ダンジョンに池袋最強の男がいてもいいのだろうか 作:バキュラø
エタるつもりはないので、よろしくお願いします
ボクは今、六階層でウォーシャドーと戦っていた。アイズさんの教えを受けたことでボクもステータスに頼りきりじゃない、「
アイズさんはレベル6になったって言うし、ボクはいつになったら追いつけるのかなぁ~
リューさんの話だと、冒険をすることがレベルアップには必要らしいけど…どうすればいいのかな。
そんなことを、取り留めなく考えていると、魔石を集め終わったリリがベルに話しかけて来た。
「ベルサマ、ベルサマ~。今日は何階層まで行きましょうか?」
「うーん。昨日は、10階層まで進んだから、今日はもう一つ下の11階層まで行こうかな…」
「わかりました~」
アイズさんが遠征に旅立つということで、ボクとの訓練は今日で終わった。強くはなった。たぶん…
けれど…たまにミノタウロスのことを思い出すと体が竦むことがある。
今もそうだ。大型のモンスターが出始める階層ってだけで反応しちゃうんだ。
いくらモンスターを倒せるようになっても、やっぱり
自分が、情けない…
つい、アイズさんだったら、物語に出てくる英雄だったら、……自分のことを叱ってくれた静雄さんだったら…そんな身も蓋もないことを考えてしまう。
でも、ミノタウロスの出る階層はもっと先なんだから、その時までにはボクも…
「冒険…か」
「なにか言いましたかベルサマ?」
「ううん。なんでもないよ。じゃあ次の階層にいこうかリリ」
「はい‼」
とりあえず今は、前に進もう。
ベル達は、休憩をはさみつつ、着実に下の階層まで下り、目的の11階層までやってきていた。ダンジョンの中は洞窟と一口に言っても、洞穴のような一ケタの階層と比べて、ここまで下りてくると鍾乳洞がそこかしこに連なり、どこかひんやりとした空気を湛えていた。
そんな風景に目を向けていると、ふと、背中に二つほどの視線を感じ、ベルは後ろを振り返った。
「ねえ、いま、誰かに見られてた気がしたんだけど…リリは感じなかった?」
「ワタシは分かりませんでしたけど。…言われてみれば、この階層、なんか変じゃありませんか?モンスターやいつもなら数人は見掛けるはずの冒険者の姿も11階層に入ってからは、ほとんど見ていません」
「…まさかね」
ベルは若干、動きを固くしたようにして、周りを見渡しながら首に手を当てそんなことを呟いた。
そんなダンジョンの状況に既視感を感じて…
「ベルサマ?」
「な、なんでもないよ。さぁ、今日は戻ろう!」
ベルは心配そうに見上げるリリに声をかけつつ、まるで何かを振り払うようにして顔を上げた。
そこには、赤い
静雄はミアに注文を頼まれ、昼のデリバリーをしていた。静雄がやってきてかれこれ、一月ほどが経ち、豊穣の女主人での仕事にも慣れて来た静雄はこうして偶に、配達要員として駆り出されることがあった。
オラリオはかなりの広さがあり、ただ届けるだけといえども、多少骨が折れるものだった。
とはいっても、静雄はフィールドワークが苦手というわけでもなく、むしろ、そちらの方が得意分野であるので問題はなかったりするのだが。
「ども、豊穣の女主人ランチセット二人前お届けに上がりました~」
「やった~今日のランチ頼んでから楽しみにしてたんだよね~。ちょっと高いけどおいしいって評判だし。それに持ってきてくれたのは、ウワサのイケメンウェイター君だし‼‼エイナ、エイナ~、あれ?」
注文を受けたギルドに到着すると、応対したのはミィシャというヒューマンの女性だった。
騒がしいが人を不快にさせない、自然なにぎやかさ。そんな第一印象を静雄は彼女に抱いていた。
ベルからギルドについて、担当してもらっている受付嬢について話を聞いていたが、なるほど、こういう人柄ならガラの悪い冒険者も邪険にできないのだろう。上手く考えているな。と接客業に苦い経験がある静雄は、一人で納得するのだった。
「エイナだったら今日、昼からバベルの見回りじゃなかった?」
「あちゃー、どうしようか。私もここから離れるわけにいかないし…」
「だったらついでだし、バベルまで届けるか?」
用意してきた弁当タイプのランチを手渡しつつ、静雄は提案した。
「え、いいの!…じゃなかった。いいんですか?」
「ああ、バベルならそう手間じゃないしな」
そうして、静雄はバベルへと向かうことになった。
そんな静雄と時を同じくして、アイズ達ロキファミリアは深層への遠征の為、二組に分けフィン、ガレスがそれぞれを率いて、ダンジョンの中を進んでいた。
至って、いつも通りの行軍であった。
とある一部を除いて。
「おせーぞザコども。こんな階層の
「「は、はい!」」
「なんだか、ベートさん張り切り過ぎじゃないですか?」
ベートは、殆ど吠え掛かるようにしてレベルの低い団員たちの戦闘を叱咤していた。殆ど八つ当たりのようなものだった。
「あーあれはほっときなさいレフィーヤ。どうせウェイター君にやられてから、満足に暴れられなくてフラストレーション溜まってんでしょ」
そんな光景を見て呆れたようにアマゾネス姉妹の姉、ティオナはレフィーヤの疑問にため息を出しつつ答える。
「そう…だったんですか……ふふ」
「れ、レフィーヤ?なんか…黒いよ?」
「いやだなぁ~そんなことないですよティオナさん?」
「う…うん」
「!…皆、来て」
そんな、神様だって殺せそうな黒いオーラに皆がドン引きしているとき、アイズが何かを見つけ、走り出した。
そこにいたのは、体を血だらけにした冒険者の姿だった。
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