ダンジョンに池袋最強の男がいてもいいのだろうか   作:バキュラø

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長くなったので、三部構成になってしまいました。次の③で番外編は終了です。

それでは②をどうぞ。


ジャガ丸くんを求めて②

 

 

「アッハッハッハッハ‼」

 

「…………笑いすぎ」

 アイズは頬を膨らめて、先程から笑い続ける静雄への抗議の視線を向けていた。

 

「わりィ、わりィ。あんまりにも、まっすぐし過ぎな行動だったからよ…」

 静雄はブチギレかけてはいたのだが、懸命に謝罪するアイズの姿やその行動に至った理由を聞いて、すっかり矛先を収めていた。

 

「むぅ……」

 代わりに笑いすぎて、彼女を拗ねさせてしまってはいたのだが……

 

「はい、アイズちゃん。何はともあれ、楽しみにしてた『できたて』ジャガ丸くんあずきクリーム味だよ」

 その言葉に、先程まで頬を膨らませて拗ねていたとは思えないほど、ランランと目を輝かせて包みを受け取った。

 

 

 

 

 だが………

 

「……お金」

 

「ん?どうしたんだ」

 

「………急ぎすぎて…お金…………置いてきちゃった…」

 そういってがっくりと肩を落としたアイズを見て、静雄は今度こそ、腹を抱えるようにして笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん…なさい……………」

 

「ん?ああ、まぁ気にすんな」

 アイズは自分がぶつかっておいて、さらにはお金も代わりに出してもらったことにひどく負い目を感じていた。

 まあ、声色で感じ取れるぐらいで、表情はあまり変わっているようには見えなかったのだが。

 

「でも…」

 

「どうせ、今からお前んちの近くまで行って、立て替えた分を払ってくれるんだろ?」

 

「うん…」

 そうはいえども納得できない。アイズはそんな顔をしていた。ただでさえ、彼の働いていた場所であんなことがあったのである。

 世間の評判ほど、戦闘時以外の精神力(メンタル)は強くないアイズにとって、少なくない罪悪感があった。

 

「じゃあ、気にすんじゃねーよ。………借りて返さないクソ野郎どもより、はるかにマシだしな」

 

「…」

 

「甘いもの好きに悪い奴はいねーからな。それに、人からの好意は素直に受け取っとけ」

 

「………」

 

「ほら、食べねーのか?」

 静雄はそう言いながら、自分が買ったジャガ丸を口に含む。

 

「…はむ」

 そんな行動につられて、アイズは自分も包みから出したジャガ丸を頬張った。

 

「そうそう、最初から素直にそうしとけばいーんだよ」

 そういって静雄は、何の気なしにアイズの頭に手を乗せて、髪をくしゃくしゃとかき乱した。

 

「子ども扱い……しないで…………」

 

「そうか?」

 アイズはジャガ丸を頬張りながら、そんな静雄の手を押しのけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな光景を見た一人の、いや、一エルフが石化しているとも気付かずに……………

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんふんふ~ん♪」

 オラリオを代表する第一級冒険者、レフィーヤ・ウィリディスは、ご機嫌で、とある路地を鼻歌交じりに歩いていた。

 

「今日は、訓練もリヴェリア様の講義もないですし、久しぶりにゆっくり散歩ができるなぁ~。そういえば、アイズさんは朝早く出掛けたみたいで見かけなかったけど、今度はお願いして一緒に散歩に行くのも…」

 その光景を想像しているのか、レフィーヤは、えへへ~と笑みをこぼした。その姿はとても可憐ではあるのだが、エルフの静謐な美しさは欠片も残っていなかった。

 

「あれはもしかして…」

 そんなことを考えながら歩いていると、レフィーヤは前方に綺麗なブロンドの髪をしたヒューマンを見つけた。アイズを尊敬してやまないレフィーヤがアイズを見間違えることなど、そうそうあることではない。

 彼女は、これ幸いにとアイズに駆け寄り、声を掛けようとしたのだが……………

 

「………あ、アイズさん…?う、そ…。え…でも……」

 アイズが男と二人っきりで歩いているのである。

 それはもう、見るものが見れば、泣いているようにうつむくアイズを慰めてるように――――無論、恋人のように仲睦まじく――――見えるのである。

 事実は、少しばかり違っていたのだが、少なくとも今のレフィ―ヤには、そう見えていた。

 

「なんで…男の人と…………」

 レフィ―ヤはあまりの衝撃にその場に立ち尽くし、二人を見送ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時をほんの少し遡り、『黄昏の館』近くにて。

 

 

「よし、そろそろ奴にやられた腕も治ったし、ダンジョンに行けそうだな。チッ…しばらく行ってねーから、体がなまっていやがるな」

 ベートは肩や腕をまわしながら、体を動かし調子を確認していた。本来ならこれほどまでの攻撃を喰らったのなら、倍返しにしてやる‼‼と言い出しそうなほど、気の強いベートではあるのだが、自分に非があると認めている(.............)ことに関しては、基本的に手を出すような男ではない。

 

「ん?アイズじゃねーか。こんな時間に金の入った袋持ってどこ行くんだよ」

 確かにベートの言う通り、まだまだ早朝の時間帯であり、冒険者の道具を揃えたり買い物を楽しむにしては早く、店も殆ど開いていないのである。

 

「ベートには…関係ないよ……」

 

「ハァ?なんだよそれ」

 そう言い走り去ったアイズを不審に思い、ベートは彼女の後をばれないように尾行することにした。

 俗にいう、それはストーカーというやつなのだが…残念ながらオラリオにはストーカー共(神様)がいるため、ほとんどの場合には、日常のことだと受け取られていた。

 …止める者がいないというのも、一つの原因ではあるのだが。

 

 

 

 

 

 ようやくアイズがある路地で止まり、ベートはその様子を息をひそめるようにして伺っていた。

 そこでベートは案の定、ある光景を見ることとなった。

 

 

「なんで…あいつに金を渡してんだよ」

 

 

 その相手は紛れもない、ベートが酒場で打ち負かされたバーテン服の男(シズオ)の姿であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




安心してください。はいてま…オホン。静雄とロキファミリアが代理戦争するわけではありません。
……たぶん、おそらく、メイビー。



















静雄の逆鱗にさえ触れなければ…

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