神を斬ろうとしたらいつの間にか佐々木小次郎。   作:天城黒猫

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ちよっと書き方を変えてみた。
駄目だったら書き直す。


そういやコメントでも言っている人がいたけど、公式でTUBAME>竜だと。
まとめサイト見てみたら、ドクターがその燕は幻獣種か何か、って突っ込んでいた。
そのサイトの管理人も最後の方にセイバーさんも人のみで神仏に挑む修羅の道だとかなんとか。
TUBAMEヤベエ。そしてそれを斬った小次郎先輩もヤベエ。

燕は空間移動可能説よりも、鳳凰や朱雀などの幻獣というか神獣説が濃厚に……!?



第4話

牛のような形をしたエネミー()が一太刀で真っ二つにされる。

刀を振るう彼にとってそれは余りにも容易いことだ。いつも通りに目の前の物を斬ろうとして刀を振るう。

彼にとってはただそれだけなのである。

だが、恐ろしいのはその斬撃が速すぎて見えないということだ。

生前剣技を極めたと言われ、彼に斬れないものは無いとまで周囲に言わしめた彼にとってはそれが当たり前の事なのだ。

 

「フム?マスターよ、アレを見てみろ」

 

ふと佐々木小次郎(セイバー)が立ち止まり、ある所を指差す。

そこにはただの壁しかない。

セイバーのマスターである岸波白野もそれは分かっているが、訝しげな目で指差された壁を観察する。

彼がわざわざ立ち止まって指差したのだから何かがあるはずなのだろう。

 

「あっ!」

 

白野は何かに気がついたようで、声を漏らす。

 

「わかったか?」

「うん、この先には道がある」

 

白野がそう言い、壁に触れる。そして、手は向こうの空間へとすり抜けていった。

勇気を出して、恐る恐るだが足を進める。

そうすると見えない床が、壁があるかの様に歩けるーーーいや、ここは実際に慎二の手によって隠されていたのだ。

その理由は、

 

「なんだろう……手帳?」

 

隠し通路の向こうにあったのは、古びたボロボロの手帳であった。

白野はそれを拾って読むが、いかんせんボロボロで一部分しか読めない。

だが、それでも分かった事がある。

 

「航海日誌かな?」

 

そう、それは白野が言った通り海賊の航海日誌であった。

中には黄金の鹿号(ゴールデンハインド)という船の名前や、幾つかの島についてのことや積荷の情報が記入されていた。

間違いなく慎二のサーヴァントについての情報であり、慎二は真名の判明を防ぐ為にここに隠した、といったところだろう。

日記の中から情報を読み取ろうと穴が開くほどに、日記を読んでいる白野に声を掛ける人物がいた。

 

「ーーーちっ!白野のクセにもうそれを見つけたのか!?こんなところまで探すなんて随分必死じゃないか!」

 

そう、この日記を隠した張本人である間桐慎二だ。

慎二は忌々しげに舌打ちをしている。恐らくは絶対に見つからない自信があったのに、よりにもよって白野に見つけられてしまったからだろう。

 

「あんな奥に隠したのにっ……フン……まあいい!すぐに取り戻せば問題ないさ、やれ!」

「ハイハイ、勿論金はくれるんだろうね?シンジィ!!」

「そんなもの後で幾らでも用意してやる!だからさっさとやれ!」

「りょーかぁい!」

 

そう言って慎二のサーヴァント、ライダーが2丁拳銃を構える。

それに答えるようにセイバーも己の愛刀を無造作に構える。

 

「フフフ、良いだろうさぁ。やろうか!マスターよ、下がっているが良い」

「うん!セイバー、頑張って!」

 

セイバーがライダーに接近し、いつものように刀を振って斬ろうとしたとき、ライダーの背後にある空間から幾つかの大砲が出現した。

それは船の大砲、カルバリン砲だ。

 

「撃てえーぃ!!」

「シッ!」

 

ライダーがそう言うとともに大砲から轟音と共に砲弾が発射される。

砲弾がセイバーに向かって飛んで行く。だが、セイバーはただ斬ろうとする物を斬る為に形を振るう。

その結果、セイバーの振るった刀は砲弾を真っ二つに切断した。

 

「な、何だって!?そんなバカな!」

「やるねぇ、こいつぁちょっと厳しいかもね!」

「ああ……やっぱりかぁ」

 

そんなセイバーに慎二は狼狽え、ライダーは気合いを入れ直す。

そんな中でセイバーのマスターである白野は、この事を予想していたのか何ら慌てる事なく呟く。

セイバーなら絶対斬るとこの短時間で信頼していたのだ。

 

