遊戯王ARC-Ⅴ 混沌統べる覇者 -舞網チャンピオンシップ・バトルロワイヤル編-   作:咲夜泪

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 だってアイツ、一枚しかカード明らかになってませんし。無力な作者を許してくれ……。


04/光に完結する物語

『――正気ですか? そのカード達と運命を共にすればどうなるか、解ってないとは言わせませんよ。人間の貴方が世界から否定されれば、名前も記憶も肉体も――存在意義すら無くなり、永劫に忘れ去られる。生と死の概念も無くなり、未来永劫終わり無き悪夢として彷徨う事になるでしょう』

 

 ――世界に否定されて痕跡一つ残らず消滅するならばまだ救いがあった。

 

 だが、幾千幾万のデュエルで勝ち続けた決闘者はただの人間とは呼べない。

 かつてのデュエルで打ち負かした超常的な力を持つ決闘者と同じ位階に、或いは遥かに凌駕した力をいつしか持ち得てしまっていた。

 

 ――だからこれは最初で最後の分岐路。

 力の源であるカード達を手放せば、その決闘者は超常の理から解放され、人間としての営みを全うする事が出来ただろう。

 

 それがどんなに尊い事なのか、どんなに幸福な事なのか、決闘者は知っている。一度その全てを失ったからこそ、誰よりも強く痛く実感している。

 それを何一つ過分無く理解して尚、その決闘者は首を横に振った。

 

「……何を今更。生まれる以前から一蓮托生だというのに捨てられる訳が無いだろう。コイツ等が世界から否定されて忘れ去られるのならば、それは時代の流れだから仕方ない――だけど、一人ぐらい覚えている者がいないと不憫だろう?」

 

 

 

 

「~~っ、離せ、離せこの覆面忍者! 何故私の戦いの邪魔をする……! 離せッ!」

 

 一方その頃、デュエルの最中に煙玉を投げ、柊柚子とセレナを連れ去った忍者の格好をした決闘者、日影と月影は氷山エリアまで避難していた。

 抱えられながらも暴れるセレナを地に降ろし、日影は思案に暮れる。

 彼等二人が依頼主から受けた指令はセレナの護衛――だが、このエリアが安全かと問われればとても言い難い。

 

 ――人外の決闘者は初めて見たが、あれは極上の類の『魔』だと彼等の本能が告げている。

 

 今も震えが止まらない。果たしてあれと相対したユースチームは、どれぐらい持ち堪えるのだろうか――。

 仮にもユースのランクを勝ち抜いたベスト8、そう簡単にはやられはしないだろうが、全員倒されるのは正直時間の問題だろう。ならば此処は、自分は彼等の元に舞い戻って監視しながら弟の月影を安全な場所に誘導するのが最善か――考えが纏まった瞬間、背筋に寒気が走る。

 

「……!」

 

 その悪寒に従い、背後に向かって手裏剣を投擲し――現れていた『混沌』の肉体を貫き、いや、何の抵抗無く通り抜けて地に落ちる。

 

『煙玉は投げるわ、手裏剣は投げるわ――ニンジャはリアリストなのかね?』

 

 まるで質量を持たない前世代のソリッドビジョンの幻影に過ぎないかのように、『混沌』は無傷だった。

 

「……どうして此処に? ユースチームの者達は?」

『面白味が無さそうだったから手早く片付けてきた。……《究極完全態・グレート・モス》なんてどうやって出すんだろう? 《アルカナフォースXXI-THE WORLD》で相手のターン全て飛ばすか、それとも『八咫ロック』決めてから嬲り殺しか? 他に何かあるかねぇ?』

 

 リアルダイレクトアタックされたのに関わらず、『混沌』は世間話でもするかのような気軽さで話しかける。

 

『さっきは邪魔が入ったが、今度は最後までデュエルしてくれると嬉しいな。一対四で良いかな?』

 

 

 

 

 一方、少し時間が前後して――同じ氷山エリアにて、『混沌』とのデュエルが開始する前にセレナに――伏せカードをオープンするタイミングを物理的に逃して――敗れたデニス・マックフィールドは手練の忍者二人に気付かれずに遥か遠方から監視していた。

