異界、影に生きる   作:梵唄会

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小南さんの口調が曖昧だったので適当に書いてしまいました。
後で、原作を見ながら確認するかもしれません。申し訳ありません。


戦闘中の主人公の口調を変更しました(2015/12/10)


7話・闇討ち

■イタチ視点

 

 

 里抜けし、暁に潜入して何日か経ち、俺は一人の少女と出会った。ただの偶然だったろう。しかし今思い返せば必然だったのかもしれない。

 

 最初の印象はただの少女だった。深い夜空の様に艶やかな黒い髪を背中程まで伸ばし一点に浮かぶ月の様な瞳。だいたい十歳前後だろうか。

 視線が合ったのは偶然だった。だが、彼女はその瞳に驚きを浮かべた。俺は彼女とあったことは無い。面識も無いはずだ。

 

「何故、俺を見て驚く?」

 

「……」

 

「だんまりか。仕方ない、力ずくは好きではないんだがな」

 

 俺は写輪眼を開き、彼女の瞳を覗く。

 しかし、彼女に瞳術をかけることは出来なかった。驚く俺の隙をつき、彼女は俺との距離をとった。

 少女ながらの身で良く鍛えられている。この程度の体術だけならさして問題は無いが、写輪眼の幻術を破った相手ならば、それだけではないはずだ。

 彼女の視線が一瞬下を向く。何か仕掛けるか、と思った瞬間に俺の影から黒い槍が複数、首に向かって伸びてきた。

 ――早いっ!

 

 俺は変わり身で攻撃を回避し、彼女の背後にまわりこみ攻撃を仕掛けるが、湧き出る影に阻まれる。

 攻防一体の影を操るか。奈良の影真似とは違う……。血継限界か?

 

「悪く思うな。天照」

 

 逃がしては元も子もないと、万華鏡写輪眼で天照を発動する。視界に入った影の盾ごと彼女に魔界の炎を召喚した。だが漆黒の炎が全身に身体にまわると、初めから無かったように彼女は消えていった。

 

「ククク。逃がしてしまいましたね」

 

「見ていたのか」

 

「はい。珍しいですね。万華鏡写輪眼まで使って逃してしまうのは。それ程の手練でしたか」

 

 暁のメンバーの一人である鬼鮫。彼の言う通り彼女の能力は厄介だった。まず、写輪眼クラスの幻術に対する耐性。攻防一体の影。そして写輪眼で感知すら出来ずに天照から逃げきった逃走術。俺から見てどれをとっても一流だ。

 そんな相手が俺を知る。俺が暁である事もバレていると考えた方が良いだろう。流石に真の目的までは知らないだろうが。

 

「仕方が無い。追跡は諦めるしかない」

 

「そうですね。クク、次は私のお相手もして頂きたいものです」

 

 

 

 発見次第、戦闘。そして逃げられている。そんな繰り返しが二年程続いた。

 不思議な事に彼女の外見が変わることはない。見た目通りの年齢ではないという事かもしれない。

 だが、あの力量なら納得が出来る。並大抵の忍びなら、俺達暁に囲まれて逃げるどころか、抵抗すら不可能だろう。

 だが、彼女は俺達複数を相手に立ち回り、足取りすら残さずに消える。それこそ本当に存在したのか不思議な程、痕跡は隠蔽される。まるで忍びの亡霊でも追っているようだ。

 世界各地で、何処にでも現れそして何処にも存在しない。それが俺の見立てる彼女の印象だった。

 知らずのうちに情報を盗まれ、決して捕まえる事は出来ない。忍びの理想形に近い。

 

「いい夜ね、うちはイタチ」

 

「……大蛇丸か」

 

「悪いけど、その身体いただくわ」

 

「……」

 

 やはり大蛇丸は今日のこの時を狙っていたか。

 大蛇丸は確かに強い。だが、彼女の得体の知れなさとくらべてしまえば、それ程恐れるものでもなかった。

 

「残念だが、話は本当だったようだな」

 

