神を斬ろうとしたらいつの間にか佐々木小次郎。   作:天城黒猫

7 / 9
本編に飽きたから書きました。
超適当なので超雑です。

あ、そうそう。十連ガチャ二回引いたらアーサーとヴラドとクー・フーリンが来た。
佐々木小次郎は竜をぶった切ってます。


番外編ーzeroー
番外編ーZeroー


————聖杯戦争。

それは六十年に一度、冬木の街にてひっそりと行われる魔術師の儀式(戦争)やり方(ルール)簡単(シンプル)。参加する七人の魔術師はそれぞれサーヴァントと呼ばれる歴史に名を連ねる英霊を召喚し、サーヴァントを戦わせて、最期まで生き残った組が万能の願望器————聖杯を使用することが出来るのだ。

召喚されるサーヴァントは合計七体。それぞれの逸話にあったクラスで召喚される。

剣の英霊(セイバー)

射手の英霊(アーチャー)

槍の英霊(ランサー)

騎乗の英霊(ライダー)

魔術の英霊(キャスター)

暗殺者の英霊(アサシン)

狂戦士の英霊(バーサーカー)

の七つのクラスである。それぞれ特徴があり、得手不得手がある。

このクラスを選択するのも戦争を分けるポイントだ。

 

そして、今聖杯戦争の第一回戦が港にて始まろうとしていた————

 

対峙するサーヴァントは三体。

かたや雪のように白い女性を守るように背に置いている、青い甲冑をまとった女騎士。

かたや青くて動きやすそうな服を着て、赤い槍を携えている男。

かたや和服を華麗に着こなしている年を取ろうとも、その気配から屈強な剣士だと理解できる老人。

三人とも、体から出す覇気を見てなるほど確かに英霊と呼ぶにふさわしい存在といえよう。

初めに口を開いたのは、老人であった。

 

「————さて、先に名乗っておこうか。私のクラスはアサシンだ」

「へぇ?暗殺者が堂々と姿を現すたあ、随分と舐められたモンだなぁ?」

「と言われてもな、私はコソコソするのは得意ではないのだよ」

「……お前アサシンだろうがよ」

「———まあ、私自身どうしてアサシンとして呼ばれたのか分からぬが—————そんな事はどうでも良いだろう?」

『ッ!!』

 

そして、アサシンが出した殺気にそれぞれ不可視の剣を構え、槍を構える。

———言葉で語らう必要はない。剣で、体で、殺し合いで語ろうではないか。と言わんばかりの殺気だ。

 

「では行くぞ、セイバーにランサー!」

「ぐっ!?」

 

そして———アサシンが動いた。

ランサーと呼ばれた男性は嫌な予感を感じ取り、槍を横に構える。そうしたらいつの間にかアサシンがランサーの目の前に移動しており、斬りかかっていたのだ。

—————早すぎる。それがこの場にいる者たちの感想であった。

 

「チ、クショウが!」

「おっと、怖い怖い。では次はそっちだ」

「クッ!?」

 

ランサーは槍を振るい、アサシンを遠ざける。そして次にセイバーに斬りかかった。それは正に一瞬。ランサーがいたところから一瞬で素早く移動し、セイバーの首に斬りかかる。

だがセイバーはそれを見えない剣————風王結界(インビジブル・エア)にて受け止める。セイバーは戦慄する。これは偶々だ。未来予知にも等しい直感にて、何とか受け止められただけだ。反応できなかった。

だが、それがどうした。自分は負けるわけにはいかないのだ。

 

「———行くぞ!ご老体!」

「フム、気遣う必要は無いぞ。本気でかかってきたまえ」

「だったら、俺も行かせて貰うぜ!」

 

セイバーとランサーは二人がかりでアサシンに斬りかかる。セイバーとしては本来二対一で戦うなんて言うことは騎士道精神に反することだ。しかも相手は老人。だけどこれは聖杯戦争、こんなこともあるだろう。それにランサーも隙あればセイバーに斬りかかって来る。

実質、一対一対一だ。

 

「くっ、手強い!」

 

そう漏らしたのはセイバーか、ランサーか。二人がかりで攻めても、攻めきれずにいた。アサシンの振るう刀はとても早く、一つ一つが必殺のものである。油断したら首が二つに分かれてしまうだろう。

そして、攻めきれないランサーに我慢の限界が来たのか、ランサーのマスターであろう人物の声が響く。

 

『————何をやっている!ランサーよ、宝具の開帳を許可する!』

「了解っ!つうわけで、行かせてもらおうか!」

 

ランサーは槍を構え、その槍に魔力が収束するのが解る。そして———アサシンに向けて突く!

