神を斬ろうとしたらいつの間にか佐々木小次郎。   作:天城黒猫

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グランドオーダーの林檎対応が来たから思わず遊びまくっていた。
だから投稿が遅れた。反省はしていない。

マシューちゃんかわゆいよ。ダレイオスやらスパやらバーサーカーしかいないパーティでは唯一の癒しだよ。
せめて佐々木小次郎きて……

あ、それと今回部屋のクーラーが壊れたんでネカフェのPCから投稿です。変なところがあったら言ってください。


第5話

一回戦が終わり、私は勝利して生き残った。

だけれどシンジが死んだ。それが実感がわかない。本当に死んだのか、わからない。

負けたら死ぬ。それがルールだと頭では理解している。だけれど気持ちが追い付かない。

 

「随分とひどい顔をしているな」

 

いつまでもウジウジトしている私を見かねたのかセイバーが声をかけてきた。というかそんなにひどい顔をしているの?

 

「ああ、ひどい顔だとも。女性がそんな顔をするものではない、と言いたいところだが確かに今回は酷だろう。だがこれだけは心に留めておきたまえ、私は貴様の『死にたくない』という思いに引かれ召喚された。故に、この先貴様が敵を殺し、己が生きたいという意思を貫くならば私はこの刀を振おう」

 

セイバーはそう言って霊体化した。

……生きたいという意志……か。私は何を思ってムーンセルにアクセスしたのか、それすら覚えていない。だけれどもここで死んだならばそれすら分からずに、何もわからずに消滅する。

……それでもいいのか。いいや、よくない。だったらどうする?答えはただ一つ。————勝ち抜くしかない。

 

「……次の対戦相手が決定したようだ。掲示板を見に行くといい」

 

セイバーは念話で伝えてきた。

……二回戦の相手、どんな相手なのだろうか。

私は教室(マイルーム)を出ていくらか人だかりができているがそれらを押しのけて掲示板の前に立つ。

一つ目には当然私の名前が記入されている。そして次のところには

 

マスター:ダン・ブラックモア

決戦場:二の月想海

 

そう記入されていた。ダン・ブラックモア……どんな人なのだろうか。

 

「……ふむ、君か。次の対戦相手は」

 

ふと横から声が聞こえた。その声は重低音で落ち着いており、威厳のある声だった。声が聞こえた方を見るとそこには老人がいた。歴戦の軍人を思わせるような服を着ている——いや、実際に軍人なのだろう。髭も髪も真っ白に染まったている老いた人物だ。

だけれども老人特有の儚さといったようなものは全く感じない。まるで何十年も立っている大樹の様な、そんな印象を与える人物だ。まったく衰えが感じない。

 

「若いな、実戦の経験もないに等しい。相手の風貌に臆するその様が何よりの証だ」

 

老人……ダン・ブラックモアは私の心を見透かすようにそう言った。

……いや、実際に見透かしていたのだろう。彼が発する次の言葉は私の状態をついたものだったのだから。

 

「……それに君の目、————迷っているな」

 

そう、その言葉は正確に、私の心を表している。

今の私は確かに迷っている。

 

「案山子以前だ。そのような状態で戦場に赴くとは……不幸なことだ」

 

そう言ってダン・ブラックモアは去っていった。

そしてセイバーが実体化して私に話しかける。その様はまるで親が子供に言い聞かせるようなものだった。

 

「ほう、あの老人は中々にできるな……まだ答えを出させるのはもう少し先にしようとしたが、そうはいかないようだ。————今のままでは確実に死ぬ。それほどの相手だ、ああいう手合いは手ごわい。決戦までにはその迷いを捨てておきたまえ」

 

————迷いを捨てなければ死ぬ。

それは事実だろう。誰だって死ぬのは嫌だろう、だけれど私は相手を殺すのが嫌だ。そんな風に迷っている。

ここでは相手を殺すしか生き残る道はない。

それは頭では分かっている。だけれど心が追い付かない。

 

「……フム、まぁこのままここでウジウジとしていても仕方がない。まずは第一暗号鍵(プライマリトリガー)を獲得するとするか、あの老人の情報も欲しいしな……いや、先ずはそうだな……凜嬢に相談してみれば良い。あれならば貴様の迷いもある程度なら吹っ切れるだろう」

 

セイバーはそう言って霊体化した。凜に相談?確かに何かとアドバイスをしてくれる彼女ならば良いアドバイスが貰えるだろう。

そうと決まったら早速彼女のもとに行こう!……どこにいるのかなぁ?とりあえずは屋上に行ってみよう。

 

