くろきしさんありがとうございます。
ここにリンク貼っていいものかわからんので見たい方は2015年11月29日(日) 11:53の感想をご参照ください。
とりあえずこの形態が出るかはともかく装備的には可能なはず。
この時代結婚から子供をもうけるまで簡単に説明すると次のようになる。
まず良い職業――何を持って「良い」とするかは様々だろうが、とりあえず給料のことである――に就くこと。
これが非常に大変である。教育の機会が限られているし、それこそ大抵は富裕層が独占している。席が少なく門が極端に狭いのだ。
その少ない例外が警察だったりする。要するに富裕層の権益を守る番犬として下層の人間を取り込む機構なのだ。
金のために裏切らない忠実な番犬の出来上がりである。
反吐が出るが、その恩恵に預かっている身としては何もいえない。
さて金が稼げるようになってやっと結婚の目が見えてくる。
しかし、出歩くことが少なく集団生活を行う場もない現代では、相手を見つけるのが既に大変である。
おまけにアインズ・ウール・ゴウンで仲間と話すようになってわかったが、本当に結婚資金を貯めるのは大変なのだ。
よほど稼ぎが良くないと人工心肺のレンタル代だけで汲々としてしまい、なかなか貯金まで回らない。
正直趣味に使えるメンバーは割りとすごいと思っていたが、結婚相手を見つける方法がなく諦めているというのもあるのではなかろうか。
幼馴染がいた俺は本当に運が良いのだろう。
そして極め付けが子供の養育である。
生きるのに金がかかる。そしてその金額を稼ぐのが困難。
ここまで言えばわかるだろうが、子供を育てるには非常にお金がかかる。
子供自身が稼げないのだから(当たり前だ)両親が共働きでも負担は1.5倍になる。
子育てのために母親が仕事を休めば負担は3倍だ。
それに子供の成長は早い。つまり人工心肺は頻繁に合わなくなる。
そもそもつけるための手術に耐える体力がない。
アーコロジーに住めでもしなければ子育てすらままならないのだ。
……いつだったかぷにっと萌えが言っていた。
子供が育てられない世界になっている、と。
人類に未来はどれほど残っているのだろうか。
俺はたっち・みー。
俺にとっては切実な、しかし世間から見れば非常に贅沢な悩みを抱える男である。
* * *
「お父さん、最近遊んでくれないよね」
娘にそんなことを言われた。
確かに最近はユグドラシルに復帰したため、かまってやることができていなかった。
たった半年だから大丈夫と思っていたが、子供にとっての半年がどれだけ長いか忘れていたらしい。
聞き分けのいい娘だからとこちらが甘えてしまっていたようだ。
妻には説明したし了解ももらったのだが、子供に同じことを求めてはいかん。
「長いことお付き合いのあったお友達なのでしょう? あと半年なのですから楽しんでください」
本当にできた妻で俺にはもったいないほどだ。
……ウルベルトに「そうやっていちいち謙遜するからお前は鼻持ちならない」と言われたことを思い出した。
わかっている。俺はこの時代に十分恵まれた存在であることはわかっているのだ。
良い職に就き、結婚もできて、更に子供まで作れた。
これはこの時代では本当に勝ち組なのだ。
実のところ、ウルベルトと俺は最初から仲が悪かったわけではない。
嫌われて当然だと俺が一歩引いていたのだ。
その態度が気に食わないと、散々突っかかられ難癖をつけられ、いい加減俺が切れた。
見事に好みが逆であったため、それ以降は会えば喧嘩が常である。
奴なりの気遣いだった可能性が頭をよぎらないでもないが、死んでも奴にだけは言わないだろう。
話がそれた。奴のことはどうでもいい。
とにかく娘に嫌われたくはない。なんとか機嫌をとらねば。
……しかし最近、ユグドラシル漬けだったせいだろうか。
思わず俺はこんなことを言ってしまった。
「そうだな、お父さんとゲームやるか?」
* * *
「というわけで、申し訳ないが一時的でいいので娘と妻をギルドに入れてくれないだろうか」
「ふざけんな。何が思わず言っちゃっただ」
「いや、しかし」
「しかしじゃないだろう。うちに子供を入れるとかどう考えてもダメだろう。大人だけの中に入れるのだってまずいだろうに、よりによってうちだぞ? 悪のギルドだぞ。教育に良くないに決まってる」
こいつだけには言われたくなかったが、正論過ぎるウルベルトの言葉に返す言葉もない。
「でも良いんですか? もう半年ない、というか4カ月ちょっとあるかどうかですよ?」
「登録停止は3カ月前からだったから確かに登録はできるわけだが」
