【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐ 作:skyfish
けど、こんなに早くかけたのは
書きたかったお話だからです!
本編どうぞ
1944年9月2日
朝のブリーフィング。いつもと同じ、変わらない一日が始まる。
「―――い……おい。メビウス1。隊長」
「! あ、ああなんだ」
「しっかりしろ。今ブリーフィング中だぞ」
メビウス8につつかれて現実に戻る。いつもと同じでも大事なブリーフィングを聞き流してしまうとは。
「それと今日この基地にウィッチが1人いらっしゃいます」
「ん? 一体誰が来るんだ。まさか新たに入隊するウィッチか?」
ブリタニア防衛に完璧とは言わないが501部隊の基地は十分に人が揃っている(非公式的にはメビウスたちも含まれる)。ここに配属という事は宮藤のような新人かもしれない。だがミーナが言った名前に皆が驚きの声をあげる。
「いいえ。来るのはハンナ・ユスティーナ・マルセイユ大尉よ」
「え。なんで?」
「あいつがここに来るだと!?」
「おいおい。こっちは置いてきぼりなんだが、誰だそのハンナ・マルセイユは」
皆が驚く中で話が分からない。というか知らないためついていけないISAFの3人。坂本が変わりに説明した。
「ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ大尉。カールスラント空軍 第27戦闘航空団 第3中隊。現在第31統合戦闘飛行隊「アフリカ」通称「ストームウィッチーズ」の戦闘隊長だ」
「アフリカ戦線のエースだよ。スコアは確か158だったかな?」
「158…すごいな。でもハルトマン大尉やバルクホルン大尉よりも少ないのだな」
「だがアフリカはここよりも強いネウロイが出るから撃墜数は私たちと並ぶかそれ以上だ。そんなことより、どうしてやつがここに来るんだ」
それほどの有名人がなぜこんなところに来るのだろうか? ミーナなら答えを知っていると思うが。
「それが、私にも分からないのだけど……メビウスさん。彼女と面識はある?」
「いや、そんなのあるわけないだろう」
本来自分はこの世界の住人じゃないのだ。彼女の事なんて知る術なんてない。
「そうですよね。この際だからいいます。連絡によりますと、メビウスさん。あなたに用があるそうです」
「え。なんでメビウスになんだ。というかどうやってメビウスのことを知ったんだ」
そんなの私にも分からないわ。とミーナは言う。
「もしかしたら、勝負を挑みに来たんじゃないの~」
「いくらあのバカでもそこまでして――いや実際問題どうなんだ?」
ハルトマンが茶化すようにいい、それに真面目に受けて考え込むバルクホルン。
「いいえ。そんなことをしに来たのでは無いそうよ。なんでもメビウスさんに渡したいものがあるそう」
「は? 俺に?」
どうやって自分の情報を得たか知らないが、しかも赤の他人である自分に渡し物?
「でも人違いかも知れないから直接会って確かめたいそうよ。今日のお昼前に到着するそうです。その時間は開けておいてください。それ以外の皆さんはいつも通りに。それでは解散」
皆がバラバラに出て行く。メビウス1も同じだが、スカイアイはハンナ・マルセイユの情報を集めていた。
「マルセイユについての情報が知りたい?」
「そうだ。我々は彼女のことを知らないからな」
ミーナ中佐からバルクホルンとハルトマンが詳しいと聞き2人に直接聞きに来た。
「やつは自分勝手で我が儘で飛んでいるようなやつだ。私は奴のことが気に入らない」
「エースなだけに仇名もあるんだよ。アフリカの星、砂漠の鷲、それとゲルベフィアツェーン」
「ゲルベ……?」
「カールスラント語で『黄色の14』て意味だよ」
「黄色、だと」
黄色という単語が出た時、スカイアイの雰囲気が変わったのを二人は感じた。いつもは規律正しくしっかりものでメビウスやオメガ2人の面倒をよく見ている上司としてやっているのを見ているが、ここまで神経を尖らせた状態を見るのは初めてだった。
