Fate/kaleid stage   作:にくろん。

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ふふふ。
前回年内ラストといったな!あれは嘘だ!

どうもにくろん。です。
旅行なうなので予約投降につき返信が遅れますのこと。

EXTRAのシナリオ集やばいですな。未プレイ勢だったので読みふけっていました。
コードキャストの詳細があればさらにはくのん強化できたのに(笑)

それでは本当の年内ラストです。
本編どうぞ。

…美遊と士郎の絡みを書くのがつらい。


9話 弓兵

 

 

イリヤがセイバーを圧倒している。

 

やっていることはさっきまでの俺とあんまり変わらない。違うのは圧倒的なまでの魔力の量と纏っている雰囲気だった。

 

 

 

 

気絶から目が覚めると、宝具の撃ち合いをしていた場所よりも橋の方に移動していた。たぶん最初に放たれた宝具によってできたクレーターのところにいた。

そばには和装のまま気絶している白野。そして黒髪の少女がいた。

 

 

「おに……士郎、さん」

「ああ。えっと…君…は?」

「————っ。……美遊。…美遊・エーデルフェルトです」

 

一瞬、何かを言いよどむようにして名乗ってくれる。

 

「美遊、か。ごめん、俺が気絶してから何があった?」

 

 

何かをこらえるように泣きそうな顔をした美遊はポツリポツリと話してくれた。

 

宝具の撃ち合いは相殺による大爆発で終わったこと。白野と俺はそのまま気絶してしまい、エメラルドと美遊が橋の下まで運んだこと。

 

 

 

 

————俺と白野の意識がないのを見たイリヤが、セイバーに単身挑んだこと。

 

 

それを聞き、思わず立ち上がろうとしたが体が動かない。

 

「無理しないで!…ください!さっきまでの戦闘でもうボロボロなんです!」

「…そう、か。治療とかはできないのか?」

『私は所有者(マスター)しか治療できません。申し訳ありません』

「そんな……!じゃあイリヤは一人で!?」

「それも…多分大丈夫です。おに……士郎さんと白野の影響で黒い騎士も弱っているように見えますし、英霊そのものならばともかく、アレは英霊の現象のようなもので英霊そのものよりも弱体化されているらしいですから」

「英霊の…現象…?」

 

 

 

戦闘中の違和感を思い出す。

想定していた前世のセイバーよりも攻撃力は確かに弱体化はしていた。でも、それは理性を失っているから理性をもって戦っていた彼女より弱体化されていたんだと思い込んでいた。直感などが鋭かったから余計にそう思う。

 

 

でも。

 

 

一撃目。

魔力で強化されていなかったとはいえ、英霊でもない俺の投影品の干将莫耶であの聖剣を受け止められた。

全投影連続層射を魔力放出のブーストで突き抜け、そのまま剣の柄で殴られた時もダメージはかなり大きかったが一撃で昏倒させられたわけじゃない。ましてや、直後に無理をしたが投影することはできた。

 

 

 

本当に、弱体化していた……?

 

 

 

確認するべく、戦闘が行われていると思わしき場所に目を向けると——————赤い弓兵(アーチャー)の格好をして戦っているイリヤがいた。

 

 

 

「え…?」

 

 

 

理解が、追いつかない。

 

 

 

 

干将莫耶を両手に持ってはいる…が、解析したソレは俺の投影品よりも更に劣化している投影品だ。

だが、込められた圧倒的な魔力により、強度だけ見れば俺の物よりも高いかもしれない。

 

 

 

 

 

 

—————俺は、この戦いを見逃してはならない、と直感が警鐘を鳴らす。

 

 

 

アーチャーの力を使うイリヤ。

理性を持たない、英霊の現象としてのセイバー。

 

 

 

共に正規のものではない、ハリボテの英霊が剣戟を交わす。

 

 

 

 

 

 

「————投影、強化(トレース・オーバーエッジ)

 

 

イリヤの詠唱と共に両手の干将莫邪がピシピシと変形する。それはまるで鳥の翼のように巨大になり、より殺傷能力が上がっているのが視える。

 

