ダンジョンに池袋最強の男がいてもいいのだろうか 作:バキュラø
作者、超・感・激‼‼‼
これからもよろしくです。
「
とある日、店仕舞い後の豊饒の女主人では、件の祭りの話で盛り上がっていた。
「そうでした。シズオさんはオラリオに来たばかりで知らないんですよね」
シルは静雄の反応に納得したようにそう言った。
「そういやぁ、露店のおっさんがそんなことを言ってたな。で?どんな祭りなんだ?」
「一言で言えば、ダンジョンから連れて来たモンスターを闘技場で調教し、見世物にしているものです。他にも、普段では出さないような食べ物や商品が屋台に並び、他の街からも人が集まるので大変にぎわいますね」
そんな静雄の質問に、リューは手馴れた様子でテーブルをを片付けながらそう答えた。
「そりゃあ、なんとも楽しそうな祭りだな」
「そうなんです‼‼‼毎年、この怪物祭の時期だけに出る甘いクレープやお好み焼きが特においしいんですよ‼‼‼」
「ミャーも昔、お兄ちゃんと食べたことあるニャ。あれはおいしかったニャー」
よほど、美味しいのか皆、それぞれが印象に残っている食べ物を口々に話し始める。
「そりゃあ、一回食ってみてぇな」
生来、甘いもの好きである静雄はそんなシルたちの言葉に俄然、興味を持ち始めていた。
「そ・れ・に。何といっても、最大の楽しみはガネーシャファミリアの調教ですよ‼‼‼‼あの屈強で、凶暴なモンスター達が追い詰められて、恭順していく様は、もう、興奮の一言なんです‼‼‼」
そういって、光景を思い浮かべているのか、シルは頬に手を当て、うっとりとしたような表情を浮かべていた。
「お、おう。そう……なのか…?」
そんな恩人の興奮冷めやらぬ様子に、ある意味マイペースな静雄だが、何とも言えないような顔をするのだった。
「まあ、シルの、女には珍しい趣味はさておき、祭りは祭りだからね。シズオ、アンタはどうするんだい?ここに来てから働き詰めなんだし、シルみたいに休みを取るなりで行ってきてもいいんだよ?」
ミアは洗った皿の水気を取り、棚に皿を並べながらそう言った。
「いや、そう言ってもらえるのはありがたいんすけど、俺は
頬を掻きながら静雄はそう口にした。
「そういやそうだったねぇ。ん—――じゃあ………リュー、あんた、シズオについていって祭りを案内してやりな」
「へ、え⁉いやでも、ミア母さん‼‼‼‼私は…………」
突然のミアの指名にリューは片付けていた皿を取り落としそうになる。
「リューだって、
「………………はい」
そういってリューは、ゆっくりとうなずいたのだった。
「ズルイニャ、ズルイニャ‼‼リューばっかり、ミャア達も―――――――」
「アンタたちはこの間も休んだばかりじゃないか‼それに働いていても遊んでる時があるんだからこんな時ぐらいしっかりしな‼‼‼」
「「「でも~~~~~」」」
それでも何とか食い下がろうとアーニャたちは不満を露わにしたが、
「…なにかいったかい?」
「「「へい、喜んで‼‼‼」」」
ミア母さんの圧力に抗うことが出来るはずもなかった。
「このリンゴ飴、美味いな。色が俺の知ってるやつとは違って黄色いけど」
「そうですね。オラリオでも、今日の祭でしかないものですし。私は黄色以外のモノは知りませんが」
「お‼、今度はクレープか。トッピングが多くて迷っちまうな……いっそのこと全部頼んじまうか‼」
「子供ですか、貴方は」
どうしてこんなことになったのでしょうか。
別にシズオと出掛けるのが嫌な訳ではない。むしろ楽しいぐらいです。シルやミア母さん、他の同僚たち以外で、こんなにも気を置かずに話せるのは彼ぐらいのものです。
私自身、彼と過ごした時間は―――エルフでなく、人であったとしても―――ほんの少しでしかない。
それなのに、彼といるときは、不思議とやすらぎをおぼえてしまっている自分がいる。
「………、………ュー」
私は数え切れないほどの人を殺して、殺して、殺して、殺し尽くした。
逆恨みで罠にかけられ、殺された仲間の仇討ちのために。いえ、それすらもいい訳ですね。ただ、自分自身のためだけにしたことです。
