俺とアストルフォの第四次聖杯戦争   作:裸エプロン閣下

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ノベルゲーばかりやっていると立ち絵描写や風景描写が疎かになる。
Zero読み直して改めて学びました。

今日はバレンタインですね。私は二つ(早い者勝ちと全員プレゼント。両方義理)貰いましたよ。今まで母親以外からもらえなかった私からすれば大きな前進です。

それと、日間ランキング6位になりました。これからもみなさんよろしくおねがいします!



私は“絶対に勝つ戦”以外興味はない。 byアーチャー

「キャスター、そっちはどうだ?」

「こちらも異常ありません。魔術的な物はもちろん、怪しげな物品も一切ありませんでした」

 

 外来最後の一人、ウェイバー・ベルベットが暮ら(寄生)しているマッケンジー宅の近隣、ウェイバーは寒さも残る早朝から周囲一帯を見回っていた。つい先頃、自身の先生と御三家たる遠坂の拠点が民間人ごと爆破されたという報告を受けて、自分たちの拠点も同じことが無いとも言い切れずサーヴァントを連れて捜索をしていたのだ。結果はウェイバーよりも輪を掛けて高い身長を誇る赤いローブを羽織った橙色の髪を持つ優しい顔立ちの女性――キャスターが話すように何も無かった。居場所が割れている御三家に高級ホテル一層借り切ったケイネスとは違い、住人に催眠術を掛けて民家で過ごすというウェイバーの発想は魔術師殺しと謳われる衛宮切嗣を以てしても予想しなかった行動だったのだろう。

 

「そっか。それでキャスター、さっきのあれ、誰がやったか分かるか?」

 

 そう問うとキャスターは右人差し指を顎先に当て視線を上にやって考える。

 

「分かりません。ただセイバー、ライダー、バーサーカーの陣営ではないでしょう。となるとアーチャー、ランサー、アサシンの陣営のいずれかでしょう」

「一番怪しいのは?」

「アーチャーで、次点にランサーです」

「……」

 

 今度はウェイバーが考える。キャスターを召喚した際、行動方針を情報収集に専念させたことから大量の情報を得、それをもとに状況を把握するように何度も思考を重ねて一通り頭の中で戦力図を構築していた。その頭の中の情報から熟慮するとやはりウェイバーも同じような結論に達していた。

 

「ライダーとランサーの真名は分かったし、アーチャーの能力の一部も分かっているんだよな。それを餌に同盟を組むとしたら」

「バーサーカーとライダーです」

 

 きっぱりと断言した。これに関してはウェイバーも同様だった。それは顔見知りだからある程度信用してもらえるという浅ましい打算ではない。ケイネスは自分みたいな歴史の浅い魔術師を頼ろうなど考えもしないし、シンヴェルに至っては覚えているかも怪しい。

 ケイネスのバーサーカーはアーチャーに弱く、打てる対応はすべて打っておきたいしライダーは自身の真名を知っている者をわざわざ敵に回したくない。それにキャスターの魔術は脅威であるため味方につけても何ら損はないだろう。

 

 キャスターが誇る魔術、月の目――日が落ちた夜に月光が届く近隣一帯を知覚する。

 それがキャスターの持つ魔術の一つ(・・)であった。夜限定の為昼には使えないものだが元々聖杯戦争は人目を忍ぶため夜にやるので何ら問題は無い。これによりウェイバーは聖杯戦争の序盤でありながら早くも二体のサーヴァントの真名を知ったのである。

 

「バーサーカーとライダーか。確か今日の二十時に倉庫街で同盟を結ぶんだったよな」

「はい。混ざりますか?」

 

 ここでもう一度熟慮。バーサーカーは対魔力の高い英霊ではなく、いざ同盟が破綻した時でも十分に戦えるだろう。対してライダーは破魔の魔術書を持っているが、マスターはその限りではない。しかし身体能力が高いシンヴェルにキャスターがやられないかという懸念も無くはないが、バーサーカーを捕獲できれば容易い。うまくいけば手を結べなくとも敗退、あるいは停戦に追い込むことはできる。

