連続投稿27本目。25と26は犠牲になったのだ……。
お互いの両親に顔を合わせてから暫くして。段々とバカップルぶりがエスカレートしていることを自覚しながら俺と才人はいつも通りに過ごしていた。
いつも通りに一緒に登校し、いつも通りに授業を受け、いつも通りに作ってきた弁当を交換し(俺のは味はそこそこ。それでも美味しいと言って食べてくれる才人が可愛すぎて困る。才人のは絶品)、いつも通りに一緒に家に帰って…………親同士が結託でもしているのか、なんでか一ヶ月の内の四日くらいはお互いの家に泊まっている。
家で寝ようとすると宿泊セットと才人の家族へのお土産を持たされて放り出されるんだよな。
同じように才人も俺の家に泊まりに来るんだが………そういう日には精のつくものばかりが食卓に並ぶ。
……確かに俺は才人のことが好きだが、流石に中学生の才人とそういうことをしようとはしない。せめて高校までは待ってほしい。
………………そう言ったら我が父上殿も母上殿も父御殿も母御殿も妙に喜んで、それでも結局宿泊は無くならなかった。
まあ、それでもやたらと精のつく料理ばかりが並ぶことはなくなったんだが……それでも同じベッドはマジで勘弁してくれんかね!? 理性がヤバイ!
……体は中学生だからなぁ……誤魔化すことがあり得ないくらい元気なんだよ………。
……まあ、我慢できない訳じゃないから我慢するけどさ。
中学生で子供を産むにはかなりの危険が伴うことは知っている。高校生でもヤバいが、一応なんとかなるということは知っている。
本格的にまずければホイミ使えばなんとかなるし、切開してもホイミで……ホイミってマジで万能だな。今ほどホイミ覚えてよかったと思ったことは無いぜ……多分、実際に使う時にまたそう思うことになるんだろうけど。
「……マサ。起きてる?」
「……寝れないのか?」
「……だって、隣にマサがいるんだもん」
そう言って才人は、俺の肩に額をこつんと当てるようにして表情を隠した。
しかし、カーテンの閉まっていない窓から入ってくる月明かりに照らされている才人の耳は、まるで血の珠のように真っ赤に染まっていた。
……どうだこの娘。可愛いだろう? この可愛いのが俺の恋人なんだぜ?
ちなみに、才人の耳を『血の珠』と表現した理由は、何となくそれが一番似合っているような気がしたからだ。
だからと言って俺は才人を血まみれにしたいとは欠片も考えていないけどな。
俺は才人の頭を撫で、柔らかな黒髪を梳りながら才人を抱き締める。
肩から胸まで引き寄せられた才人は、僅かに涙で潤んでいる瞳を向けた。
「マサぁ……」
「……仕方無い奴だな、才人は」
ゆっくりと、ただでさえ少なかった俺と才人の間の空間が埋まっていく。
才人は目を閉じ、少しだけ緊張しているようだが……それでもゆっくりと近付いてくる。
ゆっくりと、まるで数十分も過ぎたんじゃないかというゆっくりとした時間が過ぎていき、最後の一歩は才人が詰めた。
ほんの少しだけの間だったが触れ合った唇を離し、俺は才人の顔を見る。
すると、同じように俺のことを見ていたらしい才人と目が合い、やはり頬を真っ赤に染めた才人はすぐに目を逸らしてしまった。
俺はそんな可愛らしい反応をする才人を抱き締め、その表情を俺の視線から隠した。
「それじゃあ、お休み、才人」
「……うん。お休み、マサ」
俺の服の胸の部分に額を押し付けた才人の頭をそれまでと同じように撫でながら、俺は才人に呟いた。
「……Have a nice dream.」
「……は、はぶ?」
「……『いい夢見ろよ』だ。学校で習っただろう」
「忘れた」
「………まあ、その方が才人らしいか」
優しく撫でていた頭を少しだけ強めに撫でて、額に軽くキスをする。
「それじゃあ、今度こそお休み」
「うん、お休み」
俺は才人にそう言って、ゆっくりと目を閉じたのだった。
■ ■ ■ ■ ■ ■
いつも通りの日々の中には、才人ののろけも入っている。
昔に一度才人の可愛いところを聞かれて語り続けたりもしたせいであんまり聞いてくれるやつがいないが、それでも一応才人の可愛さについて語らせたら多分俺ほど長く語れるやつはいないと思う。
同じように才人も昔俺のどこがいいのか聞かれたことがあるそうだが、しばらく喋り続けていたら憔悴した表情で止められてしまったらしい。
