遊戯王ARC-Ⅴ 混沌統べる覇者 -舞網チャンピオンシップ・バトルロワイヤル編-   作:咲夜泪

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「何!? 手札調整は各プレイヤーのエンドフェイズに全員行うんじゃないのか!?」

 自分のエンドフェイズだけでした。修正。

「何!? 《邪神アバター》の魔法・罠を発動出来ない効果は墓地にも効果を発揮するんじゃないのか!?」

 しないです。死人に口あり。修正しました。


06/絆と記憶と邪神

「――オレの、タァァァァンッ!」

 

 黒咲隼

 LP8000

 手札7→8

  無し

 魔法・罠カード

  無し

 

 予期せぬ乱入者によって1ターンで焼け野原となってがら空きになった自身のフィールドと、自身の故郷である『エクシーズ次元』を重ねる。

 例え最後の一兵になっても、理不尽な圧制者などに屈さず、必ずや反逆を果たす。いつもと何も変わらない、彼の戦場での日常である。

 

「オレは手札から魔法カード『ユニコーンの導き』を発動ッ! 手札を1枚ゲームから除外し、ゲームから除外されているレベル5以下の獣族または鳥獣族モンスター1体を選択して特殊召喚する! フィールドに舞い戻れ《RR-ミミクリー・レイニアス》!」

 

 前のターン、自身の効果で除外された《RR-ミミクリー・レイニアス》が猛々しい雄叫びと共にフィールドに舞い戻り――。

 

『――ああ、確かそのカードの効果は必ず『攻撃表示』で特殊召喚するというものだったね。ならば『神』の洗礼を受けて貰おう。――召雷弾!』

 

 モンスターの召喚に反応した《オシリスの天空竜》が自動的に電撃の弾をその凶悪な顎から射出し、《RR-ミミクリー・レイニアス》は成す術も無く破壊された。

 

「何ィ!? 一体何が……!」

『――《オシリスの天空竜》の効果、相手モンスターが『攻撃表示』で召喚・特殊召喚に成功した場合、そのモンスターの攻撃力を2000ダウンさせ、0になった場合、そのモンスターを破壊する』

「何だとォ!?」

 

 そんな馬鹿げた効果があるかと言わんばかりに黒咲隼の顔が歪む。

 エクシーズ召喚は同じ星を束ねて強大な力に至るもの、素材となる下級モンスターの攻撃力は悉く2000以下、展開すら許さない《オシリスの天空竜》は矮小な力では絶対に抗えない『神』として立ち塞がっている。

 

 こんなのを相手に一体どうすれば――否、まだ打つ手はある。

 

「……っ、《RR-ミミクリー・レイニアス》の効果発動、このカードが墓地に送られたターン、墓地のこのカードを除外して『RR』カード1枚をサーチする。オレは『RRーネスト』を手札に加える」

 

 無条件で駆逐されたディスアドを半分だけ取り戻し、反撃の狼煙をあげる。

 

「オレは手札から魔法カード『死者蘇生』を発動! 墓地の《RRーバニシング・レイニアス》を守備表示で特殊召喚する!」

『――正解! ……本来ならば守備表示のモンスターにも叩き込めたのになぁ』

 

 そう、《オシリスの天空竜》の自動迎撃は攻撃表示で召喚・特殊召喚されたモンスターに限られる。

 守備表示ならば、この絶対的な支配能力を掻い潜る事が出来るのだ……!

 

「《RRーバニシング・レイニアス》の効果発動、召喚・特殊召喚に成功したターン、手札のレベル4以下の『RR』モンスター1体を特殊召喚する。もう1枚の《RRーバニシング・レイニアス》を守備表示で特殊召喚する!」

 

 最初の1体が羽撃けば次なる矢も走る。

 

「手札から永続魔法『RRーネスト』発動! 自分フィールドに『RR』モンスターが2体以上存在する場合、自分のデッキ・墓地の『RR』モンスター1体を選んで手札に加える。オレは墓地の《RRーバニシング・レイニアス》を選択する!」

 

 黒咲隼

 LP8000

 手札8→6→7→6→5→4→5

 《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1300/守1600

 《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1300/守1600

 魔法・罠カード

  永続魔法『RRーネスト』

 

