遊戯王ARC-Ⅴ 混沌統べる覇者 -舞網チャンピオンシップ・バトルロワイヤル編-   作:咲夜泪

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 《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》
 効果モンスター(制限カード)
 星8/光属性/戦士族/攻3000/守2500
 このカードは通常召喚できない。
 自分の墓地の光属性と闇属性のモンスターを1体ずつ
 ゲームから除外した場合に特殊召喚できる。
 1ターンに1度、以下の効果から1つを選択して発動できる。
 ●フィールド上のモンスター1体を選択してゲームから除外する。
 この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。
 ●このカードの攻撃によって相手モンスターを破壊した場合、
 もう1度だけ続けて攻撃できる。

「魔法カード『次元融合』を発動し、除外ゾーンから可能な限りモンスターを特殊召喚する! ……!? 何故だぁ! 何故《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》を召喚した折に除外した《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》が蘇らない!?」
「甘いぜマリク! 正規の手順で召喚されていない特殊召喚モンスターには蘇生制限がかかり、『死者蘇生』『次元融合』を使っても復活出来ないぜ! あとそれとは関係無しに《ラーの翼神竜》は墓地から舞い戻らない!」
「おのれ、おのれええええええええええぇ!」

 ミスって蘇ってましたので修正しました。

 《増殖するG》
 効果モンスター
 星2/地属性/昆虫族/攻 500/守 200
 「増殖するG」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できず、
 相手ターンでも発動できる。
 (1):このカードを手札から墓地へ送って発動できる。
 このターン、以下の効果を適用する。
 ●相手がモンスターの特殊召喚に成功する度に、
 自分はデッキから1枚ドローしなければならない。

「《増殖するG》のモンスター効果が適応されるのは『特殊召喚が成功する度に』であって、一度に複数のモンスターが特殊召喚されても特殊召喚の回数そのモノは一回に過ぎないからドローする枚数は一枚なんだよねぇ! ひゃ~ひゃひゃひゃ! オレをデッキアウトさせて勝利するなんて不可能なのさ!」
「何勘違いしてるんだ」
「ひょ?」

「まだオレのバトルフェイズは始まってすらいないぜ! 《ダーク・ダイブ・ボンバー》の効果で《混沌の黒魔術師》を1体だけ射出! そしてこの段階で『次元融合』を使用して『次元融合』を回収する!」
「なっ! 遊戯のヤツ、あからさまに特殊召喚の回数を水増ししやがった!?」

 《増殖するG》の効果処理を修正、されども結末は変わらなかった模様。


03/世界の破壊者

「――アンタかい? 『融合次元』の決闘者六名を1ターンキルしたってのは?」

 

 火山エリアに到着した、全員が『LDS』出身のユーストーナメントを勝ち抜いたベスト8の決闘者達は『混沌』と対峙する。

 不特定な流体なのか、常に移ろい歪む『混沌』と表現するしかない敵性存在。唯一固定化されているのは異形のデュエル版とデッキだけであり、フィールドに設置していたカードが独りでに舞い飛んで収納され、高速でシャッフルされる。

 

「俺達は『融合次元』の雑魚のようにはいかないぜ。何なら一対一でも――」

『……一対八のバトルロイヤルルール。一ターン目はどのプレイヤーも攻撃宣言を行えない。先行は貰うが、他のハンデは必要無い。――君達の『アクションデュエル』、見せて貰おうか』

 

 正気の沙汰でない条件だが、六人の時とは違って後続のプレイヤーは攻撃出来ない。

 『融合次元』の決闘者より条件が緩いのは単に、普通のバトルロイヤルルールでは全員1ターン目の攻撃宣言は行えないという当たり前なルールを適応しているだけに過ぎなかっただけで、『混沌』が彼等を警戒した訳でも評価した訳でも無かった。

 

「――戦いの殿堂に集いし決闘者達が!」

「モンスターと共に地を蹴り!

「宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ! これぞデュエルの最強進化系!」

「アクショ~~ン!」

 

 

『――デュエル!』

 

 

 宣言と共にデッキからカードを五枚引く。

 

 《ラーの翼神竜》

 《オベリスクの巨神兵》

 《オシリスの天空竜》

 《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》

 『手札抹殺』

 

 ……この見事に事故った手札を見た『混沌』は、この三枚を含めた事故要素にしかならない九枚とその補助カード一枚をデッキからばっさり抜くか、割りと真剣に悩んだ。

 最後の一枚が『手札抹殺』じゃなかったら、デッキから効果が発動するインチキカードが無いのに「我はこれでターンエンド」と絶望する処である。

 

『……私のターン。手札から魔法カード『手札抹殺』を発動。全てのプレイヤーは手札を全部捨て、同じ枚数だけドローする』

「オレは『手札抹殺』にチェーンして《増殖するG》の効果を発動! このカードは手札から墓地へ送る事で相手がモンスターの特殊召喚に成功する度にデッキから1枚ドローする!」

 

 《増殖するG》、星2/地属性/昆虫族/攻500/守200の効果モンスター。

 特殊召喚しないデッキなどほぼ皆無な事から、相手が特殊召喚する度に手札アドバンテージを稼げる最良の一手だが――。

 

『……良いのか? それを私のデッキに使ってしまって。《増殖するG》のドロー効果は強制効果だぞ?』

 

 《増殖するG》が発動してから『手札抹殺』の効果で全プレイヤーは手札を全部捨て、同じ枚数だけドローする。

 《増殖するG》を発動させたプレイヤーのデッキの厚さから目測するに――手札4枚、墓地5枚、デッキ31枚。彼の末路が決まった瞬間である。

 

 『苦渋の選択』

 『死者蘇生』

 『早すぎた埋葬』

 『天使の施し』

 

 初手『手札抹殺』という手札一枚減るアド損を行った割にはすこぶる良い魔法カードが揃い――八人の決闘者から墓地に落ちたカードを確認する。

 八人中五人の初期手札から《エフェクト・ヴェーラー》が墓地に落ちており――このデッキに仕込まれた最も困難な、他人のデッキに完全依存のキルルートを使う事にした。

 

『魔法カード『苦渋の選択』発動、私が選んだのはこの五枚だ』

 

 《混沌の黒魔術師》

 《混沌の黒魔術師》

 《混沌の黒魔術師》

 《クリッター》

 《黒き森のウィッチ》

 

 手札にドローカード兼墓地肥やしを同時に行える『天使の施し』がある以上、どれを選んでも同じ結果である。

 

「僕は《混沌の黒魔術師》を選択する!」

 

 手札に《混沌の黒魔術師》一枚が加わり、残りは墓地に落ちる。2体のモンスターを生贄にしなければアドバンス召喚出来ない最上級モンスター故に腐るのを期待したのだろうが――。

 

『墓地に落ちた《クリッター》の効果発動、このカードが墓地に送られた時、デッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。私は攻撃力0の《エフェクト・ヴェーラー》を選択する』

 

 デッキから自動的にサーチした《エフェクト・ヴェーラー》を開示し、手札に加える。

 

 ――『カードは書き換えた』とはルールの根本を覆す迷言だが、それ以上に絶望的な迷言をするならば――『カードは書き換える(エラッタされる)前』である。

 書き換えられたこの二つのカードは場を経由して墓地に行かなければサーチ効果を発揮出来ないが、書き換えられる前はデッキから落ちてもその万能過ぎるサーチ効果を発揮したのだった――。

 

『同じく墓地に落ちた『黒き森のウィッチ』の効果発動、このカードが墓地に送られた時、デッキから守備力1500以下のモンスター1体を手札に加える。私は守備力1200の《処刑人 -マキュラ-》を選択する』

 

 『死者蘇生』

 『早すぎた埋葬』

 『天使の施し』

 《混沌の黒魔術師》

 《処刑人 -マキュラ-》

 《エフェクト・ヴェーラー》

 

『手札から魔法カード『天使の施し』発動、三枚ドローして二枚捨てる。私は《混沌の黒魔術師》と《処刑人 -マキュラ-》を捨てる』

 

 施しマキュラからの第六感とは懐かしい呪文だが、今回は引けなかった。

 

 『死者蘇生』

 『早すぎた埋葬』

 《エフェクト・ヴェーラ―》

 《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》

 『次元融合』

 『魔力倹約術』

 

 ――が、既に『勝利の方程式』は手札に揃ってしまっていた。

 

 このデッキのメインエンジンである《混沌の黒魔術師》が書き換えられる前である以上、この時点で勝敗は決まったようなものだった。

 こんな寄せ集めの決闘者達では満足出来ないとデッキ自身が語り掛けて来るような無慈悲さである。

 