 

 彼の目的はとある人物が到着するまでに目的の人物を捕捉する事であり――彼の背後から、光と共に現れた人物を見て、目的を果たせた事に安堵の笑顔を浮かべる。

 

 その人物はエンタメデュエルを謳うペンデュラム召喚の創始者、榊遊矢に瓜二つな少年であり――。

 

「待ち草臥れたよ、ユーリ」

「――で、見つかった?」

「オフコース! とっくに――げっ!?」

 

 指差した遥か遠方には本命の人物である柊柚子と、その彼女と瓜二つの少女セレナと、赤い忍者と蒼い忍者、そして――人の形しかしていない『混沌』が対峙していた。

 

「……何あれ?」

「……良く解らないけど、無差別級のとんでもないヤツ。アイツにこっちに来ていた『オベリスク・フォース』瞬殺されちゃってさぁ――って、これは本格的にやばいな」

 

 彼等の目的が柊柚子の身柄の確保である以上、デュエルで敗北して消滅させられてしまっては話にならない。

 どうやって割り込むか、何か別な方法は無いか、デニスは必死に思案する。どう考えてもあの『混沌』とデュエルするのは余り宜しくない。

 

「って、ユーリ?!」

 

 だが、デニスの心配は他所に、ユーリは彼の事を無視し、ビルの屋上から飛び降りて彼等全員の前に姿を現した後だった――。

 

 

 

 

「遊矢っ!? いや、違う……?」

 

 突如飛び降りて現れた決闘者は柚子の幼馴染の遊矢と瓜二つの少年だったが、様子が余りにも違いすぎた。

 人を笑わせる事に生き甲斐を見出している遊矢の暖かい笑顔とは違って、この少年が浮かべる笑顔は冷たく、背筋が凍るほど恐ろしいものだった。

 

 ――そして今、柊柚子・セレナ・日影・月影の四人と、遊矢と瓜二つの少年と、『混沌』の三竦みが出来上がり、緊迫した空気が漂う中、遊矢と瓜二つの少年は『混沌』に向かって口を開いた。

 

「――君、邪魔なんだけど?」

『ふむ、同じ言葉をそっくりそのまま返す事になるが。――後にしろ、少年。私の方が先約だぞ?』

 

 嘲笑すら浮かべて威圧する遊矢と瓜二つの少年に対し、『混沌』は表情が無いながら苛立ちの色を浮かべる。

 流石にこう何度も何度も邪魔されては、『混沌』の心境も穏やかには済まなかったのだろう。

 

「邪魔だよ、君もカードになりたいのかい?」

『……また『闇のゲーム』の希望者か? 全く懲りないな。――いっその事、そのデュエルで君のライフと『融合次元』を連動させて己が世界の命運を賭けさせてやろうか?』

 

 遊矢と瓜二つの少年は『混沌』の言葉を空虚な戯言と判断したようだが、『混沌』の方は『ドン・サウザンド方式で良いか』と不穏極まる空気を漂わせる。

 一触即発の中、『はぁ~』とわざとらしい溜息を吐いたのは『混沌』だった。

 

『……うん、大人気無かったね。君とのデュエルはそれなりに楽しめそうなんだが、今はどうでも良いや。ランダム座標の次元転送で許してやるから敗北を糧に立ち上がると良い』

 

 遊矢に瓜二つの少年と『混沌』が完全に向かい合い――日影と月影の手で一瞬にして離脱する二人の姿を見届けた『混沌』は理不尽ながらも溜まりに溜まった鬱憤を目の前の決闘者で晴らす事にした。

 

『――デュエル!』

 

 二人の掛け声と同時に先行は『混沌』の方となる。

 

『私の先行……あ-あ、事故ってしまったか――心底同情するよ』

 

 不可解な物言いに遊矢と瓜二つの少年、『融合次元』の決闘者のユーリは首を傾げる。

 

『魔法カード『天使の施し』発動、三枚ドローして二枚墓地に捨てる。墓地に捨てた『処刑人-マキュラ-』の効果発動、このカードを墓地に捨てたターン、手札から罠カードを発動出来るようになる。私は罠カード『第六感』を三枚発動する』