 しかしウェイバーはそこまで簡単にことが運ぶとは思ってなかった。何しろ相手は時計塔講師の二人である。安否を尋ねる意味で目線を向ける。

 

「ご安心を。[変化]のスキルを使えば逃げることは大丈夫です」

「…………本当だろうな」

「ふふ、気遣いありがとうございます。ですがこれでも私は魔女ですよ」

 

 不安げに見つめるマスターへキャスターは明るい顔で微笑みながら語った。

 

 

 ※※※

 

 

 平日の真昼間からいい歳した大人がほっつき歩いている、と書くとダメ人間のように思えるがそれは違う。彼が身に着ける真紅の紳士服はそんなことを感じさせず、酷く肩を落としながらも漂う気品がそれなりの地位にいたことを分からせていた。

 

 男の名は遠坂時臣。ここ冬木の地の管理者たる遠坂家の現当主である。しかし現在彼の家は周囲一帯ごと爆破され結界どころか工房まですべて埋まってしまっている状態だ。時臣自身は己のサーヴァント・セイバーによって救出されたが唐突な出来事で礼装や宝石を持ち出す余裕もなく、現在の時臣の立場は非常に危ういものであった。幸いなことに金銭や拠点は消防や警察に紛れてやって来た教会の者から手配してもらったため問題ない。

 しかし新たな拠点は当然ながら魔術的な保護がされている訳もないため再び結界など様々な防備を構築しなければならない上、特に霊脈と関係が強いわけでもないため遠坂邸の守りに比べれば格は大きく落ちる。

 

 時臣はこれまでの事を思い出す。英雄王の触媒は届かず、代わりに呼び出したセイバーは自分の言葉を全然聞かないバk――ではなく能天気。綺礼のアーチャーは勝手な行動をしてセイバーと交戦。その際セイバーはマスターが自分であることをばらしてしまい、極めつけには歴史と伝統ある我が家の爆破。工房にある礼装などはおそらく無事だが自分が買ってきた一級品のワインや使い慣れたカップ、まだ魔力を入れていなかった高価な宝石などは期待できないだろう。

 

 なぜこんなにもうまくことが運ばないのだろう。思わず泣きたくなった。

 

 

※※※

 

 

 平日の真昼間からいい歳した大人がほっつき歩いている、と書くとダメ人間のように思えるが、彼の場合はその認識でほとんど間違いないだろう。道のど真ん中で荒い息で体を引きずるように歩く、ぶかぶかのウィンドブレーカーを着てフードで顔を隠す男。明らかに怪しい。殺人鬼にテロと、様々な異変が起こり警戒態勢のこの町で今まで警察に出くわさなかったのは奇跡と言ってもいい。

 

 男の名は間桐雁夜。ここ冬木に古くから根付く間桐の家の次男である。彼はつい先ほどまで間桐の家で暮らしていたのだが一族の家長たる臓硯に『うちも爆破されてはたまらんから出てけ』と簡潔に説明されて家を追い出されたのである。雁夜としては臓硯はともかく、桜を巻き込まれることを防ぎたかったためそれは構わない。唯一の問題は雁夜がいない間に臓硯が桜に手を出さないか、という事だったがそこは内密にアサシンを置くことで解決させた。

 雁夜自身、さほど遠い所に拠点を構えるつもりは体力的にもないし近くの空き家でしばし体を落ち着けるつもりだったため、アサシンを一時的に離すことに問題ない。空き家を勝手に占拠するのは当然犯罪だが元々寿命は短いのだし、長居をするつもりはなかったため構わないと高をくくっていた。例の殺人鬼がやって来る可能性もゼロとは言えないが、さすがに雁夜でも虫を使えば一般人に負ける気は無かった。しかし魔術師と戦えば鎧袖一触、瞬殺だろう。

 

 そんな彼が、彼が知る中でも最も高みに位置する魔術師・遠坂時臣と出会うのは今から約三十分後である。

 

 

 ※※※

 

 

