【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐   作:skyfish

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とりあえず一言








後悔は、あんまりない!


第23話「仲間」

1944年8月18日 21:00

 

今日も同じように格納庫で臨戦態勢のまま待機する。夜間飛行組の3人はすでに空に飛んで行った。彼女たちが出て行ったあとすでに雲に覆われた空はしだいに泣き出した。出て行った3人のことを思うが、飛びだった時間と彼女たちの履くストライカーの性能からすでに雲の上にいるから濡れていないだろう。

 

「雨の時に相棒を出したくないなぁ」

 

雨音を聞きながら呟く。ステルス塗料で塗られた機体にとって水は天敵だ。もし雨の中だとステルス性能が低下し敵に見つかりやすくなる。

 

「サーニャに言われたけど、もしもの時は私が出ないと」

 

飛び立つ前の彼女に言われていた。

 

『この前のネウロイは高速型でしたが通常型のネウロイでした。もし出てきても私たちで何とかしますのでそのまま待機してください』

『まあ、そうなんですよね。そんなにほいほい出せる機体じゃありませんし……』

 

機体の温存も兼て、もし出てきても問題が無い限り待機することになった。1人デッキチェアに寝ながら置いてあったコーラ瓶のふたを開ける。自分の世界の物より少し炭酸が強いそれを咳き込みながら飲む。

 

「ごめんなさいね。昼夜問わずあなたに無理させてしまって」

「ミーナ」

 

ポッドと小さい鞄を手にミーナが来た。この香りはレモンティーだ。それに鞄をあけるとそこには見慣れたものが入っている。

 

「チェス?」

「そ。今日はもうすることもないし、少しだけお相手願えるかしら?」

「む」

 

あからさまな挑戦状――といってもそんな大それたものではないが、少しばかりやる気が出てくる。

 

「いいよ。やろう」

「やり方は知っているのかしら?」

「それぞれの駒の動きがあんまり。私は将棋のほうが知ってるし」

「そう。まず、ポーンは―――」

 

 

 

 

ところ変わって、ウィッチ控室

 

「トゥルーデは強さだろうね」

 

「否定はしないが、お前もそうじゃないか」

 

「私はそんなにこだわっていないしなー」

 

「なら私はどうだ?」

 

「お前はイレギュラーだ。どうせスピードだろう」

 

「はは。違いないね」

 

バルクホルン、ハルトマン、シャーリーの3人はあることについて話していた。その中に様子を見に来た美緒がやってくる。

 

「お前たちは何をしているのだ」

 

「いや、メビウスから聞いたエースについて皆がどれに当てはまるか話してたんだよ」

 

「ほう、それは興味深いな。一体どんなものだ?」

 

バルクホルンが説明する。

 

エースとは3つに別けられる

 

『強さ』で戦う者・『誇り』を持つ者・『戦況』を見極める者

 

この3つだ。

 

 

「少佐は戦況がよめるタイプだろうな」

 

「いやいや、トゥルーデと同じ強さかもしれないよ? 毎日鍛錬しているしさ」

 

「一概には当てはまらないのかもしれないな。私みたいにイレギュラーがあるしな」(ドヤァ)

 

「それ自慢になる? て、少佐どうしたの? そんな真剣な顔して」

 

見ると美緒はいつもとは違う真剣な顔をして考え事をしていた。

 

「それは本当にメビウスが言ったのか?」

 

「ああ、そうだ。なにか思い当たることでも?」

 

「いや、なんでもない。エースは3つに別けられる。『強さ』で戦う者・『誇り』を持つ者・『戦況』を見極める者、か……」

 

美緒は外に顔を向ける。メビウスの言っていた言葉のどこに反応したのか私たちには分からない。一つだけ言えることは、彼女がその言葉を繰り返したとき、少しだけ嬉しそうな顔をしていた。

 

 

 

 

夜に瞬く星空の中を宮藤、エイラ、サーニャの3人は飛んでいる。

 

「ねえ、聞いて」

 

 しばらく何もない空を飛んでいると、宮藤が唐突に呟いた。

 

「今日はね、私の誕生日なの」

 

「えっ?」

 

 突然の告白に驚くサーニャ。

 

「何で黙ってたんだよ。誕生日をみんなで祝えないじゃないか」

 

「うん、でも……私の誕生日は……お父さんの命日でもあるの」

 

「…………」

 

