遊戯王ARC-Ⅴ 混沌統べる覇者 -舞網チャンピオンシップ・バトルロワイヤル編- 作:咲夜泪
「……召喚反応の検知機能を切っておいて正解だったな。あんな馬鹿げた召喚反応を検知してしまった日には全システムが焼き切れて停止する処だ」
未曾有の規模であろう超弩級の召喚反応の観測には興味あるが、対価が見合わないと冷酷に切り捨てる。
『LDS』の社長、赤馬零児の咄嗟の機転によりシステムの全壊を免れたが、一部機能が停止し、オペレーションルームは阿鼻叫喚の装いで復旧に全力を注いでいた。
その一部機能の中には市内全域の監視機能も含まれており、セレナ達の居場所も現在見失ってしまっている。
幸いな事に『混沌』の居場所は掴めており、自分達と同じく彼女達を捕捉していない事は確認出来ている。
「……しかし、あれは一体何者なんでしょうか? 今の処、融合召喚とペンデュラム召喚だけは使っていませんが、いずれも各次元の決闘者を遥かに凌駕する数値です」
「此処までやってくれたんだ。ペンデュラム召喚はともかく、融合召喚は出来ると考えた方が良いだろう」
まだあのデッキはその持てる真価を全部発揮していない。赤馬零児の決闘者としての直感がそう告げている。
「――12次元、と言っていたな。我々が感知した次元は『融合次元』『エクシーズ次元』『シンクロ次元』だけだったが、まだまだ他にもあるという事か」
『スタンダード次元』と合わせて4つしか観測出来てないのに、少なくともまだ8つ以上あるとは壮大な話であり――それが示す事実は恐らく一つ。
「……あるのか? 全ての召喚法が伝わり、我々の『スタンダード次元』より先に進んだ次元が――?」
あの『混沌』が発生した次元に興味を馳せながらも、赤馬零児はモニターに目を向ける。
メインモニターに映し出されたのは遺跡エリアであり、二組のデュエルが執り行われていた。
一つはペンデュラム召喚の創始者である榊遊矢と『融合次元』の刺客、『オベリスクフォース』――そういえば『混沌』が召喚した最後の『三幻神』の名が《オベリスクの巨神兵》だったが、何か関連性があるのだろうか――の最後の三名とのデュエル。
そしてもう一つは――。
「――だが、これであの『異分子(イレギュラー)』の力の全てが開帳される筈だ。『融合次元』と『エクシーズ次元』の決闘者である彼等とならばな――」
一方、その頃。
本物の『エクシーズの残党』である黒咲隼は宿敵の『アカデミア』の少年・紫雲院素良との再戦を演じていた。
「――オレのターン! 《RR-バニシング・レイニアス》を召喚。このカードが召喚・特殊召喚に成功したターン、手札からレベル4以下の『RR』モンスター1体を特殊召喚出来る。オレは更に《RR-バニシング・レイニアス》を特殊召喚する」
黒咲隼
LP4000
手札5→4→3
《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1300/守1600
《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1300/守1600
魔法・罠カード
無し
立ち上がりは同名モンスターの複数展開であり、相手がどんなに取るに足らぬ敵でも容赦はしないと、黒咲隼は微塵の油断無く挑む。
「永続魔法『RR-ネスト』を発動、このカードは1ターンに1度、自分フィールドに『RR』モンスターが2体以上存在する場合、自分のデッキ・墓地の『RR』モンスター1体を選んで手札に加える――オレは《RR-トリビュート・レイニアス》を手札に加え、2体目の《RR-バニシング・レイニアス》の効果で《RR-トリビュート・レイニアス》を特殊召喚する」
流れる動作で後続の『RR』モンスターを呼び出し、更に続ける。
「《RR-トリビュート・レイニアス》は召喚・特殊召喚に成功したターン、デッキから『RR』カード一枚を墓地に送る事が出来る。オレはデッキから《RR-ミミクリー・レイニアス》を墓地に送る」
黒咲隼
LP4000
手札3→2→3→2
《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1300/守1600
《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1300/守1600
《RR-トリビュート・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1800/守400
魔法・罠カード
永続魔法『RRーネスト』
「墓地に送った《RR-ミミクリー・レイニアス》の効果発動、墓地のこのカードを除外する事でデッキからこのカード以外の『RR』カードを一枚手札に加える。オレが加えるのは《RR-ファジー・レイニアス》」
以前の素良とのデュエルでは《RRーバニシング・レイニアス》しか展開して来なかったが、今回は続々と新たな種類の『RR』を繰り出していく。
