない。

前回の投稿から今回までの一月でジャック、ランスロット(2枚目)、セイバーアルトリア、イシュ凛、キャスギル来ました。
———全部単発で。単発教最高。

年末までに7章終わらすぞー!


32話 王の蹂躙

 

先に円蔵山へ向かっていてよかった。

遠目にも激しい戦闘が収まったかと思えば山の頂上付近が爆散し、強化した足で急ぐと白野が捕えられているのが見えた。

 

白野を縛る鎖は黄金の波紋から伸びていて、

 

———思い出せ

 

確かに宝具としての神秘を内包しているのが一目で見て取れた。

 

「もう諦めなよ。白野(彼女)美遊(彼女)も。万能の願望器たる聖杯を降霊させる儀式———聖杯戦争。僕ら英霊をも利用しようとする迷惑な話だけど、生まれながらに完成された聖杯(美遊)がいるのなら話は単純だ。この戦争は止まらない。死にたくなければ、カードを置いて逃げなよ」

 

そしてその王たる自信に満ちた発言が聞こえた途端、”情報”としてしか知らなかった知識(経験)が蘇る。

 

 

 

———お前には負けない。誰かに負けるのはいい。けど、自分には負けられない!

 

———お前が倒せ。

 

それはアーチャーがどこかの世界で経験した聖杯戦争の記憶。

過去の自分を消すことで守護者となった自分の存在を消すために戦った、一人の男の記憶。

 

同時にこれ以上なく思い知る。

 

あの英雄王(英霊)は衛宮士郎と相容れない存在だということに。

 

だからこそ。

 

「諦められるか、ってんだ」

 

明確に言い放つ。

 

「やっぱり立ちふさがるんだね」

「もちろんだ———。誰もが幸せであって欲しいと。その感情は、きっと誰もが想う理想だ。だから諦めるなんてしない。ましてや、妹分に幸せであれって想うことも、理想と言われる俺の(想い)も、けっして―――――決して、間違いなんかじゃないんだから…!」

 

 

それは、正義の味方を目指した衛宮士郎の根幹。

壊れたブリキ人形だった俺が抱いた、たった一つの理想の果て。借りものだろうが何だろうが、至った自分が保持していたモノ。

 

きっと、今の俺の想いとは違うんだろう。

2度死んだ俺の理想(願い)。あの世界でイリヤ(姉さん)に助けられた俺が持った一つの願い。

 

 

 

家族の幸せ。

 

 

 

単純だろう。笑うなら笑え。

でもこれが———

 

 

———俺の本物(・・)の想いだ。

 

 

 

「大人の僕と違ってこの僕は寛容だ———それでも、あの僕(本能)と直接繋がっているからか感情に愚直なのかな?———贋作者(フェイカー)、どうしてもお前だけはこの英雄王()の癇に障るらしい!!!」

 

 

背後に広がる20余りの波紋。

そこから放たれるのは英雄が所持する宝具の原典!

 

投影(トレース)完了(オン)!」

 

即座に視線を走らせ、宝具を視る。

そしてそのまま解析した宝具を即座に投影し射出する。

 

空中で贋作と真作が激突し、爆発と共に四散する。

 

「ハ———贋作で僕の財宝を相殺しますか!まったくもって度し難い!」

「言っていろ英雄王———!」

 

続く第二射、第三射も同じように相殺する。

 

 

「お兄ちゃん!」

 

宝具の撃ち合いの中、突然イリヤが魔力砲を放つ。

 

「イリヤ!?」

「君まで混ざるのかい?」

 

「当たり前でしょ!友達を見捨てて逃げるなんてできない!」

 

そのままイリヤは宙を駆けギルガメッシュへと接近する。

 

「く———投影(トレース)完了(オン)!」

 

咄嗟に、イリヤに迫る剣弾を剣で射る。そうやって援護をしたからかイリヤはギルガメッシュへとたどり着き、

 

限定展開(インクルード)!!射殺す百頭(ナインライブス)!!!」

 

クラスカードを使って岩の斧剣を召還し振り下ろす!

 

大英雄と名高いヘラクレス。

そんな彼が振るった巨大な斧剣は確かに幼い英雄王の頭を狙っていたが、

 

劣化品(レプリカ)じゃ原典(オリジナル)には勝てないよ」

 

幼い姿とはいえ、そんな一撃で死ぬ者が世界最古の英雄王であるはずがない。

 

真・射殺す百頭(ナインライブス)!!!」

 

原典のソレは巨大な黄金の弓だった。

いやそれはすでに弓と呼べる代物ではない。人間が一人で放てるサイズじゃないソレはバリスタと呼ぶにふさわしい威容を誇っていた。

 

バリスタに番えられた矢も相応に大きく、大槍と呼べるモノ。

 

「なっ」

 

放たれた大槍は彼の伝承を再現したかのように9つへと分裂する。

 

「イリ———」

 

投影は間に合わない。

4つの矢がレプリカを砕き、ルビーとカードが分離する。

そして残りの5つの矢は———

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!!」

 