「2体目の《RRーバニシング・レイニアス》の効果で3体目の《RRーバニシング・レイニアス》を守備表示で特殊召喚! 自分のフィールドに《RRーファジー・レイニアス》以外の『RR』モンスターが存在する場合、《RRーファジー・レイニアス》を特殊召喚する!」

 

 黒咲隼

 LP8000

 手札5→4→3

 《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1300/守1600

 《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1300/守1600

 《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1300/守1600

 《RR-ファジー・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻 500/守1500

 魔法・罠カード

  永続魔法『RRーネスト』

 

「レベル4の《RRーファジー・レイニアス》と《RRーバニシング・レイニアス》でオーバーレイ! エクシーズ召喚! 現れろランク4《RR-フォース・ストリクス》!」

 

 そして黒咲隼はエクストラデッキに眠る最後の《RR-フォース・ストリクス》を召喚する。

 三体のエクシーズからなる彼の切り札《RR-ライズ・ファルコン》をエクシーズ召喚しないのはそれでは次の自分のターンが回るまでに持たないと判断したが故である。

 

「《RR-フォース・ストリクス》の効果発動、オーバーレイユニットを一つ使い、1ターンに1度、デッキから鳥獣族・闇属性・レベル4のモンスター1体を手札に加える! オレは《RR-トリビュート・レイニアス》を選択する」

 

 サーチ効果で更なる援軍を呼び込むが、守備表示で出さなければ《オシリスの天空竜》の召雷弾で消し炭になる以上、1ターン耐える必要がある。

 ならば、相手のターンで『RUM』でランクアップし、自身の次のターンに希望を託すしかない。

 

「オーバーレイユニットとして墓地に落ちた《RR-ファジー・レイニアス》の効果発動、このカードが墓地に送られた場合、デッキから《RR-ファジー・レイニアス》1体手札に加える。――《RR-ファジー・レイニアス》のこの二つの効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用出来ない」

 

 黒咲隼

 LP8000

 手札3→4→5

 《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1300/守1600

 《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1300/守1600

 《RR-フォース・ストリクス》ランク4/闇属性/鳥獣族/攻100→1100/守2000→3000 ORU2→1

 魔法・罠カード

  永続魔法『RRーネスト』

 

「3体目の《RRーバニシング・レイニアス》の効果で《RR-トリビュート・レイニアス》を守備表示で特殊召喚する。このモンスターが召喚・特殊召喚に成功したターン、デッキから『RR』カード1枚を墓地に送る。オレは『RRーレディネス』を選択する」

 

 これで黒咲隼の墓地に『RRーレディネス』が二枚。そして3枚目は――。

 

「オレはカードを3枚セットしてターンエンド!」

 

 黒咲隼

 LP4000

 手札5→4→1

 《RR-フォース・ストリクス》ランク4/闇属性/鳥獣族/攻100→1600/守2000→3500 ORU1

 《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1300/守1600

 《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1300/守1600

 《RR-トリビュート・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1800/守400

 魔法・罠カード

  永続魔法『RR-ネスト』

  伏せカード3枚

 

 伏せたカードは3枚目の通常罠『RRーレディネス』、速攻魔法『RUM-ラプターズ・フォース』、速攻魔法『RUM-レヴォリューション・フォース』であり、相手のターンで《RR-フォース・ストリクス》をランクアップエクシーズチェンジさせ、自身のターンでの反逆準備を整える……!

 

「――僕のターンッ!」

 

 紫雲院素良

 LP8000

 手札10→11

  無し

 魔法・罠カード

  無し

 

「僕は永続魔法『トイポット』を発動! 1ターンに1度、手札を1枚捨てて効果発動、デッキから1枚ドローし、そのカードが『ファーニマル』モンスターだった場合、手札からモンスター1体を特殊召喚出来る! 違った場合、そのドローカードを墓地に捨てる。――ドロー!」

 

 引いたカードは当然『ファーニマル』モンスターの《ファーニマル・マウス》。

 天運か、それとも決闘者としての必然か、素良が『トイポット』で外した事は一度も無かった。

 

