ダンジョンに池袋最強の男がいてもいいのだろうか 作:バキュラø
「うーん。気持ちいい朝だニャー。ん?これはなんニャ?」
「アーニャ。何をしているのですか?早く店の前の掃除を終えないとミアお母さんにまた、怒られてしまいますよ?」
箒を持ったまま、掃除をしない彼女にリュー=リオンは声をかけた。
「リュー、いいもの拾ったニャ。こいつを見るニャ。こいつをタダ働きさせればミャー達の仕事を減らせるニャー」
とキャットピープル特有の猫耳をせわしなく動かし、興奮したようにアーニャは言った。
「…それはどこで拾ったのですか?」
「お店の前に落ちてたニャ」
「アーニャ。それは落ちていたのではありません。ただの行き倒れです」
「そうなのかにゃ」
「そうです」
ふたりは焦る様子もなく、彼の状態についての意見をすり合わせていた。
そうこうしているうちに、呼びに行ったはずのリューが帰ってこないことに痺れを切らし、一人の女の子が店の中から顔を出した。
「二人とも、戻ってきて店の準備を手伝ってくださいよ。って彼は?」
「「行き倒れです(だニャ)」」
「それを、早く行ってください‼とりあえずお店の中に運びますよ。手伝ってください‼」
そうして、急いで彼を、静雄を店の中に運び込むのだった。
「……あ?俺ぁ、確かあのクソ虫野郎を消し去って……じゃねえな、何も食わな過ぎて倒れて、それから……」
静雄は、見知らぬベットの上で目を覚ました。
「やっと目が覚めたかい?まったく、人騒がせな奴だね。朝から店の前に倒れられてると商売にならないよ。」
そこにいたのはかなり大柄の女性だった。少し、高圧的な物言いではあったが静雄には不思議とトムさんと話をしているような感覚をおぼえていた。
「まあ、見ず知らずなアンタを拾ってきてくれたことをそこで覗いてるやつらに感謝するんだね」
その言葉に、隠れて様子をうかがっていた三人がそろそろと部屋の扉の前から姿を現した。その全員がウェイトレスの恰好をしていた。
「そうか、すまん。ありがとよ、それにしてもネコミミでウェイトレスの恰好って、ここはメイド喫茶かなにかか?それに耳が長い奴…も?」
「ん?なんだい、あんたキャットピープルやエルフを見るのは初めてかい?その割にはそんなに驚いたようには見えないね。エルフのこの子なんかは初めて見る奴は驚くんだけどね。………それにしてもあんた
彼女の最後のつぶやきは、周りにいた者たちに聞こえることはなかった。
「そういえば、ここはどこなんだ?」
「言ってなかったかい?ここは酒場、豊穣の女主人さ。そしてアタシは、そこの奴らの雇主のミア=グランドさ。それでアンタは何者で、一体、どこから来たんだい?」
その問いに静雄はわかる範囲で答えていった。
「ふーん。どうやら聞く限り、アンタ
「…うっす」
「いやに素直じゃないか。もっと疑うもんだよ普通」
「いや、見ず知らずの俺を助けて貰った相手、疑うのは性に合わねぇ。それに…なんつーか、似てるしよ。昔、俺の職場の先輩に言われたことと」
静雄は刑務所から出た後、自らを仕事に誘ってくれた先輩のことを思い出していた。
「そうかいそうかい、じゃあさっそく明日から働いてもらうとしようか。服はそのままでもよさそうだしね。じゃあ今日は少し、様子を見ながら覚えるだけにしておこうか」
「じゃあじゃあミア母ちゃん、ミャーがその金髪頭に教えてやるニャ。ミャーの下僕としてばっちりこき使ってやるニャ」
その声に、待ってましたとばかりに元気な声でキャットピープルのアーニャが名乗りを上げた。
「あ”ぁ‼」
「う。や、やっぱりここは誰かに任せてやるニャ」
静雄の威嚇であっさり引き下がることになるのだが。
「ったく、あんたってやつは。じゃあ、リュー頼んだよ」
そんな態度にミアは呆れつつ、彼女は三人の中からエルフの少女をつけることにした。
「分かりました、ミア母さん。シズオさん、でよろしいですか?」
「いや、俺はシズオでいい。お前のことはなんて呼べばいい?」
「では、シズオ。私のこともリューで結構です」
「わかった」
「それではまず皿洗いから行きましょうか」
そういい二人は調理場へ向かうのだった。
「クロエ‼やっとアタシにも、出番が来たのニャ‼この勢いであの白髪頭と一緒にあの金髪煙草も主役の座から引きずり降ろしてやるにゃ‼」
「アーニャは、いいニャ…ミャーはまだ、あとがきでしか出てきてないニャ………」
「だ、大丈夫ニャ。これから二人で頑張ればいいだけニャ‼」
「あ、アーニャ‼」「クロエ‼」
ヒシッ‼
「何を遊んでいるんだいアンタたち。アタシの前で堂々とやっているからには相応の覚悟をしているんだね」
「ミア母ちゃん‼」
「そんな、遊ぶ余裕があるんだ、明日からの仕事は倍にしてもよさそうだね」
「「そんニャ~」」
「返事は?」
「「へい、喜んで‼」」
次回、静雄がウェイターをやるのは間違っているだろうか