ダンジョンに池袋最強の男がいてもいいのだろうか   作:バキュラø

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番外編は一応はここまで。続きは本編第二章が終わった後に続きます。


ジャガ丸くんを求めて③

 ロキファミリアホーム『黄昏の館』にて

 

 

 

 

 

 

 

「なんだアイズ。部屋を、朝から留守にしていると思ったら、それを買いに行っていたのか?この間は買えなかったみたいだが、今日は買えたようでなによりだ」

 ロキファミリアのホーム『黄昏の館』の共同スペースで、夢中になってジャガ丸を頬張っていたアイズに、ちょうど仕事を片付け、部屋に入ってきたリヴェリアは声をかけた。

 

「…ん」

 リヴェリアへの返事もそぞろになるほど、無邪気にジャガ丸を食べ続けるアイズの様子に、彼女は慈愛に満ち溢れたまなざしで、何とも、愛おしそうにアイズを見つめるのだった。

 日頃から、ファミリア内で『母』呼ばわりされることに難色を示す彼女だが、この対応を見れば存外、その指摘は的外れとは言えないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、譲る義理はないのに、よくもまあそれだけのジャガ丸を残しておいてくれたものだ。余程、できた御仁なのだろうな」

 リヴェリアは、アイズが抱え持つ袋に入るジャガ丸を見ながらそういった。

 

「……酒場の時の…ウエイター…君…だったよ?」

 

「また、彼なのか?ハア…まったく、話題に事欠かない…というよりかは最近、私たちのファミリアと接触回数が多いだけか。それにしたって、彼が意図したものではないのだろうが…」

 酒場の件や怪物祭(モンスターフィリア)での件で、ロキファミリアその幹部である三人を含め、ロキ、また所属の第一級冒険者たちは、程度の違いはあれ皆、彼に注目していた。

 静雄としては、思うままに振る舞っていただけのことで、――――――トップギルドに注目されている時点で、多くの冒険者にしてみれば、羨ましいことこの上ないのだが。――――――本人にしてみれば、その注目は迷惑以外の何モノでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでアイズ…話は変わるんだが」

 

「…なに?」

 

「そこで石化している…レフィ―ヤはどうしたんだ?」

 

「……‼…レフィ―……ヤ?」

 微動だにしないレフィ―ヤに驚きの表情を浮かべ、心配するようにアイズは声をかけた。

 

「うっ」

 その声に半ば壊れた人形のような動きで反応したレフィ―ヤは、フルフルと震えるように動き出し、

 

「「う?」」

 

「うわァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ‼‼‼」

 盛大な叫び声をあげた。

 

「ッ‼れ、レフィ―……」

 アイズは、その叫び声に驚きつつも何とか、落ち着かせようと声をかけるが………

 

「ふ、フフフフフッフフフフフフっフフフっふふhhhhhh………………アイズサン……一体、彼は誰なんですか‼‼どんな関係なんですか‼‼‼‼二人きりで、あんなに仲良く肩を抱き寄せ合って、頭を撫でて。髪の色もアイズサンと同じ金色でしたし、生き別れの兄か何かなんですか、そうなんですよね、そう言ってください‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」

 彼女の眼は据わっており、いつもの天真爛漫とした光は宿っておらず、どこかうつろで、魔法を発動しているわけでもないのに、若干、闇をたたえていた。

 アイズはそのように詰め寄るレフィ―ヤにおろおろするばかりで、彼女をなだめようとはしているが、ほとんど意味を成していなかった。

 

『全く、彼もつくづく面倒を持ち込んでくれるものだ……』

 リヴェリアは、アイズの態度となだめようとする言葉の端々から、なんとなく、起こったことに思い当たり、困ったように眉間を指で押さえ、娘のように教え導いてきた二人を見て、ため息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、なんでなんだよフィン‼‼」

 部屋は移り替わり、フィンの私室では、ベートが部屋の主に向かって怒りを露わにしていた。怒りに任せたベートが勢いよく、執務机を叩いたために、そこにあった書類はほとんどが舞い上がり、その山を崩していた。

 

「そうは言うけど、本当に……お金をあのアイズが脅し取られたっていうのかい?」

 ベートのそんな行動にも、我関せず、フィンは真実を確かめるかのように、冷静に言葉を重ねる。

 

「あいつなら確かに金を奪われるこたぁーねーだろうが、ところどころ抜けてるからな。あいつは………」

 

「心配なんだね、彼女のことが」

 

「うるーせーよ。まぁ、仲間…だからな」

 その言葉には、明らかに隠し切れない好意が含まれていたが、ファミリア内では公然の秘密となっているため、フィンも笑みを深めるだけに止めていた。

 

 

 

 

 

 

「それはさておき、ボクには、とても彼がそんなことをするようには見えなかったけどね」

 ベートの言うことが本当ならば、即刻にでも動かねばならないが、結局のところ、ベート一人の主観では、どうこうすると決めることはできなかった。

 

「だけど、俺は見たんだ‼‼アイズがこそこそとあいつに金を渡してんのをよォ‼‼‼」

 そんな煮え切らない態度のフィンに、今からでも突撃しそうなほどベートは吠え掛かる。

 

「お、ふたりして何の話をしてるんや?なんや廊下までベートの罵声が響いとったで」

 

「ロキか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか絡んどるんやったら、聞いてもアイズたんはしゃべらんやろ。なんでも、自分のうちで解決しようとするからなぁ…」

 ことの顛末を二人から聞いたロキは、そう口にした。

 

「それでロキ、キミの意見を聞きたいんだが」

 

「しゃーない、今度、ウチが確認してきたるわ」

 

「自ら、行くのかい?」

 

「まぁ、何もないときは、正直、ウチは暇やし。ウチ()が視てくる方が適任やろ。せやから今回は我慢しーや、ベート。前回のこともあるしな」

 ロキは、一応自分が、確認してくるまで手を出さないようにとクギを刺した。

 

「ッチ。……………分かったよ」

 その声は、いかにも不満を溜め込んでるようにしか、思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、みなさんが予想した逆鱗には、残念ながら今回は、触れませんでした。

ちなみに、言い忘れていましたが、番外編の時系列としてはベルとリリが出会うくらいです。

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