 ――現在時刻二十時、指定通りの時刻に倉庫街へ現れたケイネスの表情はまさしく鬼気迫るものだった。顔に青筋を幾本も浮かばせており、正直バーサーカーと並んでいると『狂化してませんか?』と聞きたくなるほどで、少し後ろで大瓶を持って(重量軽減はしてあるだろう)歩くソラウも怯えている。だが激高するのも分からなくもない、あんな方法を取るなど、誰が想像しただろうか。

 

 ――冬木ハイアット・ホテル倒壊事件。

 

 宿泊客二人を除いて全員死亡した前代未聞の大事故。そしてそれと同時に起きた遠坂邸爆破事件。世間ではテロだのなんだのと囁かれているが、これはどちらもマスターを狙ったものだ。今のところ一番怪しいとされるのは居を構えながら狙われなかったアインツベルンか間桐だが、どちらも決定的な証拠がないため咎めることが出来ない。それに未だに姿を見せない外来の一人ということも十分にあり得る。何であれ、一般人をここまで巻き込んだんだ。下手人はサーヴァントのみならず、マスターまでも殺す気らしい。うちも居を構えているため、結界の探知能力と物理防壁を強化しておいたが不安が残る。どういった手段か知らないがあの遠坂邸を爆破させたのだから、よほど腕が立つのだろう。

 

「それで、同盟の方は聞くまでもないよな……」

 

 同盟を受ける気が無いなら『月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)』はまだしも、わざわざソラウを連れてはこない。拠点と共に大多数の魔具を失った以上、同盟を結べる相手がいるならば結ぶのが当然、なのだが……今のケイネスはそこまでの知性があるのだろうか。とても気になる。

 

「オーイ、ケイネ「殺すぞ外道を」ハイ?」

 

 やはり狂化しているらしい。

 

「殺すぞ、私を舐めた外道を。生きながらに腹を切り開いて臓腑を抉り――「そこらでやめとかないと後ろのソラウがお前を生涯嫌悪の目で見ることになるかもしれんぞ」――とても冷静になれたよ。ありがとうシンヴェル」

 

 先ほどまでの恐ろしい表情は一瞬で消え、平素のそれに戻った。相も変わらずソラウの事となると単純な友人である。これはこれでギャップがあって面白い。少なくとも俺はそう思っている。

 

 とりあえず軽い決め事を作って一応同盟の体裁を立てた段階で空気がだいぶ緩んできた。敵対しないことは決まったしいつまでもここにいるのも寒いので、どこか温まる所へいこうと試みる。

 

「それじゃあ飯でも食おうか。居酒屋なんてどうだ」

「確か……気軽に行ける庶民のバーだったな」

「そう、それだ。日本酒というのは飲んでいなかったから楽しみだったんだよ」

 

 日本に来てからほとんど列車移動でワインばかりだったし、冬木に来てからも大食いばかりでなかなかありつけなかったんだよね。昨夜の観戦の時も慣れた物買ってったし飲むのは今日が始めてだ。

 

「この国独特の『タタミ』というものがあるそうだな。正直特色のないこの町には飽き飽きしていたところだ」

「私もよ。どうせなら『キョウト』というところに行ってみたかったわ」

「あ、ボクも行ってみたい」

 

 期待はずれだったと言わんばかりに鼻を鳴らすケイネス、情緒の少なさに嘆息するソラウ、単純に気になるアストルフォ。どうやら三人とも冬木の町並みが不満だったそうだ。なぜか俺が日本情緒のある店に行くことが前提になったようだが……。まあいいやと思い一歩歩み出す。

 

「ま、待った! 待って! 待ってくれ!」

「慌てすぎですよ、マスター」

 

 ――直前に、背後から叫び声が聞こえ瞬時に振り向く。すると何時の間にか第三のサーヴァントとマスターがいた。突如の襲来で先ほどまでの浮ついた空気は吹き飛び、俺は全身を強化し、アストルフォもランスを構え、ケイネスも月霊髄液を展開しバーサーカーを前面に出す。

 現れたのは小柄の少年とモデルのように高い伸長をした女性。街中ならば速攻口説くレベルの美女だが相手がサーヴァントとなるとさすがに自重する。何しに来たかもわからないし。

 