「僕が引いたのは《ファーニマル・マウス》、よって僕は《ファーニマル・マウス》を守備表示で特殊召喚する! 更に『トイポット』を発動時に手札から捨てた《エッジインプ・チェーン》の効果発動! このカードが手札・フィールドから墓地に送られた場合、デッキから『デストーイ』カードを一枚手札に加える。僕はデッキから『魔玩具融合』を選択する!」

 

 融合と名のついたカードを見て、黒咲隼は鬼の形相で睨み――専用の融合魔法に、『混沌』の警戒心が上がる。

 

 紫雲院素良

 LP8000

 手札11→9→10→9→10

 《ファーニマル・マウス》星1/地属性/天使族/攻100/守100

 魔法・罠カード

  永続魔法『トイポット』

 

「《ファーニマル・マウス》の効果発動! このカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけデッキから《ファーニマル・マウス》を2体まで特殊召喚する!」

 

 出てきた可愛らしい緑色のハムスターは目を光らせると、1体から3体となる。

 

 

 紫雲院素良

 LP8000

 手札10

 《ファーニマル・マウス》星1/地属性/天使族/攻100/守100

 《ファーニマル・マウス》星1/地属性/天使族/攻100/守100

 《ファーニマル・マウス》星1/地属性/天使族/攻100/守100

 魔法・罠カード

  永続魔法『トイポット』

 

 レベル1のモンスターが三体、来るぞ遊馬!

 と思ったが、テキストを見ればこの効果を発動させるターン、『デストーイ』モンスターしかエクストラデッキから特殊召喚出来ないと書かれており、『混沌』は残念に思う。

 

「自分フィールドに《ファーニマル・シープ》以外の『ファーニマル』モンスターが存在する場合、《ファーニマル・シープ》を特殊召喚出来る! 効果発動、このカード以外の自分フィールドの『ファーニマル』モンスター1体を手札に戻し、自分の手札・墓地から『エッジインプ』モンスター1体を特殊召喚する! 墓地の《エッジインプ・チェーン》を特殊召喚!」

 

 

 紫雲院素良

 LP8000

 手札10→9→10

 《ファーニマル・マウス》星1/地属性/天使族/攻100/守100

 《ファーニマル・マウス》星1/地属性/天使族/攻100/守100

 《ファーニマル・シープ》星2/地属性/天使族/攻400/守800

 《エッジインプ・チェーン》星4/闇属性/悪魔族/攻1200/守1800

 魔法・罠カード

  永続魔法『トイポット』

 

 羊が現れたかと思ったら、刃物に塗れた不穏な悪魔族の下級モンスターに早変わり――。

 

「そして僕は《ファーニマル・オウル》を攻撃表示で通常召喚する」

『《オシリスの天空竜》の召雷弾で消えて貰おう』

「でも召喚には成功してるんだよね? このカードが手札からの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから『融合』1枚を手札に加える!」

 

 一瞬にしてあざとい梟は弾けて、だが、主人の手に必須魔法を残す。

 これが《オシリスの天空竜》の抜け道の一つ、召喚時に発動する効果を防ぐ効果は無いのだ――。

 

「――僕は魔法カード『融合』発動! フィールドの《ファーニマル・マウス》2体、《ファーニマル・シープ》、手札の《ファーニマル・マウス》、《エッジインプ・シザー》の5体で融合召喚!」

 

 一気に手札とフィールドの素材をつぎ込み――『混沌』の脳裏に万に近い攻撃力をぽんぽん出し、オーバーキルする事に生命を賭ける『サイバー流』を思い起こさせる。

 

「――悪魔の爪よ! 鋭い牙よ! 神秘の渦で1つとなりて、新たな力と姿を見せよ! 融合召喚! 現れ出ちゃえ! 全てを引き裂く密林の魔獣! 《デストーイ・シザー・タイガー》!」

 

 5体の融合素材で現れた融合モンスターは、胴体から凶器じみた大鋏が露出し、ぬいぐるみなのに凶悪な殺意を身に秘めた虎型の悪魔だった。

 

「《デストーイ・シザー・タイガー》の効果発動ォ! このカードが融合召喚に成功した時、このカードの融合素材としたモンスターの数までフィールドのカードを破壊出来る! 僕は――」

『それは通さない。《シューティング・クェーサー・ドラゴン》の効果発動! 1ターンに1度、魔法・罠・効果モンスターの効果の発動を無効にし、破壊する!』

「何ィッ!?」

 