「自分フィールドに《RR-ファジー・レイニアス》以外の『RR』が存在する場合、このカードを手札から特殊召喚する。このカードの効果を発動するターン、オレは『RR』モンスターしか特殊召喚出来ない」
「『RR』モンスターオンリーならあってないようなデメリットじゃん……!」
黒咲隼
LP4000
手札2→3→2
《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1100/守1900
《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1100/守1900
《RR-トリビュート・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1800/守400
《RR-ファジー・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻 500/守1500
魔法・罠カード
永続魔法『RR-ネスト』
「レベル4の《RR-バニシング・レイニアス》と《RR-ファジー・レイニアス》でオーバーレイ! 冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実を暴き、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ! エクシーズ召喚! 飛来せよ、ランク4《RR-フォース・ストリクス》!」
エクシーズ召喚によって現れたエクシーズモンスターは梟を象った鋼鉄の鳥類であり――攻撃力100という低さに、素良は嘗てのように慢心するのではなく、逆に何かあると警戒の色を強くした。
「攻撃力100のエクシーズモンスター――何かあるみたいだね?」
「《RR-フォース・ストリクス》の攻撃力・守備力はこのカード以外の自分フィールドの鳥獣族モンスターの数×500アップする」
まるで群れたら調子に乗る哀れな抵抗組織そのものだと内心嘲笑い、だからこそそのエクシーズの残党に負けた自分が惨めで憎たらしい。
この屈辱は勝利によってでしか拭えない。
「《RR-フォース・ストリクス》の効果発動、1ターンに1度、オーバーレイユニットを一つ使い、デッキから鳥獣族・闇属性・レベル4モンスター1体を手札に加える。オレは《RR-シンギング・レイニアス》をサーチする」
黒咲隼
LP4000
手札2→3
《RR-フォース・ストリクス》ランク4/闇属性/鳥獣族/攻100→1100/守2000→3000 ORU2→1
《RR-バニシング・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1100/守1900
《RR-トリビュート・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1800/守400
魔法・罠カード
永続魔法『RR-ネスト』
「オーバーレイユニットとして墓地に落ちた《RR-ファジー・レイニアス》の効果発動、このカードが墓地に送られた場合、デッキから《RR-ファジー・レイニアス》1体手札に加える。――《RR-ファジー・レイニアス》のこの二つの効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用出来ない」
「――同名カード全体に制限が掛かるパターンね」
その手のカードは『ファーニマル』にも多々ある。展開力から言えば『ファーニマル』で使えなくなるような事態は滅多に無いが、大量展開に長けたテーマである『RR』では多々ある事だろう。
「自分の場にエクシーズモンスターが存在する場合、《RR-シンギング・レイニアス》は1ターンに1度だけ特殊召喚出来る――オレは《RR-シンギング・レイニアス》を特殊召喚し、レベル4の《RR-シンギング・レイニアス》と《RR-バニシング・レイニアス》でオーバーレイ! ランク4《RR-フォース・ストリクス》!」
もう一体、同じエクシーズモンスターが出現し、このエクシーズモンスターは攻撃力こそ低いが、場にいるだけで『RR』をサーチし続けるアドバンテージの塊だと素良は分析する。
「2体目の《RR-フォース・ストリクス》のオーバーレイユニットを一つ使い、デッキから《RR-バニシング・レイニアス》をサーチし、カードを2枚伏せてターンエンドだ」
黒咲隼
LP4000
手札3→4→3→4→2
《RR-フォース・ストリクス》ランク4/闇属性/鳥獣族/攻100→1100/守2000→3000 ORU2→1
《RR-フォース・ストリクス》ランク4/闇属性/鳥獣族/攻100→1100/守2000→3000 ORU2→1
《RR-トリビュート・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1800/守400
魔法・罠カード
永続魔法『RR-ネスト』