イリヤはそのまま強化した干将莫邪で斬りかかる。

セイバーとまともに打ち合っても壊れないほど強化されたそれは確かに強力だ。

 

だが、干将莫邪の強みはその引かれ合う特性だけではない。守りの剣技に徹する際、それ自身の大きさが通常の剣よりも小振りなおかげで取り回しやすく、二刀扱っても体の動きを阻害しない柔軟な動作ができる。でも、イリヤの今使っている強化された干将莫邪は元のものよりも二回りほど大きくなている。

 

 

「■■■■————」

 

そしてそんな隙を彼女が見逃すはずがない。

理性のない剣技でも、元の彼女の力量からすると十分な脅威となる。セイバーの振るう聖剣と右手の干将が当たる—————前にセイバーはわずかに身を引き干将をいなし、懐へと潜り込む。

 

 

—————うまい。純粋にそう思った。

あそこまで接近されたら通常の干将莫邪ならともかく、今の巨大な干将莫邪なら振るう事が出来ない。セイバー自身も潜り込むために剣を後ろへと流した体勢だが、もともとあの距離では振るえないことを考えると————

 

 

 

「イリヤ!」

 

腹部の鈍痛と共に次の行動がわかる。

 

想像した通りセイバーはさっき俺にやったようにそのまま聖剣からジェット噴射のように魔力を放出し、イリヤを吹き飛ばそうとする。

 

「まずい、このまま吹き飛ばされたら——」

 

魔術回路に魔力を通し手助けするべく投影しようとするが激痛に襲われ一瞬間が空く。

 

 

しかし、イリヤは振りかぶった左手の莫耶を投げつけるように振り下ろした。

懐だろうが関係なく放たれた攻撃に、セイバーはタックルを止め魔力を纏わせた聖剣を振り上げ迎撃する。その隙にイリヤはバックステップとバク転を繰り返し距離を取る。しかもただ距離を取ったのではなく、回転によるひねりを加えながら勢いをつけ、次々と投影した干将莫邪を投擲する。

 

強化されたものは最初に持っていたものだけだが、続く6本の干将莫邪が撃ち込まれセイバーの居るあたりから爆発音と土埃が立ち込める。

 

 

そうして距離を取ったイリヤは、

 

 

 

 

「———————投影、重装(トレース・フラクタル)

 

 

    ——————————偽・螺旋剣Ⅱ(カラドボルグ)

 

 

 

 

いつの間にか投影していた黒弓に捻じれた剣をつがえ放った。

 

 

 

土埃を吹き飛ばしながら進むそれはセイバーが首を傾けたすぐその場所を通過し、川へと着弾し大きな水しぶきを上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその戦いは、再び聖剣へと集約する黒い魔力の霧によって帰結する。

 

 

 

 

 

「————投影(トレース)…」

 

 

 

 

セイバーの宝具の予兆に、イリヤが対抗すように唱える。

だが、アーチャー(アイツ)があの聖剣を投影できないのはここにいる誰よりも俺が知っている。

 

 

だからこそ、

 

 

「…——————完了(オン)

「———……っ」

 

 

 

————イリヤの手に握られた間違えることのない聖剣に声が出ない。

 

 

そして。

 

 

 

「———約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!」

「———約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!!」

 

 

 

最強の聖剣の撃ち合いとなった。

 

 

さっきの戦闘でイリヤが英霊エミヤをその身に宿しているのはわかっていた。詳細はは知らなくともイリヤが小聖杯としての機能を持っていたのは知っている。今は封印しているとアイリさんと切嗣に言われたが、そんな彼女ならば星の鍛えた最強の聖剣すらも投影できるのかと戦慄する。

 

 

 

「————ぁぁああああ”あ”あ”!!!」

 

 

そして2つの聖剣の撃ち合いは…真に迫る贋作の勝利で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いったい何度驚かされるのだろう。

 

キャスターの撃破後に現れた黒騎士。

乱入してきた士郎兄。

聖剣を受け止め、無銘と同じように戦う士郎兄。

 

それに折り合いをつけたと思ったら気絶して。

目を覚ますと今度はイリヤがアーチャー?