 融合召喚に成功しただけで莫大なアドとなる格好の1ターンキル要因へ恒星龍の威光が放たれ、無情に爆散する。

 

 ――悪魔族の融合モンスターなら、融合魔法の一種で特殊召喚したそのターン、カードの効果の対象にならない耐性付与する『ダーク・フュージョン』を使えば良かったのに、と個人的に思ったのだった。

 

「――っ、何かあるとは思っていたけど、本当に厄介な効果だね! でも、まだだァッ! お楽しみは、これからだぁッ! 魔法カード『魔玩具融合』発動ッ! 自分のフィールド・墓地から『デストーイ』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する!」

『墓地から融合召喚だと!?』

 

 お決まりだから叫んだが、これはまずい。『神縛りの塚』がある以上、《シューティング・クェーサー・ドラゴン》と《オシリスの天空竜》は効果の対象にならず、効果での破壊もされないが――。

 

「僕は墓地の《エッジインプ・シザー》《ファーニマル・マウス》3体《ファーニマル・オウル》《ファーニマル・キャット》《ファーニマル・ドッグ》を除外し、七体で融合召喚! 現れ出ちゃえ! 全てを引き裂く密林の魔獣! 《デストーイ・シザー・タイガー》!」

 

 紫雲院素良

 LP8000

 手札10→9→10→7→6

 《エッジインプ・チェーン》星4/闇属性/悪魔族/攻1200/守1800

 《デストーイ・シザー・タイガー》星6/闇属性/悪魔族/攻1900→2200/守1200

 魔法・罠カード

  永続魔法『トイポット』

 

「《デストーイ・シザー・タイガー》の効果はさっき説明したから良いよね? 君の場の『神縛りの塚』と伏せカード、黒咲の場の伏せカード3枚と『RRーネスト』と《RR-フォース・ストリクス》を破壊する!」

 

 この前のデュエルでは出して来なかった凶悪極まる融合モンスターに、黒咲隼は歯軋りを立てる。

 同時にエクシーズモンスターも『RUM』も破壊される以上、防ぐ手段の無い黒咲隼は成す術無く蹂躙されるのを待つばかりであり――これが通ったら死を覚悟しなければならない、と間近に迫る自身の敗北に狂気喝采した『混沌』は自身の伏せカードをオープンする。

 

 

『チェーンして罠カード『第六感』を発動する! 1~6までの数字の内、二つ宣言し、宣言した数字が出た場合、その枚数分ドローし、外れた場合は出た目の枚数デッキの上から墓地に送る! 私は5・6を宣言する――さぁ、少年。運命のダイスロールだ……!』

 

 

 いつもは外れても当たっても良い時にしか発動しないが、切羽詰まった状況でどのような結果を齎すか。

 3分の1でドロー出来るが、逆に言えば3分の2外れる――。

 

「はっ、苦し紛れのギャンブルカードね――この一振りで地獄に逝っちゃいなァ!」

 

 それはもう伝統と実績の素敵な顔芸を披露して紫雲院素良は意気揚々と運命の一投を投げて――その賽の目は嫌になるほど長く長く回り、永遠に等しい一瞬の後、ぴたりと止まる。

 

 

『――出た目は6、よって私は6枚ドローする!』

 

 

 この土壇場で最大の目を引き当てた『混沌』は全身全霊をもって六枚ドローする。

 そしてチェーンが終わり、戦慄の獣によってフィールドのほぼあらゆるカードが引き裂かれ、無慈悲に破壊される。

 

『破壊された『神縛りの塚』の効果発動、デッキから神属性モンスター1体を手札に加える――私は《オベリスクの巨神兵》を選択する』

「オベリスク……?」

『これによって私の手札は10枚、《オシリスの天空竜》の攻撃力は10000となる!』

 

 手札増強から一気に攻撃力が跳ね上がり、《オシリスの天空竜》から放たれる威圧感は天井知らずなまでに強くなり、素良も一瞬だけ驚愕の顔を浮かべ、すぐさま嘲笑する。

 

「――はっ、でもこれで効果の対象となり、破壊も出来るんでしょ? 見掛け倒しの『神』だね!」

 

 最早、攻撃力10000という数字は素良のデッキでは戦闘破壊不可能の数値だが、何の耐性も無いウドの大木など敵ではない……!