 

 

屋上。そこはこの学校のグラウンドが見下ろせる場所だ。グラウンドの向こうは何もない。この学校の敷居の向こうには何もないのだ。

この聖杯戦争の予選での偽りの日常の時は確かに家が所狭しと並んでいた住宅街があった。だけれど今は0と1のデータの羅列のみだ。

彼女はそんな風景を眺めていた。

そして私の気配に気が付いたのか振り向く。

 

「貴女の対戦相手、聞いたわ。ダン()はもう現役ではないけれど、名のある軍人よ。西欧財閥の一角を担うある国の狙撃主よ。匍匐前進で一キロ以上進んで敵の司令官を狙撃するとか日常茶飯事。ま、並みの精神力ではないわね」

 

匍匐前進で一キロ進んで狙撃。私のはとても無理だろう。そんなことができる彼は確かに手ごわい相手なのだろう。

「……分かる?一回戦とは何もかもが違うのが、見たところ記憶も戻っていないようだし……ホーントご愁傷様。ただでさえ弱いのにそんなハンデまで持っちゃってねー。根性論はあまり口にしたくはないけれど、勝利への執念は目的から生まれるもの。記憶がないのは祟るわよー」

 

凜は気の毒そうにこちらを見ながらそう言った。

……しかし、ハンデとは何のことなのだろうか?聖杯戦争は個人の戦い。私の記憶が戻っていないのがそれほどマイナスになるとは思えないのだけれど……

そんな私の言葉に凜はため息をつく。

 

「大アリよ。勝利への執念イコール集中力だもの。義務で戦えるのはそれこそ軍人ぐらいよ。貴女にはそのどちらも不足している。一回戦を勝ち抜いたというのにまだふわふわしているのはそういうコト。たとえ貴女のサーヴァントの宝具がどれだけ強くても、このままだとあっさりサー・ダンに殺されるでしょうね」

 

凜はそう私に警告する。

……そういえば、セイバーの宝具ってどんなものなの?

 

「……え?」

 

凜は呆然とした顔で呟く。

 

「もしかして一回戦で宝具を使わずに勝ったの!?——へぇ、少しは見直したわよ」

「……マスターよ。彼女の前でそのような話題は迂闊だぞ?まぁ、構わんが。貴様には注意力というものが欠けているようだな」

 

 

凜はそう言って微笑む。

その直後にセイバーが実体化して私の頭に軽くチョップして叱る。

確かに凜の前では些細なヒントからサーヴァントの真名を暴きそうだ。それを考えれば迂闊だった。

……アレ?でもセイバーって真名隠して……

 

「確かに私は真明を暴かれようが一向にかまわん。だが貴様の迂闊さは別だ」

「確かにそうね。貴女のセキリュティガタガタだもの」

 

 

ゔっ……凜まで……私そんなに迂闊なのかな……

「ああ、迂闊だ。……まぁそれは置いといて、私の宝具だったな。宝具……というより燕返しなどのスキル含め、私には斬撃しか能がない。そして、ここからが重要だ。————この聖杯戦争にて、私は宝具を使う気は基本的にはない」

「へぇ……随分と余裕ね?日本史最強の剣士、佐々木小次郎」

 

 

凜はそう言った。佐々木小次郎。それは私のセイバーの真名だ。

ということはもう真名を暴いたということ?

 

「当然よ。さっきそのセイバー本人が『燕返しなどのスキル含め』って言っていたじゃない。まあ、本人も隠す気はないようだけれど、少しは隠すように言ったほうがいいんじゃないの?」

 

凜はそう言いながらセイバーをジト目で見る。

……確かにそうかもしれない、ごもっともだ。真名を暴かれるということはセイバーの剣技がどういうものかということも見破られるということだろう。

それはこの先きっと致命的になるかもしれない……

 

「そうか、了解したぞマスターよ。この先は私の真名を暴かれるような言動は自粛しよう……最も今更な気がしないでもないが」

「それもそうね。私が周囲に吹聴してしまえばそれまでだもの……まあいいわ。これからはいかに相手の真名を見破ること、そしてこちらの真名を隠ぺいするか。それが課題になってくるわ」

 

確かに凜の言う通りだろう。序盤でもセイバーが真名の重要さについて語っていた。

これから相手の真名を暴く……それはマスターである私の役目なのだろう。

 

「……ああ、そうそう。倒した相手のマトリクスを見るのもいいわよ?何らかのヒントになるかもしれないし」

 

凜は思い出したように言う。……マトリクス?それはいったいどのようなものなのだろうか?