「結界は張らなかったのか、シンヴェル」

「張ったさ。侵入者察知の単純なものだが強化したものだが、容易く抜けられる物ではない」

「となると……」

「キャスターだね」

 

 現状は一対二、数の上では有利。だが相手はからめ手に長けたキャスター。どんな手を使ってくるかは分からない。『魔法万能攻略書』を持つアストルフォに突貫を指示しようとすると、

 

「お待ちください。私たちは戦いに来たわけではありません」

「ならば何のために?」

 

 キャスターが右手を前に出して静止を請う。一応突貫はやめさせるが気を抜くような真似はしない。ケイネスも月霊髄液でいつでもソラウを防御できるようにする。

 

「私たちはあなた方と同盟しに来たのです。迎えてくれれば見返りにランサーの真名とアーチャーの一部能力を教えましょう」

「…………」

 

 なかなかに魅力的な申し出だが、ケイネスと同盟を結んだ今独断で決めることはできない。目線をわずかにケイネスの方に飛ばすと首肯してきた。とりあえずアストルフォとバーサーカーを下がらせ、会話をする意思を見せる。

 

 それに対して感謝します、と頭を下げてキャスターが情報を語り始める……。

 

 

 ※※※

 

 

「なるほど……、バーサーカーの動きが悪かったのはその宝具のせいか」

 

「確かにベイリンならば筋は通る。となると宝具はまさかロンギヌスか?」

 

 キャスターよりもたらされた情報は俺にもケイネスにも有用な物だった。それも予想以上に。

 

「これで、同盟に加えてもらえますか?」

 

 微笑を浮かべて訪ねて来るキャスター。単独でこれだけの情報を集めた彼女を逃すのは惜しい。同盟に加えることに関しては俺は元よりケイネスも賛成だ。だが、

 

「その前に一つ聞かせてほしい。昨夜の遠坂邸および冬木ハイアット・ホテルの倒壊事件、あれは君か?」

 

 キャスターを射抜くような目で見やり、声音を硬くする。

 マスター殺害のためにあれほどの犠牲を出すような者ならばどれだけ優れていようともいつ裏をかかれる分からない。ある程度察しはついているがここで明言してもらう必要がある。

 

「否、私たちではありません」

 

 俺の確認にキャスターがすぐさま否定を示す。

 

「ならば目星は着いているか?」

「おそらくアーチャーかランサーの陣営の仕業でしょう」

「そうか……」

 

 あのアーチャー、生前は人を使う(・・)人間だったのだろう。外道な真似でも勝利を掴もうとする意志もあったし、躊躇はすまい。ランサー陣営に関してはアイリスフィールとランサーはしそうにないが魔術師殺しは分からない。一人の魔術師のために旅客機ごと爆破させる男だし、十分にあり得る。ちなみにこの情報、ケイネスには教えていない。独断専行でもされたら困るからな。

 

「いいだろう。同盟を組もう。俺はシンヴェル・ストルフォス・クラムベルクだ」

「感謝いたします。マスター」

「あ、僕はウェイバー・ベルベットです」

「ウェイバー?」

 

 その名前にケイネスが反応する。聞き覚えがあるらしいが俺には無い。名家なら俺が知らないはずが無いのだが……。いや名前で反応したのだから知り合いか?

 

「知っているのか?」

「ああ、降霊科の生徒だが……君の存在科も受けていなかったか?」

「俺が生徒の名前を一割でも覚えていると思っているのか」

 

 毅然とした態度で告げるととても深いため息をつかれた。俺としてはなぜ覚える必要があるのかの方が不思議なのだが。そもそも年間でどれだけ入れ替わってると思ってるんだ。わざわざ覚える身にもなれ。

 

「ウェイバーです! ほら、時計塔で論文見てもらった! 大成せよって言われた!」

 

 身振り手振りで示して必死に思い出させようとして来るが……。

 

「……このへんまで出かかってる気がするんだが……」

 

 片手で後頭部のあたりを示す。何となくぼやけたものだが思い出せそうな気がしてきた。記憶を手繰るように思い返す。

 

「えい!」

 