 

 

一体いつから無銘の英霊のバーゲンセールが始まったんだ。

 

イリヤの戦いを見ながら現実逃避気味に考えていると、さっきの焼き直しのように。

今度は本物と本物の聖剣が激突した。

 

 

「————っっ!」

 

頭を押さえ、姿勢を低くして余波に耐える。

 

 

 

 

 

そしてそれが収まると、一枚のカードと

 

 

「っ!イリヤ!」

 

倒れ伏すイリヤがいた。

 

イリヤの全身が光ったと思うと、胸のあたりからカードが飛び出し元の服装に戻る。

 

 

 

いったい、あれは…。

 

 

 

士郎兄、美遊さんと共にイリヤに駆け寄り、容体を見ながら考える。

 

 

「大丈夫、だ。脈も安定しているし、魔力の乱れも今はない」

「よかった…」

「それにしてもさっきの姿って「だあらっっっしゃあああ!!!」……て…」

 

「やっと出れた!白野!イリヤ!無事!?」

「美遊!!!大丈夫ですの!?!?」

 

 

 

 

 

 

現れたのは、地面を掘削するためかルビーで転身したままの凛姉とボロボロの衣服を身にまとったルヴィアさんだった。

 

 

「「「「「…………」」」」」

 

 

 

 

 

「や、やあ遠坂。久しぶり…?」

「なんで衛宮くんがここにいるのよおーーーっ!」

「殿方に…殿方に…きゅう~」

 

 

マジカル凛姉は羞恥から発狂し、ルヴィアさんもところどころ肌がむき出しになって…なんとも露出度が高くなっている服装を理解したのか目を回した。

 

 

「忘れなさい!!!!!」

 

ルビーから魔力砲が飛び出し、士郎兄が逃げる。

 

とりあえず。

 

 

 

「…そろそろ接界(ジャンプ)しないと境界面崩れそうじゃない?」

 

 

 

 

 

という私の言葉でその場のカオスは収まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元の世界に戻る。

しばらく休んでいたおかげで体は動くようになったので、眠ったまま動かないイリヤは俺が背負っている。

 

 

 

「ごほん…。えーっと、改めて。なんで衛宮くんが鏡面界にいたの?」

 

なんて答えるべきか。

 

「あー…。それよりも、なんで遠坂がイリヤと関わりがあるのかを知りた…い…んだけど…」

 

鋭い眼光に思わず萎縮する。

 

「なに?質問しているのは私なんだけど」

「そうはいくか。妹がこんな騒動に巻き込まれていたんだ。気にならないわけがない」

「妹!?」

 

なんだ。知らなかったのか。

 

「そうだ。俺のことは明日にでも必ず話す。だからとりあえず、ダメージが大きそうなイリヤを連れて帰りたい。でも、さすがに状況を知っておきたい」

 

我ながらよくすらすらと出てくるなあ。

 

「うぅ…。そういうことなら仕方ないわね。イリヤは偶然、たまたま私たちの領域に巻き込まれたのよ。で、その原因がそこのステッキ」

『どうもー。マジカルルビーちゃんです』

「ああ。遠坂の」

「私の姿は忘れて!!!…とりあえず、そこのイリヤと白野、美遊の三人は各自ステッキに巻き込まれて私とルヴィアの騒動に巻き込まれたの」

 

なるほど。

 

「それより、本当に衛宮くんの事情を話してくれるのよね?」

「当たり前だ。俺だって戦ったんだ。詳しく知りたいし、そのためなら話すことだってするさ」

「そう…って戦った!?あれと!?」

「ああ。さすがに一人じゃきつかったから手伝ってもらって、そのうえで負けたけど」

 

どうせ話すことだし、白野か美遊から話は聞くだろうから隠しても意味はない。

 

「転身した私とルヴィア二人掛かりでも押し負けたのに…。どうやって?」

「わるい。それも明日話す…そろそろいいか?あんまり長居してイリヤが風邪をひいたら困る」

「ああ、ごめん…絶対話してよね」

 

 

 

そうして家に帰る。

さて、セラリズと、出来たら海外のアイリさんや爺さんと相談して話せることを決めないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれと生身で戦って無事だなんて…。白野、美遊。どんな感じだった?」