 

「ハァ……そんなことも知らないの?端末を渡されたでしょう?それがマトリクス。一回戦で戦った相手の情報が乗っているはずだから見てみなさい」

 

嘆息しながらも教えてくれる。

試しに見てみたら、確かにシンジのサーヴァントの情報が乗っていた。これは便利だ。

 

「まあいいわ。せいぜい生き残りなさい」

「では私たちも第一暗号鍵(プライマリトリガー)を手に入れるとしようか」

 

凜はそう言って屋上から去っていく。

うん、セイバーの言う通り。アリーナに行こうか!

 

 

 

 

そしてアリーナに繋がる扉の前にきたのだけれども、そこにはダンともう一人。緑色のマントをきた人物。サーヴァントだろうか?その二人が話しているので、思わず身を隠してしまった。

「二回戦の相手を確認した。……まだ若くて未熟なマスターだが一回戦を勝ち残った相手だ。油断はするな、予断も独断も関心はせんぞ」

「へいへい、わかってますよ。どんな相手だろうが確実にシンプルに殺しますよ」

 

ダンの言葉にサーヴァントは肩をすくめながら答える。

 

「ま、どもあれあっちも一人殺しているワケですし?一回戦で戦った相手よりマシなんじゃないんすか?いや、精神的に」

「……それが油断というものだ。……ともあれこの戦いは連携が肝要だ。私の指示に従え。一回戦の様な独断はするな。この戦場では勝つだけでは許されない戦いだ。よいか、あのような真似は二度とするな」

 

ダンは鬼気迫るような表情でサーヴァントに言う。

だけれどサーヴァントはやはり肩をすくめるだけだ。

 

「あーはいはいわかりましたよ。ったく口うるさい爺さんだぜ」

「フム……」

 

セイバーが実体化してサーヴァントを見てうなづく。

 

「マスターよ。アレは見たところアサシン……いや、違うな。どのような手を使っても勝つといった手合いのようだ。不意打ち、奇襲には用心したまえよ」

 

セイバーはそう呟いた。

え……セイバー、一目見ただけでそこまで分かるの?

「ああ、外見や言動から推察したに過ぎんよ。あの緑の布は森の中で潜む為のものであろう、そしてその中に小型の武器を携帯している。だがサーヴァントの外見なぞアテにならん。史実では男であったフランシス・ドレイクが女性だったのだからな。案外セイバーかもしれぬぞ?」

 

セイバーはくっくっくと笑いながら私を見る。その目は私を試しているようだ。

……この先は私の仕事ということか、あのサーヴァントがどのような戦い方をするのか、クラスは何なのか、真名は何なのか。それを見破る。

 

「わかっておるではないか。戦いは任せよ、私はそのために呼ばれたのだからな。貴様はあのサーヴァントの情報を集めれば良い」

 

セイバー……うん!頼りにしているよ。

ダン達も私たちが話している間にアリーナに入ったみたいだし、私たちもアリーナの扉を潜る。

そしてアリーナに入った瞬間、違和感を感じると同時に私の脳が警告する。

 

————立ち止まるな

 

そう警告している。

まとわりつくような空気。それは不愉快なカンジだ。

だけれども足が動かない、これは恐怖なのだろうか、理解(わか)っている。早くここからはなれないと、立ち止まると自分の命が削られるのが。

それでも動かない。

 

「……これは……毒、か?少々不味いな。マスターよ、急を要する」

 

セイバーはそう言って私を抱える。

……わひゃぁ!?だからなんでお姫様だっこなの!?

 

「前にも言っただろう?生きた人間を抱えるのはこれが一番効率が良いのだ」

 

わかっているけれど!それはわかっているんだけどさぁ!できれば私の羞恥心を計算に入れてくれるかなぁ!?

私はそう叫ぶ。だけれどセイバーは何でもないように言う。

 

「ああ、問題ない。私は貴様の様な小娘には発情せんよ。私は(ユキ)一筋だからな」

 

……セイバー!?それはさすがに傷ついたよ!?小娘って!小娘って!発情とかそんな問題じゃないし!というかさらっとのろけたよね!?