伏せカード2枚
継続的なアドバンテージを稼ぎつつ、相手が特殊召喚したモンスターをあの忌々しいエクシーズモンスターで一網打尽にする、それが黒咲隼の基本戦術である。
「僕のターン! ドロー!」
紫雲院素良
LP4000
手札5→6
無し
魔法・罠カード
無し
「僕は永続魔法『トイポット』を発動! 1ターンに1度、手札を1枚捨てて発動。デッキから1枚ドローして『ファーニマル』モンスターだった場合、手札からモンスター1体を特殊召喚出来る。違った場合、そのドローしたカードを捨てる」
フィールドからガチャポンみたいな機械が出現し、手札という名のコインが投入され、がちりと回されて次のカードという名のカプセルが転がり落ちる。
ぱかっと開いて現れたのは小さな白羽を生やす可愛らしい子猫の《ファーニマル・キャット》だった。
「ドローしたカードは《ファーニマル・キャット》、よって僕は手札から《ファーニマル・キャット》を守備表示で特殊召喚する」
そのまま素良のフィールドに守備表示で特殊召喚された《ファーニマル・キャット》は「にゃーん」と可愛らしく鳴く。
「コストに使った《エッジインプ・チェーン》の効果発動、このカードが手札・フィールドから墓地に送られた場合、デッキから『デストーイ』カードを1枚手札に加える。僕は永続魔法『デストーイ・ファクトリー』をサーチする」
紫雲院素良
LP4000
手札6→4→5→4→5
《ファーニマル・キャット》星1/地属性/天使族/攻 700/守 300
魔法・罠カード
永続魔法『トイポット』
トイポットのコストに落とした《エッジインプ・チェーン》を利用して必要なカードをサーチしていく。
「《ファーニマル・ドッグ》を通常召喚、このカードが手札から召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《エッジインプ・シザー》1体または《ファーニマル・ドッグ》以外の『ファーニマル』モンスター1体を手札に加える。僕はこの効果で《エッジインプ・シザー》を手札に加える!」
今回も最初のターンから融合召喚をやろうと思えば行えるが、今回は敢えて召喚しない。機会を伺う。
「僕はカードを一枚伏せてターンエンド!」
紫雲院素良
LP4000
手札5→4→5→4
《ファーニマル・キャット》星1/地属性/天使族/攻 700/守 300
《ファーニマル・ドッグ》星4/地属性/天使族/攻1700/守1000
魔法・罠カード
永続魔法『トイポット』
伏せカード1枚
以前のように格下と見縊って我武者羅に融合召喚をせず、獰猛な野獣の如く殺意を漲らせながら一太刀に仕留める機会を耐え忍ぶ紫雲院素良に対し、黒咲隼は前の時とは違い、長丁場になると覚悟し――。
突如、二人のデュエルディスクから警告音が発せられる。
――それと同時に、予告無く現出した人の形しかしていない『混沌』は、文字通りとんでもない乱入者だった。
「何だ貴様は……!」
「……何? 僕と黒咲とのデュエルを邪魔する気?」
黒咲隼と紫雲院素良は殺意の漲った眼で睨みつけ、感情表現の方法が無いのっぺらぼうな『混沌』は、されども素知らぬ顔で自身のデュエルディスクを構えた。
『さっきデュエルの邪魔をされた上に強制中断されてね、物凄くモヤモヤしたから共感者を物理的に増やそうと思った。目についた君達二人には正直悪いと思うが、世の中はいつも理不尽なものだから諦めてくれ』
物凄いオレ理論に二人は怒りを通り越して呆れるも――やはり怒りが遥かに上回った素良が激発寸前となり――。
『――君達が真に決着をつけたいと願うのならば、お邪魔虫の一匹程度簡単に駆逐して返す刃で相手の喉元を引き裂けるだろう?』
文句を言う前に彼の乱入が成立してしまう。
『このバトルロイヤルの規定通り乱入ペナルティ2000ライフを受け、私はLP2000でスタート。私の最初のターンにドロー無し、攻撃宣言も出来ない。そして相手プレイヤーは五枚新規にドローし、LP4000追加する。この条件で行こうか』
尋常ならぬハンデキャップが提案され、瞬時に正規のキャップ戦として成立する。
――ルールそのモノにも無条件で介入出来るのかと驚愕する主催者は遥か向こうの事である。
黒咲隼と紫雲院素良のLPに4000が追加され、手札も更に5枚補充される。
それに関わらず、LPは普段の半分の2000、手札も5枚のままでドロー権も捨てて攻撃宣言も出来ない? 次のターン、殺してくださいと言わんばかりの条件である。
「――正気ぃ? 何それ、自殺しに来たの?」
素良が嘲笑いながら言うのも無理は無い。無言を貫く黒咲隼とて同じ心境だったが――『混沌』から言わせれば、これでも些か以上に足りない条件だと思っていたりした。
黒咲隼
LP4000→8000
手札2→7
《RR-フォース・ストリクス》ランク4/闇属性/鳥獣族/攻1100/守3000 ORU1
《RR-フォース・ストリクス》ランク4/闇属性/鳥獣族/攻1100/守3000 ORU1