「私は遠目にしか見れませんでしたが…激しい戦いでした」

「うん。士郎兄は互角以上に戦っていたよ。私の補助がなくてもほとんど関係なかったし」

 

まあ、あの英霊の子孫なんだ。

何ら不思議はない。

 

でも、凛姉はそうじゃなかったみたいで。

 

「カレイドの魔法少女の補助なしで互角以上…?なんでそんなバケモノが冬木に、しかも私の知らないところでいるのよーっ!まずい。衛宮くんが敵になった場合私たちで勝てるかどうか…」

「凛姉凛姉。そんなに心配しなくても大丈夫だよ。だって士郎兄だよ?」

「なんでそう言い切れ…士郎兄?白野、もしかしなくても知り合いなの!?」

「あれ、言ってなかったっけ?士郎兄はイリヤのお兄ちゃんで、よく遊んでいる私にもよくしてくれてるんだ」

 

 

その後、凛姉に士郎兄のことを根掘り葉掘り聞かれた。

とりあえず、英霊の子孫ってのは伏せといた。なんでわかったのか追及されると私もやばいし。

 

「なによそれ…学校の衛宮くんと変わらないじゃない…」

「そういえば凛姉が留学する前は同級生だったっけ?」

「そうよ。…私をだまし続けてきたんだとしたら遠慮はいらないわね」

 

うわー。凛姉の目が血走ってきた。

士郎兄、超逃げて。

 

 

「とりあえず二人とも、お疲れさま。連戦なんてきつかったでしょ?家に帰ってゆっくり休むといいわ」

 

 

 

そう言われ自宅に帰る。

ちなみにまだ目を回していたルヴィアさんは凛姉が運んで行った。

 

 

 

『はくのん。今日の士郎さんとイリヤさんの戦いに心当たりあるの?』

 

自宅に着き、お風呂に入っていると唐突にラルドにそう聞かれた。

 

「…なんで?」

『士郎さんの戦闘を見ている時のはくのんおかしかったもん。途中から吹っ切れたみたいだけど、イリヤさんのあの姿を見てまた同じようになっていたし』

「わかってたんだ」

『そりゃあね』

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ラルドは私が並行世界から来たの知っているよね」

『うん』

「私ね、転生、って呼ばれる形でやって来たの」

『転生…それでも前世の記憶があったら第二魔法に分類されるね』

「並行世界の干渉、だっけ。そこでね…私はある戦いをしていたんだ。そしてその時私と共に戦ってくれた英霊が、あの二人の戦い方と同じだったんだよ」

『英霊…戦い…。それは確かに言いづらかったね。ありがとはくのん、僕に話してくれて』

「ううん。あの二人を見たら…私もちょっと、吐き出したくなったから」

 

アヒルの人形をぐにぐにしながら続ける。

 

「私の中で折り合いはつけていたの。でも、やっぱり目の前で見ると懐かしいというか…ね」

 

 

 

 

 

 

 

そのあとは詮索もせず、じっとラルドは私の愚痴を聞いてくれていた。

 

 

このことを話せた最初の相手。

一般人には絶対与太話として受け入れてくれないであろう話を受け入れてくれるラルドに、私は信頼を寄せ始めていた。

 

 




白野は無銘さんが似ていたということしか話していません。月の聖杯戦争や、ほかの3騎についてもノータッチです。懐かしさを慰めてもらっていただけです。

さてあらためて。
拙作を読んでいただいてありがとうございます。プリヤ原作を読んで、士郎出したい、あれ、戦ってるシーンで無銘さん思い出すんじゃね?EXTRAやってないけど混ぜたい!そんな勢いから書き出した拙作が多くの方に楽しまれているようでありがたいです。日間ランキングに載ったりや評価バーに色がつくのも初めてでほんとに嬉しかったです。

また来年もこんな作品ですがよろしくお願いします!
それではよいお年を!



誤字脱字などの指摘、感想、評価はいつでも受け付けています。
第四次のアンケもまだまだ募集中です。よろしくお願いします。


……正月のFGOガチャ、闇過ぎるなぁ

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