 背後からサソリが現れる。

 数日前、サソリに匿名で聞達があった。大蛇丸が裏切るということと、その際俺を狙って来るだろうということだ。

 おそらくは、彼女だろう。何処まで知っているのか恐ろしくある。

 もし、彼女だとしたら目的は何だろうか。内部分裂だとしたら知らせる必要はない。そういえば、彼女は大蛇丸に執拗に追い回されていた。それが理由だとしたら案外可愛らしい事だと苦笑がこぼれる。

 

「裏切り者は生かしておけない。此処で死んでもらう」

 

「クク、アハハハハハ。なんでバレていたのかしら? カブトかしら? まぁ、そんな事は後で聞けばいい! あなた達二人を相手に勿体ぶっても仕方ないわね。ふふ行くわよ。口寄せ・穢土転生!」

 

 穢土転生……。禁術ばかり使う大蛇丸らしい術か。

 出てきた柩は一つ。出てきたのは初代火影様だ。

 奴の狙いは、写輪眼を持つうちはの血継限界だろう。ならば、次に狙われるのはサスケだろう。生かしてはおけない、俺も最初から全力で行くとしよう。

 ――万華鏡写輪眼!

 

「サソリは初代火影をたのむ。大蛇丸は俺が殺る」

 

「ふん、しくじるなよ」

 

□主人公視点

 

 

 始まったか。大蛇丸が穢土転生を使い戦力が二つに分断された。

 というか、折角情報を送ったのに来たのはサソリさんだけかよ。もしかしてイタチさんは嫌われてるのか? イタチさん根暗そうだから暁でも浮いているのかもしれない。サソリさんもちょっと根暗っぽいから、根暗同士仲がいいとか?

 

 戦局は、さすが体術・幻術・忍術全てにおいて上回ると言わせるだけあってイタチさんが大蛇丸を押している。あれでうちの白より二歳しか違わないとか。

 

 サソリさんの方は自分の手を明かしたくないのか、逆に初代火影の木遁に押され気味だ。奴は傀儡を十体しか操っていない。明らかな手抜きだ。

 てめぇ真面目にやれや。ゾンビなんぞさっさと片付けちまえ。とサクラちゃんの様に、内なる影ちゃんが現れてしまう。

 

 そういえば、穢土転生なんて術があるということは幽霊もいるかもしれないのか?

 というか波風ミナト。コイツも幽霊みたいなものじゃないか? いや、ミナトさんは、火力を上げて物理で殴るが通用するから怖くない。

 

「ねぇ、影ちゃん。考え中のとこ悪いんだけど、大蛇丸逃げちゃうよ」

 

 ミナトさんに指摘され戦場に目を戻すと、諦めてしまったのか大蛇丸が逃走をはかろうとしていた。

 ――逃がすか。新術、影遁・影牢(カゲロウ)の術!

 大蛇丸の行く手を何本もの影の柱が地面から突き出し封じた。

 コレで私の居ることがバレてしまったな。予想以上に大蛇丸の撤退の判断が早かった。

 仕方ない。私も参戦させてもらうか。

 

「誰かと思えば、お嬢ちゃんじゃない。フフ、お嬢ちゃんから来てくれたのは初めてかしら。でも、ごめんなさい今は忙しいから後でいくらでも付き合ってあげるわよ!」

 

 そう言いながら、大蛇丸はクナイを投げ牽制する。

 

『それは御免だ』

『コレで最後にしてもらいたい』

 

 ――影木の葉落とし、加えて兵仗那由他の術。

 大蛇丸に影木の葉を降らせ、その中から影の刃で大蛇丸を狙う。

 大蛇丸は微塵にも切り刻まれる。がそれは薄い表皮だった。お得意の脱皮ですね、分かります。

 

「やっぱり、君だったか」

 

『何の事だ?』

 

「手紙」

 

『さて?』

 

 何故バレているんだ?解せぬ。

 

『私も協力する』

『背後から撃つなんて事がないことを願う』

 

「手助けなど……。俺一人で十分だが?」

 

『それは、失礼しました』

『逃げられそうになっていたのでつい』

『私としても大蛇丸に追い回されるのは御免だから』

 

「クック。そうか分かった」

 

 嫌味を言ったつもりなのに、いきなり笑い出した。どうしたのだろうか? 怖いから止めて欲しい。

 

「いつまでお喋りしてるのかしら? こちらから行かせてもらうわよ?――口寄せの術」

 

 これがマンダか。実物を見ると怖くてちびりそうになる。ちょっと濡れてしまったかもしれない。

 ……笑った人は想像してみればいい。頭部だけで人より何十倍も大きい蛇を。どや?

