ダンジョンに器用値極振りがいるのは間違っているだろうか   作:オリver

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第一話

 オラリオ。

 神々が降臨する以前の『古代』とよばれる時代から存続する世界有数の大都市であり、同時に世界で唯一の迷宮都市である。

 

 都市中央には、天を衝く白亜の巨塔『バベル』がそびえており、都市周辺は円状に、堅牢な市壁に取り囲まれている。

 

「リベルタ君お願いだ、ボクの眷属になってくれ!」

 

「勧誘何回目だよ。そろそろ諦めろって」

 

 中央通りから少し外れた路地で、俺は屋台でバイトをしている。

 

 じゃが丸君というジャガイモをすり潰して揚げた軽食を販売しており、賃金は良い方でまかないも出る。バイトを転々としてきた身としては手放したくない労働条件だ。

 

 しかし問題が一つ。

 

 美しい人の例えだとか比喩でも何でも無く本物の女神が同僚だった。多くの神が地上に降りてきているとは言え職場が一緒になるなんて聞いたこと無いぞ。

 

 この女神ヘスティアはヘハ―――ヘハイストス? ヘファイトス? だとかいう舌噛みそうな名前の鍛冶神のもとで無職怠惰な生活を行ってたため追い出されたという駄目経歴を持つ。

 

 

「ねえねえ頼むよ―――あ、いらっしゃいませ!」

 

「やだ。らっしゃっせー」

 

 自分の眷属が欲しくて仕方が無いヘスティアは手当たり次第に勧誘する。屋台のおばちゃんや八百屋のおじちゃんまで見境無しだ。恩恵を安売りしすぎでありがたみゼロである。

 

 そして当然、バイト仲間である俺にも勧誘が来る。毎日のように。

 

 零細ファミリア、眷属ゼロ、駄女神と三拍子揃いおまけにこの前屋台の機械爆破してたから借金というオプション付きだ。だからずっとお断りしているのだがめげない。もう諦めて天界帰ってよ、向こうは何一つ不自由しないんでしょう?

 

 じゃが丸君を揚げつつため息をつく。

 

 終わらない勧誘。こうなったら俺の方で少し妥協した方が面倒が無いかもしれない。

 

「分かった。いいよヘスティア」

 

「入ってよう……ボクも眷属(子ども)が欲しなんだってぇ!? 本当かいリベルタ君!」

 

「俺も迷宮探索に興味が無いわけじゃなかったしな……ただし条件はある」

 

 その一、自分の借金は自分で払え。その二、俺にあまり干渉しすぎないこと。その三、俺はやりたいことをやる。

 

 そしてファミリアにもし誰か他に入ったときはある程度は面倒を見るが、面倒ごとは御免。

 

「なんだそんなことかい! もちろんいいさ!」

 

「じゃ、決まりだな。適当にやらしてもらうが、これからよろしくな」

 

「つ、ついにボクにも眷属が……! ありがとう! じゃあすぐ帰って恩恵(ファルナ)刻もうぜ!」

 

「まだバイト中なんだが」

 

 なんだか早まった気がしないでもない。

 

 だが、両手を挙げて子どものようにはしゃぐヘスティアを見ていると、俺もまんざらでも無い気持ちだった。

 

 あとヘスティアさん。動きすぎてあなたの巨乳すげぇ揺れてますよ。ご馳走様です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……よ、よし。リベルタ君、恩恵刻むよ」

 

「初めてだから優しくしてね」

 

「任せてくれよ!」

 

 あれ伝わらなかった。流石処女神、ピュアッピュアですね。

 

「えっと、どうやるんだっけ……針で刺すんだっけ」

 

「刺すのはお前の指だからな!? 俺の背中じゃねぇぞ!」

 

「……い、嫌だなぁ、分かってるよぅ。よし、神の血(イコル)を垂らすよ」

 

 おお、と返事をすると同時に背中がカァッと熱くなる。これが恩恵か。

 

 さて、俺のステータスはどんなものだろうか。どうせ大したこと無いんだろうが別に気にしない。

 まあ冒険もバイトと両立してやりたい程度にしか考えていないからな。迷宮1、2層くらいでゴブリン狩って身体を適度に動かしたい。向上心は皆無である。

 

「……」

 