レプリカを砕くわずかな隙にイリヤを守る様に広がった4枚の花弁を食い散らし、そのままイリヤを貫いた。

 

「————、」

 

脳が冷える。

世界から温度が消える。

 

大きく弾む心臓の音だけが熱く体を駆け巡る。

 

「逃げていればよかったのに。そうすればこんなふうに無駄に命を散らすなんて…」

 

過程をすっ飛ばす。

確実にアイツを殺せる武器を。剣に拘る必要はない。

 

必要なのは、必中不可避の即死の武器———。

 

 

投影(トレース)完了(オン)!!!」

 

剣でないそれは消費する魔力が増える。

だけどそんなこと知ったことか。

 

ミシリ、と左手から異音が響く。

 

「———偽・刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)!!」

 

贋作ながらも、その宝具は折り紙付き。

心臓を貫いた、という結果をかけていさせてから放つ因果逆転の呪いの槍。

 

「———四角連なる叫びの警鐘(オハン)。この盾はその魔槍と出典を同じくするケルトの盾だ。曰く持ち主の危機を察知し知らせるという。———同郷の呪いの朱槍。その発動前に(・・・・)感知して(・・・・)知らせる(・・・・)。心臓に当たってから放たれる因果を覆すなんて容易いことだ」

 

 

呪いの朱槍は、泥から現れた4つの角を持つ黄金の盾に防がれる。

 

「———ア、」

 

漏れ出た音は何の音か。

意識しないまま吐き出された空気を自覚するとともに、

 

「あ、ぐあああああああああ!」

 

槍を投擲した左腕が内部から裂ける(・・・・・・・)

内から爆ぜた傷からは血が滴り落ち、

 

 

 

 

ミチミチ、ギシギシ

 

 

 

 

傷口から無数の剣がひしめき合っているのが見て取れた。

 

「うぐ、あ」

 

思わず左腕を抑えて蹲る。

高ぶり、暴走寸前だった魔力の手綱を必死に握る。

 

「ふうん…」

 

此方を見下ろす英雄王に慢心の様子は見えない。脂汗を堪えながら蹲る俺から目を逸らさない。

 

だからだろう(・・・・・・)

 

ギルガメッシュがそれに気づかなかったのは。

 

 

 

視線の先、二つに分かたれたイリヤの体が霞んで消える。

そしてそこから現れたのは暗殺者(アサシン)のクラスカードとサファイア。

 

つまり(・・・)

 

「ルビー!」

『あいあいさー!』

 

イリヤは俺に向かって英雄王の意識が逸れたわずかな隙に再びルビーを掴み転身する。

 

そしてそのままギルガメッシュの眼前へと躍り出て

 

砲射(フォイア)!!!」

 

ゼロ距離で砲撃をぶち当てる!!!

 

 

 

 

 

 

 

「…驚いた」

 

 

 

 

爆発によって舞い上がった煙の奥。

 

「まさか泥なんかに助けられるとは」

 

晴れた煙の向こうに幼王の姿はあった。

黒い泥が体表を覆い、かつての英雄王の鎧のように装飾されている。

 

本能(向こう)の僕が所持していた鎧をわざわざ着せるなんて、独立した個体同士だというのに、まるで僕が核になっているみたいじゃないか」

 

「…ミユとハクノはどこ?」

僕たち(・・・)の中さ。ちょうど中心部あたりかな?ちゃんと生きているよ。…でも気を付けて。キミはここで死ぬかもしれない」

 

地を這う泥から次々と剣や槍の穂先が生えてくる。

 

「く———」

「うまく避けてね」

『イリヤさん!?』

 

届かない。

必死に暴走を抑え込んでいる俺じゃ、一手届かない。

 

今度こそイリヤが死んでしまう。

 

 

そうして打ち出される宝具を———投影で弾きながら、クロがイリヤを救出した。

 

「「クロ!!」」

「バッカじゃないの!?こんなやつを前にあんな距離を保つなんて!!っていうかこいつ何なのよ!?」

「攻撃方法から見て、おそらく8枚目のカードでしょう」

 

クロだけではない。

 

「バゼットさん!!」

 

頼もしい援軍がやって来た。

 

 

 

 

 

 

「あの中にミユと白野が…!?」

 

走り、宝具の掃射を避けつつ状況を説明する。

 

「まさかミユまで並行世界関連だなんて…」

 

…俺も、とか言い出せる空気じゃないよなぁ。

 

「どうりであの翁が首を突っ込んでくるわけだ」

「でもどうするのよ!助けるにしても、こんなの近付くことすら…」

 

「…相手の戦力を分断する方法はある」

「お兄ちゃん?」

「どういうことですか衛宮士郎」

 

三人の視線が集中する。

 

ギルガメッシュ(アイツ)の言葉を信じるなら、あれは本能と理性の二つに分断されているらしい。そのうえで、あの無限にも思える宝具の大部分は本能側———デカブツの方が所有している。理性(小さい方)回路(パス)を繋ぐことで扱う分には問題ないようにしているというか…手綱を握っているようなもんだとおもう」

