ユグドラシルでバランス崩壊がおきました   作:Q猫

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なんだか話が進みません。
とりあえず当面のアインズ・ウール・ゴウンの方針は決定です。
なんとか時間を進ませたいのに、書かなきゃいけないと思うことが多すぎます。


世界征服計画(2)

「限界突破アップデート」はすべての人間に歓迎されたわけではない。

強さを求めていた人間には歓迎されたし、この機会にメンバーが復帰したことでモモンガはそれ以上の恩恵を享受したと言って良いだろう。

 

しかし、『強さがすべてではない、DMMO』を愛したプレイヤーの中には失望したものがいたのも事実である。

ワールド・サーチャーズはほとんどがそちら側であった。

 

蹂躙され尽くした現実においては、もはや味わうことが出来ない未知との遭遇。

それに魅せられた『冒険者』にとって、12年の歳月経てなお未知を宿すこの世界の最後に示されたアップデートが力の追求であったことは、大きな裏切りに感じられたのだった。

 

 

*   *   *

 

 

「というわけで、彼らはやる気を無くしているわけなのです」

 

一通りワールド・サーチャーズの事情を説明して、どうせ引退する気なら力を借りましょうと結んで、ぷにっと萌えは言葉を切った。

 

「ふむ、組む事によるメリットはそれなりに思いつくが、それよりも聞きたいな。何でお前はそんなに事情に詳しい?」

「単にあそこのギルマスとリアルで腐れ縁なだけですよ。あなたとたっちさんみたいな関係です」

「不倶戴天の敵か」

「いえ、友人です」

 

ウルベルトの突っ込みに、普段と違い余計なことを言うぷにっと萌えの姿にモモンガは意外の念を抱く。

どういうことだ、と声を荒げるウルベルトを宥めつつ、ブルー・プラネットがぷにっと萌えに問いかけた。

 

「それでぷにっとさんは彼らとの同盟に、どんなメリットを見込んでいるんだい?」

「我々が知らない情報。特に『人間種の強職業』についての情報です」

「? ああ、これから戦うことになるんだから事前情報はほしいよね」

「ちょっと違いますね。ある意味今回のアップデート最大のバグ要素だと思うんですが」

 

 

我々異形種が人間種限定の職業を取れそうなんですよね。

 

 

今日だけで何度もぷにっと萌えの発言には驚かされてきたが、今回の発言は極め付けだった。

人間種最大のアドバンテージ(・・・・・・・・・・・・・)である高ステータス職業を種族ステータスで圧倒的に勝る異形種が取得できるというのである。

にわかには信じがたいというのが本音だった。

 

「どうやって……まさか! 『人化』でそこまで出来るのか!?」

 

死獣天朱雀の声にみんながはっとした。

『人化』スキル使用中は「人間種として扱われる」という記述があったはずだ。

 

「ええ、ここに来る前にちょっと試してきまして。人間種限定のクエストが受けられることは確認済みです。ならば転職クエストも受けられるでしょう」

 

じわじわとその意味が円卓の間に浸透していく。

 

「たとえば[ジークフリート]とか取れるのか」

「ええ、始まりのクエスト『ラインの乙女』の開始キャラクターが異形種の入れない町にいるのが問題だったはずですから、いけるでしょうね」

「ルーンが揃えられるから[ルーンマスター]もとれる、か」

「『栄光のルーン』が王城にあるんでしたか。入って触れるだけですからそちらは確実に大丈夫でしょう」

 

[ジークフリート]はお前絶対人間じゃないだろうと言いたくなる自己回復スキルをもった剣士系の前衛である。

防御と回復を考慮しなくなる分攻撃の手数が増える凶悪な職業だ。

[ルーンマスター]は魔法の威力を爆発的に跳ね上げるスキルを持った魔法系補助職である。

[ワールドディザスター]と組み合わせられたときの広域破壊力は群を抜いている。

前者はたっち・みーが、後者はウルベルトが取れないと知りつつ、取れたら良かったとこぼすほど有名な人間種の強職業だ。

 

「ぱっと思いつくものだとそういった有名どころになりますが、他にも色々あるはずです。wikiなりで調べても良いのですがやはり詳しい連中に聞くのが良いかと」

「確かにな。自分たちで使用していないだけで俺たちに合った職業を知っている可能性も高い」

「これは成長計画を考え直さないといけないね」

「すごいことになりそうだな」

「えっと、となると下位互換でしかないこっちは外して……」

 

一気に熱気に包まれる円卓の間。

その中でモモンガは聞かなければならないと思ったことを口にした。

 

「その、それはいいんですが。実施してBANされる可能性は?」

 

ぴたりとメンバーの会話する喧騒が止まり、みんながぷにっと萌えを凝視する。

その視線の中ぷにっと萌えは断言した。

 

「ありえません」

「何故?」

「人間種が異形種レベルを上げたら同じことが出来るからです」

 

元々、【昇天の羽】や【死者の本】など異形種に転身するアイテムはそれなりに存在する。

人間種が使わないのは単に異形種になると過剰なPKの対象になるという、ゲームシステムとは関係ない事情によるものだ。

『人化』の実装によってそれは回避できる可能性が高くなったわけだが、人から異形になり、また人に化けるということの意味を見出すプレイヤーはどれだけいるだろうか。

限界突破の為のチケット集め、異形種がPKに合うという今までの常識、強くなるには種族レベルを上げてはならないというセオリー。

全ての要素が大多数を占める人間種プレイヤーが異形種を取得するという選択肢を奪う。

つまり自分たち(アインズ・ウール・ゴウン)だけが最強になるチャンスが巡ってきたというわけだ。

 

「とりあえず第一段階のギルドメンバー強化プランはこんなところです。取るべき種族や職業も大分変わるでしょうから、今日のところは【永劫の蛇の腕輪】取得に動きましょう。ここで失敗したら2ch連合とトリニティの攻略はまた作戦練り直しですからね」

 

当面の方針が決まり、俄然盛り上がるメンバーを眺めながら、ふと気になったモモンガはぷにっと萌えに問いかけた。

 

「でも、いいんですか? 友達を利用することになりますよ」

「言ったじゃないですか。私とあいつは、たっちさんとウルベルトさんみたいな関係だ、と」

「つまり仲が良いってことですよね?」

 

モモンガの言葉を受けてぷにっと萌えは笑った。

 

「いえ、俺の前で隙を見せたお前が悪い、という関係ですよ」




ぷにっと萌えさんが孔明なら是非司馬懿みたいな友人がいてほしい。
孔明と司馬懿が協力するとか見てみたいですよね。

次回あたり同盟締結とモモンガさん最強化計画をスタートさせたいですが、書き溜めもないし毎回書きながら気に食わないところや思いついた展開を盛り込みたがる性格のせいでどうなるかわかりません。
なるべく早めに続きが書けるようがんばります。

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