「発射ぁ!!」

 

ライダーは引き続き大砲を撃つ。

セイバーは放たれた砲弾を斬る。

千日手。弾幕が厚い為セイバーは前進する事が出来ない。弾幕を薄くするとライダーはセイバーに斬られる。

お互い膠着状態に陥って……いなかった。

 

「面倒だな。避けるか」

「何ぃ!?」

 

セイバーが刀を振るうのを止め、弾幕を避ける。全て紙一重で避けており、ある時は屈み、ある時は飛び、ある時は横に。それはまるで美しい蝶の舞を思わせる。今戦っているとは思えないくらいの美しい舞だった。

 

「さあ、これで刀が貴様の体に届くぞ」

「おおっと!!」

 

セイバーはライダーの体を斬ろうと刀を振るう。

ライダーは、その斬撃を避けようと後ろに跳ぶ。

 

「フム……浅かったか」

「ぐっ……やるねぇ」

「な、ライダー!!斬られたのか!?」

 

だが、ライダーはセイバーの斬撃を避けきれず、肩から腰まで斜めに斬られた跡があり、そこから血が流れ出ていた。

そしで、セイバーとライダーの間に壁が降りる。

それはSE.RA.PH.の干渉。これ以上のアリーナでの戦闘は許されないということだ。

 

「今回はここまでか、さあマスターよ。第二暗号鍵(セカンドダリトリガー)を取りに行こうか」

「え、えっと、うん。じゃあね、シンジ」

「な、くそったれが!この程度で調子に乗るなSE.RA.PH.の監視もあるし、いくら最良のサーヴァントでも所詮はただ剣技に長けているだけの英霊だ!!ボクのライダーの宝具には勝てないさ!!決着は本番まで取っておいてやるよ!!」

 

セイバーはライダー達に背を向け歩き出す。

慎二はセイバーと白野に向かって叫ぶ。それはただの負け惜しみという奴だろう。

ライダーが斬られたときに防壁が下りなければライダーは二の太刀により、絶命していただろう。

 

「シンジ、今回は私達の負けさ。まあ、あのセイバーにはあんまりしないんだけれどねぇ」

「うるさいぞ!ライダー!!お前が弱いのが悪いんだ!あんな奴に!白野なんかに負けるなんて!くそが!決戦では負けるなよ!?お前はボクのサーヴァントなんだからな!!」

「ふふ……ああ、了解したよ。シンジィ……」

 

白野とセイバーは慎二の叫びをBGMにして歩く。

 

「……ねえ、セイバー」

「む?どうした、マスターよ」

「今更なんだけれど……私はシンジと戦うんだよね?」

 

おずおずと白野はセイバーに問う。

セイバーは肩を竦め、答える。

 

「確かに今更だな。ここ(ムーンセル)に来た時点で誰かと戦うという事は確定している。仮初とはいえ友人だった者と戦うのは抵抗があるか?」

「うん……それもあるんだけれど……負けたら死ぬ……んだよね?」

 

負けたら死ぬ。それはムーンセルでのルールだ。魂が破壊され、現実の身体も滅びる。

 

「ああ、死ぬのが怖いか?」

「うん、でも私が勝ったらシンジは死ぬんだよね……」

「ああ、成る程。マスターよ、貴様は相手を殺すのが怖いか?まあそこは仕方がないと割り切れ。でないと、死ぬのは貴様だぞ?」

「それはわかっているけれど……」

「まあいい。答えはそんなにすぐに出るものではないだろう。悩め、若人というやつだ。第二暗号鍵(セカンダリトリガー)も獲得したし、今日はここまでにしておこうか」

「うん…………」

 

セイバーと白野はリターンクリスタルを使い、アリーナから転移した。

 

 

 

 

学校の屋上。そこで白野はゼロとイチの数字でできた仮初めの空を見上げて黄昏ていた。

 

「ハァ……」

「なーに黄昏ているのよ」

 

そんな彼女に声をかける人物がいた。

赤い服を着て、美しい黒髪を両サイドで纏めたツインテールの少女、遠坂凛だ。

 

「あ……凛」

「明日は決戦日でしょう?そんな顔をしていたらあっという間に負けるわよ?」

「うん……そうだね……」

 

凛は白野が明らかに何か悩んでいると理解する。

 

「アンタねぇ、何を悩んでいるのかはしらないけれど、シャキッとしなさいよね」

「うん、そうだね。……ねえ、凛は何でムーンセルにアクセスしたの?」

「何よ、唐突に……まあいいわ。答えてあげる。私がムーンセルにアクセスしたのは、西欧財閥が地上を支配している事は話したわね……?その西欧財閥を打倒するためよ」

「そうなんだ、凄いね凛は」

「何を言っているのよ?アンタにもムーンセルにアクセスしたんなら、遊び目的でも理由があるんでしょう?」

 

