ダンジョンに器用値極振りがいるのは間違っているだろうか   作:オリver

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お気に入りが増え、昨日は興奮して眠れませんでした。

感想たくさんありがとうございます。読んではいるのですが返す時間が無かったので、これから返信させて頂きます。

文章力、語彙力皆無なのに設定と勢いで突っ走っていることは皆さんお気づきでしょう。今回もちょっと場面の切り替え多すぎたかな、と感じていたり。


第五話

「ふぁー……」

 

 教会に朝日が差し込むのを感じ、起床。

 

 すでに寝慣れてきたソファーに愛着感を覚えつつ、二度寝の誘惑を押さえて立ち上がる。

 

「……」

 

 ふと、ベッドで寝ている二人が気になって視線を送る。

 

 ベルがヘスティアの胸に埋まってた。

 あいつ、昨日に続いて……! 悔しさで歯を食いしばるが、歯ぎしり音がならないように気をつけておく。起こしたら悪いし。

 

 寝床がベッドとソファーの二つしか無い我らが本拠。今までは俺ソファー、ヘスティアがベッドで落ち着いていたのだが、新たに一人増えたことで容量オーバーとなってしまった。

 

 いや、ベッドは広いから二人寝れるっちゃ寝れる。だが、ヘスティアをソファーに寝かせたんじゃ男が廃る。よってベッドの一人はヘスティアで確定しているのだ。

 

 さて、そこに俺かベルが加わることになるわけだが。

 

 俺はぶっちゃけベッドに行きたかった。どさくさでヘスティアの胸に飛び込みたかった。

 でもそれ以上に、自分が間違いを起こさないかが不安すぎて立候補できず、結局ベルを生け贄にした。

 だってさぁ、気が付いたらスキル【自己規制】(ズキューン)が発現してたなんてことになったら目も当てられないじゃんよぉ……え? ベル? あいつ無害そうだから大丈夫だろ。

 

 

 しかし、自分からベルを押し出しておいてなんだが役得の場面に殺意が湧く。「きゃー変態! ベル君のド変態ッ!」と幼稚で楽しい弄りを決行したいところだが、あれはどうみてもヘスティアの寝相が原因だ。よって不可能。

 

 しょうがない、「ヘスティアの痴女! 処女神のくせにっ!」で我慢しよう。

 ……いや、これはダメだな。「あれぇー? もしかしてリベルタ君、嫉妬かい?」とニヤニヤ顔で返されるに決まってる。し、嫉妬じゃねーし! 寂しいとか全然思ってねーし!

 

 

「―――!?」

 

 頭の中で独り言を呟いているうちに、ベルが起きた。自分の置かれている状況に気づいたのか声にならない声を上げ藻掻いていたので、足を引っ張って離脱を援護する。お前にこれ以上堪能させるわけには行かない。

 

「おはよっすベル」

 

「お、おはようございます……ヘスティア様って寝相悪いんですね」

 

「そうだな。いちいち困らされるのも大変だろうし、これからはベッドの下への避難をおすすめするよ」

 

「それ実質床ですよね!?」

 

 何言ってんだ。床より埃まみれだぞ。

 

 

 

「……むにゃ」

 

「あ、ベル声がでかいぞ。ヘスティア起きちゃっただろ」

 

「え、あ、すみません神様!」

 

「ふぁぁあ……いや、構わないよ。昨日はいつもよりぐっすり眠れたしね」

 

 抱き枕のおかげですかねぇ? ベル君はリラックス効果があるのかもしれない。兎っぽいしアニマルセラピーだなきっと。

 

 

 

 さて、全員で起床した訳なので早めの朝ご飯を用意する。

 一人暮らしが長かったので炊事は得意だが、流石に朝から手の込んだものを作りたくなかったので、パンを焼いてスクランブルエッグと焼いたベーコンを添えるだけだ。

 

「二人とも気をつけるんだよ? ベル君はもちろんだけど、リベルタ君もステータス的にはかなり危険なんだから」

 

「死なないようにはするって。ベル、肩の力抜いていこうぜ」

 

「はっはいっ!」

 

 ガチガチじゃねぇか。まあなんとかなるか。

 

