ダンジョンに池袋最強の男がいてもいいのだろうか 作:バキュラø
剣姫とジャガ丸くんと朝の攻防の後日談のようなものです。
ジャガ丸くんを求めて①
これは、
アイズ・ヴァレンシュタインは決意した。今日こそは、かの『できたて』ジャガ丸くんあずきクリーム味を手に入れてやるのだと。
アイズは第一級冒険者である。敏捷のステータスには、少なからず自信を持っていた。
朝早く起き、ステータスにモノを言わせたスピードで、ロキファミリアの拠点である黄昏の館を飛び出し、屋根から屋根を飛び移り、早朝のオラリオを一直線に駆け抜ける。
そう、すべては、『できたて』ジャガ丸くんあずきクリーム味を食べるために……………
………ステータスを使う方向が甚だ間違っている気はするが……それはさておき。
ここしばらく、彼女は誰かに先を越され続けているのである。今まで、『できたて』ジャガ丸くんを買い始めてから、一度も買い逃したことはなかった。だが、遠征を終えてからは、一度もこれを口にすることが出来ていないのだ。
誰かは分からないが、オラリオを代表する第一級冒険者の一人として、これ以上、負けるわけにはいかないのである。
決して、『できたて』ジャガ丸くんが食べられていないことを我慢しきれなくなったわけではない。ないったらないのだ。
アイズの心の奥の幼いアイズが珍しく、瞳に炎を灯し、てのひらをを握って
「…できたて、じゃがまる……じゅるり……」と、言っている気がするが、ないったらないのだ。
ちょうどその頃、静雄は、いつも世話になっているジャガ丸屋台へやってきていた。まだ朝早く、殆どの店が閉まっている時間帯、また、
「おう、おばちゃん。今日も、いつものやつ頼むわ」
静雄は軽く手を挙げ、いつものウェイター姿、もといバーテン服でそう屋台の店主に声をかけた。
「今日も早いね、シズオちゃん」
静雄が、この店を見つけたのは全くの偶然であった。オラリオに来てからというもの、甘いものが不足気味だった静雄は、どこをどう歩いたのかは覚えていなかったが、勘でここまでたどり着いたのである。
「まあ、甘いもんは高くてそんなに食えねーし、こいつは
そう言い静雄は、苦笑を浮かべた。
「そうかい。そう言ってもらえると嬉しいね。それでシズオちゃん、いつものやつは出来てるんだけどね……実は、これを買いたいって常連さんがいてね。その子もこれを楽しみにしてるんだ…悪いんだけど…全部は諦めてくれるかい……」
店主は、いつも買いに来てくれている静雄に、申し訳なさそうに歯切れ悪く、そう言った。
まあ毎回、全部買い占めていた静雄が悪くないかといえば、判断に困るところではあるのだが。
「そうか…それならしょうがねーな。じゃあ、いつもの半分ぐらいで……ん?」
静雄は、店主との会話中にふと、屋根を見上げた。だがそこには、先程までとなんら変わらない景色しかない。
「助かるよシズオちゃん。…どうしたんだい?空の方を見上げて」
「いや、なんか物音がしたと思ったんだが……まあ気のせいk……」
まあ、空からモノやヒトが降ってくるなんてことが日常的に起こるのは、静雄の住んでいた池袋ぐらいで、あとは、アニメや漫画の世界ぐらいでしか、そうそうありはしない――――――――――――――――
そう静雄は考えていたのだが…………………
「だめ――――――――――――――‼‼‼‼‼‼‼‼」
「ッ、なんだ?グッ‼‼」
静雄は、突然空から降ってきた
「………間に…合った‼」
アイズは軽く息を整える素振りを見せながらも、間に合ったことに安堵の表情を浮かべていた。
「…」
「……おばちゃん、『できたて』ジャガ丸くん…ください‼‼‼」
「アイズちゃん…それは、いいんだけど……今、盛大に突き飛ばした彼に…謝らなくていいのかい?」
店主は、おずおずとアイズに静雄が転がっていった方向を指し示す。
「……………?」
アイズは、こてん。と首をかしげながらも、店主の指先が向けられた方向に目を向けた。
「テメェ…不意打ちとはやってくれるじゃねーか‼‼‼一体、どこのどいつだゴラァァァァァァァァァァ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」
「……あ」
「あ”?」
―――――――――――――――というわけでも、なかったらしい。
②は明日、更新です。