 

 冗談は置いておいて、あの質量は厄介だ。あちらが動くだけで大きな攻撃になる。でも、マンダが居ることは最初からシミュレート済みだ。対策は練っている。

 ――新術第二弾! 影遁・影鏡(かげかがみ)の術。

 

「凄いな。ここまでのものが作れたのか。だが、見た目は凄いがマンダに通用するか? ハリボテじゃなきゃ良いがな」

 

『さて?』

『やれるだけやってみます』

 

 影鏡の術は相手とそっくりに影を形成しただけの術だ。

 

「てめぇこの糞ガキ。大蛇丸に呼び出されただけでもイラつくのによ。俺様の模造品まで作りやがって。ぶっ殺してやる」

 

 蛇と戦うのはどうすれば良いのだろうか。天照でさっさと焼き尽くしてしまえと言いたいところだが、着火したところで脱皮されて終わりだ。

 いっその事マンダの口の中にイタチを放り込んで、中から燃やして貰うか。自分も巻き添えに成るだろうが尊い犠牲だ。

 そういえば天照って術者本人には引火しないのだろうか。サスケくんは天照で燃えた腕で殴られていたけど、引火して無かったような。

 イタチをマンダに投げようと思い、背後を見たらいつの間にか消えていた。残念だが仕方ない。私は私の仕事をやろう。

 

 大蛇丸を乗せるマンダがその巨体とは思えない速度で私の影マンダに接近しその首を噛みちぎらんばかりにくいついた。

 だけど、それは無駄だ。マンダの形をとってはいるが、影に決まった形は無い。変幻自在。それ故に影だ。

 ――形態変形、大ギロチン。

 噛み付かれた根元から影マンダの頭を吹き飛ばし、そのまま空中で巨大な刃に形を変え落とす。しかしマンダはすぐに身を引き、ギロチンを避けた。やはり大きすぎて変形に時間がかかり使い物に成らないな。

 だけど夜は私の世界だ。そう簡単には逃がしはしない。

 ――新術第三弾、影遁・影縫い(カゲヌイ)

 映画、バイオハザードのレーザートラップからアイデアを貰った。私の出来る極限まで細くした影の線にチャクラを通して強化し網目に組んだ。相手、質量と体積が大きい程効力を発揮する。

 その上夜であれば、まず見えないだろう。チャクラを通しているため、白眼にはバレバレだろうが。

 知らずにそのまま影縫いに突っ込んでくるマンダに、横回転させ細切れにした。

 やったか?

 

「死ね糞ガキがぁあああ!」

 

 ですよね。

 ドゴオオオオ! という地鳴りと共に背後の地面から怒声を喚き散らしてマンダが飛び出した。

 そのまま尻尾で私の影マンダを叩きつける。私の影マンダは叩き割られた水風船のように霧散する。

 どうやらハリボテだったようだよ、イタチさん。

 だけど、私の影マンダはこれで終わりじゃない。寧ろコチラが目的だった。

 霧散した影がまとわりつきマンダの動きを封じた。

 

「くそがああああ!」

 

「まだよ」

 

「いや、これで終わりだ」

 

 印を結ぼうとした大蛇丸の腕が黒い炎に燃やされる。ソレを大蛇丸は、躊躇いなく切り落とした。

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙! 覚えてなさい。これで終わりじゃないわ!」

 

 ボフンという音と共に消える大蛇丸。

 

「逆口寄せか。用意周到な事だ」

 

『逃げられた』

 

「ああ、だが奴の腕を奪っただけで収穫があったとしよう」

 

