騙された気がするゼロの使い魔   作:真暇 日間

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騙されゼロ魔11

 

 はい予想通り騙された!めっちゃ騙された!

 ……いや、正確には騙されてないよ? こっちが話に聞いて勝手に想像してた性格と蘇った後の当人の性格が色々おかしいってだけの話であって、別に騙された訳じゃない。

 それに、さっきからジョゼフが色々と質問してるんだが、答えがどれもこれも正しいものばかりらしい。つまり、俺が復活させたこの蒼い髪の優男は間違いなくシャルロットの父親でジョゼフの弟であるシャルル・オルレアンであると言うわけだ。

 

 ……ただ、その性格は俺が知っている物ともジョゼフが知っている物ともシャルロットが知っている物とも異なっていて、しかも一回死んだせいで変に吹っ切れたのか今までは隠していたらしい見事なはっちゃけっぷりを見せつけてくれた。

 そのはっちゃけっぷりは見ているだけで体力を削って来るレベル。はっきり言って非常にウザい。某死神漫画に出てくる伝説の聖剣(エクスカリバー)並みにウザい。

 あまりに腹立ったので小突くと言うレベルから逸脱させた威力で殴ってみたんだが自分で自分を治癒して即座に復活。なんと言うかもう本当に騙された気がしてならない。なんでこんなやつが優秀だとか言われたのやら……。

 シャルロットもはっちゃけているこのおっさんを見て口から魂らしきものが半分抜けてしまっているし、ジョゼフはジョゼフで大笑いしていて使い物にならない。優秀な奴は大概どこかしらおかしいんだが、こいつらもやっぱりおかしかった。発狂させる前からこれだともう本当に手のつけようがない。やっぱり生き返らせないでおいた方がよかったかもしれない。

 

「……あははははははは……ははははははは…………」

「シャルロットちゃん!シャルロットちゃんしっかり!しっかりして!?」

「……オワタ」

「シャルロットちゃん!?」

 

 あ、シャルロットが本格的に不味いかもしれない。自分の根幹にあったものが粉々になった時の狂信者みたいな顔してる。

 全てを失った狂信者……となると……やることはいくつか考えられる。その中でも可能性が高いのは二つ。

 暴走か、虚脱か。暴走なら自傷か他傷かなので、できれば虚脱の方が嬉しい。色々楽だしな。

 

 ……まあ、そんなことより俺はそろそろ帰りたい。才人もそろそろ子供が産まれそうな時期だし、子供が産まれる前に帰るって手紙も残してきてるから割と本気で急がなくちゃならないんだよな。

 

「……さて、ジョゼフ。代金を払ってもらってもいいか?」

「……ああ、そう言えば自称押し売りだったか。いくらでも払うぞ」

 

 王様からの『いくらでも払う』発言頂きました。本気で行くぞ? マジで。

 

「じゃあとりあえず、指輪貸して。三日以内に返すから」

「わかった。他にはあるか?」

「『始祖の祈祷書』の中身写すから部屋貸してくれ」

「好きなところを使うがいい」

「……まあ、今はそのくらいかな。それじゃあ兄弟……と言うか、家族で仲良くな」

 

 ジョゼフから放られた指輪を受け取り、始祖の祈祷書をぱらぱらめくりながら俺は適当な部屋を見つけて入る。自分にピオリムを二重掛けして時間短縮を行い、そして一番最初に『加速』の呪文を杖を持って唱えながら写す。結果的にピオリム以外にさらに加速を行ったことになったが、ここまで加速すると流石にインクが持たないので仕方なく減速。できるだけ早くしながら写していくと割と早く写し終ることができた。

 その間がどのくらいかはわからないが、長くても数時間程度だろう。紙に書いたインクを魔法で乾かし、『固定化』の魔法は何重にもかけて保存する。これさえあれば日本に帰ってコピー機で印刷できる。文明の利器が恋しいな。

 

「うはwwwwwwはやいwwwwww早杉wwwwww」

「うわ……………うざい……………死ね……………」

「wwwwwヒwwwwwドwwwwwスwwwwwwwwww」

 

 なんか復活したばかりの馬鹿が湧いた。なんでこいつがここにいるんだ? あまりにもウザいからできるだけ近付かれないように逃げたってのに。

 

「……こほん。いやなに、君にお礼を言っておかなければいけないと思ってね」

 

 真面目に話せるんだったら初めから真面目に話してろこのクソボケ駄王弟……などと、思っても絶対に口に出してはいけない。そんなこともわからないクソボケだから今まさにこいつの娘が発狂しそうになっていると言う事にも気付けない馬鹿はもう本当に千切れろ。何をとは言わないが千切れろ。

 

「……で、礼ってのは?」

「シャルロットを救ってもらったからね。ずっと見ていたよ?」

「知ってる。見えてて無視してた」

「うはwwwww手厳しいwwwww修正されてwwwwwwwwww」

「……うぜぇ」

「wwwwwwwwwwwwwww」

 

 殺しても文句言われないような気がするが、だからと言って必要ないのに殺すと言うのもどうかと思う。ただウザいだけで物質的な被害は無いし、腹が立つ以外に影響もない。若干話が進まないと言うのもあるが、それも結局『イライラする』と言う結果に落ち着くしな。

 

