……これが作者の限界だ……!
皆さんの期待に応えられたら、幸いです。
「……ん?ここどこだろう?」
起きたらベッドの上にいた。
私は何でベッドで寝ているの?……何だか夢を見ていたような……
「む、気がついたかね?取り敢えずは聖杯戦争予選突破、おめでとうと言っておこうか」
……この人は誰だろう?着物を華麗に着こなしている美しい男の人……誰だろうか?
聖杯戦争?予選突破?何のことだろうか?わからない。聞いてみよう。
「あの……貴方は……それに聖杯戦争って?」
「ああ、これは失礼、改めてご紹介させて貰おう、私の名……いや、クラスはセイバーだ。この月での聖杯戦争を勝ち抜くため、マスターの刃となり、マスターの障害は全て斬り開くことをここに誓わせて貰おう」
セイバー?
「それで……セイバー?でいいんですよね?」
「うむ、そう呼ぶがいい」
「はあ……それで聖杯戦争って何ですか?」
「ム?」
私がセイバーにそう聞くと、セイバーは不思議そうに首をかしげた。なんでだろうか?
「……ああ、記憶が混乱しているのか、まあ無理もないか。先程まで軽く死にかけていたのだから」
「ええっ!?死にかけ……!?」
「ああ、軽くな。まあ若いうちはよくあることだ。気にするな」
ええ!?ちょっと!?セイバーさん、それ軽く流していい話題じゃあないでしょう!?一体私に何が……
「さて、聖杯戦争について説明させて貰おうか」
「えっ!?ハイ、よろしくお願いします」
「ああ、聖杯戦争……それは簡単に言うとだな…………」
簡単に言うと………………?
「敵は全員斬り殺せばいいのさ!!!」
「殺っ!?」
ええ?セイバーさん!?怖いですよ!なんか目が軽く光ってますが!?
「端折り過ぎです、セイバーさん」
そう言って呆れたようにため息をつきながら、セイバーにお茶を渡す白衣を着た少女がいた。
……彼女の名前は、間桐桜。私の後輩だ。
「先輩、気がついたんですね!良かったです」
「……うん、ありがとう。それで……桜、聖杯戦争とかセイバーさんとか、彼って誰なの?」
私が桜にそう聞くと、桜は驚いて手元のカルテを見た。
「……記憶が戻ってない?何かのバグでしょうか?」
「ええと……桜?」
「ああ、先輩!先輩の記憶ってどこまで覚えていますか?」
………………ええと?記憶?うーん……?なんだろう、思い出せない……
「フム、単に記憶が混乱しているというわけではなく、記憶喪失か?……斜め45°に叩けば治るだろうか?」
「セイバーさん!先輩の頭はそんな昔のテレビみたいな構造はしていません!」
セイバーは、そう言って手刀を私の頭めがけて振り下ろすが、桜に止められた。
「まあいい、桜嬢よ、説明は任せた。私はそういったことは向かないのでね」
そう言ってセイバーは窓際の椅子に座って、お茶を啜る。
……なんか絵になるなあ……
「ええと、先輩、説明させていただきますね?」
「あ、うん。よろしくお願いします」
……それから桜の話は荒唐無稽な話だった。
聖杯戦争、それは聖杯という万能の願望器を巡って戦う戦い。
その聖杯戦争に参加するには、サーヴァントという従者が必要で、7つのクラスがあるらしい。その中でもセイバーはとりわけ優秀なサーヴァントらしい。
そして、令呪、魔術師といったことも聞いた。
……だけれど、中でも信じられないのが、ここが月にあるということだ。
「……フム、大方信じられないかもしれぬが全て本当のことだ」
お茶を飲み終わったセイバーは、桜に湯呑みを渡して、私に話しかけてきた。
「マスターよ、お前の腕に令呪があるはずだ。それを見てみるがいい」
私はセイバーの言う通り、自分の手元を見る。
右腕の甲に赤い3本の刀が交差したような、デザインの文様が刻まれていた。……刺青じゃないよね?
「それが令呪。私への絶対命令権だ。3画あるが、実質使えるのは2画までだ。よーく考えて使うといい」
……むう……未だに何が何だかわからないけれど、本当のことなんだよね?
「さもありなん。からかっているわけではない。……マスターは確かに私を必要とし、呼び寄せただろう?」
呼び寄せたって……いつの間に?そんな記憶無いんだけれど……
「マスターがここに運ばれる前の事を思い出してみろ」
そう言ってセイバーは桜からお茶をお代わりして、飲む。
……私も飲みたいなあ。桜のお茶……
「ああ、大丈夫ですよ先輩。ちゃんと先輩の分も用意してありますから」
あ、ありがとう。桜。
……んー、桜の淹れたお茶は美味しいなあ……
……私が気絶する前……何があったんだろう………………?