《RR-トリビュート・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1800/守400
魔法・罠カード
永続魔法『RR-ネスト』
伏せカード2枚
紫雲院素良
LP4000→8000
手札4→9
《ファーニマル・キャット》星1/地属性/天使族/攻 700/守 300
《ファーニマル・ドッグ》星4/地属性/天使族/攻1700/守1000
魔法・罠カード
永続魔法『トイポット』
伏せカード1枚
『私のターン。手札から永続魔法『生還の宝札』発動。自分の墓地に存在するモンスターが特殊召喚に成功した時、デッキからカードを一枚ドローする事が出来る』
『宝札』――それはデュエルモンスターズから古くある手札補充の強大無比なカテゴリーであるが、墓地からの蘇生が条件となると機会が限られるだろう。
だが、これを敢えて入れるからには、蘇生を多く執り行うギミックが盛り込まれている事だろう。
『魔法カード『心変わり』発動。相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択し、このターンのエンドフェイズ時まで選択したモンスターのコントロールを得る。私は《ファーニマル・キャット》を選択する』
問答無用で相手のモンスターのコントロールを奪取する強大無比なパワーカードに目を見開くが、同時に何の条件も制限も無いのに何故――この場における最弱のモンスターを選択したのか、二人は疑問視する。
「はぁ? 黒咲のエクシーズモンスターでなく、僕の場にいるレベル1の《ファーニマル・キャット》を?」
『そのレベル1が良いのさ』
以前の、黒咲隼に敗れる前の紫雲院素良ならば、こんな馬鹿げた選択をする輩に対して慢心や嘲笑の一つする処だが――途方も無く嫌な予感を感じ取っていた。
???
LP2000
手札5→4→3
《ファーニマル・キャット》星1/地属性/天使族/攻 700/守 300
魔法・罠カード
永続魔法『生還の宝札』
『手札を一枚捨てて――絶対無敵、融合極めし『覇王』の力を解き放て! 速攻魔法『超融合』発動!』
その魔法カードの発動を宣言したと同時に世界が歪む。遺跡エリアの建物に幾多の亀裂が駆け巡る。
そのカードの威に吹き飛ばされまいと必死に踏ん張りながらも、紫雲院素良と黒咲隼は全く違う反応を見せた。
「!? そんなっ、どうして君なんかがあの『超融合』を……!?」
「融合……! やはり貴様も『アカデミア』かァッ!」
紫雲院素良は究極の融合魔法たるそのカードにあらん限りの驚愕を浮かべて、黒咲隼は自身の次元を遊び感覚で壊した侵略者に対するあらん限りの憎悪を滾らせて――。
『――自分・相手フィールドから融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地に送り、融合召喚する。私が選択するのは君の場にいる二体のエクシーズモンスター《RR -フォース・ストリクス》だ』
「何だとォ!? 何処までも貴様等は俺達を……!」
まさに『エクシーズ滅ぶべし』と無慈悲に侵略する『アカデミア』の意思そのモノのカードに、黒咲隼は燃え滾る怒りをもって反旗を翻す。
「――カウンター罠『ラプターズ・ガスト』発動! 自分フィールドに『RR』カードが存在し、魔法・罠カードが発動した時に発動出来る。その発動を無効にし破壊す――馬鹿な、何故発動しない!?」
「無駄だよ。『超融合』には――」
やはり黒咲隼の場に伏せられていた一枚は妨害系の罠だが、発動せずに驚愕し――紫雲院素良は歯軋りしながら見届ける。
『このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ない。この『超融合』の前では『神』の完全耐性すら無力ッ!』
無情にも冥府の猛禽二体は『超融合』によって融合素材となって除去され――。
『この融合モンスターの素材はエクシーズモンスターまたはシンクロモンスターと、エクシーズモンスターまたはシンクロモンスター、その合計2体によって融合される。現われろ環境の破壊者《旧神ノーデン》!』
現れるは素材元の共通点など何も無い、異形の軍馬に跨る旧き水の神だった。
『このカードが特殊召喚に成功した時、自分の墓地のレベル4以下のモンスターを効果を無効にして特殊召喚する。なおこのカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは除外される――私は『超融合』のコストとして墓地に捨てた《エフェクト・ヴェーラー》を蘇生する。永続魔法『生還の宝札』の効果で一枚ドローする』
黒咲隼
LP8000
手札7
《RR-トリビュート・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1800/守400
魔法・罠カード
永続魔法『RR-ネスト』
伏せカード2枚
???