「ヘスティア? 俺のステータスまだ?」

 

「……へ? あ、ああ。ごめんごめん、ちょっと驚いちゃって……今写すよ」

 

 なんだろう、歯切れが悪い気がする。もしかしてもの凄く悪いんだろうか。やる気は無くても才能ゼロはちょっとショックだな。

 

 書き写された内容の紙を読む。

 

 

リベルタ・エーアスト

Lv.1 

 

力:I=10

耐久:I=10

器用:I=10

敏捷:I=10

魔力:I=10

 

スキル

 

【創成己道】(ジェネシスクラフト)

・器用の成長率に上昇補正。

 

【尊価代償】(サクリファイス)

・成長補正スキルの効果増大。

・他の能力値成長率の下方修正。

・上昇対象能力値への成長願望が強いほど両補正ともに強固なものとなる。

・補正能力に準じたスキルが発現しやすくなる。

 

 

 

「なんだこりゃ」

 

 スキルが発現してる。知らんけど、こういうのって恩恵貰った直後に出るもんなのか?

 

「聞いたことの無いスキルが二つも……すごいよリベルタ君! ボクも鼻が高いよ!」

 

「や、これ良いのか?」

 

 器用値が伸びやすいらしいが、他の能力値にマイナス補正かかってるんだろ? 悪い面が強すぎる気がする。

 

 ……いや、ちょっと待てよ? 何度も言うようだが俺は冒険を熱心にするつもりも無い。なら別にどうでもいいじゃないか。

 

 日常生活において一番使いそうな能力は器用値であろうからむしろ良いかもしれない。じゃが丸君揚げるの上手になったりするのかな? 楽しそうだ。

 

「さんきゅヘスティア。明日早速ギルド行って冒険者登録してくるわ」

 

「うん! 気をつけて行ってくるんだよ!」

 

 明日はちょうど良くバイト休みの日だ。死なない程度に適当に頑張ってきますかね。

 

 

 尚、この後泊まってる宿屋に帰ろうとしたところ「眷属なんだから君もこの本拠(ホーム)で暮らすんだよ!」とか言われた。え、ここに住んでるの? 廃教会だよ? 恩恵は神聖な場所で刻まなきゃ云々みたいな理由でここにいたのだとばかり思ってた。

 

 何故か見た目ロリ、胸だけ大人顔負けな女神と一緒に暮らすことになった。俺も17歳と盛りな時期だと言うのに貞操の危機とか無いのかしら。警戒心なさ過ぎて心配になってくる。手を出すつもりはないけどね! 決してヘタレではない。

 

 

 ベッドが無いから一緒に寝ようなどと抜かしてきたヘスティアに小一時間ほど説教したのち、置いてあったソファーに横になって横になる。

 

 

 願うだけ器用値が伸びやすくなるらしいので、寝る前にしっかり念じておくか。

 

 

 器用値欲しい、器用値最高、器用値さんまじパネっす、器用値だけあれば他に何も要らない、器用値増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ、うぷ、なんか酔った。増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ増えろ――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リベルタ・エーアスト

Lv.1 

 

力:I=10

耐久:I=10

器用:I=10→SSS=1268

敏捷:I=10

魔力:I=10

 

スキル

 

【創成己道】(ジェネシスクラフト)

・器用の成長率に上昇補正。

 

【尊価代償】(サクリファイス)

・成長補正スキルの効果増大。

・他の能力値成長率の下方修正。

・上昇対象能力値への成長願望が強いほど両補正ともに強固なものとなる。

・補正能力に準じたスキルが発現しやすくなる。

 

【無限収納】(アイテムボックス)

・三秒以上触れた物質を、念じることで収納空間に送ることができる。

・同じく念じることでいつでも取り出すことが可能。

・触れる箇所が固体である必要がある。また、生命体は収納できない。

 

 

 

 翌日。

 

 ゴブリンを10匹ほど狩って帰ってきた俺のステータスはなんかおかしなことになってた。

 

 

 




ほとんどの方、初めまして。
以前ほんのちょっと書いてたSAOの小説書き直そうとして設定盛り込みすぎて身動きが取れなくなったので、ダンまちブームに乗っかります(まだブーム続いてるよね……?)

SAOもいつか書き直せたら。とりあえずこの小説続けられるように頑張ります。

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