『ふむ、君も駄目か』
私の前には相手の人形に負けて倒れた私の人形が転がっている。
そして、私の体の力が抜けて、透けていく。
……私、死ぬの?
『そろそろ刻限だ。君を最後の候補とし、その落選を持って、予選を終了する』
また不愉快な声が頭に響く。その声は何の感情も篭らない、ただの機会じみた声だ。
……終了?私はここで
ーーーーそんなのイヤだ!!
まだ、まだ諦めない!死にたくない!生きたい!
『ほう、運命に向かってもがくか?』
声が頭に響く。だけれどその声はさっきみたいな不愉快な声ではない。
むしろ、鈴の音のような……聞いているだけで気持ちのいい声だ。
『さあ、貴様は死ぬ』
そんな事は言われなくっても分かっている。
『ああ、だが死にたくはないだろう?ならば貴様は何を求めるか?』
私が求めるもの、それはーーー生きたい!!
『……いいだろう!ならば足掻け!その最後まで!』
私の前が突然光り輝き、そこから一人の人が現れた。
その男の手には刀……刀なのだろうか?それにしては妙に長過ぎる。刀を持っていた。
「さて、少女よ、貴様が私のマスターか?」
マスター?何のこと?
…………危ない!後ろから人形が男に人に攻撃を加えようとしている!
「避けて!」
「む?ああ、これならば避けるまでもないさ」
そう言って男の人の握っている刀が、消えたかと思えば、人形は真っ二つになっていた。
「さて、もう一度問うぞ?貴様が私のマスターか?」
あ………………あの人形をあっさりと…………ダメだ……体の力……が……抜け……て……
私の意識は闇の中へと沈んでいく。
ああ……おれ……い……言って……な……い……
「……あっ!」
「思い出したか?」
思い出した……!何があったのか……
「あ、あの!あの時は助けていただいて、ありがとうございました!」
「ああ、良い。私はマスターである貴様が求めた結果、召喚されただけなのだからね。礼を言われる必要は無い。……それよりも、マスターの名を教えてくれると有難い」
……あ!そういえば私の名前言ってなかった……
「ごめんなさい!私の名前は白野、岸波白野です」
「フム……白野か……いい名だ。大切にしたまえ」
「は、はい。よろしくお願いします!セイバーさん!」
「ああ、よろしく」
私たちはお互いに握手をする。
「さて、という訳で、桜嬢、貴様の淹れた茶は美味かった、また飲みに来るから悪しからず。ではマスターよ。この校舎を探索しようか」
「えっ、うん。じゃあね、桜。色々とありがとう!」
「ええ、それでは」
セイバーが保健室の扉を開けて、外に出る。私はその後を追う。……って、セイバー!そっちは女子トイレしかないよ!?
「おお、そうなのか、ではマスターよ。案内を頼むぞ」
「フム、これは中々の眺めだな……ム?どうした?マスターよ?そんなに辟易して」
セイバーは屋上の柵に乗って、学校のグラウンドを眺めおろしている。
……誰のせいだと思っているのさ!セイバー!他のマスターが従える強そなサーヴァントを見つけたら、喧嘩を売ろうとしたり……売ったりしたり……静かな人かと思ったら
「ははは、何を言うか、マスターよ。一端の武芸者として強者と戦い、己の技を試し、磨くのは当然だぞ?」
「そう……できれば次からは自重して……喧嘩を売るたびにあんなに殺気?みたいなものを出されちゃあ、私の心臓が保たないよ……」
「そうか、すまなかったな。霊体化していよう。ゆるりと休むが良い」
そう言ってセイバーの姿が消えた。
……ハァ……おなかへったな。食堂に行こう。
「そこのあなた、ちょっと待ちなさい」
突然、私に話しかけて来た人がいた。
赤い服を着て、髪を両サイドで縛って垂らしている。ツインテールという髪型かな?綺麗な人だなぁ……誰だろうか?
私に話しかけて来たんだよね?でもこんな人知らないよ?
「そう、貴女よ。ちょっとじっとしていなさいね」
うひゃあ!?なんで急に私の頬を突いて……?でもじっとしてなきゃ……
「へえ、生意気に体温もあるのね……何よ、頬を赤らめちゃって。そんなリアクションもとるのね……ふーん。よく出来ているわね」
彼女はなにやらブツクサ呟きながら、私の体を弄る。
うう、くすぐったいよぉ……
彼女は私のブレザーに手をかけて、呟いた。
「……下着とかどうなっているのかしら?」
ええっ!?それ以上は流石に……セイバー!助けてぇ!