「ソロで遊ばせるのは、ダメだよねえ」
「この時期からソロで楽しめるかはわからないな。多少なりとも先導がないと」
メンバー達の心遣いがありがたいが、それに甘えては……ダメだろうな。
「確かに軽率だった。娘が来たときだけでも離れて活動しても良いだろうか」
「そんな簡単なことでもないでしょう。一度始めたらそれなりに長いこと遊びたいでしょうし。接するメンバーをどうにかすればうちに所属させても問題ないんじゃないでしょうか」
モモンガさんがそんなことを言い出す。
しかしそれでは娘の世話を押し付けることになってしまう。これはギルドの性質がどうとかではない。
親としてそんなことしていいものか悩む。というか悩むまでもなくこれもまたダメだろう。
「いや、みんなに負担をかけるようなことを頼んだのが悪いんだ。モモンガさん、気持ちは嬉しいが……」
「ふむ、とりあえず子供に会わせて大丈夫そうなメンバーを挙げましょう」
「とりあえずゾディアックなら大丈夫でしょう。あの問題の作成の仕方を見てると話が合うかはちょっとわからないですけど」
「モモンガさんはどうしても会わなきゃいけないよね。ギルド長だし」
「るし☆ふぁーは基本的に除外だな。ペロロンチーノも変態だからダメだ」
「茶釜さんどうするよ?」
「女性なら会っておきたくはあるかなあ。さすがに私のあの仕事を知ってはいないでしょ」
「それなら大丈夫……なのか?」
「あ、そうだ娘さんと奥さんの趣味ってなんです?」
「えっと……」
なんだか所属させてもいい流れになってしまった。いいのか、これ?
「良かったな。お前の人望と優柔不断さのせいで娘が悪の道に進みかねんぞ」
「んな!?」
「決断もできんからおかしなことになるんだ。せいぜい親の貴様が気を張ることだ」
「……どういうつもりだ。お前が俺に助言など」
「どうもこうも。お前は嫌いだがお前の娘は関係ないから、子供に真っ当に育ってほしいと思うのは普通だろう。お前が苦労するのはどうでもいい」
ウルベルトをちょっとでも見直しかけた自分を殴ってやりたい。
ともあれ会う人間を厳選しつつ娘と妻がアインズ・ウール・ゴウンに所属することになった。
所属の原則である「社会人かつ異形種」というのはどうなるのかと言ってみたが、残り稼動期間わずかなゲームでそこまでこだわらなければならないものではないでしょう、と返された。
全く知らないどこかの誰かでなく、身元と人格を保証する人間がいる事が大きいのだろう。
* * *
そして娘と妻が来る日になった。といっても本当に数日後なのだが。
メンバーは異形種でなくても良いと言ってくれたのだが、娘は「お父さんと同じ冒険をするの!」といって聞かなかった。
妻は妻で「ルールは守らなくては娘に示しがつきませんもの」と言ってくれる。
ありがたいのだが、これから連れて行くところを思うと色々気まずい。
「すごいところだね!」
「ほんと、まるで美術館ね」
「ああ、デザインした仲間には修復師をやっているやつや現役のデザイナーもいるんだ」
「すごいね!」
娘と妻が興奮しながらナザリックの内部を歩く。
さすがに娘と妻は完全に異形ではなく、妻が天使で娘がワーキャットを選んだ。
二人とも非常にかわいらしい。ペロロンチーノが結局会うメンバーに加えられたのが不安の種ではある。
……手を出したら殺そう。ゲーム内じゃなくて社会的に。
いや、ゲーム内でも無限耐久組み手とかで地獄に叩き込むのも良いな。
そんなことを考えていたら待ち合わせ場所についた。
「ようこそナザリックへ。歓迎しますよ、お二人とも」
モモンガさんがあれだけ嫌がってた人間形態で出迎えてくれた。
どうしよう、ありがたいのだが無理しているんじゃないかと思えて気が気じゃない。
常識人だし初心者サポートは得意だし信仰系魔法を納めたから安心して任せられるんだけど。
「はじめまして、よろしくお願いします! モモンガお姉ちゃん!」
モモンガさんの纏う空気が引きつった気がした。
* * *
案の定、モモンガさんは女性であるという誤解を解けなかったらしい。
娘がすごいいい笑顔で、「モモンガお姉ちゃん」がいかにすごかった語ってくれる。
ピンチになったらすぐに回復してくれたとか、多すぎる敵に囲まれたときは格好良く助けてくれたとか。
たぶんモモンガさん子供に慣れてないからやりすぎてる。絶対引っ込みつかなくなってる!
明日会ったら絶対謝ろうと心に決めた。
モモンガさんやりすぎました。
子供と接した機会が少なそうですからね。
娘さんと奥さんの名前は特に決めてません。
そしてまたまたアンケート。
また活動報告で募集します。