 

「『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)』!!」

 

それは、因果を捻じ曲げる必中の槍。「心臓を穿つ」という結果を「槍を放つ」という原因より先に生じさせること。故に放てば必ず敵の心臓を捉える。故に躱すことは不可能————

 

「な……に!?躱したのか……!?」

 

ランサーの顔が驚愕に包まれる。それは何故か。アサシンはランサーの放った刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)を躱した———正確には心臓には刺さらず、わき腹に刺さっていたからだ。それも微々たる傷だ。

そして、ランサーの顔が憤怒の表情に変わる。己の放った槍は己の誇り、それを躱されたのだ。だったら必ず仕留めるしかない。

 

「ゲイボルグ、か。貴様の名はクー・フーリンで相違ないな?それとも実はスカハサが男性だったという線もあるが———」

「ハッ!スカハサは女だぜ、そうさ、俺の名はクー・フーリン!———これからお前を仕留めるものの名だ。キッチリと胸に刻んどけや」

「承知したとも、クランの猛犬。そしてそちらの騎士も中々の使い手だ。————故に、我が必殺をお見せしよう」

 

そして、アサシンは構えた。今までは型などは無く自然体だったあのアサシンがだ。それは必殺を放つ構え。

その只ならぬ覇気にランサーもセイバーも己の技を放とうとする。

 

「秘剣————燕返し!」

「『刺し穿つ死棘の槍《ゲイ・ボルグ》』!!」

「ハアッ!!」

 

アサシンは燕を斬る剣技を放ち、ランサーは必中の槍を放ち、セイバーは魔力放出でブーストをかけた音速の突進を行う。

だが、それらは全て中断された。なぜならば突如雷鳴とともに、二頭の屈強な牛が引く戦車(チャリオット)が三人の中心に宙より駆け、着地したからだ。

そして、その戦車(チャリオット)に乗るは二メートルはあろうかという巨体を誇る男。その男は静かに目を開き、声高々に叫ぶ。

 

「皆者武器を収めよ。王の御前である!」

 

それは意図的に介入し、戦いに水を刺しに来ただけのものなのだろうかとセイバーもランサーもアサシンもその意志を測りかねていた。

そして、そんな三人を見まわし巨漢は告げる。

 

「我が名は征服王イスカンダル。此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て現界した」

 

その言葉に、皆絶句し呆気に取られる。なぜならばこの聖杯戦争において、攻略の要たる己の真名を自ら名乗ったからだ。それは己の戦い方。弱点を晒すのに等しい行為だ。

 

「何を————考えてやがりますかこの馬ッ鹿はああぁ!!」

 

そして、ライダーの戦車(チャリオット)に同乗していたライダーのマスターであるウェイバー・ベルベットは、ライダーに掴み掛る。だが、呆気なくべしっというデコピンの音とともに沈んだ。

そんな彼を見て皆同情した。

 

「うぬらとは聖杯を求めて巡り合わせだが……矛を交えるより先に、まずは問うておくことがある。うぬら各々が聖杯に何を期するのかは知らぬ。だが今一度考えてみよ。その願望、天地を食らう大望に比してもなお、まだ重いものであるかどうか」

 

ライダーの言うことは判然としないものであったが、怪訝に思ったセイバーが問う。

 

「貴様———何が言いたい?」

「うむ、噛み砕いていうとだな」

 

ライダーは飄々とした口調で言う。

 

「ひとつ我が軍門に降り、聖杯を余に譲る気はないか?さすれば余は貴様らを盟友(とも)として遇し、世界を征する快悦を共に分かち合う所存である」

「……」

 