 

 手札から罠カードが発動出来る効果に突っ込む前に、いきなり現れた三つの罠カードから出た六面ダイスにユーリは困惑する。

 

 

『私の宣言する数字は5・6。宣言した数字が当たればその数だけドローし、外れれば出た目の数だけデッキを墓地に送る――さぁ少年、自分の運命を自らの手で終わらせると良い』

 

 

 いきなりの効果に驚いたが、所詮はギャンブル要素の強いカード。全部外せばそれだけで残り手札二枚の『混沌』の展開などたかが知れていよう。

 運命のダイスロールは同時に振られ――呆気無く止まり、ユーリの驚愕と共に静かに幕切れた。

 

「何だって……!?」

『出た数字は6・6・6、よって私は18枚ドローする』

 

 手札2枚から一気に20枚まで補充される。

 『混沌』のデッキは合計55枚、手札20枚、墓地に6枚、デッキの残り枚数は29枚となる。

 

『永続魔法『魔力倹約術』を発動、このカードがある限り、私は魔法カードを発動させる為に払うライフポイントが必要なくなる』

 

 手札が20枚から19枚となり、場に魔法カードによるライフコストを踏み倒す永続魔法が貼られる。

 

『魔法カード『手札抹殺』を発動、お互いのプレイヤーは手札を全部捨て、その枚数分ドローする』

「っ、僕の手札は5枚、よって5枚捨てて5枚ドローする」

『私の手札は18枚、よって18枚捨てて18枚ドローする』

 

 18枚全て捨てて、新たに18枚ドローする。

 これで『混沌』の手札は18枚、墓地に25枚、デッキの残りカードが11枚となる。

 

『魔法カード『強引な番兵』を発動、相手の手札を確認し、その中からカードを1枚デッキに戻す。――私は《エフェクト・ヴェーラー》を君のデッキに戻す』

 

 相手の手札に墓地誘発効果を持つカードが無い事を確認してから『混沌』はユーリの手札から《エフェクト・ヴェーラー》をデッキに戻す。

 

『魔法カード『いたずら好きな双子悪魔』発動、LP1000を払って発動するが、永続魔法『魔力倹約術』の効果でライフコストを踏み倒している。――相手は手札をランダムに1枚捨て、更にもう1枚選択して捨てる』

 

 無作為に1枚墓地に送られ、更にもう1枚墓地に落とされる。

 

『魔法カード『押収』発動、LP1000支払い、例の如く踏み倒して発動。相手の手札を確認し、その中からカードを1枚捨てる』

 

 嘗て猛威を振るったハンデス三種の神器が炸裂し、4枚の手札を削られたユーリの手札に残ったのは魔法カードの『ヴァイオレット・フラッシュ』のみとなる。

 これで『混沌』の手札は18枚から15枚、墓地28枚、デッキの残り枚数は変わらず11枚であり――コンボパーツに必要なカードがまだデッキの中にあるので、更に掘り進める必要があった。

 

『魔法カード『愚かな埋葬』を発動、デッキからモンスター1体を墓地に送る。私は《混沌の黒魔術師》を選択する』

 

 《混沌の黒魔術師》がいつも通り墓地に行き、手札が14枚、墓地30枚、デッキの残り枚数10枚となる。

 

『魔法カード『強欲な壺』発動、2枚ドローする』

 

 問答無用のドローカードで手札は15枚、墓地31枚、デッキの残り枚数が8枚となるが、未だに拾えない。

 先程のデュエルの1ターン目で捨てたせいで機嫌を損ねたのだろうか――何方にしても関係の無い話である。

 

『魔法カード『苦渋の選択』発動、自分のデッキから5枚選択して相手に見せ、相手はその中から1枚選択する。相手が選択したカード1枚を手札に、残りは墓地に捨てる。私が選択するカードはこの5枚だ』

 

 《オベリスクの巨神兵》

 《オシリスの天空竜》

 《混沌の黒魔術師》

 《混沌の黒魔術師》

 《邪神アバター》

 