『手札から永続魔法『魔力倹約術』を発動する。このカードがある限り、魔法カードを発動する為に支払うライフコストが必要無くなる』

 

 単体では余り役立たない効果だが、このカードと『次元融合』・《混沌の黒魔術師》が組み合わさった時、古の最凶コンボが新たな『力』を得て復活する。

 

『『死者蘇生』発動、私が選択するのは他の墓地に眠るレベル6のモンスター……ふむ、懐かしいものがあるな――《人造人間-サイコ・ショッカー》を特殊召喚する』

 

 ???

 LP4000

 手札6→4

 《人造人間-サイコ・ショッカー》星6/闇属性/機械族/攻2400/守1500

 魔法・罠カード

  永続魔法『魔力倹約術』

 

 『死者蘇生』で特殊召喚した事で《増殖するG》を発動したデュエリストが無言で1枚ドローする。これで手札5枚、墓地5枚、デッキ30枚。

 

『《エフェクト・ヴェーラー》を通常召喚し、レベル6の《人造人間-サイコ・ショッカー》にレベル1の《エフェクト・ヴェーラー》をチューニング。闇から出でよ、鉄血の翼! 黒き暴風となりて、全ての敵に死を与えん! シンクロ召喚――現われろ、シンクロが生み出した世界の破壊者! 《ダーク・ダイブ・ボンバー》!』

 

 ???

 LP4000

 手札4→3

 《ダーク・ダイブ・ボンバー》星7/闇属性/機械族/攻2600/守1800

 魔法・罠

  永続魔法『魔力倹約術』

 

 本日の1ターンキルの主役、機械仕掛けの悪魔が早くも姿を現す。

 彼のデッキの構成上、これをシンクロ召喚する機会は他人の墓地から星6モンスターを蘇生した時限定である。

 世界の破壊者をシンクロ召喚した事により、《増殖するG》発動したデュエリストが2枚目をドロー、手札6枚、墓地5枚、デッキ(余命)29枚。

 

『『早すぎた埋葬』発動、800ポイントを支払い、墓地から《混沌の黒魔術師》を特殊召喚する。なおライフコストは『魔力倹約術』の効果で踏み倒しているので消費無し。特殊召喚に成功した事で効果発――』

「待てっ! 僕は手札から《エフェクト・ヴェーラー》の効果発動! 相手のメインフェイズにこのカードを手札から墓地に送り、相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする!」

 

 ???

 LP4000

 手札3→2

 《ダーク・ダイブ・ボンバー》星7/闇属性/機械族/攻2600/守1800

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 魔法・罠カード

  永続魔法『魔力倹約術』

  装備魔法『早すぎた埋葬』

 

 『手札抹殺』で《エフェクト・ヴェーラー》を落としていないデュエリストからチェーンされて妨害が入り、特殊召喚された《混沌の黒魔術師》の効果は無効化、メインエンジンである『死者蘇生』を回収出来なくなる。

 《増殖するG》を発動させたデュエリストはにやにやと笑いながら3枚目をドロー、これで手札7、墓地5枚、残りデッキ28枚である。

 

『……ふむ、効果を無効にされた事で墓地の魔法カードを回収出来ない。この効果を止められてしまってはこのデッキは動けなくなるな――と思っているのならば、この言葉を送らなければなるまい』

 

 この時ばかりは表情の無い『混沌』が――。

 

 

『――それはどうかな?』

 

 

 顔を酷く歪ませて邪悪に嘲笑って――或いは自信満々に勝ち誇るように微笑んでいるように見えた。

 

『墓地の光属性《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》と闇属性《処刑人 -マキュラ-》を除外。《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》を特殊召喚する』

 

 ???

