出来るだけ早めに更新出来るように、短めに分けて投稿していこうかと考えています。
7,000とか10,000とか、キツイ……。
授業終了のチャイムが鳴り、教室の雰囲気が和らぐ。先生に礼をすると、私は杏奈のお弁当を持って席を立った。
「おや、今日は愛しのメイドさんは来ないのかな?」
「もう華琳、からかわないで。今日は部室の方に行かないといけないのよ」
目敏く華琳がからかってきた。華琳もわざと言っているので、こちらが嗜めてもカラカラと笑うばかりだ。
「今日はミーティングだものね。初夏のお披露目の準備は順調?」
「お陰様で順調よ。今日もそれについてのお話ね」
ミーティングと言っても、部員達との小さな交流のようなものだ。今日の集まりでは先輩はいらっしゃらず、一年生と二年生だけでのお食事だ。
「それじゃあ行ってらっしゃい。私は唯依と杏奈ちゃんの可愛い所を話しながらお昼を食べることにするよ」
「もぅ、華琳ったら」
そうして華琳と別れ、離れにある部室に向かう。部屋に入ると、どうやら私が一番最後だったらしく、他の方々は全員揃っていた。
「お待たせしてごめんなさい、私が一番最後だったみたいね」
「いえ、大丈夫よ。気にしないで」
そう返事をしてくれたのは、東堂百合さん。クラスは違うが、私の親友である。
「実は、舞姫が持ってくるお弁当についての話で盛り上がっていたの」
「私のお弁当? どうして?」
「舞姫のお弁当といえば、学園内での羨望の的じゃない。何せ、《凰の騎士様》お手製でしょ」
《凰の騎士様》。
まぁ、杏奈のことなのだが。杏奈もこの名前のことは知っているが、それが自分のことだとは気付いていない。鋭いようで、鈍感な娘だ。
「確か今日は春野菜のお弁当と言っていたわ。私も楽しみにしていたの」
「それじゃあ早く始めましょうか。勿論、舞姫が一番最初に蓋を開けるのよ?」
百合さんがそう言うと、周りの娘たちもウンウンと頷いていた。
「分かったわ。それじゃあ……」
皆の視線に晒されながら蓋を開けると、そこには彩り鮮やかな野菜が並んでおり、春の香りが部屋の中に充満した。
「これは……全く、舞姫が羨ましいわ」
「とても美味しそうで、まるで宝石箱のようです」
「確かに《騎士様》の手料理を食せるなんて、嫉妬してしまいますわ」
どうやら、朝の予想は間違いなかったみたいだ。でも、彼女たちにここまで想われる杏奈には少し嫉妬をしてしまう。
「もぅ、これなら舞姫は最後にするべきだったわ。私も今朝は頑張ってきたのに」
そう言いつつお弁当を開ける百合さん。百合さんのお弁当も素敵で、これを百合さんご自身で作られているのだから尊敬する。
百合さんが話題を変えてくれたお陰で、他の娘たちもお弁当を出し始める。どのお弁当も美味しそうで、食べる前に随分と話が盛り上がってしまった。
「ほら、早く食べ始めないと午後の授業に遅れてしまうわ」
「ふふふ、ありがとうございます百合さん。そうだわ。杏奈が天麩羅をたくさん揚げてしまったと言って、多目に渡してくれたの。良ければ皆さんもどうぞ」
仕事に関しては抜けのない杏奈だが、天麩羅を作るときだけはかなりたくさん作ってしまう。残ったものは、メイド達や杏奈のクラスの男子の方々に食べてもらっているのだが、今日は部員の娘達のために少しお裾分けしてくれたのだ。
「本当ですかっ!?」
「あぁっ……《騎士様》は何て罪作りな女性なのでしょうか」
そう。私のメイドは罪作りなのだ。主人以外の人々に、ここまで慕われているのだから。
すると、心の中を読んだのか、百合さんが声をかけてくる。
「ふふふ、やっぱりご不満なのかしら?」
不満、とは違うのだろう。
だって。
「いいえ、私のメイドさんは本当に素敵だと思っていたんです」
だって、そんな杏奈のことが私は大好きなのだから。
朝の杏奈。
杏奈 「天麩羅……美味しいよ」
パチパチパチパチ
杏奈 「天麩羅~天麩羅~」
パチパチパチパチ
神楽 「(何時見ても和む)」
杏奈 「サクサク……(キョロキョロ…パクリ) ん、おいし」
メイドズ「(至福)」
\テンプラーン(デデドン)/
杏奈 「あ、またやっちゃった……」
今日も凰家は平和です。