凛は怪訝な顔をし白野に問う。だが白野は首を振るだけだ。

そして絞り出された言葉に凛は驚愕する。

 

「……無いんだ。私には……記憶が無いの。だから何でムーンセルにアクセスしたのか、何で戦うのかわからないんだ」

「……は?それって、アンタ大変じゃない!記憶が戻ってないって事は最弱にもほどがあるじゃないの!!……道理で現実感がないのね、まあ貴女の場合記憶があるなしでも同じでしょうけど。ーーーーでも、これだけは覚えなさい。この霊子虚構世界(シリアルファンタズム)から脱出ーー聖杯にたどりつけるのは一人だけ。他のマスターは全て死ぬわ。そうなりたくなかったら、勝ち残るしかないわ。例え貴女と私が戦うなんてことになっても、手加減はしないからね。それじゃ」

 

そう言って凛は去って行く。一人残された白野は、呟く。

 

「…………うん。そうだよね……負けたら死ぬ……」

 

それは、どのような意味が込められているのか。知るものは白野一人だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「クク、中々に趣味がいいな」

「ハァ……それはアンタでしょう」

 

凛に笑いながら話しかける人物。それは岸波白野のサーヴァント。佐々木小次郎(セイバー)だ。

そんなセイバーの言葉に凛は溜息をつく。

 

「まあ、あの様にウジウジされていては私もたまったものではないからな。しかし、あのような勢いだけの約束を守るとは律儀だな」

「フン!別に、覚悟も出来ないままに死ぬなんていうのは私も胸が痛むだけよ。それじゃあね」

 

凛はそう言って廊下を歩いて去って行く。

凛の姿が見えなくなったころに、セイバーは呟く。

 

「……フム、ツンデレだな。現実(リアル)で見るのは初めて、いや。この世界は現実(リアル)ではなかったか?まあいい。それよりもマスターには早急に覚悟を決めてもらわなければならん。でないと戦いも楽しめないであろうからな」

 

そしてセイバーは、マイルームへと戻り、明日への決戦に構える。

 

 

 

 

 

決戦日、白野とセイバーは図書室にいた。

彼らは慎二のサーヴァントの真名を調べているのだ。

そして、セイバーは手に持っている本を本棚に戻す。

 

「さて、これで相手の真名も割れた事だし、行くか?マスターよ。覚悟は十分か?」

 

その言葉に白野は俯く。

 

「……うん。まだ覚悟は出来てない。でも……」

「そうか、まあいい。私は戦うだけだ。マスターは迷え。迷えるのは若人の特権だからな。私の人生は……まあ、前半は後悔だらけだ。貴様もそうならんでくれよ」

「うん。今私にできるのは、セイバーを信じる事だけだから……」

「フフ、そうかそうか!まあいい。まだ急ぐ時ではない、今は勝つことだけを考えたまえ!」

 

そして、二人は決戦へと望む。

まだ答えは出ないままに。

 

 

 

 

 

「決戦の場は今開かれた。ささやかながら幸運を祈ろう。再びこの校舎に戻れる事を。そしてーーーー存分に殺し合え」

 

決戦場である一の月想海。そこは大破して沈んだ船があちらこちらにある。ここは海の底を再現した場所。いわば船の墓場だ。

そこに対峙するは、岸波白野と、そのサーヴァントであるセイバー。かたや間桐慎二とそのサーヴァント、ライダー。

 

「なんだ、逃げずにやって来たんだ。ああ、そういえばそうだったね。学校でも真面目さが取り柄だったけ」

 

嘲笑するように言うのは、慎二だ。

 

「でも悪いけれどキミじゃあ僕には勝てないよ。どうせ負けるんだからさっさと棄権すればよかったのに」

「そんなことはしない。答えはまだ出てないけれど、ここで朽ちるわけにはいかないんだ」

 

それはとても力強い言葉だった。まだ、まだ答えは無い。けれど、ここで負ける訳にはいかない。

 

「ーーーーーそう、全く残念だよ。ライダー!やれ!」

「おうともさ!」

「セイバー、お願い!」

 

慎二の言葉にライダーは構える。

セイバーも白野の言葉を受け、物干し竿をゆらりと構える。

 

「さあ、始めようではないか。大航海の悪魔(テメロッソ・エルドラゴ)よ。まさか女とは思わなんだが、それは些細な事よ」

 