 LP4000

 手札2→1

 《ダーク・ダイブ・ボンバー》星7/闇属性/機械族/攻2600/守1800

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》星8/光属性/戦士族/攻3000/守2500》

 魔法・罠カード

  永続魔法『魔力倹約術』

  装備魔法『早すぎた埋葬』

 

 

 最初の事故手札に光属性の《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》が落ちてなければ此処で止まってしまっていただろう。

 《増殖するG》を発動しているデュエリストは少し驚いたような素振りを見せて4枚目ドロー、手札8枚、墓地5枚、残りデッキ27枚。

 

『《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》の効果発動、私は《混沌の黒魔術師》を除外する』

「自分のカードを除外だと!?」

 

 場の《混沌の黒魔術師》は即座に味方の《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》の効果によって除外ゾーンに直行し――すると同時に装備魔法の『早すぎた埋葬』は破壊され――『混沌』は最後の手札を指先で摘んでくるりと開示した。

 

『手札から『次元融合』発動、ライフコスト2000支払い、除外されたモンスターを可能な限り召喚する。『魔力倹約術』の効果でライフ支払いは踏み倒している。私は《混沌の黒魔術師》と《処刑人 -マキュラ-》を特殊召喚する――除外ゾーンに《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》が1体いるが、召喚条件を満たしていない為、特殊召喚出来ない』

 

 ???

 LP4000

 手札1→0

 《ダーク・ダイブ・ボンバー》星7/闇属性/機械族/攻2600/守1800

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》星8/光属性/戦士族/攻3000/守2500》

 《処刑人 -マキュラ-》星4/闇属性/戦士族/攻1600/守1200

 魔法・罠カード

  永続魔法『魔力倹約術』

 

 一瞬にして場が埋まり――《増殖するG》を発動させたデュエリストは5枚目を震える手でドローし、手札9枚、墓地5枚、残り26枚となる。

 《増殖するG》の効果が適用されるのは特殊召喚が成功する度に、であり、一度に複数体特殊召喚されても特殊召喚が行われたのは一回なのでドロー出来る枚数も一枚である。

 

『《混沌の黒魔術師》の効果発動、墓地の魔法カード『死者蘇生』を回収し、『死者蘇生』を発動、《混沌の黒魔術師》を蘇生して『死者蘇生』を回収する』

 

 ――そして戻ってはいけない魔法カードが『混沌』の手に舞い戻る。

 

 《増殖するG》を発動させたデュエリストは強制効果によって6枚目をドロー、手札10枚、墓地5枚、デッキの残りは25枚となる。

 1ターン目で1体を除いて最上級モンスターが4体という布陣に戦慄するが、彼等は数の有利は動かない事を自分自身に言い聞かせる。

 

 ――そんなアドバンテージはもう次元の彼方に吹っ飛んでしまっているのに関わらず。

 

『さて、場が狭くなってきたな。《ダーク・ダイブ・ボンバー》の効果発動、自分フィールドのモンスター1体を生贄とし、生贄としたモンスターのレベル×200のダメージを相手に与える』

「は? 何だとォ!?」

 

 誰がどう見てもぶっ壊れ効果をいきなり宣言され――今日の晩飯何にしようという気軽さで最初の犠牲者が選択された。

 

『私はレベル8の《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》とレベル8の《混沌の黒魔術師》レベル4の《処刑人 -マキュラ-》を選択。レベルの合計は20、よって合計4000のバーンダメージを受けて貰おう』

「ぐぅああああああああああああああぁ!?」

 

 1ターン目に関わらず、即死級のバーンダメージで早くも一人脱落し、残り七名となる。

 

『――『死者蘇生』で《混沌の黒魔術師》を復活させて墓地の『次元融合』を回収する』

 

 《増殖するG》を発動したデュエリストは呆然としながら7枚目をドローし、手札11枚、墓地5枚、残り24枚となる。

 

『《ダーク・ダイブ・ボンバー》の効果発動、《混沌の黒魔術師》を射出、レベル8×2の1600ダメージ――大切な事は《混沌の黒魔術師》がフィールドを離れる時、自身の効果で除外される事だ』

「ぐぅっ、除外されるならもう『死者蘇生』では……はっ!?」

 

 1600という中途半端はバーンダメージを受けた決闘者は最後に《混沌の黒魔術師》が回収した魔法が『死者蘇生』ではない事に気付き――。

 

『魔法カード『次元融合』発動。除外された三体の《混沌の黒魔術師》を特殊召喚する』

 

 8枚目をドローして手札12枚、墓地5枚、残り23枚――。

 

『《混沌の黒魔術師》の効果発動、『次元融合』『死者蘇生』『手札抹殺』を回収する』

「なっ、無限ループだとぉ!?」

 

