騙された気がするゼロの使い魔   作:真暇 日間

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 はいラスト。かなり中途半端な出来ですが、「ここからまだ続くよ!」オチや「大変!子供が並行世界のルイズにさらわれちゃった!」オチよりはましかなと。
 


騙されゼロ魔EX4(10年後・日本にて)

 

 才人とともに異世界から帰ってきてからはや十年。ちょくちょく遊びに来るジョゼフやシャルル、たまに遊びに来るタバサ……もといシャルロットからトリステインという国がなくなってガリアに吸収され、貴族とされていたほとんどの人間が処刑あるいは平民達の私刑にあったと聞かされたり、ジョゼフとシェフィールドの間に子供が生まれたことを祝福したりしている間にあっという間にそれだけの時間が過ぎてしまった。それについて後悔する事は無いし、それ以外についてもまあちょっといろいろと頑張りすぎた感じはあるがそれについてもやり直したいと思うような事は無い。

 高校の時に生まれた子供はもうすぐで10歳になる。それ以降も子宝には恵まれて、三男一女という立派な子沢山だ。あと数年で学費が大変なことになりそうな気もするが、稼ぎはある。問題ない。最悪の場合例の病院に話を付けて金持ち相手に難病の治癒と引き換えに多額の金を請求したり、金だけは大量に持っている爺に若返りと引き換えに金を頂いたりすれば問題ない。そんなことをするまでもなく稼いでるからそんなことにはならないだろうがな。

 えげつないだとかそういった言葉は聞かないことにしている。必要ならばやる。ただ、必要になるようなことにはもはやならないだろうと思っているが。

 問題があるとすればあちらの世界のブリミルの血縁はまだそれなりに残っていることくらいだが、少なくともロマリアは滅ぼしたしトリステインでは様々な所で反乱やら何やらが起こったおかげで少なくとも王族の血は途絶えたらしい。王族から降嫁された事がある家はそこそこに残っているようだが、一番そういう血が濃いだろうと思われるヴァリエールはもうないそうだし、おそらく俺と才人が死ぬまではもう一度召喚されるというような事は無いだろう。多分。

 あったら……今度は国じゃなくて世界そのものを叩き壊してやらなきゃならないな。流石に世界崩壊の魔法とかは知らないし、マダンテならワンチャンあるが全魔法力を使わなくちゃならないだけあってそれやった後回復するまで魔法使えないんだよな。リリルーラも含めて。

 例外はメガンテな。あれに必要なのは魔力じゃなくて生命力だから関係ない。

 

 ちょくちょくこんな物騒なことを考えている俺だが、もしも今才人が攫われたとしても昔のように即座に世界を越えるわけにはいかなくなっている。何しろ子供たちがいるからな。『遍在』を使ったとしても何かあったら消えてしまうから最低三体は置いて行く必要があるし、『遍在』三体分の魔力が常時使われ続けるというのも中々に辛いものがある。必要なら躊躇わずにやるが。

 だが、そんな物騒な考えは家に帰ればすぐに消えてしまう。ちょっとばかり特殊な仕事場であるおかげで会社の飲み会なんかは殆ど無く、毎日家に帰ることができるというのはこのご時世では幸せなことだ。

 家には可愛い子供達と愛しい妻がいて、何もなければ俺のことを出迎えてくれる。まあ、子供たちの方は後十年もすれば出迎えることもなくなって色々とやらかしたり黒歴史を作ったりするんだろうが、少なくとも一人立ちするまでは面倒は見るつもりではある。ニートになろうとしたら……まあ、その時のお楽しみだ。その時の本人にとっては嬉しくも楽しくも無いだろうが。

 ちなみに、明言こそされていないもののドラクエには洗脳の方法がそれなりにある。人間を犬に変える方法もあるし、相手の時間を止めて封印する方法もある。便利だし使い道も探そうと思わないでもいくらでも見つかるが、使う気は現状全くない。某大魔王のように若さを抽出して封印し生きながらえることもできると言えばできるが、これも同じくやる気はしない。なにしろそれをやったら才人と一緒に生きて死ぬことができなくなるからな。考えるまでも無い事だ。あと正直めんどい。なにしろ地球では毎日どこかしらで皆既日食は起こっているわけだから、皆既日食を鍵として行われる凍れる時の秘法は相性が良くない。大概の場合ふと気を抜いたら偶然そこで皆既日食が起きて解ける気がする。使えん。

 しかし、ドラクエの呪文は本当に便利だ。ドラクエ世界だと種以外のアイテムの効果はたいてい呪文で再現できるようになっているし、呪文で無理でも特技で代用できるしな。便利便利。

 

 しかし、あの時は早急に自分の意志だけで使える金がそれなりに必要だったから今の仕事に就いたんだが、もう少し考えて力を振るった方がよかったかもしれない。異様に高いステータス任せに凄まじい量の仕事を片付けてきたが、なんで俺一人のために新しい部署ができた挙句に便利屋として使われなきゃならないんだか。そのお陰で部長だし、ある意味究極の叩き上げだからそこそこ頼られたりもするんだが……これでもう少し給料が安かったら本当にこの仕事辞めていたに違いない。辞めてたら……半分テロリストにでもなってたかもしれんな。才人が召喚された時、半ば以上の八つ当たりとこれから先才人や子供たちが召喚される可能性をできるだけ減らすためという名目で、まず間違いなく起きるだろう内乱をスムーズに終わらせるためにトリステインの貴族たちの魔法を封じ、ロマリアと言うあの世界においては非常に強い権力を持つ統治機構を国土ごと消滅させたように。

 自分で言うのもあれだがあれは間違いなくテロだ。正直やりすぎたかもしれないと思ったが、まあ八つ当たりだから仕方ないな。俺と直接の顔見知りでかつ少々以上の関わりがある存在と言えばガリアの王族くらいしかいなかったし、それ以外のあっちの世界の人間は心の底からどうでもよかったから躊躇うことなくやったんだが……ロマリアは滅ぼす必要があったから後悔していないがトリステインの方はもう少し優しくしてやってもよかったかもしれない。具体的には、内乱とか起こさせないようにさっさと滅ぼしておいた方が。

 

 ……駄目か。駄目だな。才人に泣かれる。それに過去に戻る呪文なんて無い以上、今更だ。あるのかもしれないが、少なくとも俺は知らん。一番近い呪文で『昼夜を入れ替える』だが、あれは別に時間移動と言う訳ではないだろうしな。才人の知らない間にやろうにもあっちの世界からちょくちょく来ている奴らがいるしな。聞かれたら詰む。

 

 そんなことより今日の夕飯の方が俺にとっては重要だ。肉か魚かもそうだし、焼くのか煮るのか揚げるのかと言った調理法でも差が出てくる。とか言いつつ才人は俺の舌に合うように料理してくれているから不満に思うようなことがあるわけがない。満足感を得られないはずがない。二重否定は強い肯定。

 苦労はするがちゃんと給料に反映される仕事があって、毎日家に帰ると可愛い嫁と子供たちが帰りを待っていてくれる。まったくなんて幸せな人生だろうな。前世の俺が想像していたかなり暗い未来に比べると文字通りに雲泥の差だ。ありがたいこった。

 少なくとも、この世界は良いように回っている。それが俺の周りだけのことかもしれないとか、今だけかもしれないとかそんなことは考える必要はない。ただそうであるという事実を甘受しながらも多少の事件に対応できる色々な仕込みは終わらせているし、後はできるだけこの世界と人生を楽しむ。それが今俺にできることだ。

 

 


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