LP2000
手札3→1→2
《ファーニマル・キャット》星1/地属性/天使族/攻 700/守 300
《旧神ノーデン》星4/水属性/天使族/攻2000/守2200
《エフェクト・ヴェーラー》星1/光属性/魔法使い族/攻0/守0
魔法・罠カード
永続魔法『生還の宝札』
「レベル1のチューナーモンスター……まさか!?」
墓地から蘇生されたのは緑色のツインテールと透き通るほど透明な翼を揺らす中性的な少女であり――。
『レベル4の《旧神ノーデン》にレベル1の《エフェクト・ヴェーラー》をチューニング――シンクロ召喚! 現われろ《TG ハイパー・ライブラリアン》!』
融合・エクシーズに続く第三の召喚方法によって電子の申し子たる白き魔導師が召喚される。
「――シンクロ!? やはり貴様は『融合』の手先かァ!」
『? まぁこのデッキのシンクロギミックは他人のデッキ依存か、融合モンスターの《旧神ノーデン》からだが――』
黒咲隼の奇妙な言いがかりに『混沌』は疑問に思ったが、勘違いフェイズは決闘者の嗜みなので即座にスルーする。
『このカードがフィールドに存在し、自分または相手がこのカード以外のシンクロモンスターのシンクロ召喚に成功した場合、デッキからカードを一枚ドローする』
この制限行きとなった鬼畜魔術師が悪さをするのはまだ少し先である。
『魔法カード『ハーピィの羽根箒』発動、相手フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。止める? ――まぁ通すよね』
黒咲隼は鬼気迫る顔をしながらカウンター罠『ラプターズ・ガスト』を発動せずに『RRーネスト』ともう1枚の伏せカード『RRーレディネス』共々破壊を受け入れ、迎撃手段のなかった紫雲院素良の場の『トイポット』と伏せカード一枚が無情に破壊される。
自身の『RRーネスト』と『RRーレディネス』を守る事よりも、敵である紫雲院素良の場のニ枚を削った方が良いという判断からである。――『RRーレディネス』は墓地に置かれる事で最後の命綱となる。
「……チィッ、『トイポット』が破壊されて墓地に送られた事で、僕はデッキから《エッジインプ・シザー》1体または『ファーニマル』モンスター1体を手札に加える。僕がサーチするのは《ファーニマル・オウル》!」
???
LP2000
手札2→1
《ファーニマル・キャット》星1/地属性/天使族/攻 700/守 300
《TG ハイパー・ライブラリアン》星5/闇属性/魔法使い族/攻2400/守1800
魔法・罠カード
永続魔法『生還の宝札』
黒咲隼
LP8000
手札7
《RR-トリビュート・レイニアス》星4/闇属性/鳥獣族/攻1800/守400
魔法・罠カード
無し
紫雲院素良
LP8000
手札9→10
《ファーニマル・ドッグ》星4/地属性/天使族/攻1700/守1000
魔法・罠カード
無し
『魔法カード『死者蘇生』発動、墓地より舞い戻れ《旧神ノーデン》、そして特殊召喚に成功した事により《エフェクト・ヴェーラー》を再び呼び戻す。これにより『生還の宝札』の効果で二枚ドローする』
手札0枚から即座に二枚ドローされ――またもやレベル1のチューナーモンスターとレベル4の融合モンスターが場に揃う。
『レベル4の《旧神ノーデン》にレベル1の《エフェクト・ヴェーラー》をチューニング――《A・O・J カタストル》!』
白き鋼の甲殻纏う機械族の蟷螂が現出し、気高く咆哮を上げる。
『シンクロ召喚に成功した事により、《TG ハイパー・ライブラリアン》の効果でデッキからカードを一枚ドローする』
???