「フム、痴女よ。私のマスターの我慢が限界なようなので、そこまでにしてもらえるか?」
「なっ!?貴女、マスターだったの?だったら最初っからそう言いなさいよ!それと私は痴女なんかじゃないわよ!……笑うなぁ!アンタ最初っからしってたでしょう!?」
彼女はセイバーの言葉に動揺し、一気に捲し立てる。そして、何もない空間に怒鳴る。
あそこに霊体化したサーヴァントがいるのかな?だとすると、彼女もマスター?
「ははは、誰にでも失敗はあるだろうさ、……それよりも……そこの霊体化しているサーヴァントよ。貴様も中々の武芸者だな?……おおっと、マスターに止められていたのだった。自重しておこう」
セイバーさーん!?ちっとも自重出来てませんがー!?殺気がビシビシ漏れているんですがー!?
「……ハァ、悪かったわね。私の名前は凛、遠坂凛よ。よろしくね」
「あ、ハイ。私は岸波白野って言います。よろしくお願いしますね!」
凛さんはそういって、握手を求めてきたので、握手。
「……さっきのお詫びに何か悩み事があったら、相談に乗るわよ?」
「そ、そう?でも今は特にないから、またいつかね?」
流石に悪いしね……それに記憶喪失だなんて言えないよね……
「そう?それならいいけれど、……じゃあ、精々後悔の無いように頑張りなさいよ」
凛はそういって校舎の中に入っていった。
……後悔、か……
「マスターよ、なにやら思いつめた顔をしているが、腹が鳴っている時点で台無しだな」
うう、うるさいよ、セイバー。仕方がないでしょう。
ホラ!食堂に行こう!
「ああ、承知したとも、マスターよ」
「……セイバー、それ本当に食べるの?」
「ああ、勿論だとも」
今、私の顔は思いっきり引き攣っているだろう。
私だけじゃあない。周りのマスターとか、サーヴァントとかも引き攣っている。中には勇者を見るような目をしている人もいる。
それだけセイバーの持っている料理はヤバイのだ。
激辛麻婆。
うん、物凄く赤いし、見ているだけで舌がピリピリする。
……一応、パフェとか用意しておこう。
「頂きます」
そういってセイバーは、麻婆をスプーンで掬い、口に入れようとする。
ごくり……私も、周りのマスター達も唾を飲む。
そして……麻婆がセイバーの口の中に入り、セイバーは咀嚼する。
「うぐぅ!?」
セイバーは崩れ落ちる。
流石に耐えきれなかったみたいだ。
「……勇者だな……白野、お前のサーヴァントは」
私に話しかけて来た男。
彼の名は間桐慎二。この予選での偽りの日常では、私のクラスメートで、数少ない話し相手だった。
「本当ね、同意するわ」
あ、凛。
「げっ!?お前は……!」
「あら、お久しぶり。アジア有数のクラッカー、間桐慎二君?」
「へえ、ボクの事知っているんだ。まぁ、このボクは有名人だから当然だけれど」
シンジはそう言って自分の髪をかきあげる。相変わらずだなぁ……
「予選では一応マークしていたけれど、遊び感覚で参加しているようだし、大した事はないわね」
「なっ……!」
「ホラ、白野も周りを見てみなさい、結構な大物もこの聖杯戦争に参加しているわ。警戒していないのはあなた達ぐらいのものよ」
……え?凛の言葉を聞いて、周りを見てみると、たくさんの人がこっちを見ている。……セイバーが原因かな?
そういえばとうのセイバーは?大丈夫かな?
「フフ……これもまた修業……心頭滅却すれば火もまた涼し。……いざ、ゆかん!」
いつの間にか復活して、麻婆にまた挑戦している!
咀嚼して、……おお。
「この程度っ!」
脂汗がものすごいけど耐えている!耐えている!凄い……
「皆さん、御機嫌よう」
ん?何かこっちは物凄くオーラーを放っている人がいる。
後ろのサーヴァントも強そうだ。誰だろうか?
「白野………知らないの?彼は実質的な地上の『支配者』。レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ……!」
地上の支配者?何だか凄そうだ。
「レオでいいですよ、凛さん。直接お会いするのは初めてですね」
「御自ら出陣とはね……いいわ、地上の借りを返してあげるわ」
ええっと?凛はなにか因縁でもあるのだろうか、レオを睨んでいる。
「それよりも、岸波白野さん。僕は貴女に興味がある。あの状況でサーヴァントを引き当てるとは」
ええっ!?私!?……というか何でそのことを知って……?