 何とも物々しい効果モンスター5体を表示され、ユーリは苦渋に満ちた表情で舌打ちする。

 

「……それじゃ僕は《混沌の黒魔術師》を選択するよ」

 

 手札は以前変わらず15枚、墓地36枚となり、デッキ枚数は残り3枚となる。

 デッキアウトを揶揄する余裕も無い。デッキ全てを手札か墓地に送られるという事は、そのデッキに仕込まれたコンボ全てが使用可能になるという事と同意語である。

 

『魔法カード『死者蘇生』発動、《混沌の黒魔術師》を蘇生させ、効果発動、召喚・特殊召喚された時に墓地の魔法カード1枚を手札に加える。その効果で『死者蘇生』を手札に加える。同じ手順で《混沌の黒魔術師》をもう1体蘇らせて『天使の施し』を回収する』

 

 ???

 LP4000

 手札15→14→15→14→15

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 魔法・罠カード

  永続魔法『魔力倹約術』

 

『魔法カード『天使の施し』を発動、3枚ドローして2枚捨てる』

 

 ――そして遂に、デッキの最後の一枚までドローされる。

 デッキの最後に眠っていた星12のカードを見て、『混沌』は苦笑いをする。

 

『墓地の光属性《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》1体と闇属性《混沌帝龍 -終焉の使者-》1体を除外し、《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》を特殊召喚する』

 

 フィールドに現れるはこのデッキに3積みされている頼れる『カオス』、《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》であり――。

 

『《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》の効果発動、フィールド上のモンスター1体を除外する。私は《混沌の黒魔術師》を選択し、除外する』

「自分のモンスターを……!?」

 

 自身のモンスターの効果によって《混沌の黒魔術師》はゲームから除外され――。

 

『魔法カード『次元融合』発動、2000ライフの支払いを踏み倒し、除外されたモンスターをそれぞれのフィールド上に可能な限り特殊召喚する。戻れ《混沌の黒魔術師》――特殊召喚された事で効果発動、魔法カードの『死者蘇生』を回収する』

 

 一瞬にして除外ゾーンからフィールドに帰還し、最後の仕上げと言わんばかりに魔法カード『死者蘇生』を回収する。

 

 

『《混沌の黒魔術師》二体と《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》を生贄に――ヲーの、と、間違った、第一の三幻神《ラーの翼神竜》を召喚する」

 

 

 ――そして黄金の威光を放ちながら現れたのは黄金の球体であり、黄金の球体から音を立てて変形していき、神々しいまでに光り輝く太陽の化身の如き黄金の不死鳥がその真の姿を現した。

 

 

 ???

 LP4000

 手札15→14→13→14→13

 《ラーの翼神竜》星10/神属性/幻神獣族/攻?/守?

 魔法・罠カード

  永続魔法『魔力倹約術』

 

 

「攻撃力不明……?!」

『……このカードは特殊召喚出来ず、通常召喚する場合、三体のモンスターを生贄に召喚しなければならない。このカードの召喚は無効化されない。このカードの召喚成功時にこのカード以外の魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ない。……何で召喚時のみなんだよ……!』

 

 この神々しいモンスターを召喚した『混沌』の口から淀みに淀んだ怨嗟の声が発せられる。

 

『……このカードが召喚に成功した時、LPを100になるように支払って発動出来る効果がある。このカードの攻撃力・守備力は払った数値分アップする。……だが、これはあくまで任意効果なので私はその効果を発動しない。……よって、この『ヲー』……『ライフちゅっちゅギガント』の攻撃力・守備力は0となる』

 

 ???

 LP4000

 手札15→14→13→14→13

 《ラーの翼神竜》星10/神属性/幻神獣族/攻?→0/守?→0

 魔法・罠カード

  永続魔法『魔力倹約術』

 

 その宣言と同時に《ラーの翼神竜》は雄叫びを上げたが、それはどう考えても抗議の声にしか聞こえなかった。が、『混沌』は無視する。

 

「……え? 3体のモンスターをリリースして召喚したのに――何か別の効果があるの?」

『……ライフを1000ポイント支払ってフィールドのモンスター1体を破壊する除去効果がある』

「……召喚された時にライフを100ポイントになるまで支払うのに? まるで噛み合ってないんじゃ……?」

 

 全くもって噛み合わない。事前にダメージを受けていればその数値分の攻撃力・守備力を減らす事になるだろう。

 仮に4000ライフがあって全部捧げて攻撃力・守備力3900のモンスターになったとしても、LP100の状態ではバーンダメージ一回でLP0になりかねない。

 3体のモンスターをリリースしてアドバンス召喚された最上級モンスターにしては、圧倒的に性能が低すぎた……!