それは余りにも突拍子のない提案。セイバーは戦いに水を刺された怒りを超え、あきれるばかりであった。ランサーは苦笑している。アサシンもランサーと同じく苦笑している。

征服王イスカンダル。それは人類史において世界征服というものの実現に最も近づいた男だ。だが、いきなり真名を自ら暴露し、英霊を己の臣下に迎えようとするのはどうだろう。ただの阿呆なのか、それとも何か策略があってのことなのか。

 

「フム……貴様が名乗るのならば私も名のろうか、我が名は佐々木小次郎。ただのしがない侍だ」

 

アサシンもまた己の真名を名乗った。そして他のマスターを闇に紛れて始末しようと潜んでいた男、衛宮切嗣はその名を聞いて驚愕する。

佐々木小次郎————それは日本史において最強の剣士と呼ばれた男であり、国語や歴史、古典の教科書には必ずと言っていいほど彼の存在が記載されている男。彼に憧れて剣道を始める外人も少なくはない。ここ日本においては知名度は織田信長に並び、最高峰といえよう。

そんな男がアサシンとしてこの聖杯戦争に参加しているそれは脅威になるだろう。セイバーとランサーの二人と剣を互角に交えるのも頷ける。

 

「だがまあ、貴様の臣下に降る気はないがな」

「……そもそも、そんな戯言を述べ立てる為に貴様は私たちの勝負を邪魔立てしたというのか?」

「ハッ!中々に豪気なオッサンだな」

 

セイバーの顔は不愉快極まりないといった様子だ。逆にランサーは笑っていた。

 

「戯言が過ぎたな征服王。騎士として許しがたい屈辱だ」

 

戦いを邪魔されたセイバーの殺気を受けてライダーは、困窮して「むぅ」と拳をぐりぐりとこめかみに押し付ける。そして親指と人差し指で丸を作る。それは金を示す動作だ。

 

「……対応は応相談だが?」

「くどい!私はブリテンを預かる王だ。貴様のもとに降るわけにはいかない」

「———ほう、貴様もまた王であったか。しかもかの騎士王がこんな小娘であったとはな」

「その小娘の一太刀を浴びて見るか?」

 

セイバーはライダーの要求を跳ね除ける。セイバーの真名はアーサー王。アルトリア・ペンドラゴン。知らぬものはほとんどいないであろう騎士王。約束された勝利の剣(エクスカリバー)とともに輝かしい栄光を駆けぬいた王だ。

そんなセイバーを見てライダーは仕方なしとアサシンとランサーに目を向ける。

 

「貴様らはどうだ?」

「先ほども言ったが、貴様の臣下に降る気はない」

「俺も同意見だな」

 

帰ってきた答えは拒否。ライダーはため息をつき、ぼやく。

 

「こりゃー交渉決裂かぁ。勿体無いなぁ。残念だなぁ」

 

全く残念そうに見えない。そう言って俯いたライダーは足元から見える恨みが籠った視線と目が合う。それはまさに怨霊と言った様子がピッタリだろう。

 

「ら、い、だぁぁぁ……どーすんだよぉ。征服とか何とか言いながら、結局総スカンじゃないかよぉ……オマエ本気でセイバーとランサーを手下にできると思ったのか?」

 

そんな問いを悪びれることなく豪快に笑い飛ばす。

 

「いや、物は試しというではないか」

「物は試しで真名バラしたんかい!?」

 

ウェイバーは破天荒な己のサーヴァントに泣き叫び、ポカポカとライダーの胴体を叩く。そんな彼の様子にアイリスフィールは同情の目線を送り、アサシンは「南無……」と呟いている。

そんな何処か弛緩した空気が満ちる。だがそれもすぐに終わる。

 

『そうか、よりによって貴様か』

 

それは怒りに満ちた声であった、その声の主はランサーのマスターであるケイネス・アーチボルトのものだ。

その声を聴いたウエイバーは己の体をこわばせ、恐怖に支配される。

 