 食後には仲良く三人で並んで、なんとなく腰を振りながら歯を磨いた。意味は特に無い。が、一番俺がキレッキレだったとだけ言っておく。……だからなんだって話だけどね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヘスティアに見送られ、ベルの冒険者登録をするため、二人でギルドへ向かう。

 

 

「そういやベル。別に俺も、たぶんヘスティアにも敬語は使わなくていいぞ。まあ神相手にタメはきついってんならいいけど、俺とはそこまで歳も違わねぇだろうし普通に話してくれ」

 

 折角の仲間なんだから、俺としてはその方が気楽でいい。そう伝えると少し逡巡したものの、「うん、分かった」と頷いてくれた。うし。

 

「リベルタはどうして冒険者になったの?」

 

「なりゆきとしか言いようがねぇな……まあ、生活のためだ。ベルは?」

 

「僕は、ダンジョンで女の子助けて仲良くなるため……ええっなんで笑うの!?」

 

「ブフッ! クク……いやあ悪い。奥手そうなベルらしくない世俗的な夢でなぁ」

 

 案外こういう奴が大成しそうだよなぁ、なんて考えていると、天高く突き抜ける摩天楼へと辿り着く。ほえーと上まで眺めてボケっとしているベルの背中を軽く叩き、中へと入る。大体あなた昨日も見たでしょうに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、リベルタ!」

 

 ベルの冒険者登録と装備の貸し出しの手続きに時間が掛かるとのことだったので、時間を潰すために外のベンチに座っていると、聞き覚えのある声が。

 

「げっヴェルフ」

 

「げってなんだよ」

 

 ヴェルフ・クロッゾ。結局専属契約を結ぶはめになったあの日、次々と見せてくる装備品の価値を言い当ててしまったことから余計に好感度が上がってしまった。男に気に入られても嬉しくねぇ。

 

「胸当てや肘当ての使い勝手はどうだ?」

 

「昨日ダンジョン行ってねぇから分からん。……代金はまだでいいんだよね?」

 

「むしろ先行投資として受け取ってくれてもいいんだぜ。代金払うって聞かないのはお前だろうに」

 

 タダほど怖い物はありません故に。

 

 しかし、もうバイトも正式に辞めちまったし、これから普通にこいつにお世話になりそうだなぁ。性格は普通に良いし悪い奴じゃないんだけど、最初のぐいぐい来た印象のせいかちっと苦手だ。

 

 

「素材を持ってきてくれたら武器も作るから、その時は遠慮無く言ってくれよな」

 

「おう。近いうちに訪ねさせて貰うわ」

 

「ああ! 任せてくれ!」

 

 じゃあな! と言いたいこと言ったら即去って行くヴェルフ。男らしいというかなんというか、さっぱりしたあの性格は嫌いじゃ無い。相変わらず苦手ではあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リベルタお待たせ! ねえさっきの人って誰?」

 

「見てたのか。あいつは専属契約した鍛冶師さんだ」

 

「せ、専属契約ってすごいんじゃないの?」

 

 だって専属だよ! とオラリオ来たてのベルは語感で判断する。突っ込まれて聞くと面倒くさいので適当にあしらう。「それよりダンジョン行こうぜ」と露骨に話を逸らすと、ベルは目を輝かせていかにも楽しみな表情になる。お前絶対に詐欺引っかかんなよ。

 

 

 ベルも来たのでバベルの中へ再び入り、地下一階のダンジョンの入り口へと向かう。

 

 

「うわああ……ダンジョンってすっごく広いんだね!」

 

「最初の通路はかなり横幅広いな。もうちょい進むと入り組んでくるぞ」

 

 見晴らしがよく、モンスターの奇襲に遭いにくい上にそこまでの数は湧いてこない。まさしく初心者向け、って感じだよな。

 

 初めてのダンジョンに、ベルのテンションはうなぎ登りだ。ゴツゴツした壁を触っては感動したように声を漏らし、キョロキョロ見回す。

 小動物を思わせるような仕草だな。あざとい、ベルきゅんあざとい。俺にじゃ無くて女の子に見せつけたらモテると思うぞ。マスコット的な意味でだが。

 

 そうこうしているうちに、ビキリビキリ、とダンジョンの壁からモンスターが生み出される。ハッと息を呑むベルは緊張しているのか、手に持った支給品ナイフが小刻みに震えていた。

 

「ゴブリン二匹……片方は俺がすぐ倒すから、もう一匹と戦ってみ。やばそうだったらサポートに入るから」

 

 そう言い残して、近い位置に湧いた二匹に接近する。さて、先輩としていいとこ見せなきゃな!