「ガウェイン、紹介を」
レオの言葉で、前に出てきた綺麗な鎧を纏った人。サーヴァントだろうか。
「
今、さらっと真名名乗らなかった!?確かサーヴァントの真名は普通隠すものだって、桜が言っていたんだけれど……それだけ自身があるのだろうか?
「クク、自分から真名を名乗るか。それだけ自身があるのか、それともよっぽどの阿呆か。……いずれにせよ、貴様も中々の武芸者だな。……貴様と刃を交わすのが楽しみだ」
「セイバー、もう大丈夫なの?」
「ああ、あの麻婆は既に乗り切った」
セイバーの言う通り、麻婆が入っている皿は綺麗に完食されていた。凄い……!
「……くっ!お前!このボクを随分無視してくれるじゃあないか!言っておくけどね!このゲームで優勝するのはこのボクだからな!ハーウェイだか何だか知らないけど、生意気だぞ!」
シンジが喚き立てる。プライドの高いシンジはさっきから自分が空気になっている状況が気に入らないみたいだ。
だけれど、レオはそんなシンジを見て、微笑む。
「……それは失礼いたしました。申し訳ありません。知らず、不愉快な思いをさせてしまったのですね。あなたの
レオは、聞き分けのない子供をあやす様に、穏やかに話す。
そして、言外にこう言った。
それはプライドの高いシンジにとっては、屈辱的なものだろう。
「クソ……なめやがって!来い!ライダー!」
シンジの声とともに、シンジのサーヴァントが実体化する。
それは、赤いしコートを着て、特徴的なのが、顔の中心を斜めに刻んでいる傷だろう。
「シンジィ……アタシは雇われ海賊だからねぇ、予定外の仕事は高くつくよ」
「金ならいくらでも払ってやる!あのサーヴァントを叩き潰せ!」
シンジの声とともに、ガウェインが剣を抜き、ライダーは銃を抜く。
そして、ライダーはガウェインに攻撃を加えることーーーーは無かった。
「なっ!?」
「……ッ」
何故ならば、いつの間にかセイバーがガウェインとライダーの中間点に立っており、ガウェインの喉元にはフォークを、ライダーの喉元にはナイフを突き立てていたからだ。
「両者とも、剣を納めろ。ここは食堂、飯を食うところだ。そんなところで剣を抜くのは無粋だぞ?やるのならば表でやれ。そしてそれに私も混ぜろ」
「って、セイバー!最初は良いことを言っていたと思ったけれど、結局は戦いたいだけなの!?」
「フッ、当然だ。さあ、二人とも、表に行こうか」
セイバーはそう言ってガウェインとライダーの肩を、フレンドリーに叩いて友達を遊びに誘うように、戦いを挑む。
……
「それはやめて貰おうか」
……ん?この声、何処かで聞いた事が?
声のした方を向くと、そこには一目で胡散臭そうな神父が立っていた。
「予選では好き勝手していたプレイヤーもいたが、本戦ではキチンとルールを守って貰おうか」
……ルール?彼は誰なの?
そんな私の疑問を察した様に、彼は続ける。
ちなみにセイバーはつまらなそうに、オヤツを取り上げられた子供のように、ブスッとしている。
「私は言峰。この聖杯戦争の監督役として機能しているNPCだ。相手のマスターとは、決戦の日に存分に殺し合いたまえ」
「クッ!」
シンジはあの神父が気に入らないのか、物凄い形相で睨んでいる。……心なしか、セイバーも睨んでない?
「いやしかし……」
「何がおかしい!」
言峰は、愉快なことが起こったように笑う。それが気に入らないのか、シンジは突っかかっている。
「間桐慎二、岸波白野。一回戦で戦う者同士で仲良くするのも滑稽だな。それとも、何か策でも練っているのか?」
え…………?
一回戦の相手が……シンジ?
思わずシンジの方を見てしまう。
「ははは……一回戦の相手は白野か……!そこの優男が相手だなんて、楽勝すぎだよ!」
シンジは、いつもと変わらずに、嫌味を言ってくる。
とうのセイバーは、私の用意したパフェを食べながら、ガウェインに殺気を向けている。……頼むから自重して……!
「ああ、それとーーー岸波白野。極めて異例の事だが、君に何者かからメッセージが届いているぞ?」
……え?私にメッセージ?
「『光あれーーーー』と」
どうでしたか?
「ここはこうしたらいい」とか、そういったことがあったら、容赦なく感想を送ってください。
因みに、作者は一応extraは持ってはいるのですが、攻略が全くもって進んでおらず、積みゲーと化しているので、他の二次創作と、漫画を参考にしています。
……攻略進めなきゃ。
次回の更新は、8月の中旬頃を予定しております。
更新ペースは、ゆっくりですがお付き合いくださいませ。