LP2000
手札1→0→2→3
《ファーニマル・キャット》星1/地属性/天使族/攻100/守100
《TG ハイパー・ライブラリアン》星5/闇属性/魔法使い族/攻2400/守1800
《A・O・J カタストル》星5/闇属性/機械族/攻2200/守1200
魔法・罠カード
永続魔法『生還の宝札』
『手札から装備魔法『早すぎた埋葬』を発動。ライフを800ポイント支払い、墓地のモンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。私は《旧神ノーデン》を蘇生させ、その効果で《エフェクト・ヴェーラー》を復活させる。『生還の宝札』の効果で2枚ドローする』
「またぁ!? 蘇生カードが続く限りレベル5のシンクロモンスターが召喚されるって訳!?」
『いいや、もう私のエクストラにレベル5のシンクロモンスターはいない。それ故に君から奪ったモンスターを使わせて貰うよ』
シンクロしただけで手札が増え、蘇生したら逆に手札が増えるという頭のおかしい状況――だが、これすらもただの下準備に過ぎないと感情表現する機能が無い筈の『混沌』は声を弾ませながら楽しげに笑う。
『レベル1の《ファーニマル・キャット》にレベル1の《エフェクト・ヴェーラー》をチューニング。集いし願いが新たな速度の地平へ誘う。光差す道となれ! シンクロ召喚! 希望の力、シンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》!』
そして次元の壁を突き破って現れたのはF-1に人型が生えたような機械族のシンクロモンスターであり、黒咲隼と紫雲院素良は同時に驚愕する。そのモンスターの種族部分を見たが故に――。
「シンクロモンスターなのにチューナーだって……!?」
シンクロ召喚はチューナーモンスターとそれ以外のモンスターとのレベル合計で呼び出されるモンスター、そのシンクロモンスターなのにチューナーであるという事は――。
『このカードがシンクロ召喚に成功した時、デッキからカードを一枚ドローする。《TG ハイパー・ライブラリアン》の効果で更にもう一枚ドロー!』
???
LP2000→1200
手札3→2→4→6
《TG ハイパー・ライブラリアン》星5/闇属性/魔法使い族/攻2400/守1800
《A・O・J カタストル》星5/闇属性/機械族/攻2200/守1200
《フォーミュラ・シンクロン》星2/光属性/機械族/攻200/守1500
《旧神ノーデン》星4/水属性/天使族/攻2000/守2200
魔法・罠カード
永続魔法『生還の宝札』
装備魔法『早すぎた埋葬』
「……あれだけやりたい放題シンクロして手札が減ってないどころか、増えてる……!?」
これだけ大量展開しているのに関わらず、手札が初期状態より多い理不尽。一体彼の『一人遊び(ソリティア)』は何処まで続くのか――。
『フィールド魔法『神縛りの塚』発動――フィールドのレベル10以上のモンスターは効果の対象にならず、効果では破壊されない。フィールドの10以上のモンスターが戦闘でモンスターを破壊し、墓地に送った場合、破壊されたモンスターのコントローラーは1000ダメージを受ける。――フィールドのこのカードが効果で破壊され、墓地に送られた時、デッキから神属性モンスター1体を手札に加える』
現状では全く意味の無いフィールド魔法がセットされ、猛烈なまでに嫌な予感がするが――これから起こる事に比べれば些細な出来事だった。
『――さぁて、長らく待たせたね。舞台は整った! レベル5の《TG ハイパー・ライブラリアン》とレベル5の《A・O・J カタストル》に、レベル2の《フォーミュラ・シンクロン》をチューニングッ!』
世界を引き裂かんばかりの大衝撃が、攻撃ではなく召喚時に巻き起こる。
「なっ、シンクロモンスターでシンクロだと……!?」
「――って、何で君自身が金色に光り輝いているの!?」
そして人の形しかしていない『混沌』が中央部から金色に光り輝き、赤き竜の紋章が一瞬だけ周囲に浮かび上がって消える。
『――集いし星が一つになる時、破滅を覆した未来を照らす! 光差す道となれ! リミットオーバー・アクセルシンクロオオオオオオォッ!』
黄金の光となった『混沌』は、その胸に宿る憧憬を思い描いて吼える。
ただの召喚の余波だけで遺跡エリアの建物が吹き飛んで半壊し――天空高くから降誕したのは恒星の如き煌めき放つ純白の龍だった。
『――絆が生み出した進化の光、降誕せよ《シューティング・クェーサー・ドラゴン》!』
このレベル12という最高ランクのシンクロモンスターを召喚しきった『混沌』は黄金色から闇と光渦巻く混沌に戻っていく。
大満足したような素晴らしい笑顔を浮かべているような幻影が、二人には見えたような気がした。
???