『いったい何を血迷って私の聖遺物を盗み出したのかと思えば、————よりにもよって、君自らが聖杯戦争に参加する腹だったとはなぁ。ウェイバー・ベルベット君』

 

その声の主はウェイバーの講師であるケイネスだ。ウェイバーは時計塔では落ちこぼれと呼ばれる人種であり、ケイネスからもそれを認められていた。

彼はそんな時計塔の環境が気に入らなかった。血筋ばかり優先して本人の実力なんぞはそっちのけだ。だからこそ気に入らなかった。いつか見返してやろうかと思っていた矢先、運送課の手違いにより、ケイネスに届く筈だったイスカンダルの聖遺物がウェイバーのもとに届いた。

それを機に見返そうと聖杯戦争に参加したのだが、したのだが————

 

「あ……ぅう……」

 

改めて己の講師と対峙しているだけで、心臓が張り裂けそうだ。なめていた訳ではない。これは殺し合いだと理解していた。だけど、実際に対面してみると、どうだ。みっともなく体は震えてしまう。

何故考えなかったのか。時計塔の講師ならば、聖遺物を盗まれたとしても、すぐに別の聖遺物を用意出来るだろうと。

 

『残念だ。実に残念だなぁ。可愛い教え子には幸せになってほしかったんだがね。ウェイバー君、君のような凡才は、凡才なりに凡庸で平和な人生を手に入れられた筈だったのにねぇ』

 

その声は嫌味と殺気に満ちていた。それは己が弱者だと強制的に理解させられる。させられてしまった。何か気が利いた嘲りの言葉でもかけてやりたかったが、そんなものは一向に思い浮かばない。

彼らの関係はもはや講師と生徒というものではない、サーヴァントを従えている者同士、聖杯戦争参加している者同士、敵なのだ。それを理解させられた。

殺し合い。死ぬかもしれない。そんな恐怖が駆け巡る。

だが、そんな彼の肩に手が置かれる。それはとても暖かく、優しくて力強いものであった。

いつの間にか、恐怖というものは溶かされて無くなっていた。

 

「おう魔術師よ。察するに貴様はこの坊主に成り代わって余のマスターになる腹だったらしいな。だとしたら片腹痛いのぅ。余のマスターたるべき男は、余とともに戦場を馳せる勇者でなければならぬ。姿を晒す度胸さえない臆病者なぞ、役者不足も甚だしいぞ」

 

ウェイバーはライダーの言葉に「オマエが無理やり連れてきたんだろう!」と突っ込みたかったが、そんなことはさすがに言えなく、黙ったままであったが、それでも安堵が体を包む。

 

「あーあ、言われちまったな。どうするよマスター」

『……』

 

ランサーが己のマスターをからかう様に笑うが、答えは返ってこない。沈黙だ。その代わりに怒りとともに殺気が伝播する。

ライダーはそんな殺気なぞ関係ないとばかりに、声を張り上げる。

 

「おいこら!他にもおるだろうが!闇に紛れて覗き見をしている連中は!」

「————どういうことだ?ライダー?」

 

セイバーが怪訝な顔でライダーに問いかけ、ライダーは親指を立てて答える。

 

「セイバー、それにアサシンにランサー。うぬらの奏でる剣戟は見事であった。それに惹かれて出てきた英霊がよもや余一人ということはあるまいて」

 

確かに、彼らが奏でる剣戟は時代を超えて集まった武芸者なだけあって、美しく激しく、惹き付けるものであっただろう。

それに聖杯戦争第一回戦なのだ。中には使い魔を通じて見ているマスターたちもいるだろう。

 

「情けない!情けないのぅ!冬木に集った英雄豪傑どもよ。こやつらの見せつけた気概に、何も感じるところがないと抜かすか?誇るべき真名を持ち合わせておきながら、コソコソと覗き見に徹するというのなら、腰抜けだわな。英霊が聞いて呆れるわなぁ。んん!?」

 

ライダーは挑発するように呵呵大笑する。そして、何処までも挑発的な態度で闇に向けて叫ぶ。

 

「聖杯に招かれし英霊は今!ここに集うが良い!なおも顔見せを怖じるような臆病者は、征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!!」

