ダンジョンに器用値極振りがいるのは間違っているだろうか   作:オリver

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悩みつつ、書き直しながら投稿。でも微妙かも……

昨日のお気に入り130→今696。リベルタ君の器用値みたいな伸びに正直ビビりまくってます。

たくさんのお気に入り、評価、感想ありがとうございます!
これからも頑張らせて頂きます!



第四話

「聞いたよリベルタ君! あんた冒険者の資質があるんだってね!」

 

「え、なに?」

 

 結局ヴェルフに専属契約を断ることができないまま迎えた翌日、突然バイト先のおばちゃんにそんなことを言われた。

 

「リベルタ君が初めてダンジョンに行った日にね、ヘスティアちゃんが「スキルがもう発現している」って自慢してねぇ。もう、おばさんびっくりしたわよ?」

 

 ジロ、とヘスティアを睨み付けるとさっと目をそらした。余計なことを……!

 

「あ、そう言えばヘファイストスファミリアの人と専属契約をしたって噂を聞いたよ俺は! 期待の新人じゃ無いか!」

 

「あのヘファイストスファミリアの!? すごいじゃない!」

 

 おい、どこから漏れたその情報。あのファミリアの顧客情報の管理どうなってんだよ。

 

「じゃあ、本格的に冒険者になるんだねぇ……バイト辞めちゃうのは寂しいけど、たまに顔出しに来るんだよ!」

 

「え、辞めないけど……」

 

「リベルタ、確かに俺達のシフト的に一人抜けるときつい。でもそんなこと気にしなくていいんだぜ?」

 

 んなこと考えてねぇよ。冒険者本格的にやりたくねぇだけだよ!

 

 俺とヘスティアが口を挟む隙が無いまますでにお別れ会の日程まで決められている。

 

「……ああ」

 

 なんだろう、この外堀から埋められていく感じは。

 

 呆然と中空を眺める中。ヘスティアの脛を軽めにゲシゲシと蹴りつつ、これからの身の振り方を考えるのだった。いや冒険者しかなさそうだけどね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バイト先に行きづらくなった現在、収入としては冒険者業が主となるだろう。

 冒険者は危険が伴うせいもあってか収入は駆けだしでさえもそこら辺のバイト数日分は一気に稼ぐことができる。

 今まで通り安全に戦ったところで、バイトのみの時よりも収入は増える。それは間違いない。

 

 スキルもあるし、器用値も高い。死ぬ確率は……まあ、安全第一に戦っていればほとんど無いはずだ。

 

 それでも俺が冒険者をやりたくなかったのは、特に目標が無いからだ。成り上がろうとも思わんし、金や強さにもそこまで興味ない。ただ毎日をのんびりと平和に暮らしたいだけなのだ。

 

「あーあ」

 

 なんでこんなことになったのか。

 今更ファミリアを抜けたところで今のバイトは行けないし、他の仕事見つけたとしても、もし知り合いに会ったら「あれ? なんでダンジョン行ってないの?」と一々言われる羽目になるし。あれ、これダンジョン行くしかねぇじゃん。

 

 

 しかし流石に今日は行く気になれず、ブラブラと露店を回っては食べ歩きをしていた。

 

 もそもそと串焼きを頬張りつつ、怪しげな魔道具(マジックアイテム)を売ってるにーちゃん冷やかしたり、買ったパンをちぎって鳥にやって羽根まみれになったり、ドンとぶつかって来た獣人が俺の財布を盗ってきたので代わりに相手の財布スッてやったり。

 お、結構入ってるじゃん。儲けた儲けた。後ろの方で「俺の財布ゥー!?」と悲鳴が聞こえてきたが無視。

 

 そんなこんなしながら歩くこと数分。

 

 

「あれ、リベルタ君だ」

 

「うん? おお、アドバイザーの」

 

 

 むむ、この見たこと無い味のじゃが丸君買うべきか……とウンウン唸ってると、ギルド職員のエイナ・チュール氏が後ろから声をかけてきた。

 

 冒険者になる前、ダンジョンについて色々教えてくれた親切なギルド職員だ。どうせ本気でやらないし一階層でしか戦わないといった理由でアドバイザーになってもらうのは遠慮したが。

 

「エイナさん今日はもう上がり?」

 

「うん、書類作業が早めに終わったから。いつもは夜遅くまで仕事あるんだけどね」

 

 ギルドの職場環境ブラックだな。【事務作業】とかスキルで発現したら就職しようかとも考えてたけど、自由気ままにやれなそうだし止めとこ。あ、そもそも恩恵持ってる人は職員なれないんだっけか。

 

 まあそんなことはともかく。

 

「ちっと相談乗って貰ってもいい? なんか奢るから」

 

 さっきパクった金で。

 