 

『ギィィィ!』

 

 右足を支点に回し蹴りを放ち一匹を地面へ転がし、後ろにいた一匹は回転を弱めないまま剣を振り抜き、首を切断する。転がってる方をベルのいる方へ蹴飛ばすと、俺には叶わないと思ったのか近くにいたベルに向かっていく。

 

「う、うわあああああ!」

 

 やけくそ気味にゴブリンへナイフを振るうが、当たる気配の無いベル。お前、目ぇ閉じてんじゃねぇか……

 

 助太刀しといた方がいいか……? いやしかし、意外とベルの動きが鋭い。

 恩恵貰い立てでここまで動けるか? と疑問に思ったが、そういえば俺、【戦友鼓舞】(フィール・エアフォルク)なんてスキル発現してたな。それの影響でベルのアビリティが上がってるのか。

 

 わーわー叫んで無茶苦茶に動いているせいか、ゴブリンもなかなか近寄れないようだ。「え、どうしよう……」と言わんばかりにオロオロしている。

 

 まあ、異形なゴブリンの姿を見て向かっていっただけでもすごいんじゃないか? 俺は怖くて距離を取りつつ石投げまくって最初の一匹殺したし。

 それを考えれば、目を閉じるくらい……駄目だわ。それはねぇわ。大体余計怖いだろそれ。

 

 少しして。痺れを切らしたゴブリンが飛びかかったためナイフに自分から突っ込み自滅。ベルの初勝利の礎となった。

 

 魔石を残して灰になったゴブリンと自分のナイフを交互に見比べ、勝利に今更気づいたのかベルは目を輝かせる。

 

「リベルタありがとう! おかげで倒せたよ!」

 

「おお、そりゃあ良かっ―――」

 

「神様にも報告しなきゃ!」

 

 そう言ってベルは、ウサギのようにピョンピョンしながらバベル方面へと戻っていった。

 

 ……え、帰ったの? あの子。

 

 ゴブリン一匹倒して満足したらしい。まあ、お前がそれでいいならいいんだけどさ?

 

 ヘスティアのことだから空気を読まずに「え? たった一匹倒して帰ってきたのかい……?」みたいなこと言いそうだな、なんて考えつつ、しょうがないから俺一人で戦闘を続ける。

 

 ビキビキと壁から異形のモンスターが生み出された。三匹同時は珍しいなと思いつつ、接近する。

 

「―――?」

 

 ふと、違和感を感じた。正確には先ほどから、なのだが。敵にではなく、俺自身の感覚の違いに。

 

 ―――世界が遅い。

 

 コボルトの一挙一動が、はっきりと視える。

 

 迫り来る鋭い爪を少し屈むことですれすれで避け、カウンター気味に剣の刃を相手の首へと押し当て……ほとんど力を入れるまでも無く、頸動脈を的確に切り裂いた。

 

 ゴポ、と溢れ出す血と共に、灰となって消える。一瞬目を遣りつつ、残る二匹に向き直る。

 

『グギャアアア!』

 

 大口を開けて噛みつこうと飛びかかってきた所で、前進。口の中に剣を突き立てる。

 

 飛びかかってきた最後の一匹の爪攻撃を、今しがた剣に刺さったコボルトを盾にしてやり過ごす。トドメを刺されて灰へと変わった瞬間、呆然とする一匹の胸の辺りに、角度を調節しつつ。

 

 ―――トン、と刃を埋める。

 

 カラン、と魔石が身体から押し出されたコボルトは、ポカンとした表情のまま絶命した。

 

「……」

 

 俺がダンジョンに潜った回数はこれで三度目。

 一回目は恩恵貰い立て。二回目は器用値SSS。そして今回は――器用値Ⅱ。

 

