キャラが大量に出てくる予定です。
さて、桜も葉桜となり、舞姫様が在籍している日本舞踊部の御披露目もいよいよとなってきたこの頃。
私達修凰の生徒は、体育の授業に明け暮れていた。
別に、修凰の教育方針が体育会系になったわけではなく、来週、体育祭が開催されるのである。
とはいえ、そこは修凰学園。一般の高校とは違い、専門の業者(木下さんのお家)が手掛けている。小・中・高合同なので仕方ないといえば仕方ないのだけど。
さて、修凰が名門高といえど、このような催し物となればテンションが上がるというもの。令嬢令息の方々も何時もよりも大きな声で声援をあげている。
「杏奈様、そろそろ出番ですよ」
柊さんの声に、私の番が迫って来ていることに気が付いた。
今行っているのは、徒競走の練習。とはいえど、やることは走ることだけなので、本気で走ることはない。あ、私は特別枠で男子と一緒です。
「ありがとうございます」
「ふふふ。練習で杏奈様の活躍が見られるのは徒競走だけですからね。私としては仮装競争も見てみたいのですが」
柊さんの言う通り、私が参加するのは徒競走だけではない。他に障害物走、リレー、そして仮装リレーである。前二つはともかく、仮装リレーはその名の通り、仮装をしてリレーするのである。衣装は当日まで不明。小中高全体の投票で決まるのである。私の周りで参加をするのは、舞姫様、藤姫様、華琳様、輝夜様、楓様、そして蓮華である。唯依様とソフィアさんも打診されたが、辞退したらしい。私も辞退しようとしたのだが、舞姫様に却下された。解せぬ。
「私は杏奈様には格好よい衣装を着ていただきたいですね」
「あまり目立つのは恥ずかしいのですが……」
「ふふふ。私も本番を楽しみにしてますね」
少しだけ憂鬱な気持ちになりつつも、私の番となったので、スタート位置につく。一緒に走るのは、木下君を始めとした陸上部の方々。
「吉祥さんには勝てないとは思うけど、本気できてくれよな。競える機会なんて滅多にないからな」
軽く柔軟を伸ばしていると、木下君にそう言われた。見回せば、他の方々も頷いている。
「はい。元よりそのつもりです。誰よりも陸上に真摯に挑んでいる木下君達には手を抜きませんよ」
本気でくる相手には本気で。手を抜くだなんてありえないのです。
あっという間に一週間が過ぎ、明日が体育祭本番。舞姫様や藤姫様は、明日に備えて早めに床についている。
そして私は、お弁当作りに邁進していた。
体育祭といえばお弁当、お弁当といえば体育祭と言っても過言ではなく……というか、私達のグループが大所帯になるため、前日から下拵えをしておかなければ間に合わないからである。
私と舞姫様、藤姫様、奥様に加えて、母さん、紫さん、白夜様、楓様、華琳様、唯依様、輝夜様、ソフィアさん、百合様、そして、先日藤姫様のクラスに編入した蓮華を加えた総勢十四名。皆様のお家から託されているのだから、凰家メイド部隊としては気合いの入り方が違う。
「杏奈、そろそろ休め。とりあえず一段落だ」
神楽さんがお茶を淹れてくれた。神楽さんもお茶を手に私の隣に腰かけた。
「今年は杏奈のプロデュースだが、中々に作り甲斐があるな」
そう。今年のお弁当のメニューは、私がプロデュースしている。凰の方だけでなく、様々な方をおもてなしできるのだ。
「それだけに、旦那様方はかわいそうだ」
旦那様や水無瀬様は当日お仕事である。まぁ、お弁当はお作りするのだが、皆様血の涙を流していた。
「あ、杏奈。私も仲間に入れて?」
そこに作業を終えた蓮華も輪に入ってくる。蓮華も神楽さんのお茶の虜になっているので、ほにゃりと笑みを浮かべた。
「やっぱり神楽さんのお茶は美味しいです」
「ふふ、ありがとう。しかし、二人が並ぶと壮観だな」
「「???」」
はて、どういうことだろうか。
「分からないならそれでいいさ。さ、後は私達だけで大丈夫だから、二人は姫様方のお世話をしてきてくれ」
色々気になることはあるが、舞姫様と藤姫様のお世話も大切なお仕事だ。先輩方に挨拶をして、蓮華と一緒に舞姫様の部屋に向かう。
「杏奈、代表戦については聞いた?」
「えぇ。まさか、貴女が相手とは思わなかったけどね」
代表戦。修凰の体育祭における異質にして、盛り上がりが凄い競技である。やることは単純明快。全力バトルである。これまで私の名前が挙がることはあったものの、対戦相手がおらず、参加することがなかった競技だ。
だが、今年は蓮華がいる。年下とは言えど白夜様の愛弟子である蓮華ならば私も全力を出せる。
「最後の代表リレーも負けられないけど、代表戦も負けないよ」
「それはこちらの台詞よ。貴女と全力で戦える機会なんてあまりないもの。だから、白夜様と戦うつもりでいくわ」
互いに笑みを浮かべつつ、拳をコツンと突き合わせる。なんだかんだ言って、蓮華は最大のライバルなのだ。
そうこうしているうちに舞姫様の部屋に着く。ノックをしてから入ると、そこには藤姫様もいらっしゃった。
「あら、二人とも。明日のお弁当の下拵えは終わったの?」
「はい。後は神楽さんが大丈夫だと。なので舞姫様方のご用意をと思ったのですが」
クローゼットの前を見れば、しっかりと準備されたバッグ。もう終わっていたらしい。
「これくらいなら一人でも大丈夫よ。でも、そうね。ゆっくり眠れるように、ハーブティーでも淹れてもらおうかしら」
「はい。少々お待ちくださいね」
舞姫様達のことは蓮華に任せて、ハーブティーの準備をする。
そして、戻ってきてみれば、何やら三人は盛り上がっていた。
「何をお話していたのですか?」
「杏奈さんが修行先で、男性をあしらったときのお話です!」
それは……。
「去年の夏休みのときのかしら?」
「うん。杏奈ったら、お話してなかったんだね」
「態々話すことでもないでしょう?」
「あら、杏奈の女傑っぷりというのも、中々面白かったわよ?」
女傑というか、しつこい男は嫌われるもの。元男といっても、うざったいものはうざったいのだ。
「杏奈ったら、自分のことはあまり教えてくれないから、蓮華が戻ってきてくれて嬉しいわ」
「お二人のお役にたてたのであれば幸いです」
「蓮華……」
蓮華も中々に天然である。
とはいえ、お休み前のパジャマ+メイド服パーティーだ。少しくらいなら……。
「では、とっておきを。これは、休憩時間中、杏奈の水着が流されたときのことを」
「「ごくり……」」
それはあかんよ。