止められたときに『あたしもう二度と他人の恋愛に興味持たない……絶対持たない………』等と言っていたらしいが……才人がいったいどんなことを言ったのかが予想できない。
まあ、とりあえず才人は可愛いと言うことでファイナルアンサー。異論は認めるけど後で切り刻み擂り潰し手の中で丸めて形を整えてちょっとだけ湯を潜らせて胡麻を周りに満遍なくつけて油でからっと揚げてご近所に配り歩いてやる。
だからと言って才人で不埒な妄想を働かせた奴にはアストロンをかけた後に熔鉱炉に放り込んでアストロンが解けたら焼かれて死ぬけど解けなかったら逃げられなくていつまでも炎の中にいるという状況を脱出できないというような恐怖体験まっしぐらだけどな。
そんなわけでバカップルと言われ続け、人前でも抱き合ってほっぺにキスくらいなら普通にできてしまうようになった才人と、元から割と好意は表に出すタイプの俺の二人は、自分で言うのもなかなかアレだが相性がいいのだろう。嬉しいことだ。
特に、好き合っていても相性の悪い組というものも存在するため、俺と才人がそう言うのと無縁でよかった。
流石に人前でキスは恥ずかしいようだが、膝の上に座ったりは普通にしてくる才人。そんな才人を、俺はとても愛おしく想っている。
膝の上の才人は暖かく、抱き締めてみると柔らかく、ほんのりといい香りがするし、膝にかかる重みは心地好い。
時々才人が俺の膝に横向きに座ってそのまま二人で弁当をつつくこともあるが、普段の料理より美味いような気がする。これが恋愛補正と言うか愛情補正と言うものだろうか。なんにしろ超美味い。
才人の笑顔がすぐそばにあると、午後の授業も頑張る元気がわいてくる。この時間がなかったら、午後の授業の途中で寝てたと思うしな。
周りからは『もうお前ら結婚してくれ。早く結婚してくれ。あと式には呼んでくれ』とか言われたり、気の早い教師からは才人が平船嫁と呼ばれていたりするけども、俺達はまだ中学生なんだから結婚なんざできるわけ無いだろうと。平安時代とか江戸時代の日本だったらともかく、現代日本でそんなことができるかと言ってやりたい。
……できるんだったらとっくにやってるっての。当然だろ?
■ ■ ■ ■ ■ ■
前にゼロ魔のとあるキャラクターが魔法を使う時に、こんな描写がされていた。
『魔力は気力だ。気力は感情だ』
つまり、この世界では感情が魔法の威力の上昇に深く関わってくる。
強い感情を持てば持つほどに魔力は増幅し、それに合わせて使える魔法の位階も上がっていく。
それでは、才人への愛情に溢れている俺はいったいどの程度の魔法が使えるようになっているでしょうか。この場合の魔法とはゼロ魔基準とする。
①.下がってドット。愛情では上がらない。
②.ラインのまま変わらず。愛情が足りない。
③.一つ上がってトライアングル。ここまで上がっただけでも凄い。
④.一つ飛ばしてスクウェア。愛は世界を救う。
⑤.ペンタゴン。愛に限界など存在しない。
⑥.ヘキサゴン。本来王族二人以上が協力しないとできない公式チート。でも正直カリーヌのカッタートルネードの方が強s(ry
⑦.ヘプタゴン。ここまでやればカリーヌにも追い付けるかもね。
⑧.オクタゴン。ドラゴンにも勝てそう。
⑨.それ以上。ここまで来たらもう神でよくね?
シンキングタイムは5秒きっかり。一秒たりとも負けません。
…………時間切れ。答えは⑧のオクタゴンでした。
もう少しでまた上がりそうな気がするんだけど、魔法の威力をあげるために才人を愛してる訳じゃないしなぁ……。
まあ、上がったところで何に使うって訳でもないんだし、とりあえず俺は勝手に『才人への愛情メーター』として活用している。
今のところ下がるようなことは起こっていないし、これからもまず起こらないだろうけど……と言うか起こさせる気は欠片もないけど……とりあえず才人への愛情を大雑把に理解できるってのは嬉しいよな。
まあ、とりあえず。
才人ーっ!
あ・い・し・て・る・ぞーーっ!!
……ふぅ。学校の真ん中で愛を叫んでみた。なんとなくやりたくなっただけだから気にしなくていい。
さあ、これからも俺は才人への愛情に磨きをかけることを日々意識しながら過ごして行こう。
……あ、顔を真っ赤にした才人が走ってきた。恥ずかしがってんのかね?
どうせ学校中に知れ渡ってるんだから今更隠すこともないだろうと思うんだがね。