 ――途中、ゴツッ! とちょうど示したあたりに柄頭で殴られたような痛みが走り、思わず屈んで抑えてしまう。涙目で後ろを見るとゴリラのような体制で歩く? バーサーカーの背に乗ったアストルフォがランスの柄頭を先ほどまで後頭部があった場所を示していた。顔はしてやったと言わんばかりである。ハッハッハ、こ奴め。

 

「この痛みシャレにならんぞコラァ!」

 

 痛みに体を震わせながらも全力で強化した足で踵落としを頭に決めようと振り下ろすが、ランスで防がれる。さすがにこれを喰らうとシャレにならないことは察した模様である。こっちの激痛も察してほしいものだ。おかげではっきりと思い出せたが感謝は一切合財しない。

 

「確か、ウォークマンだったな」

「思い出してないじゃないですか! だからウェイバー・ベルベットですってば……」

 

 やっぱり覚えてなかったよ、と漏らしてしょぼくれて、サーヴァントがそれを慰める。

 なんというかお似合いだな。この二人。

 

「さて、一通り話も済んだし、居酒屋にでも「やってませんよ」……なに?」

 

 先程話していた話題に戻すように話すとキャスターが静かに告げる。

 

「昨今様々な事件が起きており外出する人も減っているので、どこもかしこもやっておりませんよ」

 

 よくよく考えてみれば当然だった。こんな時に夜遅くに出歩く者はいないだろうし下手に出歩いていたら警察に捕まることもあり得るわけで、そんな中店を開いてても儲かるはずがない。自明の理だが、イラッときた。

 

「ケイネス」

「なんだ」

「殺人鬼を捕まえよう。先の大規模テロで夜間にも関わらず警察が多数うろついている。これでは聖杯戦争にも影響が出る。故にまずは手ごろな敵を狩ろう」

「よくもまあ、スラスラと詭弁が吐けるものだな。だが間違っていない。いいだろう」

「よし。そちらで例の殺人鬼の動きは察知できているか?」

「ああ、昨日確認した。未遠(みおん)川のでかい用水路に潜んでいるらしい。中までは確認できなかったけど」

「それだけ分かれば十分だ。行こう」

 

 早速足を翻し、皆を率いて殺人鬼の居城へと向かう。

 魔術師というのは基本一般人の犠牲など特に考えてない。魔術協会も、極端に言えば一万人殺そうと神秘の流出さえ防げば特に気にしない。その辺りはケイネスも、ウェイバーも同様だろう。魔術師にとって道徳や倫理など、探究に置いて邪魔になる物でしかない。

 

 でも俺たちは違う。

 クラムベルクは大規模魔術などを運用しないため、他の魔術師よりも死生観は僅かだが重い。俺は執行者の仕事で何人も殺してきたことはあるが、一般人に手を掛けたことはないし、幼いころから狩りをして生きてきた俺は命の重さを知っているから、犯罪者や戦闘者などを除いて殺す気はない。それを惰弱だという奴には言わせておけばいいし、言われたところで変える気はない。

 

 そして何より、そんな姿は俺が目指す(・・・・・)俺とは(・・・)相容れない(・・・・・)

 

 

 ※※※

 

 

 未遠川用水路。幾多の異様な芸術作品が並ぶ空間で男が楽しそうに鼻歌を歌いながらメスを振るって新たな作品を作る。その腕が振るわれる度に手術台らしきものに固定される小さな女の子の悲しいほど弱い悲鳴が響くが、彼はそれでも止まらない。それどころか所業は尚更酷くなっていくばかりである。

 

「精が出てるな。凡愚」

 

 心躍らせる彼の腕が止まる。先ほどまで女の子が何を言っても止まらなかった彼を止めたのは紺色のジーンズを穿き、薄い白のTシャツに黒のコートを纏った金髪の男だった。

 

「あ、おかえり王様。どしたの?」

 

 凡愚と呼ばれたことも気にせず衣服に血をべったりとつけながらにこやかに話しかける男。 金髪の男はそれを気にすることなく微笑を見せ、制作途中の作品を値踏みするかのような目でみる。

 