 

「僕は永続魔法『デストーイ・ファクトリー』を発動! 1ターンに1度、自分の墓地から『融合』魔法カードまたは『フュージョン』魔法カード1枚を除外し、効果発動ォ! 自分の手札・フィールドから『デストーイ』融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地に送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する!」

 

 初めに使った『融合』が除外され、悪魔宿りしぬいぐるみを生産する工場は唸りを上げる。

 

「僕は手札の『エッジインプ・ホイールソウ』と『ファーニマル・ライオ』を融合! 悪魔宿りし鉄の歯よ。牙剥く野獣と一つとなりて新たな力と姿を見せよ。融合召喚! 現れ出ちゃえ! 全てを切り裂く百獣の王! 《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》!」

 

 紫雲院素良

 LP8000

 手札6→5→3

 《エッジインプ・チェーン》星4/闇属性/悪魔族/攻1200/守1800

 《デストーイ・シザー・タイガー》星6/闇属性/悪魔族/攻1900→2500/守1200

 《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》星7/闇属性/悪魔族/攻2400→3000/守2000

 魔法・罠カード

  永続魔法『トイポット』

 

 球体のチェーンソーがライオンの鬣のように顔に取り付けられ、凶悪な形相で悪魔宿りし獅子の人形は獰猛に吼える。

 

「――さて、邪魔者にはそろそろ退場して貰うかな? 《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》の効果発動! 相手フィールドの表側表示モンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

 その見た目から『ファンサービス』が趣味の決闘者のモンスターを強く連想させていたが、その効果も似たようなものだと『混沌』は驚愕する。

 

「――その《オシリスの天空竜》の攻撃力は今は10000だけど、元々の攻撃力は0なんでしょ? 3分の1を当てたのにはびっくりしたけど意味無かったね」

 

 酷く顔を歪ませながら、素良は油断も慢心も無く指摘し、『混沌』は無言を貫く。此処に、唯一の活路は消え去り――。

 

「じゃあ僕は《シューティング・クェーサー・ドラゴン》を選択! 消し飛んじゃえ!」

 

 鬣代わりの円形チェーンソーが勢い良く射出し、追尾型となって駆け抜ける。

 気円斬×nみたいだなぁと場違いな感想を『混沌』は抱き――・

 

『――こんな耐性の無くなった『神』の攻撃力を上げる為に使った訳ではないぞ? 心臓に悪かったが……いや、こんな体になって今もちゃんとあるのか解らないが――『第六感』は私に起死回生のカードを呼び込んだ……!』

 

 その一枚を愛しげに指先で摘み、くるりと回して開示する。

 

 

『――《エフェクト・ヴェーラー》! 相手メインフェイズにこのカードを手札から墓地に送る事で、相手モンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする!』

 

 デッキに一枚しか入ってないのに来てくれたこのカードを誇らしげに発動させる。

 

「なっ、それは『貪欲な壺』で戻したチューナーモンスター……!? あの6枚で引いたって事……!?」

 

 鏖殺せんと純白の恒星龍を追跡していた円型のチェーンソーが力を無くし、自動的に人形の獅子の下に戻る。

 絶好の機会に仕留め損なった事を歯軋り鳴らしながら悔しく想い――まだ次のターンがあると素良は自分に言い聞かせて冷静に戻る。

 

 ――あの《オシリスの天空竜》のせいで特殊召喚したモンスター全て守備表示だが、それが幸いしてライフが削り取られる事はない。

 

 例え次のターンで出したモンスターが全滅してもまだ立ち直れる。

 いや、今度こそ三度目の出現となるであろう素良の本気時のエース《デストーイ・シザー・タイガー》で駆逐出来るだろう。……後出しならば、黒咲のエクシーズモンスターも敵ではない。

 

「カードを伏せて、ターンエンド……」

 

 紫雲院素良

 LP8000

 手札3→2

 《エッジインプ・チェーン》星4/闇属性/悪魔族/攻1200/守1800

 《デストーイ・シザー・タイガー》星6/闇属性/悪魔族/攻2500/守1200

 《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》星7/闇属性/悪魔族/攻3000/守2000

 魔法・罠カード

  永続魔法『トイポット』

  伏せカード1枚

 

『私のターン、ドロー』

 

 ???