大航海の悪魔(テメロッソ・エルドラゴ)、それはかつて生きたまま世界一周という偉業を成し遂げ、大航海時代を切り開いたイギリスの海賊の異名だ。

その他にも太陽の沈まぬ国とまで言われた強固なるスペインの海軍を打ち破ったなどの功績がある。

その正体は、フランシス・ドレイクという海賊である。

 

「へえ、アタシの真名を当てたか。これは楽しくなりそうだねぇ、行くよ!シンジ!!」

「ああ、ライダー!宝具を開帳しろ!」

了解(りょぉかい)嵐の夜(ワイルドハント)の始まりだ!!『黄金鹿と嵐の夜(ゴールデン・ワイルドハント)』!!!」

 

ライダーの言葉と共に巨大な船、黄金鹿の鹿号(ゴールデンハインド)号が現れる。

黄金鹿と嵐の夜(ゴールデン・ワイルドハント)。それは生前のライダーの日常とも言える宝具である。

ヨーロッパ全域で伝承される嵐の夜(ワイルドハント)の正体はフランシス・ドレイクと言われ、大航海の悪魔(テメロッソ・エルドラゴ)と恐れられた伝承と、スペインの無敵艦隊を破った艦隊がミックスされた宝具だ。

 

 

「さぁ、太陽を落とした女のチカラを見な!!」

 

そして撃たれるは大量の砲撃。その様はまさに嵐その物であった。

それだけではない。燃え盛る船、『火船』がセイバーへと突進してくる。

本気。慎二はセイバーを本気で潰すつもりだ。

 

「フムーーマスターよ。失礼するぞ」

「え?うわっ!?」

 

セイバーは、白野を抱える。

このままでは、マスターである白野まで巻き添えを喰らうから妥当な判断だろう。

 

「さあ、跳ぶぞ、マスター。舌を噛むなよ!」

 

そして、セイバーは白野を抱えたまま跳ぶ。

セイバー達がいた地面には火船が衝突し、燃え盛っていた。

そしてセイバーは砲弾を、激突してくる船を避ける。

 

「くそッ!!エルドラゴ!何をやっている!さっさと仕留めろ!」

「あははは!これが全力さ!しっかし、疾いねぇ!」

 

そして、セイバーは砲弾を避けた後屈み、思いっきり跳躍し、空中にあるライダーの船に飛び乗った。

 

「おやおやぁ?無賃乗船は良くないねぇ?」

「このままではマスターが死ぬのでな。人命救助だと思いたまえ」

「ーーー言ってる場合か!やれ!ライダーッ!!」

「あいよ!さぁ、一切合財派手に散らそうじゃあないか!!!」

「ーーーーー何!?」

 

セイバーは驚愕する。何故ならば慎二の言葉と共に、ライダーの船である黄金の鹿号(ゴールデンハインド)が大きな音と共に揺れた。

それの行為は正気ではないだろう。

火船を自分の船にぶつけて自爆させているのだから。

そして、船はバラバラに燃え盛りながら落ちて行く。

 

そして残ったのは、瓦礫だ。船の残骸。こも決戦場にピッタリの光景だ。

瓦礫がめくれ上がり、そこからは慎二を庇うようにのしかかっているライダーがいた。

 

「まさか、ホントに最終手段を使わされるとはねぇ」

「フン!でも僕たちの勝ちだ!白野なんかが生意気に勝負しようとするからだ。まあ。僕の勝利は当然ーーーー」

「…………いいや、まだだねぇ……」

「ーーーー何?」

 

ライダーが指差した先には、セイバーと白野がいた。

傷はほぼなく、かすり傷のみだ。

 

「ね、ねぇ。セイバー。もう下ろしてよ!」

「おっと、これは済まない」

 

白野は赤面して、セイバーに自分を下ろすように催促する。

それも仕方がないだろう。今までずっとお姫様抱っこのまま抱えられていたのだから。

白野にとっては羞恥が大きいだろう。

 

「な、馬鹿な!なんで無傷なんだよ!」

「はは、どうやら、あっちのセイバーの実力は想像以上だったみたいだねぇ」

「フム、自分の船に火船をぶつけての自爆。その覚悟見事だ。ーーーー故に。我が秘剣をお見せしよう」

「ッ!!」

 

慎二は息を呑む。空気が変わり、セイバーが構えた。

今まで刀は構えずに自然体に持っていただけだというのに。

 

「へぇ、いいねぇ。でも負けるつもりはないよ!!」

「当たり前だ!お前は僕のサーヴァントだからな!!勝つのは当たり前だ!!白野のサーヴァントなんかに負けるのは許さないぞ!!!」

「了解!!」

 