 IからSSSの過程でも、俺は自分の感覚の差に戸惑った。ここまで世界が変わって見えるのか、と。

 

 だが、今回。おそらくは器用値のみのレベルアップと言っても過言では無い成長を遂げたことで、さらに世界は緩やかになった。

 最適化された動きが解る。

 足運びも、剣の振り方も。どこをどう斬れば、致命傷になるのか、も。

 

 

 次は、一匹で歩いているゴブリンに、【盗賊心得】によって忍び足で接近する。

 

『っ!? ギ―――』

 

 声を発するまもなく、振り向きざまに喉をかっ斬る。

 

 

「……はぁー」

 

 一撃やん一撃。一階層の雑魚モンスターってのもあるが、正直一切の危機を感じない。

 油断は禁物だが。それでも、なんだか俺が場違いな所にいるみたいな気分だ。

 

 

 

 

 

 それからもこちらは一発も被弾すること無く一撃で屠り続けることしばらく。

 

「―――リベルター!」

 

「あ、ベルおかえり。なんて言われた?」

 

「……「それだけ?」って……」

 

 やべぇヘスティア期待を裏切らねぇ。きっと今頃「余計なことを言った」とバイト先で落ち込んでいることだろう。

 

「さて、折角帰ってきたんだし、一緒に狩るぞ。それなりにうまく教える自信も出たところだ」

 

「ありがとう! ……あ、でも僕短剣だよ?」

 

「なんでそんなリーチ短いのにしたんだよ」

 

 今度俺も借りて来て使ってみるか。少し練習したら教えられそうだし。

 

 

 

 声を掛け合いつつ、スローペースで戦って今日の探索を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白亜の塔、バベルの最上階に、一柱の女神がいた。

 

 神々の中でも随一の美貌を持つ『美の女神』は、嬉しそうにギルドで魔石を交換する白髪の少年を、遙か真上に当たる位置から『視て』いた。

 今まで見たことが無いほど透き通って綺麗な魂に、美の女神―――フレイヤは目を奪われた。今日地上の人々を眺めていたとき、偶々見つけた存在。

 

 残念ながらすでに恩恵を貰っていたようだが、今は一旦預けておくだけだ。いずれ必ず自分のモノにしてみせる。

 歪んだ独占欲に鋭く口角を上げ、笑う。

 

「―――あら」

 

 視線に気が付いたのか、白髪の少年がブルりと震え、訝しげに辺りを見回す。

 同じファミリアの仲間なのだろうか、黄土色の髪の青年が声をかける。自然とそちらに目が移った瞬間―――バッと天を仰ぎ、こちらを『視た』。

 

「……面白いわね」

 

 元は凡庸であっただろう、歪な形の魂の持ち主。

 

 驚くわけでも無く、フレイヤは微笑む。

 視線の元を辿られたことも、歪んだ魂も。初めての経験では無かったからだ。

 

 フレイヤは視線を逸らし、別の方向を見据える。

 

 商店街を歩く、燃えるような紅い髪の女性。視線に気づき、ふぅとため息を吐いてジト目で視られる。

 

 小規模な薬舗でつまらなそうに留守番をしていたハーフパルゥムの少年。不機嫌そうに睨み付けられる。

 

 酒場で暴れるファミリアの仲間に辟易する、狼犬人。チラリと一瞥し、苦笑して肩を竦める。

 

 フラフラと屋台を歩き、買い食いを繰り返す小さなエルフ。気がついたようだが無視される。

 

 全員が歪んだ魂。だが、それでいて磨かれた美しさも兼ね備えている。

 

 

 

 白髪の少年のように、欲しいとは思わない。ただ、彼らは視ていて飽きない存在ではある。

 

 新たに『5人目』が現れたことによって、どのような物語が紡がれるのか。

 美を司ると同時に、娯楽好きの神の一柱でもあるフレイヤは、その双眸を楽しげに細めた。

 

 

 

 

 

 

 




明日は私用で更新が難しそうです。
ストックもだいぶ減ってきたので、少し不定期になるかもしれません。

そして戦闘描写があまりうまくできない……もうちょい戦わせたいけど、格上くらいじゃないとリベルタ君一瞬で戦闘終わっちゃう……

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