「いいけど……冒険業に関わることならギルドの応接室の方がいいと思うよ? 誰に聞かれるか分からないし」

 

 それはそうだけど、今からギルド行かせるなんてなんか悪いじゃん。そもそもこんな時に相談なんてするなって話だけど。

 

 申し訳なさが顔に出ていたのか、俺の肩にポンポンと手を置き、ギルドの方向を指さす。 

 

「冒険者のサポートが私の仕事なんだから、気にしなくてもいいよ。さ、行こっか」

 

 格好いいなぁ。憧れると同時にバイトを転々と好き勝手生きてきた自分と比べてしまう。俺、格好悪いなぁ……今もこうして冒険もせずにブラブラしていた訳だし。

 

 ギルドに向かう途中、「てめぇ盗んだ財布返しやがれ!」「あなたはブラックリストの!」「げぇギルド職員!」みたいなやり取りがあって俺も事情徴収されたがしらを切り通した。危うく冒険者どころか囚人に成り下がるところだったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギルド本部、応接間にて。

 

 閉めきられて音が漏れそうも無い部屋に安堵しつつ、促されるままソファーに腰掛ける。あれ、俺が普段寝てる奴より柔らかい。格差社会反対。

 

「相談って何?」

 

「実は、バイト行きづらくなってなぁ。本格的に冒険者やろうと思うんだけど、モチベーションがイマイチ上がらない」

 

「……そんな考えじゃ死ぬよ?」

 

「安全安心はモットーに行くつもりだけど」

 

「それでも、下の層に行くようになるよね? ダンジョンはどんなイレギュラーが起こるか分からないのに、そんな嘗めてかかっちゃいつ死ぬか分からないよ? ……特にリベルタ君って楽観主義っぽいし」

 

 ギクっバレてる。「まあなんとかなるでしょ」とダンジョン下層へガンガン進んで行ってモンスターの袋だたきに遭う姿が容易に想像できる。いや馬鹿すぎだろ俺。

 

「で、でも、そういう考えの冒険者もいないわけじゃないだろ?」

 

「確かにそうだけど、君はパーティすら組んでいないでしょ? 何かミスしてもフォローしてくれる仲間はいないんだよ?」

 

 パーティ、か。

 

 エイナさん曰く。

 基本的にダンジョンに潜るときは同じファミリアのメンバーで5、6人のパーティを組むことが多いらしい。ギルドでも多人数を推奨しており、理由としてはやはり死亡率の低下が上げられるとか。

 

 ソロで活動する冒険者がいない訳ではない。しかし、大体は死んでしまうか、限界が来て別のパーティに参加するらしい。少なくとも、ソロで名を上げた冒険者はいない。ほぼ誰にも知られないままひっそりとダンジョンでくたばる。

 

「リベルタ君のファミリアは他に眷属がいないからしょうがないかもしれないけど……やっぱり一人はおすすめできないかな」

 

「……かといって、他のファミリアのパーティか……ここだけの話なんだけどさ、俺変わったステータスだからあんまり身内以外と組みたくないんだよ。言いふらされたら困るし」

 

「変わってるって……? あ、ごめん。ステータスの詮索は御法度だったね」

 

 別にエイナさんには言ってもいい気がするが、ただ彼女の気苦労を増やすだけじゃないかと思ったので黙っておく。

 

 

 

 

 

 

 

 結局。うまい打開策も見つからないまま、「とりあえず魔力以外の基本アビリティが一定以上になるまでは一階層で戦うこと」とエイナさんに言いつけられた。いや、それだと俺、たぶん一生一階層なんですが……

 まあ結局、バイトしてた頃とそこまで変わらなそうだ。もう楽しいとかそんな感情抜きにしてただ安全に、金稼ぐだけだなぁ。つまらねぇなぁ……でも、命には代えられないか。

 

 エイナさんとギルドを出る。お茶に誘ってみたが断られた。残念、下心バレバレだったらしい。

 

 綺麗だからアプローチされることも多いだろうし、この人は純粋であまりグイグイ来ない人が好きそうだなぁ、なんて考えつつエイナさんに別れの挨拶をしようとしたとき、トボトボと歩く少年が目に止まった。

 

「ベル君?」

 

「……あ、エイナさん」

 

 知り合いだったのか、エイナさんが呼びかけると、落ち込んだ顔でこちらへ来る。よくよく見れば服は砂だらけで、元は真っ白だっただろう髪もくすんだ色合いとなっている。

 

「……どうしたの? その格好。……ファミリアには入れた?」

 

「……全部門前払い、されちゃって」

 

 じわ、と少年の目に涙が浮かぶ。

 白い髪に、赤い瞳、小柄な身体。どこか兎を思わせるような見た目は、厳つい風格の冒険者が多い中で、あまりにも似つかわしくない。第一印象からして、とても腕っ節が強そうには見えなかった。