「ほう、これはこれは。随分いい女だな」

「でしょ! この子は今日連れてきた中でも一番かわいい子だったからね」

 

 金髪の男の言葉に彼はより機嫌を良くする。それは表現するならば、狂喜乱舞というのがふさわしいだろう。

 

「それにしては随分楽しそうだな。俺が初めて見た時よりもな」

「そりゃあもう! 王様がくれたこれのおかげで今までできなかったこともできるようになったんだからね! 調達は楽だし、お腹を開いても全然死なないし!」

 

 そう言い彼は右腕を手首のブレスレットを見せつける様に振り上げる。特に変わったところは無いように見えるが、よく見れば中央に入っている琥珀が発光している。見るものが見ればそれが魔力を発しているのが分かるだろう。

 

「それは重畳だ。俺の()を建てるためにはあいつだけの魔力では足らぬからな」

「そういえば、その塔ってどんなのなの? やっぱすっげぇの?」

「当然だ。何しろあれは俺の象徴だからな」

 

 彼の言葉に男は誇らしげに頷いて見せた。

 

「もっとも、傲慢な輩によって壊されてしまったがな」

 

 だが次の瞬間、一転して憤怒に染まった。過去の仕打ちを思い出しているのだろう。さすがの彼も話しかけるのに少々戸惑っている。

 

「ああそうだ、ここに幾人か愚民が向かってきているらしい。貴様等(・・・)では到底勝てんだろうし、一部を切り捨ててとっとと逃げろ」

「え、マジで!?」

 

 この子気に入ってたんだけどなー、と彼は嘆息するが金髪の男の意向に逆らう気はないらしく、制作途中の少女を名残惜しげに一瞥して早々に荷物を纏めに行った。金髪の男はその後、少女を攫ってくる多数の男たちを眺めて愉快気に微笑み、金色の粒子へと変化し去っていった。

 

 

 ※※※

 

 

<サーヴァント>一部項目解放

【CLASS】アーチャー

【固有スキル】

[カリスマ]:D

軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。

[略奪者の特権][共犯意識]によりランクが下がっている。

 

[共犯意識]:C

威光や大多数の空気の流れ、あるいは脅迫など、様々な手段で強制的に行動させるスキル。

そして一度流れに乗った者は抜け出すことが出来ず?の人形となる。

[共犯意識]を受けている者が多いほど判定で有利になる。

このスキル持つサーヴァントが[カリスマ]を持っている場合、カリスマを1ランクダウンさせる。

 

[略奪者の特権]:EX

自身と繋がりのある者の一部スキルを習得するスキル。

このスキル持つサーヴァントが[カリスマ]を持っている場合、カリスマを1ランクダウンさせる。

 

【CLASS】キャスター

【マスター】ウェイバー・ベルベット

【真名】?

【性別】女性

【身長・体重】170cm・49kg

【属性】中立・善

【ステータス】筋力:E 耐久:E 敏捷:C 魔力:A+ 幸運:B 宝具:?

【クラス別スキル】

[陣地作成]:A

魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。

“工房”を上回る“神殿”を形成することが可能。

 

[道具作成]:A

魔力を帯びた器具を作成できる。

擬似的ながらも不死の薬さえ作り上げられる。

 

【固有スキル】

[変化]:B

動物に変形できる。かつて?は?を追いかける際に猟犬、かわうそ、鷹、雌鳥に変化した。

 




<補足>
芸術家の彼が持つブレスレットは綺礼の魔術をアーチャーが[略奪者の特権]で習得して錬金で作り、治癒魔術などありきたりなものが詰まった物です。

タイトル名元ネタ
1話:ジョジョの奇妙な冒険。③かわせない。現実は非情である。
2話:カイジ。古畑をトイレから連れ出した時の。コマは小さいけどいいセリフ。
3話:魔王。セリフもだけどいい作品だと思う。ブックタ○ンとかで一度見てみよう。
4話:HELLSING。『少佐 演説』でググると大隊(誤字に非ず)出る。
5話:ドリフターズ。作者は↑の人と同じ。Feteに近いと思う。はよ三巻。
6話:キングダム。王翦将軍のセリフ。

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