到底、許されることではない、そんなことはわかっている。伊達に正義と秩序を司るアストレア様に師事していたわけではない。
でも、どうしても、あの時の醜く、薄汚れた激情を抑えきれなかった。そうすることでしか、私だけ生き残ってしまったことに意味を見出すことが出来なかった。私を保ち続けることが出来なかった。
本来ならば、仇を打ち終えた後、あの薄暗い路地裏で静かに朽ちていくはずだったのですが……。
「……い、………ュー」
だから、私にはもう嬉しいなんて感情も楽しいなんて感情もいらないのに……まして、やすらぎなんて………持ってはいけないはずなのに。
「おい、リュー?どうかしたか。さっきからボーっとしてよ」
「…いえ、なんでも……ありません」
どうやらよほど深く考え込んでしまっていたようですね。案内を任されているのに、これではいけませんね。
「やっぱつまんねーか。祭りっつっても、俺の案内押し付けられたようなもんだし」
「そんなことは絶対、ありません‼‼‼」
「そ、そうか。なら、どうしたんだよ」
「…それは…………………」
私の過去のことを思い出していた、なんていえるはずもありません。まして受け入れてもらえるはずもないです。こんな過ちを犯した私を。
「おーい」
「…………」
恐れているのでしょうか。彼に蔑視の眼を向けられることを。拒絶されてしまうことを。
「…フン」
「いふぁいふぇふ‼ふぁにふふんへふか‼‼‼」(痛いです‼何するんですか‼‼‼)
「まぁ、言いたくねぇんならいいけどよ。そんな顔してんなよ」
「余計なお世話です。それに………私はいつもこんな顔です」
「あーその、なんだ。いつもより、沈んだ顔してるみたいだったからよ。折角の祭りなんだからよ、楽しまなきゃ損だろ?」
「ッ‼‼‼」
『まったく、リオンたら、なんでそんな仏頂面なの。年に一度の怪物祭なんだよ‼折角のお祭りだよ‼‼楽しまなきゃ損でしょ‼‼‼』
『そんなことはない、 が言うまでもなく、私も楽しんでいる』
『むー。リオンはいつもそう言うだけなんだから。いいもん。ほら行くよリオン‼‼‼』
『待ってください‼ 手を引かれなくても行けますから‼‼‼』
まったく、なぜ、彼はこんなにも私の心をざわつかせるのでしょう。まるで、仲間だった彼女と話しているように思えるから……なのでしょうか?
そういえば顔に触れられてしまいましたね。エルフは私も含め、認めた相手以外には肌を触れさせないのですが、彼はそのことを分かっているのでしょうか。
ですが、彼には嫌悪感を抱くことはありませんね。こんなことを考えていたら
「なんだ、そういう顔もできるんじゃねーか」
「え?」
「スゲェいい顔してるぜ、今のリュー」
「わ、私の顔はどうだっていいんです‼さあ、早く会場に行きますよ‼‼‼」
「わかった。わかったから、そんなに腕を引っ張るな‼‼」
普段、シズオは鈍そうなのに、どうしてこう………不意を突いてくるのが上手いのでしょうか。
本当に彼は不思議な人だ。
「まったくもう、シルもリューもシズオもズルイニャ……」
「ミャー達が汗水垂らして働いているときにイチャイチャしようニャンて‼‼‼許せないニャ―――」
「若いってぇーのはいいねぇ~おいちゃん、眩しくてしょうがないよ」
「…誰ニャ⁉」
「おっと、こりゃあ失礼。おいちゃんはね、赤林っていうただのお節介焼きだよ」
「ニャ、ニャんで杖が赤いのかニャ?」
「……お嬢ちゃんたちはしらなくていいことだよ」
「「ニ”ャー」」
「アッハッハッハッ。お嬢ちゃんが悪いことをしていなけりゃ―――――おいちゃん、なにもしないから大丈夫だよ」
「そ、それでここには何しに来たのニャ?」
「いやねぇ~うちのお嬢………おいちゃんの会社の社長の娘にいらないことを吹き込んだ、ナクラって野郎がここにいるって聞いたもんでね。ちょいとそいつを探しに来たってワケさ」
「ナクラ?聞いたことないニャ」
「ならいいさ、お嬢ちゃんたちも物騒なことには首を突っ込まないよう気を付けるんだよ」
次回 モンスターと静雄って結局、どっちが強いの?