 

『……言うな。言うんじゃない! 本来は、本物の《ラーの翼神竜》は『神』に相応しい超越的な力を持ってたんだ……!』

 

 物凄く年季の篭った怨念をもって『混沌』は全力で嘆く。

 ……心無しか、《ラーの翼神竜》は体を縮めて落ち込んでいるような気がした。

 

『……さて、気を取り直して――装備魔法『早すぎた埋葬』。800ポイントのライフ支払いを踏み倒し、墓地のモンスターに装備させて復活させる。蘇らせるのは第二の三幻神《オシリスの天空竜》!』

 

 瞬間、天を引き裂いて雷鳴と共に現れたのは二つの顎を持つ赤い巨龍であり、攻撃力0の《ラーの翼神竜》とは比較にならない威圧感にユーリは身震いする。

 

『そして魔法カード『死者蘇生』を発動、墓地から蘇生するのは最後の三幻神《オベリスクの巨神兵》!』

 

 氷山を打ち砕いて地より現れるは蒼の巨神であり、破壊神は氷山エリアの凍土が悉く割れて砕け散らせながら降臨する。

 

 ???

 LP4000

 手札13→12→11

 《ラーの翼神竜》星10/神属性/幻神獣族/攻0/守0

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻?→11000/守?→11000

 《オベリスクの巨神兵》星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000

 魔法・罠カード

  永続魔法『魔力倹約術』

  装備魔法『早すぎた埋葬』

 

「攻撃力11000と攻撃力4000……!?」

『なお《オシリスの天空竜》と《オベリスクの巨神兵》は特殊召喚された時、エンドフェイズに墓地に送られる効果があるが、今は関係あるまい』

 

 ユーリは歯軋りを立てる。

 先行は当然の如く攻撃宣言が行えない。だが、一枚残らずデッキを発掘した今、自分の次のターンが来る事すら疑わしい。

 此処から即死級のバーンダメージが飛んでくるのか、或いは――。

 

『――私の場に3体の『三幻神』が揃った。私は《ラーの翼神竜》《オシリスの天空竜》《オベリスクの巨神兵》を生贄に捧げ――《光の創造神 ホルアクティ》を特殊召喚する!」

 

 3体の『三幻神』が暖かい光と共に消えて――その全ての力を束ねた『勝利の女神』が地上世界に降誕する。

 

 

 ???

 LP4000

 手札11→10

 《光の創造神 ホルアクティ》星12/神属性/創造神族/攻?/守?

 魔法・罠カード

  永続魔法『魔力倹約術』

 

 

『このカードは通常召喚出来ず、自分のフィールド上の、元々のカード名が《オシリスの天空竜》《オベリスクの巨神兵》《ラーの翼神竜》となるモンスターをそれぞれ1体ずつ生贄に捧げた時のみ特殊召喚出来る。このカードの特殊召喚は無効化されず、このカードを特殊召喚したプレイヤーはデュエルに勝利する』

「なっ、特殊勝利――!?」

 

 《光の創造神 ホルアクティ》は慈悲深く微笑み――『光創世(ジェセル)!』と叫び、全ては柔らかい光に飲み込まれたのだった。

 

 

 

 

 




 本日の禁止制限カード

 『押収』×1
 通常魔法(禁止カード)
 1000ライフポイントを払って発動する。
 相手の手札を確認し、その中からカードを1枚捨てる。

 『いたずら好きな双子悪魔』×1
 通常魔法(禁止カード)
 1000ライフポイントを払って発動する。
 相手は手札をランダムに1枚捨て、さらにもう1枚選択して捨てる。