 ああ。イタチさんは知らないだろうが、このあと大蛇丸は不屍転生で新しい身体に移る。つまり収穫はゼロという事だ。全くの無駄骨に終わった。

 

「逃げられましたか」

 

「小南か。何時からここにいた?」

 

 本当だ。お前、いたなら手伝えよ。逃がしちゃっただろうが。

 

「さっき来たばかりです。さて、大蛇丸が抜けてしまったし、新しいメンバー探さなくてはいけませんね。君ははじめましてだったね。私の名は小南。いつかあって話して見たいとは思っていました。……ねぇ、君。随分強いみたいですね。良かったら暁に来ませんか? 暁の事は……知っていますよね。何度か交戦していますし」

 

 冗談はよして欲しい。私が暁に……。いや、冷静に考えると悪い話でも無いかもしれない。

 暁は戦力的にこの世界でほぼ最強に位置する。入っていれば、もう暁から追われる事も無いだろう。丁度大蛇丸も抜けた事だし身体も狙われる事も無い。逆に暁に成ってしまえば大蛇丸から手が出しにくいだろう。

 デメリットは抜け人で構成された組織の為犯罪者の仲間と思われることだが、顔がバレなければ問題ない。

 この世界で一番阻止しなければ成らないのは月の眼の計画だ。私など六百六十六体同時に思考するだけで頭が焼き切れそうになる。それなのに一人で果たして全人類の思考を制御する事など可能なのだろうか? もし制御出来ずに脳がオーバーヒートしてしまった時、術が解ければそれでいい。しかし解けなかった場合はどうなってしまうのか。最悪、全員植物状態になり人類滅亡エンドが待っているかも知れない。

 そんな事は御免だ。原作に任せておけばナルト少年がなんとかするだろう。しかし万が一の場合私が懐に入れば背後から闇討ち出来るかもしれない。

 これぞ、灯台下計画。完璧な作戦だ。

 

『良いですよ』

『だが、もし貴女方から襲うことがあったら貴女方の秘密バラす』

 

「何を……知っている?」

 

 殺気で空気が一気に重くなる。私みたいな小娘には辛い。心が折れそうだ。

 

『さて?』

『知っているかもしれないし、知らないかもしれない』

『でも、こう言っておけば襲いづらいだろう?』

 

 勿論秘密とは、小南さん達の目的だ。

 だが、簡単に知ってる事を知らせる気は無い。知らせずに行動を抑制するのだ。知っている事を知れば殺そうとするだろうし、分からなければ無闇に手を出すことは出来ないだろう。

 出されたところで元の関係に戻るだけだ。私に何のリスクも無い。

 暫く睨み合いながら膠着状態が続き、先に小南さんが殺気を崩すとその場の空気が軽くなった。

 

「良いでしょう、今から貴女は暁の仲間だ。名前は?」

 

『黒兎と呼んで』

『よろしく』

 

「ふん、オレは先に帰るぞ」

 

 サソリさん、生きてたのか。あなたは忍びらしく完全に空気だったよ。

 

『イタチは反対しないのか?』

 

「得体の知れない者を野放しにするよりも、手元に置いて監視していた方がましというだけのこと」

 

 さいですか。




~影ちゃんのスペックまとめ~
身長:144cm(変化時:153cm)
体重:ヒミツ
スリーサイズ:ヒミツ

幻術:使えないが何故か分身には効かない。
忍術:忍者ではない為、基本的な忍術は使えないが数個は使える。忍術は使えないのにチャクラ操作はなかなか。
体術:格闘は出来ず腕力は無いが走力のみ忍びの上位クラス。

◆技
ー忍術ー
・瞬身の術
・お色気の術(変化の術)
ー影遁ー
・影の盾
・影しばりモドキの術
・影錐槍の術
・兵仗那由他の術
・黒曜螺旋槌の術
・影貫礫の術
・影木の葉落としの術
・影牢の術new
・影鏡の術new
・影縫いの術new

◆称号
・幻の何でも屋
・黒兎
・木の葉の屋台のお姉さん
・石の国の大名
・石隠れの里長
・暁の新人

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