 

 ……冒険者はステータス依存なんだから、見た目なんて関係無いのにな。

 

 エイナさんと顔を見合わせる。親指を立てるとホッとした表情になった。

 

 俺は白い少年に向き合う。

 

「ベルって言ったっけか。ファミリア入りたいんだよな? ……一人しか眷属のいない零細ファミリアで良かったら歓迎するぜ?」

 

 え、とベルは顔を上げる。言ってる意味が最初は分からなかったのか呆然としていたが、少しして浸透したのか驚きで目を見開く。

 

「ほ、本当にいいんですか……?」

 

「うちの主神も喜ぶよ。眷属欲しいー欲しいーってずっと言ってたしな」

 

 あと俺もすげぇ嬉しい。一緒にダンジョン行ってくれる仲間ができそうってのもあるけど、ベルっていい奴そうだし。

 

 ファミリア入ろう(家族になろう)ぜ、との俺の言葉に、ベルはパアァっと明るい表情になり、思いっきりよく頭を下げた。

 

「あ、ありがとうございます! ふ、ふつつか者ですがよろしくお願いします!」

 

「あれ家族ってそういう意味?」

 

 何故か嫁ゲット。あ、違うって? やだなぁ、こんな面白いネタからかわない方が失礼だろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファ、ファミリアに入ってくれるって……?」

 

「ダ、ダメですか……?」

 

「大歓迎に決まっているじゃないか!」

 

「え、ちょ、神様ぁ!?」

 

 連れ帰ったら即時抱きしめられるベル。真っ赤な顔してまったく羨ましい。いや、けしから……やっぱ羨ましい。

 

 あまりにベルばっかり構うので拗ねてたら「リベルタ君が、デレた……!?」と驚愕した後、うざったいちょっかいを出してきたので例の紐をほどいてやった。でも何も変わらなかった。あの紐には何の意味が……? 万歳したときに持ち上げるためかなるほど。

 

 

 その後はまかないのじゃが丸君パーティーを開き、ベルを歓迎。

 俺がバイトを辞めることになってしまたことをヘスティアが謝ってきたが、あれは俺自身が流されたのが悪いし怒ってない。それにベルが入ってくれたしな! 目標はダンジョンに潜りながら考えるとして、後は何も問題は残ってない。良かった良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リベルタ・エーアスト

Lv.1 

 

力:I=10

耐久:I=10

器用Ⅱ:I=10→G=263

敏捷:I=10

魔力:I=10

 

スキル

 

【創成己道】(ジェネシスクラフト)

・器用の成長率に上昇補正。

 

【尊価代償】(サクリファイス)

・成長補正スキルの効果増大。

・他の能力値成長率の下方修正。

・上昇対象能力値への成長願望が強いほど両補正ともに強固なものとなる。

・補正能力に準じたスキルが発現しやすくなる。

 

【無限収納】(アイテムボックス)

・三秒以上触れた物質を、念じることで収納空間に送ることができる。

・同じく念じることでいつでも取り出すことが可能。

・触れる箇所が固体である必要がある。また、生命体は収納できない。

 

【戦友鼓舞】(フィール・エアフォルク)

・戦闘時、一定範囲内の眷属の基本アビリティ上昇補正。

・同恩恵を持つ者にのみ効果を発揮。

 

【審美眼】(プルフサイト)

・武器、防具など制作物の善し悪しが分かる。

道具(アイテム)の効果が分かる。

 

【盗賊心得】(ハーミット)

・隠密能力向上

・索敵能力向上

 

 

「……盗賊? リベルタ君、今日何してきたかじっくり教えて貰えるかな?」

 

「大丈夫、バレてねぇから」

 

「そういう問題じゃないよ!?」




ヘスティア「はい、ベル君のステータス」

ベル「パッとしないなぁ……スキルも無いし……」ショボン

リベルタ「みんな最初はそんなもんだろ」

ベル「あ、そうだリベルタさんの見てもいいですか?」

リベルタ「ほい」ペラッ

ベル「」


 言葉にできないステータス。



【盗賊心得】(ハーミット)
・隠密能力向上
・索敵能力向上

ハーミット→隠者。実は隠者の意味をよく分かっていない。

感想にて教えて頂きました。俗世間から離れて隠れ住む賢者の事らしいです。ヤバい想像していた意味と違った。てっきり日陰者的な意味かと(汗)

このスキルで不意打ちが得意になりそう。索敵は原作の命ちゃんのスキルほど範囲は広くない。「曲がり角の向こうに何かいる……!」くらい。でも便利スキル。

リベルタ君、バイト辞めるってよ。私もそこはかなり悩んだのですが、辞めさせないとダンジョン行かなそうだから……!

いつか器用値上がりまくった後に人員不足のヘルプとして参加予定。たぶんすごいことになる。

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