 LP1200

 手札3→9→10→9→10

 《シューティング・クェーサー・ドラゴン》星12/光属性/ドラゴン族/攻4000/守4000

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻?→10000/守?→10000

 魔法・罠カード

  永続魔法『生還の宝札』

 

『永続魔法『魔力倹約術』発動、魔法カードを発動する為に払うライフポイントが必要無くなる。更に魔法カード『次元融合』発動、2000ポイントのライフ支払いを踏み倒し、全てのプレイヤーは除外されたモンスターをそれぞれのフィールド上に可能な限り特殊召喚する』

 

 ゲームから除外、という一切の関与を許さない虚無空間が穴空き、屠られたモンスター達を帰還させる。

 

『私は《混沌の黒魔術師》と《A・O・J カタストル》と《TG ハイパーライブラリアン》を特殊召喚する』

 

 ???

 LP1200

 手札10→9→8

 《シューティング・クェーサー・ドラゴン》星12/光属性/ドラゴン族/攻4000/守4000

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻10000→8000/守10000→8000

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 《A・O・J カタストル》星5/闇属性/機械族/攻2200/守1200

 《TG ハイパーライブラリアン》星5/闇属性/魔法使い族/攻2400/守1800

 魔法・罠カード

  永続魔法『生還の宝札』

 

「オレは《RRーミミクリー・レイニアス》2体を守備表示で特殊召喚する」

 

 黒咲隼

 LP8000

 手札1

 《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1300/守1600

 《RR-トリビュート・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1800/守400

 《RRーミミクリー・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1100/守1900

 《RRーミミクリー・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1100/守1900

 魔法・罠カード

  無し

 

「僕は《エッジインプ・シザー》と《ファーニマル・オウル》を守備表示で特殊召喚する!」

 

 紫雲院素良

 LP8000

 手札2

 《エッジインプ・チェーン》星4/闇属性/悪魔族/攻1200/守1800

 《デストーイ・シザー・タイガー》星6/闇属性/悪魔族/攻2500→2800/守1200

 《デストーイ・ホイールソウ・ライオ》星7/闇属性/悪魔族/攻3000→3300/守2000

 《エッジインプ・シザー》星3/闇属性/悪魔族/攻1200/守800

 《ファーニマル・オウル》星2/地属性/天使族/攻1000/守1000

 魔法・罠カード

  永続魔法『トイポット』

  伏せカード1枚

 

『《混沌の黒魔術師》が召喚・特殊召喚に成功した時、墓地から魔法カード1枚を手札に加える。私が加えるのは魔法カード『死者蘇生』だ』

 

 行き掛けの駄賃たる『死者蘇生』を回収し――このデュエルに幕を引くに相応しいモンスターを手にする。

 『混沌』がそのカードを手にした途端、形容し難い邪気がそのカードから溢れ出た。

 

 

『《混沌の黒魔術師》と《A・O・J カタストル》と《TG ハイパーライブラリアン》を生贄に――『神』を超えし『神』の力を活目せよ! 《邪神アバター》!』

 

 

 そして光を飲み込んで現出した深淵の闇は、何物にも勝り何物でもない至高の『邪神』は真円の球体となって顕現する。

 見ただけで吐き気を催すような抗いようのない原始的な恐怖を、黒咲隼と紫雲院素良は確かに感じたのだった。

 

『――このカードは特殊召喚出来ない。自分フィールドのモンスター3体を生贄にした場合のみ通常召喚出来る。このカードが――』

「また攻撃力不明……? 今度は何を参照する訳?」

『……このカードの攻撃力・守備力は《邪神アバター》以外のフィールドの攻撃力が一番高いモンスターの攻撃力+100の数値になる。――フィールドで最も攻撃力の高いモンスターは攻撃力8000の《オシリスの天空竜》、よって《邪神アバター》の攻撃力は8100となる』

 

 ――深淵の球体が形を変えて《オシリスの天空竜》を模す。

 オリジナルを凌駕するレプリカが、今、此処に現実を侵しながら顕現する。

 