 《増殖するG》を発動したデュエリスト以外は無限ループによるバーンダメージで即死する未来を絶望と共に目の当たりにし、《増殖するG》を発動したデュエリストはこのままデッキアウトで敗北する未来を絶望と共に目の当たりにする。

 

「だ、誰か止めろッ! このままじゃ……!」

「おい、お前っ! 《増殖するG》でカード引きまくってるだろ!? 《エフェクト・ヴェーラー》は!?」

「……う、一枚だけ入れた《エフェクト・ヴェーラー》は、最初の『手札抹殺』で墓地に……」

 

 希望が完全に途切れる。このままではただ1ターンキルされるのを待つばかり――絶望で足を屈するよりも疾く彼等は走っていた。

 そしてその内の一人がフィールド内に散りばめられているアクション魔法を走り転がりながら拾い、即座に発動させる。

 

「アクション魔法『フレイムボール』発動! 相手プレイヤーに200ポイントのダメージを与える!」

 

 火の玉が走り、『混沌』に直撃する。ライフポイントにして200、残りLP3800となり――身動ぎ一つせず、されども確かに笑ったように見えた。

 

 

『――頑張れ、そのアクション魔法をあと19回発動させれば私のライフを0に出来るぞ』

 

 

 それは無駄な抵抗と邪悪に嘲笑ったのか、それとも最後まで諦めずに挑戦し続ける者を尊いと憧れたのか――どちらにとるかを聞くには、追い詰められた彼等には酷な話だった。

 

『《ダーク・ダイブ・ボンバー》の効果発動、《混沌の黒魔術師》を三体射出! ニ人目爆殺ッ!』

「うわあああああああああああああああああああああぁっ!」

 

 LP1600減っていた決闘者に無慈悲に《ダーク・ダイブ・ボンバー》三発の4800ダメージがぶちこめられ――。

 

『魔法カード『次元融合』発動、フィールドに舞い戻れ《混沌の黒魔術師》。回収するのは『次元融合』『苦渋の選択』『天使の施し』』

 

 9枚目をドロー、手札13枚、墓地5枚、残り22枚――。

 

『《ダァァク・ダイブ・ボンバァァァ》! 1体射出して『次元融合』、効果で『次元融合』回収、また1体射出して『次元融合』、『次元融合』回収して1体射出、三人目爆☆殺ッ! 『次元融合』で《混沌の黒魔術師》1体蘇生、『次元融合』を回収する』

 

 明らかに違う意図をもって効果処理を1体ずつ行い、三人目の決闘者のライフを0にする。

 この意図的な調整を眼にした《増殖するG》を発動させているデュエリストは「あ、あ、あ、あ」と情けなく呻きながら小刻みに震える手で10、11、12枚目をドロー、手札16枚、墓地5枚、残り19枚――。

 

『《ダーク・ダイブ・ボンバー》で三体射出、四人目爆殺! 『次元融合』で《混沌の黒魔術師》三体特殊召喚。『次元融合』を回収。《ダーク・ダイブ・ボンバー》で五人目爆殺ッ! 『次元融合』で《混沌の黒魔術師》を場に戻して『次元融合』を回収してから《ダーク・ダイブ・ボンバー》で六人目爆殺! 次元融合で《混沌の黒魔術師》復活《ダーク・ダイブ・ボンバー》で七人目爆殺ゥッ!』

 

 これで場に立っているのは最初に《増殖するG》を発動させたデュエリスト唯一人のみ。もう自棄糞じみた挙動で13、14、15枚目をドロー、手札19枚、墓地5枚、デッキ残り16枚、遂に手札とデッキの枚数が逆転してしまい――。

 

『――『次元融合』で《混沌の黒魔術師》三体を帰還させてから魔法カード『手札抹殺』発動。さぁ、手札を全部捨てて同じ枚数分ドローするんだ』

 

 16枚目をドローし、手札20枚、墓地5枚、デッキ残り15枚となり、『手札抹殺』の効果で手札20枚を全部捨てて、20枚ドロー――エラー、エラー、エラー、エラー、エラー!