「彼女の戦闘スタイルは?」
「あ、ああ彼奴は勝ち負けに強くこだわる性格でな。戦場では勝利以外に価値はないが持論になってる。そこは私も分からなくはないが」
「……そうか。ありがとう。参考になった」
お礼を言いスカイアイは去って行った。残された2人は先ほどのスカイアイのことを思い出す。
「黄色の14の名前が出た時いつもと違ってたね」
「ああ。なにか気になることでもあるのか」
そのことをすぐにでも知ることになるとは2人は思いもしなかった。
リーネと芳佳は当番の掃除をしていた。話しても手を休めることは無い。が、宮藤はあることを思い出し掃除の手を止めてしまった。
「どうしたの芳佳ちゃん?」
「あのねリーネちゃん。思ったんだけど、私一度もメビウスさんに名前で呼ばれたことないの」
「え?」
「皆もオメガさんもスカイアイさんも呼び方は違うけど一回は名前で呼ばれたことはあるんだ。でもメビウスさんだけ私のこと苗字でしか呼んでない」
そう。宮藤はメビウス1に一度も名前で呼ばれたことがないことに気が付いたのだ。それに思い返してみると
「なんだかメビウスさん私のことを避けてるように見えてね」
本当に注意しなければ分からないくらいの仕草。それを宮藤はなんとなく感じ取っていた。
「なんでなんだろう……?」
その掃除の後一人きりになっているとき宮藤はペリーヌから決闘を申し込まれた。
待機室のなか。そこではメビウス8とスカイアイが置いてあるチェスで対決していた。
「で? その黄色の14て呼ばれてる彼女はどうなんだ?」
ビショップを使い前の方に置く。
「少なくともこちら側の人間ではないな」
ナイトで敵の動きに制限をかける場所に置く。
「話は変わるが、今の隊長は出撃させないほうが良い。普通の敵なら大丈夫だが、もしやつを真似た敵が現れたら」
「いや、それはない。と。チェック」
クイーンを囮に使いそのほかの駒を回していたスカイアイがメビウス8のキングを捉える。
「どうしてだ?」
メビウス8はキングを逃す。スカイアイはそれを追撃する。
「これは秘密事項だが、ファーバンティでメビウス1と黄色の13が戦っただろ。メビウス1に撃墜された彼の機体が見つかってないんだ」
「なに……?」
「ISAFは彼ら、とくに隊長の黄色の13に散々辛酸を舐めさせられたからな。どうしても彼を墜とした決定的な証拠がほしかったらしいが欠片も見つからなかったらしい。はい。チェックメイト」
「あ゛!? はぁ、やっぱりお前に勝つなんて無理か」
チェスの軍配はスカイアイに上がった。
「ということは今日ここに来るのは本当に赤の他人ってわけか」
それにしても、とチェスを片づけながらメビウス8は言う。
「黄色の13は隊長にやられたのは確実なんだろ。じゃあ一体どこに消えちまったんだ」
そんなこと私が知るわけない。とスカイアイは返した。
そのとき、基地に警報が鳴り響いた
≪グリッド東23地区。単機よ。ロンドンに向かうコースを―――≫
滑走路で空を眺めて呆けていたメビウス1は誰よりも速く格納庫に辿り着いていた。状況を説明する放送が途中で途切れる。
≪なんですって? そんなの聞いてないわよ……! あなた達はそこに待機してなさい!≫
かなり慌てた様子で通信が途切れた。ふと見ると宮藤とペリーヌのストライカーが無い。近くにいた整備員に聞くと訓練で飛んで行ったそうだ。予定になかったんですけどね。と最後に付け足すように言う。
となると今すぐに出られるのは俺一人だけだ。
「自分が先に先行する。あとから来る連中に伝えてくれ」
すばやく13mm機関銃を持ちラプターを履いた。出ようとしたところでスカイアイとメビウス8がやってくる。
「隊長おまえ大丈夫なのか?」
「ああ。俺は大丈夫だ。先に先行してくる」
「メビウス1。君は自分の状態が分かっているのか」
自分の事なんて分かってるとスカイアイに返した。いつまでも引きずっているわけにはいかない。
「無理はするな」