 

その大声はアサシンを通じて教会にいる言峰のもとに届き、それを一言一句漏らさずに己の師である時臣の元に伝えると、時臣は頭を抱え、懸念する。

 

『……これは拙いな』

「拙いですね」

 

時臣と言峰。両者は頭を抱える。それは時臣が召喚したサーヴァントはこう言った挑発は断じて見過ごさないという性質を持っているからだ。

 

そして———ソレは街灯の上に現れた。ソレは何処までも金色に輝いており、何処までも眩しかった。そして他のサーヴァントはその覇気を感じ取り、確信する。———ソレは強者であり、王であると。

そのいでたちを見るならば、キャスターではないし、ライダーの呼びかけを挑発だと理解して出てきたのならばバーサーカーでもない。ならば消去法で残るは、アーチャーだ。

 

(オレ)を差し置いて王を呼称する不敬者が一夜の内に二匹も湧くとはな」

 

ソレは何処までも高圧的な口調でサーヴァント達を見下す。まさに天上天下唯我独尊という言葉が相応しいだろう。ライダーもまさか自分以上に高飛車な相手が現れるのは予想外だったのか、顎を掻いている。

 

「難癖をつけられたところでなぁ……イスカンダルたる余は世に知れ渡る征服王に他ならぬのだが」

「たわけ。真の王たる英雄は、天上天下に(オレ)ただ独り。あとは有象無象の雑種にすぎん」

 

それはもはや侮辱だ。アーチャーはイスカンダルという大英雄すらも下に見ている。それそうだろう。彼の真名はギルガメッシュ。はるか古代のウルクの王であり、世界中から様々な財宝の原点を集め、人類最古の英雄なのだ。ソレはサーヴァントとしては破格のスペックを誇り、まさに最強と呼ぶにふさわしい英雄だろう。

 

「そこまで言うんなら、まずは名乗りを上げたらどうだ?貴様も王たるものならば、まさか己の威名を憚りはすまい?」

「問を投げるか?雑種風情が、王たるこの(オレ)に向けて?」

 

ライダーの言葉にアーチャーは、殺気を放つ。それは自分の名を知っていて当然、知らないのならばそれは不敬。そういった傲慢。己の真名を隠すのとはわけが違う。

そして、アーチャーの背後の空間に黄金の膜が現れ、それがゆらりとゆがんだと思うと、無数の武器が出現した。ソレを見た者たちは皆驚愕する。それらは統べて宝具だったのだから。彼は、アーチャーは無数の宝具を持ち出す———正確には宝具は彼の蔵なのだが、それを知る由もない者たちはあり得ない。とぼやく。通常ならば宝具は多くて三つ。だというのにアーチャーは正に無数の宝をこの聖杯戦争持ち出している。王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)。それが彼の宝具。生前に世界中から集めた全ての原典がその蔵に収められている。

そしてそれを打ち出すのがアーチャーの戦い方。故にアーチャーなのだ。

 

「はは、ははははは!!」

 

だが、そんなアーチャーを見て笑うものが一人。彼の名は間桐雁夜。彼は下水道から使い魔を通じてそれを見ていた。憎き時臣のサーヴァント。あのアーチャーを粉砕し、時臣を殺す。それが彼の思いであり、憎悪。

殺意と狂気に満ちた声で宣言する。さあ、殺せ!バーサーカーよ!あのアーチャーを!憎き時臣のサーヴァントを叩き潰せ!

そして、港の一角にソレは現界した、イスカンダルの巨体を超える巨大なサーヴァント。何処か視点の定まらない眼で遠くを見ている。

そのサーヴァントは見るからに理性がない。そう、バーサーカーのサーヴァントだ。

そしてそのバーサーカーを見てイスカンダルは旧知の友人に会ったように笑う。

バーサーカーもまたイスカンダルを見て吠える。

 

「そうか、貴様か。ダレイオスッ!」

「イ、スカンダルゥゥゥゥッッ!!!」

 

バーサーカーの真名はダレイオス三世。征服王イスカンダルの前に何度も立ちふさがったイスカンダルのライバルともいえる存在だ。

そしてライダーとバーサーカーは己の剣を、戦鎚(メイス)をぶつけ合う。

 