LP1200
手札6→5
《シューティング・クェーサー・ドラゴン》星12/光属性/ドラゴン族/攻4000/守4000
《旧神ノーデン》星4/水属性/天使族/攻2000/守2200
魔法・罠カード
永続魔法『生還の宝札』
装備魔法『早すぎた埋葬』
フィールド魔法『神縛りの塚』
『これがシンクロを超えた『アクセル・シンクロ』、それを更に超えた境地だ――そして私はまだ通常召喚権を使っていない』
……言われてみればそうだった。これだけのシンクロ召喚を、この『混沌』は通常召喚権を使用せずに行っていたのだ。
こんなんじゃ満足出来ねぇと言わんばかりに、『混沌』は更に展開していく。
『魔法カード『天使の施し』発動、3枚ドローして手札から2枚捨てる――墓地に捨てた《黒き森のウィッチ》の効果発動、デッキから守備力1500のモンスターを手札に加える。私は《ダーク・アームド・ドラゴン》をサーチする』
《黒き森のウィッチ》の影に《混沌の黒魔術師》を仕込んで墓地に送る。
だが、今回はもう『死者蘇生』と『早すぎた埋葬』を既に使い切っている為、このままでは活用出来ない。
まだ召喚権があるのでアドバンス召喚すれば『死者蘇生』とのループコンボが実行可能になるが、今回は別ルートを取る。
『――墓地の光属性《フォーミュラ・シンクロン》と闇属性《混沌の黒魔術師》を除外し、《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》を特殊召喚する』
《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》で除外送りとし、これで墓地の闇属性のモンスターの数調整は出来た。
『――ボチヤミサンタイ。私の墓地には闇属性のモンスターが《黒き森のウィッチ》《TG ハイパー・ライブラリアン》《A・O・J カタストル》の三体のみ。よって己が召喚条件を満たした《ダーク・アームド・ドラゴン》を特殊召喚する』
???
LP1200
手札5→6→5→4
《シューティング・クェーサー・ドラゴン》星12/光属性/ドラゴン族/攻4000/守4000
《旧神ノーデン》星4/水属性/天使族/攻2000/守2200
《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》星8/光属性/戦士族/攻3000/守2500
《ダーク・アームド・ドラゴン》星7/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守1000
魔法・罠カード
永続魔法『生還の宝札』
装備魔法『早すぎた埋葬』
フィールド魔法『神縛りの塚』
『《ダーク・アームド・ドラゴン》の効果発動、自分の墓地の闇属性モンスターを1体除外する事でフィールド上のカード1枚を選択して破壊する――《TG ハイパー・ライブラリアン》《A・O・J カタストル》を除外し、《ファーニマル・ドッグ》《RR-トリビュート・レイニアス》を破壊する』
絶望の呪文から解き放たれたドラゴンは容赦無く相手のフィールドを焼き尽くす。
未だに通常召喚権を使わずに展開しながら――黒咲隼の墓地に落ちた『RRーレディネス』の効果の厄介さが目につく。
――『RR』モンスターが存在しなければ発動出来ないという条件はあるが、墓地にあるこのカードを除外するだけでそのターン受けるダメージを0にされる効果は、発動すれば確実に逆転のターンを生むだろう。
最初のターンに手札に来たのが『邪神』の方ならば封殺出来たが――無いもの強請りしても仕方ない。
『――《旧神ノーデン》《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》《ダーク・アームド・ドラゴン》を生贄に――出でよ『三幻神』、今此処に降臨せよ《オシリスの天空竜》!』
このカードにセットした『混沌』のデュエルディスクから雷が生じ、純白の恒星龍に匹敵する神威が荒れ狂う。
『このカードを通常召喚する場合、モンスター3体を生贄にして召喚しなければならない。この召喚は無効化されない。このカードの召喚成功時には魔法・罠・モンスターの効果は発揮出来ない。このカードの攻撃力・守備力は自分の手札の枚数×1000アップする』