「了解。メビウス1。先行して敵を足止めする」
相手は単機。しかもレーダーに映るか映らないかぐらいの小型らしい。たった一機でなにをするというのか。もしかして偵察だろうか?何はともかく急ぐことにした。
反応があったグリッド東23地区から少し離れた場所に1つの反応が確認できる。近づくとそこにいたのはペリーヌだった。だが宮藤の姿が見えない。
「ペリーヌ。宮藤はどうした?」
「実は宮藤さんは敵に逃げられるから先に行くと……」
「なに?」
すぐさまレーダー索敵範囲を広げる。すると遠くに反応が1つ。いや、これは2つだ。
いくらなんでも近すぎる。
「自分が行く。ペリーヌは後続と一緒に来てくれ」
返事を待たず、俺はバーナーを吹かした。海の上に出る。そこからアフターバーナーを点火させた。音速を倍の速さで飛ぶ。すぐに宮藤が見えてきた。そして、その隣に並ぶ黒い者も。
「人型!?」
初めて見た。ネウロイは決まった形がなく大小さまざま。行動も規則性もなければ統率がないわけでもない。そろそろ半年になるメビウス1でも人型のネウロイを見るなんて思わなかった。
「何をしている宮藤!」
人型ネウロイに手を伸ばす宮藤に怒鳴りつけた。
「メビウスさん待ってください! このネウロイは」
宮藤がネウロイとメビウス1の間に割り込む形で入る。
「そこをどけ! お前自分が何してるか分かっているのか?!」
「このネウロイは敵じゃありません!」
「そんな保証がどこにある!!」
ネウロイが敵か味方か、そんなこと俺にとってどおでもいいこといいことだ。ただ、敵となったエルジアのエース達やかつての俺の仲間を模倣してくるこいつらを自分は許せなかった。
だがここで人型ネウロイが宮藤から離れる様に動いた。まるで撃たれても大丈夫になったと思わないばかりでだ。
「逃さん!」
底部ウェポンベイが開く。ターゲットをAMRAAMでロックオンした。そして発射ボタンを
『Waring Waring!Missile!Missile!』
「な――!?」
突然のミサイル警報。レーダーに映る超高速でこちらに接近する光点が4つ。すぐに回避行動をとりチャフでミサイルと欺瞞させた。いきなりのことで息が上がっている。レーダーを確認するとおそらくミサイルを発射したものの反応が高速でこちらに向かってくるのを確認した。速度はマッハ2を超えている。
迎撃すべく自分も敵に向かってバーナーを吹かした。距離が近づくにつれ、シルエットがはっきりしてきた。高度は共に同じ、真正面で向かい合っていた。
「!? こいつも人型!」
驚くことに敵はもう一体の人型ネウロイだった。先ほどの正面からしか確認できないがさきほどの人型に比べ長髪で紅い瞳。そして左目に眼帯をしている。
俺と敵はヘッドオン。同時に引き金を引いた。どちらの弾も当たることなく。二人は交差した。
「うそ、だろ―――」
交差した瞬間。俺は見た。信じられなかった。自分の見間違いだと思い後ろに通り過ぎた人型ネウロイを見る。
その思いは崩れ去った。
その人型ネウロイは先ほど宮藤の隣にいたやつと同じ場所にコアがある。常に剥き出しの状態だ。紅い瞳をし、全身が漆黒の色に染まっている。
その、足に穿いているものを除いて。
それはメビウスの目にしっかりと焼き付いていた。その形状も、そのペイントも忘れるわけがない。人型ネウロイが履くそれは、Su-37。そして、その主翼の先端が黄色で塗装され、何より機首に黄色で「13」と描かれていた。
ネウロイが俺たちのエースを真似た動きをすることが分かったとき薄々気づいていた。だから分かり切っていたことだった。あんたを真似た奴がでてくることくらい。でも違った。
銃を握る手が震える。メビウス1は確信する。こいつは、本物だ。
「―――Yellow13!!!」
人型ネウロイ、黄色の13は少しだけ笑い、メビウス1に襲い掛かった。
いつ彼が退場したと言ったかね?(自分で言っといてなんだけどウゼェ……)
最後まで読んでいただきありがとうございます