少しは乙女心というものを考慮して欲しい。

 

「ハハハハ、まぁ細かいことはどうでも良い。……口を閉じていたまえ、舌を噛むぞ?」

……あ、その言葉なんかデジャヴ……そして私の視界は流れる。

まるでジェットコースターのようにセイバーが私を抱えたまま高速で走っているのだ。いや、下手したらジェットコースターよりも早いかもしれない。

でもセイバーはまだ本気を出していないようだ。私が耐えられるぎりぎりの速度で走っている。

そしてあっという間に相手のサーヴァントのもとに到着する。

途中でエネミーとあったときは攻撃を全て避けて振り切っていた。……そんなこと出来るんだね。でも心臓が止まるかと思ったよ?あとでお説教……しても聞かないんだろうな……どうせ……

ダンとそのサーヴァントは会話……というよりは何かを言い争っているようだ。

なにか情報が得られるかもしれないから身を潜めて耳を傾けることにしよう。

 

「これはどういうことだ?」

「へ?どうもこうも旦那を勝たせるために結界を張ったんですが?決戦まで待ってるとか正気じゃねーし?ヤツらが勝手におっちぬんなら、楽も出来で万々歳でしょ」

 

サーヴァントはダンの威圧にも臆せず答える、確かにあのサーヴァントのやったことは戦法としては正しいだろう。

だけれどもダンは騎士だと聞いている。騎士が今回の様な毒で相手を追い詰めるというようなことは良しとしないだろう。

 

「……誰がそのような真似をしろと命じた。死肉を漁る禿鷹にも一握りの矜持はあるのだぞ。イチイの毒はこの戦いには不要だ。決して使うなと命じた筈だが……どうにもお前には誇りというものが欠落しているようだ」

 

イチイの毒。それは今このアリーナに蔓延している瘴気の正体なのだろう。アリーナ全体を瘴気で覆い尽くすほどの規模。おそらくはサーヴァントの宝具だろう。

「誇り、ねぇ。俺にそんなもん求められても困るんすよね。っていうかそれで勝てるならいいんですけど。ほーんと誇りで敵が倒れてくれるならそりゃ最強だ!」

 

サーヴァントは肩を大げさにすくめて言う。

 

「だが悪いね。オレゃあその域の達人じゃねぇワケで。きちんと毒を盛って殺すリアリストなんすよ」

「ふむ……なるほどな。条約違反、奇襲、裏切り。そういった策に頼るのがお前の戦い方か」

 

この結界なのだろうか?これを張ったサーヴァントと騎士であるダン。お互いの意見が食い違っているようだ。

「なるほどな。自分が優位に立つように場を整えるのは私は別に構わんが、あの男にとってはそうはいかないようだな。……私は一向に構わん。これも戦いの内よ」

 

セイバーはそう言った。てっきりあのサーヴァントとは相容れないかとおもったんだけれど?

 

「確かに私はどちらかとうと正々堂々の戦いを好む。だがそれとは別に絡めて。策略を使ってくる相手との戦いも心躍るものよ。いうなれば甘い紅茶と苦いコーヒーの様なものだ。私はどちらも好きだ」

 

……結局は戦いが好きなのね……

 

「今更結界を解けとは言わぬ。だが次に信義にもとる事があったら————」

「はいはい」

 

そしてサーヴァントの言葉とともにダンは消える。おそらくは転移してアリーナから出たのだろう。

……気が抜けて腰を落とす。

マスターとサーヴァントの不仲。これが今回の戦いの攻略のカギとなるだろう。

「さて、マスターよ、気を抜いている場合ではない。このままでは私たちは毒に蝕まれるだろう。……こういったものには何かしらの基点というものがある。それを探すぞ」

 

そう言ってセイバーは私を抱える……やっぱりお姫様だっこなの!?せめておんぶにしてよ!

私はそう叫ぶが、通じない。セイバーはさっさと高速で移動する。

そして着いたのは根元に矢が刺さった木の前だ。

恐らくはこれが基点なのだろう。魔力が餡々とあふれ出ており、覚悟もなく近づいたものはその毒気に溺れてしまうだろう。

 

「さて、では破壊するとするか」

セイバーはいつものように刀を振るい、木を一刀両断する。そして毒は晴れた。やはりこれが基点だったのだろう。

さあ、セイバー。この調子で第一暗号鍵(プライマリトリガー)を獲得しようか。

 

「ああ、承った」

 

 

 

 

 

 

 




次回の投稿は来週。

あと活動報告でアンケートやってます。良かったら見て行ってください。

何らかの訂正などありましたら容赦なくご指摘ください。

三回戦まではグダる予定。まだまだ未熟……!

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