――現世への再誕に歓喜の咆哮を轟かすは赤い巨龍、計り知れないほど長い胴体を持つ、天空を支配する『神』の具現だった。
『混沌』の現在の手札枚数は3枚、よって《オシリスの天空竜》の攻撃力は3000である。
素良は3体のリリースで現れた前代未聞の超弩級モンスターに驚き――先程説明された『神縛りの塚』の効果で効果の対象に出来ず、更には効果によって破壊されないという最高級の耐性が付いている事を思い出す。
もう一方の恒星龍も攻撃力4000、その数値を超える『デストーイ』モンスターは非常に条件が限られているが、その無敵とも言える耐性は『神縛りの塚』がある今だけ――あのフィールド魔法には何の耐性も無い。其処に勝機を見出す。
一方、黒咲隼の方は、通常召喚された超大型モンスターに一瞬だけ眉を顰める。
彼の切り札たるエクシーズモンスターは究極なまでに特殊召喚されたモンスターを倒す効果に特化している。
相手が特殊召喚されたモンスターならば、どんなモンスターでも打ち破ってみせる――が、あの《オシリスの天空竜》は通常召喚されている為、その例外である。
更に『神縛りの塚』の効果で効果の対象にすら出来ず、効果による破壊も出来なくなっている為、彼のエクシーズモンスターの効果を悉く受け付けない。――言わば、天敵に等しい。
だが、フィールド魔法『神縛りの塚』さえ破壊し、シンクロ召喚された恒星龍より攻撃力が低い状態ならば――其処に活路を見出す。
「魔法カード『貪欲な壺』発動、墓地の《旧神ノーデン》《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》《ダーク・アームド・ドラゴン》《エフェクト・ヴェーラー》《黒き森のウィッチ》をデッキに戻してシャッフルし、2枚ドローする」
手札4枚、《オシリスの天空竜》の攻撃力が4000となり――。
『カードを1枚セットし、ターンエンド』
???
LP1200
手札5→6→5→4→3→2→4→3
《シューティング・クェーサー・ドラゴン》星12/光属性/ドラゴン族/攻4000/守4000
《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻?→3000/守?→3000
魔法・罠カード
永続魔法『生還の宝札』
伏せカード1枚
フィールド魔法『神縛りの塚』
3枚となって攻撃力3000に戻る。攻撃変化の激しいモンスターである。
『――さぁ、この厄介極まる布陣、どうやって覆してくれる? 見事打破してみせろッ! 二つの心を持つ『初代決闘王』のように、光と闇を統べる『覇王』のように、絆を紡いで新たな未来を切り開いた『英雄』のように、飽くなき挑戦心を抱く不屈の『少年』のようにッ!』
本日の禁止カード
『生還の宝札』
永続魔法(禁止カード)
自分の墓地に存在するモンスターが特殊召喚に成功した時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。
デッキレスコンボが簡単に出来るカード。禁止して正解である。
《旧神ノーデン》
融合・効果モンスター
星4/水属性/天使族/攻2000/守2200
SモンスターまたはXモンスター+SモンスターまたはXモンスター
(1):このカードが特殊召喚に成功した時、
自分の墓地のレベル4以下のモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを効果を無効にして特殊召喚する。
このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは除外される。
いずれ禁止制限に叩き込まれるであろう、ぶっ壊れ融合モンスター。
このデッキのエクストラ枠で唯一の融合枠。一枚でレベル5シンクロ素材になったり、ランク4素材になったり、成功率八割を超える1ターンキルパーツとなったり、コイツの暴れ回る大会は『カップ麺早食い大会』と揶揄される。
このデッキにおいて相手のエクシーズorシンクロ×2を超融合で除去しつつ、クェーサールートを切り開く。
これ一枚と超融合とこのデッキ唯一のチューナーモンスター《エフェクト・ヴェーラー》とレベル1のモンスターがあればほぼ確定する。