 黙り込む二人。宮藤の父――宮藤一郎は現在使用しているストライカー、「宮藤理論式ストライカーユニット」の開発者である。しかし彼は大戦が始まる直前、事故で亡くなったのだった。

 

「……ばかだなあ」

 

 やがて、エイラがポツリとつぶやく。

 

「こ~ゆ~時は楽しいことを優先したっていいんだぞ」

 

「そういうもの……かな?」

 

「エイラの言う通りよ、宮藤さん」

 

 サーニャがは続ける。

 

「それに、お父さんも宮藤さんの誕生日を祝ってくれているはずだもの」

 

「そ……そう?」

 

「無線の周波数を変えて」

 

「え? うん、分かった」

 

宮藤は無線の周波数を変える。変わる瞬間

 

≪チェックメイト。これで3連勝≫

≪く……まだだ! まだ終わらんよ!≫

≪ほんと負けず嫌いね≫

 

緊急時に連絡がメビウスさんに伝わるよう繋げっぱなしの無線から向こうの音が聞こえてきた。少し気になるがあとにしよう。

 

耳を澄ますと無線機から人の声と音楽が聞こえてきた。

 

「夜になると空が静まるから、ずっと遠くの山や地平線からの電波も、聞こえてくるんだ」

 

「へぇ~! 凄いなぁ~!」

 

 宮藤はそう言うと、静かに異国の音楽に聞き耳を立てる。その横で、エイラは彼女の耳に入らないよう小声でサーニャにささやいた。

 

「サーニャ、二人だけの秘密じゃなかったのかよ?」

 

「ごめんね。でも、今夜は特別」

 

「ちぇっ、しょうがないな~」

 

 微笑むサーニャを見て、エイラは渋々と引き下がった。と、そのとき

 

「――え?」

 

「なに」

 

「どうしたんだサーニャ?」

 

「なに、これ……どうして? うぅ」

 

「サーニャ!」

 

頭を押さえて苦しみだすサーニャを抱えるエイラ。その後まもなく、サーニャのナイトウィッチの証である魔道針がグニャリと曲がり、消滅した。

 

「どうしたの、サーニャちゃん!?」

 

「分からない……能力が、使えないの」

 

「使えないって……どういうことだヨ!?」

 

「分からないわ。なんだか、頭の中がいきなり真っ白に」

 

いきなりというのは少し語弊があった。正確には、彼女たちの進行方向から見て4時の方角が突然“見えなくなった”。さらに8時方向、最後に12時(前方)方向が見えなくなった。何者かに頭をいじられたような感覚に気分が悪くなる。

 

「とりあえず急いで基地に戻るゾ!」

 

「待ってください。なにか聞こえませんか?」

 

「これは……」

 

宮藤の指摘に無線機の音を聞く。そこから聞こえるのはいつも彼女たちが耳にしている歌。だけど、それにしてはどこか機械的な音で―――

 

「なんで……なんでサーニャの歌が聞こえてくるんだ!?」

 

 それはまさしく、普段サーニャが歌っている歌そのものだった。

 

 

 

 同時刻。501基地管制塔でも、ネウロイの声を捉えていた。

 

「これが……ネウロイの声……?」

 

 急いで管制室に入ったミーナはスピーカーから流れてくる歌を聞きながら、困惑する。今までネウロイは鳴き声らしき声を上げていたことはあったが、今回の様に歌を歌うという行為はいままでなかったのだ。

 

「すぐに呼び戻せ!」

 

「無理よ! 通信が繋がらないし、どこにいるのかも……」

 

段階的にレーダーの画面が真っ白になり、通信も繋がらない。変わりに歌だけがスピーカーから響いてくる。

 

≪おいミーナ、聞こえるか≫

 

「メビウスさん?」

 

≪こっちもレーダーを確認した。間違いない、こいつは電子戦機だ≫

 

「電子戦機だと? なんだそれは」

 

電子戦機とは、電子戦を重視して設計・装備された航空機のことだ。ただ電子戦機にも種類が存在する。大きく味方を支援する機体、敵の妨害をする機体の2つが挙げられる。おそらくこいつらは後者だ。

 

≪俺は妨害電波を出している敵を叩く。寝ている奴ら叩き起こしてサーニャたちの救援に向かわせろ!≫

 

「でもどこにいるのか……」

 

≪んなこと知るか! 散開して目で探せ。手遅れになる前に!≫

 