 『強引な番兵』×1
 通常魔法(禁止カード)
 相手の手札を確認し、その中からカードを1枚デッキに戻す。

 問答無用のパワーカード、ハンデス三種の神器。
 手札確認も行えるので確実に情報アドバンテージを奪いつつ、展開に邪魔な《エフェクト・ヴェーラー》などを落とす為に使われる。
 《エフェクト・ヴェーラー》を持ってない方が悪いが、持っていても落とされる事がままある。

 本日の事故枠

 《ラーの翼神竜》
 効果モンスター
 星10/神属性/幻神獣族/攻 ?/守 ?
 このカードは特殊召喚できない。
 このカードを通常召喚する場合、3体をリリースして召喚しなければならない。
 (1):このカードの召喚は無効化されない。
 (2):このカードの召喚成功時には、
 このカード以外の魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。
 (3):このカードが召喚に成功した時、100LPになるように
 LPを払って発動できる。このカードの攻撃力・守備力は払った数値分アップする。
 (4):1000LPを払い、フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
 そのモンスターを破壊する。

 こ の カ ー ド は 特 殊 召 喚 で き な い。

 原作アニメのように墓地から死者蘇生で蘇らないし、三体生贄に捧げてもそのモンスターの攻撃力・守備力の合計値にもならないし、何故か通常召喚した時にライフを100残して攻撃力と守備力に変換する効果が発動する。
 これだけでも最悪なのに何故か原作であった完全耐性が完全に消え去るという。
 これは《ラーの翼神竜》ではない、『ヲー』だ、とか、これで名前が《ライフちゅっちゅギガント》なら受け入れられたのに、と言われる始末。
 最強の神、その現実世界への降誕は大失敗に終わったようです。
 だが、此処最近、まさかの《ラーの翼神竜 球体形》が新しく出て、原作能力の一端を少しだけ再現された模様。どうせなら『フェニックスモード』を実装した上で、ラーじたいをエラッタして原作に近づけてくれたらいいのに、と多くの決闘者が切望している。

 《オベリスクの巨神兵》
 効果モンスター
 星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000
 このカードを通常召喚する場合、
 3体をリリースして召喚しなければならない。
 (1):このカードの召喚は無効化されない。
 (2):このカードの召喚成功時には、魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。
 (3):このカードは効果の対象にならない。
 (4):自分フィールドのモンスター2体をリリースして発動できる。
 相手フィールドのモンスターを全て破壊する。
 この効果を発動するターン、このカードは攻撃宣言できない。
 (5):このカードが特殊召喚されている場合、エンドフェイズに発動する。
 このカードを墓地へ送る。

 『三幻神』の中で一番原作に近く再現された『神』のカード。
 この耐性を少しでもラーに分けてくださいと百万人以上の決闘者が絶望した。
 この特殊召喚されても1ターンで消えるので三体リリースして通常召喚しなければ場に残らない『神』に使い道があるのか、作者も解らない。

 《光の創造神 ホルアクティ》
 効果モンスター
 星12/神属性/創造神族/攻 ?/守 ?
 このカードは通常召喚できない。
 自分フィールド上の、元々のカード名が「オシリスの天空竜」
 「オベリスクの巨神兵」「ラーの翼神竜」となるモンスターを
 それぞれ1体ずつリリースした場合のみ特殊召喚できる。
 このカードの特殊召喚は無効化されない。
 このカードを特殊召喚したプレイヤーはデュエルに勝利する。

 完全事故要因。これを出せるロマン溢れる状況はこれが無くてどうにでもなる状況に他ならない。
 このデッキ一番のエンタメ要素。《オシリスの天空竜》と《オベリスクの巨神兵》は1ターンだけならば『死者蘇生』と『早すぎた埋葬』で出せるが、《ラーの翼神竜》だけは特殊召喚出来ないので、まず揃う機会が絶無である。
 なので、普段は人知れずにデッキの奥底に眠っているか、墓地から誘発効果が発揮するカードが無い場合に捨てられるコスト要因にしかならない。 

 全盛期カオスが母体である以上、これらを含めた10枚の紙カードを抜いた方が絶対に回る。

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