「フン————(オレ)を無視するとは良い度胸だな、雑種に狂犬よ。散るが良い」

 

アーチャーは自分が眼中に無いということを理解させられ、武器を交わしているライダーとバーサーカーに向けて武器を射出しようとするが、アーチャーの前に立ちふさがるものがいた。アサシンのサーヴァント、佐々木小次郎だ。

 

「やれやれ、アーチャーよ。自分が眼中に無いからと怒るようでは器が知れるぞ?」

「たわけ、(オレ)を前にして無視するならばそれだけで死に値するのだ。貴様が時臣と同盟を組んでいるからとはいえ、容赦はせぬ。そこを退け」

「いいや、それはできないな。私は貴様の様な暴君が大嫌いなのだ。前々から気に入らなかった、私は捨て駒扱いのようだし、ここで貴様を仕留めて散るのも一興かと思ってな」

「そうか、ならばせめて最期まで(オレ)を興じさせよ」

 

そしてアーチャーが無数の武器をアサシンに向けて射出し、アサシンは神速の剣技でそれを叩き落とす。

そして残されたランサーはセイバーに向けて槍を構える。

 

「なあ、セイバーよ。これは消去法で俺と戦うべきではないか?」

「良いだろう。その挑戦受け取った、覚悟せよ、ランサー!」

 

そしてセイバーとランサーもまた武器を交わす。

 

この港はライダー(イスカンダル)VSバーサーカー(ダレイオス三世)

アーチャー(ギルガメッシュ)VSアサシン(佐々木小次郎)

ランサー(クー・フーリン)VSセイバー(アーサー王)と非常に混沌としており、辺りに膨大な破壊をもたらしている。

 

 

 

場所は移り、フランスの農村。そこにソレは召喚されようとしていた。ソレの召喚は普通ならばあり得ないものだ。ソレが召喚されるには聖杯戦争が破綻するか、聖杯戦争によって世界が歪められるかのどちらかの条件が無ければ現界することが無い。

今回の聖杯は『泥』によって汚染されており、願いを破滅の方向に歪めるという性質を持っているとはいえ、ソレが召喚されることはあり得ない。だがなんのイレギュラーなのか、召喚されてしまった。

これは推定の域を出ないが、恐らくは泥による汚染は聖杯全てに浸透されておらず、正常な部分は文字通り『最期の力を振り絞って』ソレを召喚したのだろう。そもそも、今回の聖杯戦争に参加するサーヴァントたちが規格外だということもあり得るが、それによる影響は薄いだろう。

 

 

————検索(サーチ)開始。

 

————検索(サーチ)終了。

 

————一件一致。

 

————体格適合。

 

————霊格適合。

 

————血統適合。

 

————人格適合。

 

————魔力適合。

 

————憑依による人格の一時封印及び英霊の霊格挿入(インストール)開始。

 

————元人格の同意獲得。

 

————素体の別領域保存(バックアップ)開始。

 

————霊格挿入(インストール)完了。体格と霊格の適合作業開始。

 

————クラス別能力(スキル)付与開始。

 

————全英霊の情報及び現代年までの必要情報挿入開始。

 

————別領域(バックアップ)保存終了。

 

————クラス別能力(スキル)付与終了。スキル『聖人』……聖骸布の作製を選択。

 

————必要情報挿入完了。

 

————適合作業終了。

 

————全行程完了。

 

 

————サーヴァントクラス、ルーラー。現界完了。

 

 

 

 

これで、役者は全て揃った。後は思う存分歌うだけだ。さあ、聖杯戦争を始めようか。




セイバー:アーサー王。
アーチャー:ギルガメッシュ。
ランサー:クー・フーリン。
ライダー:イスカンダル。
アサシン:佐々木小次郎。
バーサーカー:ダレイオス三世。
キャスター:ジル・ド・レェ。
ルーラー:ジャンヌ・ダルク。

……なぁにこれぇ……二徹って恐ろしいね。

これを続けるかは気分しだい。

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