北方の白き少女 Heart of the admiral   作:ハルバーの懐刀

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初投稿、どうなる?


本編
No.01 メザメテマッシロ


身体全体で感じ取った揺れる感覚。

まるでプールの水面で浮かんでいるような心地良さに、ある意識が目を覚ました。

 

(・・・ん・・・?)

 

その意識が目を覚ますと、視界に日が落ちて夕闇の星空が目に入った。

それは仰向け状態のまま、五感で自身の状況を確認する。顔や胸の辺り以外、身体の全てが冷たさのある水に浸かっていること。その水が波立つことで自身が揺らされていること。そして、その水から潮の香りが漂っていることに気付いた。

 

(・・・・・・海・・・?)

 

徐々に覚醒された思考が身の回りの状況を確認して、それに対する動作へと身体に指示する。

星空を眺める顔を持ち上げて、頭を右往左往に動かし、そこから見える周辺を見回した。

 

(何にも・・・ない・・・・・・海、だけ・・・)

 

今度は身体全体を動かし、体勢を整えられるか試みた。

 

(!?)

 

すると、それは海面辺りで不思議な現象を体験することになる。

 

(な、何これ・・・)

 

通常、水の上には人間は立てない。それはその常識を知っていた。

けれども、何気なく立ち上がるような仕草をしたことで、それは海面の上に立ったのだ。

何も履いていない素足が海水に少し浸かっている。その事実だけは認めるしかなかった。

唐突な不思議現象に、それは目をパチパチとさせる。

 

(ん?)

 

それは揺れる海面に目を向けたことで、ようやく自分自身の姿を目にした。

 

「・・・・・・・・・ンゥ?」

 

疑問の声を上げると同時に、その声の違和感にも気付いた。

 

それは自身の知る地声ではなく、可愛らしい幼子のような女声。

そして・・・海面に映る自分の姿は、驚くほど真っ白な身体をした姿。

身に着けたワンピースとミトンの手袋も白く、所々に黒い装飾が付いている。

純白の長髪で頭には鬼?のような三角形をした角が二つあり、瞳は赤く光っていた。

 

「・・・エッ?・・・コレッテ・・・」

 

 

 

「ナンデ・・・」

 

 

 

(“北方棲姫(ほっぽうせいき)”になってるの?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何故、自分はこんな姿になったんだろう・・・)

 

海面に映る自分の姿を見つめ続ける白き少女。彼女は夜が更けても、満月の光で照らされた海のど真ん中にずっと佇んでいた。

 

(どう見ても・・・北方棲姫(ほっぽうせいき)・・・だよね?)

 

まるで自分の姿が別物へ変化したことに小さく驚いていた。

その理由は・・・。

 

(なんで、“男”の自分が女の子に?)

 

 

 

それの本当の姿。人間であり、20代の男性だった。普段は会社勤めの普通の社会人だが、パソコンで趣味のネットゲームをしている。

 

『これ? アイドルゲームか何か?』

 

ある日、彼は友人に勧められたブラウザゲームを始めることになった。

 

 

それが『艦隊これくしょん』通称:艦これ

 

 

始めたばかりでまだそんなに詳しくはなかったが、ゲームの流れや有名なものはある程度知識として取り入れた。提督となり、艦娘を率いて、人類の敵である深海棲艦と戦うシミュレーションゲーム。

そんな彼の目の前に、その実物たるものが目に入ってくる。

 

 

『北方棲姫』通称:ほっぽちゃん

 

 

元はイベントで出現した敵側の深海棲艦の姫級と言われる存在。

幼く可愛い姿で凄まじい強敵というギャップにより人気の高いキャラとなる。

 

(確かに・・・傍から見ても・・・可愛い・・・)

 

彼自身それ程やり込んでいなかったので、その存在は情報だけ知っていた。

その結果、今の自分自身がそのキャラクターの容姿になっているのだと瞬時に理解できた。

 

それでも彼にとって、唯一理解できないことがあった。

 

何故自分が艦これのキャラクターになったのか?

 

神様のイタズラか、気まぐれか?

 

転生か、憑依か?

 

そもそも自分は生きていたのか、死んでしまったのか?

 

その答えを教えてくれる者は、周りに誰もいなかった。

 

 

「・・・・・・ウーーーン・・・」

 

唸るように悩む子供の声を出して、彼?はこれからすべきことを模索し始める。

 

(こういう場合、何かと物語に巻き込まれる主人公が多いんだけど・・・)

 

頭脳は大人、身体は幼子という何処かの少年探偵ではないが、彼?は慌てても仕方ないと自分自身に言い聞かせた。

 

「・・・ドコヘ、イコウ?」

 

幸い、深海棲艦としての特徴が生かされているため、海上を立って移動するのは歩くことと同じくらい簡単だった。

 

(ほっぽとして・・・行ってみるしかない)

 

特に方向も決めず、“白き少女”となった彼は海の上を歩き始める。




続きは明日の夜

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