ライダーは、あちこち痛む身体に鞭を入れ、セイバーに最後の攻撃を叩き込まんと突撃する。

 

「秘剣ーーー燕返し!!」

 

セイバーの刀が高速で振るわれる。

多重次元屈折現象(キシュア・ゼルレッチ)と呼ばれる並列世界から異なる3つの剣筋が全く完全に同時に呼び出され、振るわれる。

それは燕を斬るために編み出した秘剣。回避は先ず不可能だ。

ライダーの身体に3つの剣傷が刻まれる。

 

「はは……アタシの負けかぁ……」

「なーーーーー」

 

崩れ落ちるライダーに慎二は呆然とする。

 

「ふ、ふざけるな!チートだ!チートだぞ!クソが!地上に戻ってお前が誰かはっきりさせてやーーー」

 

慎二は白野に掴みかかろうとするが、間に壁が出現することにより、それは叶わなかった。

 

「クソ!お前のせいだぞ!エルドラゴ!!お前が不甲斐ないからこんな事に!!」

「おやぁ?ボロボロのアタシに鞭打つかい?さっすがアタシのマスターだ。筋がいい」

「っ!憎まれ口を叩く余裕があるなら立てよ!僕が負けるわけがない!!!」

 

ライダーの体はもはや満身創痍、決着はもうついている。

 

「あー、そりゃぁ無理。アタシもう斬られているし?右腕なんかあそこに転がっているし、もうこの体消えるっぽいよ?」

 

ライダーが言う通り、ライダーの体はあちこちに綻びがあり、消えていっている。

 

「なーーーーなんだよそれ、勝手に一人で消える気か!?お前一人のせいで負けたのに!」

「……あはは、確かにアタシの所為かもねぇ実力、天運……まぁ、負けた原因はいろいろ口に出来るが……ま、なんでもいいさね。人生の勝ち負けに真の意味での偶然なんてありゃあない。敗者は破れるべくして破れるのさ」

「何を他人事みたいに言っているんだ!僕は、勝つ筈だったのに!くそっ!こんなゲームつまらない!つまらない!!」

「……マスターよ、もうここにいる必要は無いだろう。行くぞ」

 

叫ぶ慎二を横目にセイバーは、帰ろうと催促する。

だが、そんな彼らを慎二は引き止める。

 

「ま、待てよ!お前ら!提案だ、僕に勝ちを譲らないか!?」

「やめときな、今更負けちまった以上何で上塗りしようと惨めなだけだぞ?」

「うるさい!!くそが!!地上であったら覚えてーーーな、なんだよこれ!なんで僕の体が消えているんだ!?こんなアウトの仕方僕は知らないぞ!?」

 

慎二の体は、手が足が、ライダーと同じように消えていく。

 

「聖杯戦争で敗れたものは死ぬ。慎二。アンタもマスターとしてそれは聞いていたハズだよね」

 

ライダーは叫ぶ慎二を諌めるように言う。

 

「はぃ!?そんなのよくある脅しだろ!?電脳死なんてそんなの……な、なんだよこれぇ!?なんで地上の僕の体の様子がわかるんだよ!」

「そりゃ死ぬさ。普通戦争で負けるっていうことはそういう事だ」

「そんなのよくある脅しだろう!?これゲームなんだろ!?な、なあおい!助けてくれよ、サーヴァントはマスターを助けるんだろう!?」

 

泣きながら慎二は叫ぶ。だが、その反面ライダーは笑っていた。

 

「一番初めに契約した時に言ったろ、坊や。”覚悟しとけよ?勝とうが負けようが悪党の最後は笑っちまうほど惨めなもんだ”……ってねぇ!この死に方だって贅沢なもんさ。愉しめ。愉しめよぉ。シンジぃ!……」

 

そして、ライダーは笑いながら完全に消えた。

そんなライダーを見て慎二も死を自覚したのか、叫ぶ。

 

「嫌だ!嫌だぁ!僕はまだ8歳なんだぞ!?こんな所でまだ死にたくな!……………」

 

慎二も消えた。間桐慎二という人間が。魂も、存在も。

残ったのは勝者である白野とセイバーのみだ。

 

「マスター。行くぞ」

「…………うん……わかった」

 

岸波白野は自分に言い聞かせるように考える。

わかっている。勝者(岸波白野)が生き残り、敗者(間桐慎二)は死ぬ事は、わかっている。

でも、どこか納得いかない。

本当に間桐慎二という人間は死んだのか。実感が湧かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

第一回戦:勝者・岸波白野 敗者:間桐慎二




何か思うところがあれば、コメントを容赦なく送ってくださいませ。

次回は来週には更新するかと。

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