 

 

『――デッキからカードをドロー出来ない時、そのプレイヤーは敗北となる』

 

 

 

 

 

「精鋭揃いのユースチームが、1ターンで全滅……!? まるで相手になってないぞ!」

 

 『LDS』のユースチームの惨敗に中島は叫ばずにはいられなかった。

 結果として新しいキルルート、それも他のデッキに眠るモンスター依存の、希少極まるシンクロギミックが明かされただけであり、勝負にすらなってなかった。

 

「――これならば柊柚子一人の方が健闘していたな」

 

 その『LDS』の頂点、社長たる赤馬零児がそう言うのも無理もない。

 それを失望と捉えた中島は、即座に感情のままに進言する。

 

「社長、こうなったらトップチームをっ!」

「無駄だ。今の『LDS』に他次元の決闘者と渡り合う力は無い。――私が『ランサーズ』の結成を決意した理由を忘れたとは言わせんぞ」

 

 それを言われては言葉も出ない。中島は悔しさに顔を歪ませながら口を閉ざす。

 エクシーズ次元の生き残りである黒咲隼による『LDS襲撃事件』から、トップチームさえも他次元の決闘者に太刀打ち出来ない事は既に証明されている。

 彼等は自身の次元の召喚法に生まれながら通じている為、最近になって融合・シンクロ・エクシーズという召喚法が流通した『スタンダード次元』の決闘者では一歩も二歩も劣るのは当然の話であり――だからこそ赤馬零児はこの『スタンダード次元』で生まれた新たな可能性『ペンデュラム召喚』に希望を見出し、その創始者である榊遊矢世代に期待を寄せているのである。

 

 ――故に、赤馬零児が抱いた感情は失望というよりも、やっぱりかという諦観に近かった。

 

「……? 社長、あれを……!」

 

 突如、中島がモニターの方に指差し――既に画面からは『混沌』の姿は無くなり、あれに蹴散らされた決闘者達の姿が、とその時点で違和感に気づく。

 デュエルで敗北したのに関わらず、彼等は消滅しておらず――鈍いながらも起き上がっている者もいた。

 

「生きている……? それに、カード化もされていない……?」

 

 

 

 




 本日の禁止カード

 《クリッター》
 効果モンスター(禁止カード)
 星3/闇属性/悪魔族/攻1000/守 600
 このカードが墓地におかれた時、
 自分のデッキから攻撃力1500以下のモンスターを1枚手札に加え、
 デッキを切り直す

 ――絶望の呪文『カードは書き換える(エラッタ)前』
 エラッタ後のテキストは

 このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
 デッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。

 と、フィールドに出る事を挟んでいるが、エラッタされた後も禁止カードである。

 このデッキにおいて『苦渋の選択』に紛れ込ませておくだけで手札アドバンテージになる頭おかしいカード。
 多分、機会は無いだろうが、混沌帝龍のリセット効果使う時に場か手札にいたら、そのまま《八咫烏》サーチされて八咫ロックが飛んでくる。相手は死ぬ。
 当然全盛期のカオスデッキなので《八咫烏》が入っている。

 《黒き森のウィッチ》
 効果モンスター(禁止カード)
 星4/闇属性/魔法使い族/攻1100/守1200
 このカードが墓地におかれた時、
 自分のデッキから守備力1500以下のモンスターを1枚手札に加え、
 デッキを切り直す。

 《クリッター》の守備力版。このデッキの場合、マキュラをサーチされるか、即座に守備力1000の《ダーク・アームド・ドラゴン》をサーチされ、絶望の呪文『ボチヤミサンタイ』を聞く羽目になる。

 《ダーク・ダイブ・ボンバー》
 シンクロ・効果モンスター
 星7/闇属性/機械族/攻2600/守1800
 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
 自分フィールド上のモンスター1体をリリースして発動できる。
 リリースしたモンスターのレベル×200ポイントダメージを相手ライフに与える。

 絶望の呪文『カードは書き換える(エラッタ)前』

 シンクロが生み出した世界の破壊者。
 先輩のキャノンソルジャー、カタパルトタートルを押しのけて採用されており――そもそもチューナーが《エフェクト・ヴェーラー》のみ、自分自身のデッキで容易に出すギミックを入れてない当たり、禁止制限を守らない『混沌』さえ出しにくいように自重している。
 もう誰が見てもぶっ壊れなので説明もいらないだろう。

 絶望の呪文『サモサモキャットベルンベルンDDBDDB』相手は死ぬ。

 エラッタ後は1ターンに1度しか使用出来ないという記述が書き込められ、無制限になって釈放された。

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