 

「つまり、理性と本能の回路(パス)を分断すれば、少なくとも本能の方は理性的な宝具の掃射(・・・・・・・・・)を行う事が出来なくなる、と」

 

その通り、と首肯する。

 

「問題点があるとしたら…どれだけの宝具を所有しているのかがわからない以上、無差別な掃射をされる可能性があるってことね」

「ま、待って!でもそれじゃ、分断された片方を倒す間にもう片方が暴れるんじゃ…!それにアレ(・・)を倒せるとは…」

 

ちらり、と円蔵山の山頂付近へと目を遣る。

 

大きく肥大化したヒトガタの泥人形。その頭部らしき部位に足場を作り、黒く染まった黄金の鎧を纏う幼い英雄王。黒の浸食は鎧だけに納まっていて、足元の泥人形とは陰で接続されているのが見て取れる。

 

宙に黄金の波紋はもう浮かんでいない。

広がる泥の地平から産み落とされた剣山が次々と撃ち出されていく。

 

「…最初の質問の戻るようですが、どうやって接近するのです?」

 

具体的な案を考え込む。

 

 

 

 

 

「なかなか当たらないな。それなら、もっと大雑把にいこうか」

 

そんな最中に泥の巨人が持ち上げたのは、巨人の身の丈ほどもある大剣。

視ただけでわかる。あれは投影できない。

 

星が、神が生み出した絶対の神秘。

 

「さすがにもう避けてとは言えないな」

『薙ぎ払いが来ます!イリヤさん上空に…!』

「バゼット!私たちは一度下がるわよ!」

「くっ…!」

 

 

「2人とも、こんな気持ちだったのかな」

「…イリヤ!?」

 

突然止まったイリヤに声をかける。

 

「バーサーカーとの闘い。私が逃げていた間、ミユもハクノも逃げずに戦ってたんだよね。到底かないっこない敵と」

 

どうしてなのかな。

 

消えそうなその呟きを耳にする。

 

 

————。

 

 

 

『美遊様も白野様も、イリヤ様が友達だから…と』

 

 

 

ぐ、と体に力を籠める。

 

 

 

 

———現実では敵わない相手ならば、想像の中で勝て。自信が勝てないのなら、勝てるモノを幻想しろ。

 

 

 

ああ、その通りだ。

神造兵器は投影できない。

 

 

それがどうした(・・・・・・・)

 

 

「何をしてるのイリヤ!早く逃げるわよ!?」

「しかし逃げ場など…!」

 

木々をなぎ倒しながら、大剣が迫り来る。

 

「関係ない私を巻き込んでごめん、って。私にだけ聞こえるように捕まる寸前にミユは言ったんだ」

 

山の表面を削るような一撃。

 

「逃げられるはずがない。私、しなくちゃいけないことができた。二人を…絶対取り戻す!そして、ミユをひっぱたく!」

 

「はぁ!?」

 

 

「じゃあ、まずはあの攻撃を防がなきゃだな」

 

神造兵器を防げない?逃げ場はない?

理解していたはずだ。俺の魔術回路が何に特化していたのか。

 

それでも。

 

「勘違いしていた。俺の剣製ってのは剣を作ることじゃない、自分の心を形にすることだったんだ」

 

一歩、みんなを守る様に前へ踏み出す。

 

「「お兄ちゃん!?!?」」

 

突然のことに驚く皆を他所に、問いかける。

 

「エメラルド。———力を貸してくれ」

 

そう、それは決して難しい筈はない。不可能な事でもない。もとよりこの身は、ただそれだけに特化した魔術回路なのだから。

 

『いいんだね、士郎さん』

 

そう言って飛来してきたエメラルドを右手で掴む。そしてそのまま左肩、弓兵(アイツ)の記憶で見た、別の俺が遠坂の魔術刻印を移植していた場所へと押し当てる。

 

 

 

 

———途端に、膨大な魔力が体を巡る。

 

27本の魔術回路を全力で使う。

エメラルド自身の機能で身体能力の強化は行われているから、反動や暴走による怪我も強引に治癒させる。

 

溢れだす魔力が紫電を走らせ、左腕を緑の魔術回路が駆け巡る。

 

 

 

「———投影(トレース)完了(オン)

 

 

地を這うように展開した剣群(弾丸)を同時に射出。

その勢いで迫り来る千山斬り拓く翠の地平(イガリマ)を頭上へとはじき出す!

 

 

 

「———贋作者(フェイカー)。まだ噛み付くか。それほど贋作(玩具)が好きなら———真作(本物)を以って蹂躙しようじゃないか」

「———贋作が本物に劣ると誰が決めた」

「なに?」

 

「往くぞ、英雄王。————武器の貯蔵は充分か?」

 

 

そして、世界が赤く燃える。

 

 

 

 

 




怒涛の原作名言ラッシュ。


誤字脱字などの指摘、感想、評価などがありましたらよろしくお願いします。


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