「なん、だと……!?」

『なおこの効果は常にフィールドにおける最強の攻撃力を上回り続ける――如何に攻撃力を上げようが、この『神』の前では等しく無力だ――』

 

 余りにも異質な存在で、理解の及ばぬ邪悪に二人の決闘者が嘗て無い戦慄を覚えている中――もう効果処理の受付打ち切って良いか、とこのデュエルを終わらせる無慈悲な魔法カードを発動させる。

 

 

『――魔法カード『サンダー・ボルト』発動。相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する』

 

 

 長らく禁止カードに封じられていたこの最強最悪の全体駆除――当然ながら『混沌』のデッキに一枚投入されている。

 

「なっ!? 何そのインチキ効果!?」

「墓地から罠カード『RRーレディネス』を除外! このターン、自分が受ける全てのダメージは0となる!」

『……あー、そっか。『スキル・サクセサー』と同じ裁定なのか。……死者に口あり、一個目の『RRーレディネス』の効果は《シューティング・クェーサー・ドラゴン》の効果で無効にする』

 

 説明し忘れた《邪神アバター》の効果をすり抜けて発動してしまった『RRーレディネス』の効果に、厄介極まるなぁと『混沌』は溜息を吐いた。

 

「二個目の『RRーレディネス』を除外し、効果発動ッ!」

 

 ……《シューティング・クェーサー・ドラゴン》が三体並んでいれば全部の効果を無効化出来るのだが、エクストラデッキにエクシーズを数多く採用している為、『混沌』のエクストラデッキは全部1枚積みである。

 

『……ちぇっ、二人同時に1ターンキルしようと思ったが、このターンで君のライフを0にするのは不可能のようだ。――バトル』

「待った! 罠カード……って、何で動かないっ!?」

 

 通常召喚を《邪神アバター》で使ってしまった為、このターンで『三幻神』を全て召喚して特殊勝利する道程も無く、泣く泣く一斉に1ターンキルするのを『混沌』が諦める中、罠カードで耐え抜こうとしていた紫雲院素良が困惑する。

 

『……少年が説明を遮ったお陰で効果説明するタイミングを逃したが――《邪神アバター》が召喚に成功した場合、相手ターンで数えて2ターンの間、相手は魔法・罠カードを発動出来ない』

 

 《オシリスの天空竜》の代わりに、最初に《邪神アバター》が来ていれば安心だったが――手札を一枚消費して《オシリスの天空竜》の攻撃力は7000となり、《邪神アバター》の攻撃力もまた7100となる。

 

 ???

 LP1200

 手札8→9→8→7

 《シューティング・クェーサー・ドラゴン》星12/光属性/ドラゴン族/攻4000/守4000

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻8000→7000/守8000→7000

 《邪神アバター》星10/闇属性/悪魔族/攻?→7100/守?→7100

 魔法・罠カード

  永続魔法『生還の宝札』

 

『――《シューティング・クェーサー・ドラゴン》はシンクロ素材としたチューナー以外のモンスターの数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃する事が出来る。チューナー以外のシンクロ素材は2体、よって二回攻撃出来る。――合計ダメージは22100だ、《シューティング・クェーサー・ドラゴン》《オシリスの天空竜》《邪神アバター》でダイレクトアタック! 天地創造撃 ザ・クリエーションバースト! 超電導波(サンダー・フォース)!』

 

 紫雲院素良LP8000→4000→0→-7000→-14100

 

 恒星の如き白光と神の雷と深淵の闇が一斉に素良に炸裂し、悲鳴は圧倒的轟音に掻き消えたのだった。

 

『魔法カード『押収』発動、1000ポイントライフを踏み倒し、効果発動。手札最後の一枚を捨てるんだ』

 

 黒咲隼の最後の手札は墓地に消えていき――。

 

『カードを一枚セットしてターンエンド。――手札0枚、魔法・罠カードも発動出来ない。モンスターも攻撃表示で召喚できない。次の『RRーレディネス』は《シューティング・クェーサー・ドラゴン》の効果で無効にされる。――ライフはまだ8000あるが、追い込める処まで追い込んだ崖っぷちだね。さぁラストターンだ、逆転のカードを引き当てて見せろ!』

 

 『混沌』が最後に伏せたカードは、ダメ押しの『神秘の中華なべ』である――。

 

 

 

 


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