「分かったわ。それまでお願い!」

 

≪了解した。メビウス1。出るぞ≫

 

ミーナと坂本は寝ている隊員たちを起こしに走り出す。その彼女たちを後押しするかのように、メビウス1のF-22Aストライカーのエンジン音が聞こえてきた。

 

 

 

 

「少なくとも3機か。気持ち悪い」

 

雨に撃たれながらメビウス1は急上昇をしつづける。頭の中に移るレーダーは相変わらず真っ白だがジャミング電波からおよそ電子戦機は3機いることは確認できる。先に叩いておくとすれば、ガリア方面のジャミング電波だろう。いまレーダーの眼が聞かない間に敵が押し寄せてくるかもしれない。

 

雲を突き抜ける。アフターバーナーを点火、メビウス1が通ったあと雲海の雲が発生した衝撃波により裂ける。標的がいると思われる場所に移動する。夜、といっても今日は月が出ているから十分明るい。じっくりと目を凝らして探すとすぐに見つかった。

 

EA-6B プラウラー(うろつく者)

オーシアのグラメン社が開発した電子戦機。A-6 イントルーダー艦上攻撃機の改装型だ。

後継機であるEA-18G グラウラーが出回り少しずつ現役から引退しているらしい。それでも高い電波妨害能力を持っている。

 

だが、いくら電子戦において強者でも、戦闘能力においてF-22に圧倒的に劣る。

 

「まずは一つ」

 

メビウス1が持つ機関銃が火を噴いた。

 

 

 

 

同時刻。自身の能力の一部が回復したのをサーニャは確認した。すぐに魔導針を出すが、まだ残っているジャミング電波のためか弱弱しく光っている。

 

接近する敵を何とか感知した。途切れ途切れの通信が入る。

 

≪ネウロ――1―――そっちに行―――――≫

 

 

音が乱れた中で通信が切れた。

 

エイラの袖をつかむサーニャの指に、力が入る。

 

「私から離れて……一緒に居たら……」

 

「馬鹿! 何言ってんだ!」

 

 エイラは怒鳴る。彼女には最初から仲間を、ましてやサーニャを見捨てるという選択肢などない。

 

「そんなこと、出来るわけないよ!」

 

それは宮藤も同じ。彼女も力強く首を横に振った。エイラはサーニャのフリーガーハマーをひったくった。

 

「エイラ……?」

 

「サーニャは私に、敵の居場所を教えてくれ。メビウスのやつがやってくれればすぐに分かるはずだから」

 

「でも…」

 

「サーニャ」

 

エイラはサーニャをじっと見つめる。

 

「いつも一人で飛んでいるから忘れてるかもしれないけど、サーニャは1人ぼっちじゃないんだぞ。私たちがいるんだ。たまには頼ってもいい。それが仲間って奴だろう?」

 

「そうだよ、サーニャちゃん!」

 

「……うん」

 

 エイラと宮藤。二人の笑顔を見て、サーニャは小さくうなずいた。

 

「ネウロイはベガとアルタイルを結ぶ線の付近を、こちらに向かってる。距離はまだ正確には………」

 

「とりあえず撃って時間稼ぎだな」

 

サーニャの指示に従い、フリーがーハマーを構えるエイラ。だが、敵が見えている訳ではないため合っているかどうか分からないがやるしかない。

 

「こっちくんな!」

 

フリーガーハマーから一発のロケット弾が発射される。それは真っ直ぐ進んでいき、雲に大穴を開けた。

 

「どうだ!?」

 

「爆発が早すぎた。そのまま近づいてくる」

 

「くそー! 当たれよ!」

 

続けざまに3発発射。3つの火球が生まれるが、やはり敵が見えていない状態で撃っても当たるわけがない。

 

(まだか? メビウス早くしてくれ!!)