「まあそう言うわけで、お礼を言うよ。押し売り殿」

「はいはいどーも。できれば才人の前に居るときには腹立たしい話し方をやめてくれ。ストレスになるからな」

「うはwwwwwwwwwwおkwwwwwwwwww」

「うわ……………………うざ……………………」

「wwwwwテwwwwwラwwwwwヒwwwwwドwwwwwスwwwwwwwwww」

 

 いや酷くない。この事に関しては絶対に酷くない。俺は悪くねぇ!こいつがあまりにウザいのが悪い。

 だがまあ、妊婦である才人にストレスを与えないように才人の前では自重しようとしたのは評価する。そこ以外は評価しない。だから死ねとは言わないがウザいとは言わせてもらう。最大限の譲歩がこれだ。悪く思うなよ。

 

「安心したまえ。私も子持ちだ。自分の子供が可愛いと思う気持ちはよくわかる」

「ジョゼット」

「………………ちょ、ま、なんっ……!?」

「まあ、あれも一つの愛の形。いいんじゃないか? 結局そんな形の愛情を受けて育ったあの子がどうなってるかは知らないし、興味もないが」

 

 シャルルはその場に崩れ落ちた。ぶつぶつとだれかさんに謝り続けているような声が聞こえなくもないが、俺は知らない。これで少し静かになったと言うことくらいしかわからない。だから慰めたりもしないし声をかけたりもしない。面倒だしな。

 

 さて、それじゃあそろそろ地球に帰るとしよう。確かこの世界には地球から兵器やら人やらを呼び寄せる魔法があったはずだからそれを破壊して、それから二度と虚無魔法が呪文として唱えられないように秘宝を破壊しておこう。

 まずは手元にある『始祖の祈祷書』。アクティブな道具類にはマジャスティスもギガジャスティスも効果がないから、覚えたばかりの『ディスペル』でかけられていた魔法を全部解呪してから燃やす。香炉とオルゴール、ロマリアの大鏡のは……世界丸ごと包む勢いのディスペル……だと、他にも被害が出るな。

 仕方がないので『扉』で空間を繋げて三つの秘宝の近くに出て『ディスペル』をかけて使えなくしておく。これで新たに虚無の呪文を知る方法は俺の写した始祖の祈祷書を読むしかなくなったわけだ。

 で、後はこの世界にかけられている武器を呼び出す魔法。これはギガジャスティスで一発。固定化とか硬化とかがかけられた道具は効果を失うけど、誘拐&強盗みたいな真似をしてたんだから知ったことじゃない。地球の被害から見れば優しいもんだろ。知らんけど。

 

 そうそう、ディスペルとマジャスティス、ギガジャスティスの相違点だが、マジャスティス、ギガジャスティスは『今現在効果を発揮し続けている魔法を全て打ち消す』と言う効果がある。

 例えば『発火』で新しく火を点けようとしていたら消えてしまうが、一度『発火』でつけられた火は物理現象になっているため消えない。『錬金』で作られた道具は『錬金』の効果は完了して物質として安定しているので形が変わるようなことはなく、魔法が込められているアイテム類は発動した効果は消えるもののもう一度発動し直せば普通に使える。

 ただし、効果を発揮し続けている『固定化』や『硬化』、あるいは『フライ』などは効果を失ってしまう。らしい。

 このあたりの仕様はゲームから見ても当たり前のことだな。ギガジャスティスで道具とかの魔法効果が根っこから消えるなら、装備品や道具の効果の殆どがなくなるだろうし。実際には無くなっていないことからも効果としてアイテム自体には効果を及ぼさないってのは少し考えればわかることだよな。

 

 代わって『ディスペル』だが、これはもう問答無用。効果が発揮されていようがいなかろうが関係なしに根っこから消し飛ばす。

 さっき言ったように『固定化』なんかは当たり前として、マジックアイテムに込められている魔法なども消し去ってしまう。もう一度使おうとして使えるかどうかが一番大きな差になるだろう。

 

 ……シャルロットの母親の薬にも効果があったかもしれないな。その時はそもそも『ディスペル』の呪文を知らなかったから言っても仕方の無いことなんだが。

 

 それじゃあ一応事後処理も終わらせたし、後は面倒なロマリアをどうにかしなくちゃならん。面倒臭いことこの上ないが、あれが残っていると信仰心とやらでまたこっちに迷惑をかけてこないとも限らない。可能性があるなら今のうちに潰しておくべきだろう。後々になって事件が起きて、『あの時ああしとけばよかった』なんて言ったとことで過去は変わらない。思いついたが吉日ともいうし、さっさと無力化しておかなくちゃな。

 

 信仰心があるから向かってくる。信仰心があるから色々と画策する。基本的に信仰心……狂信が行動の根幹に存在しているわけか。

 一番簡単なことは、その狂信を消し去ることだ。ちょうど俺はそうする方法を持っているし、使わない理由も『それ以外の奴の記憶まで消すのはどうかと思う』ってだけ。実際にやろうとすればできない事ではない。

 ただ、俺は人間を殺すことはしても、精神や記憶の方までいじりたいとは思わない。できればこの方法は最終手段二歩手前にしておきたい。

 ちなみに最終手段一歩手前は『メダパニーマ』で世界を覆う。『忘却』させるよりこっちの方が色々酷いから最終手段一歩手前だ。そして最終手段は当然『ザラキーマ』。人間も亜人もエルフも動物も魔獣も精霊もみんな纏めて皆殺し。まさに最終手段だろ?

 

 さて、どうすっかなぁ……。

 

 


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