 

このままではまずい。ジャミング電波の排除に動いているメビウス1にすべてが託されていた。

 

そのとき、レーダーに映っていた2つのジャミング電波の反応が同時に消えた。ジャミング電波が消えクリアーになったことで、サーニャの魔導針が復活。敵の詳細な位置が分かる。

 

「ベガとアルタイルを結ぶ線の上を、真直ぐこちらに向かってる。距離約3200……」

 

「こうか?」

 

「もう少し手前。あと3秒………エイラ!」

 

「当たれ!」

 

残りの弾5発を全て発射する。設定された時間になった瞬間、大爆発が起こる。その火球の中から半壊になりながらネウロイが姿を現した。

 

フリーガーハマーを捨てたエイラはMG42をネウロイに浴びせる。それでも速度は変わらない。ネウロイもこちらに反撃のビームを撃ってくるが、宮藤が張ったシールドに防がれる。

 

すると、2つの銃声が聞こえてきた。

 

「いっちばんのり~♪」

「今回は間に合ったようだな」

 

見ると横にバルクホルンとハルトマンが援護射撃を撃っていた。その後、他の皆が駆けつけてきた。

 

「3人とも大丈夫?」

 

「無事かお前たち!?」

 

「芳佳ちゃん大丈夫?」

 

「おケガはありませんか?」

 

「遅れて参上!」

 

「うじゅー、いいから墜ちろー!」

 

サーニャたちの周りには501のメンバーが揃っていた。全員がサーニャたちを守るようにネウロイに攻撃を浴びせている。

 

「大丈夫! 私たち勝てるよ!」

 

「それがチームだ。仲間だ!」

 

「……!」

 

 サーニャは宮藤が肩にかけていた九九式13粍機関銃を構え、援護射撃。

無数の破片を飛ばしながら崩壊してゆくネウロイ。その、剥き出しとなったコアにとどめの止めの一弾が命中した。

 

 

 

 

「……まだ聞こえる」

 

ネウロイが消えたはずの澄み渡った空に、サーニャの歌が響いている。

 

「どういうことだ?」

 

「まさか、まだ他にネウロイが」

 

「……ちがう」

 

サーニャは空を見上げると、月に向かって上昇していく。

 

「これは、お父様のピアノ」

 

「そうか! ラジオだ! この空のどこからか届いているんだ……すごい! 奇跡だよ!」

 

「いや、そ~でもないかも」

 

「えっ?」

 

 興奮する宮藤に、エイラは言った。

 

「今日はサーニャの誕生日だったんだ……正確には、昨日かな?」

 

 エイラは腕時計で確かめる。既に零時を回っていた。

 

「えっ……じゃあ、私と一緒……!?」

 

「そう言うことだ」

 

 エイラは、頭の後ろで手を組んだ。

 

「宮藤さん」

 

 宮藤はサーニャの呼ばれ、振り向く。

 

 月明りに照らされ、輝くサーニャは告げた。

 

「お誕生日おめでとう」

 

「サーニャちゃんも、お誕生日おめでとう!」

 

 誕生日を迎えた二人は、微笑んだ。

 

 

 

 

 

一方。メビウス1は最後の一つのジャミング電波を発信していた敵がいたであろう空域に向かっていた。そう。メビウス1は最後の電子戦機だけ仕留めていなかった。2機目を撃墜したとき何故か3機目の反応が消えたのだ。そのかわりに、何やら小さい反応が1つだけレーダーに映っている。大きさはウィッチたちが映る時と同じくらいの大きさだ。その反応の場所にゆっくりと近づいてゆく。その間に、あることに気が付いた。

 

「……んん? IFFに反応?」

 

この世界に来て今までなかった反応であった。明らかにネウロイではない。しかしこの世界で反応する物なんてない。

 

とすれば、可能性は1つ。

 

(まさか)

 

もしやと思い回線を開く。周波数はISAFのもの。

 

「所属不明機に告げる。貴機の所属を明らかにせよ」

 

≪………良かった。通信が回復した≫

 

≪ひとまず安心だな。ったく、なんだったんだあの黒いグラウラーは≫

 

通信越しに2つの声が聞こえてくる。レーダーをもう一度確認するが反応は1つだけだ。もしや、ステルスが一機紛れ込んでいる?

 

≪と。済まない。こちらの所属を答えよう≫

 

少し間を開けてメビウス1の質問に答えが返ってくる。聞いた瞬間、メビウス1は頭を痛めた。

 

≪ISAF空軍所属の空中管制指揮官、コールサイン“スカイアイ”≫

 

≪ISAF空軍第118戦術航空隊メビウス隊8番機“メビウス8”≫

 

「…………………………………………………………………………まじか」

 

 

 

この時、メビウス1の心労がものすごく増えた、と思われる。

 

いろんな意味で

 




ものがたりを書いていくうちに、だそうかなと考えた

最後まで読んでいただきありがとうございます

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