遊戯王ARC-Ⅴ 混沌統べる覇者 -舞網チャンピオンシップ・バトルロワイヤル編-   作:咲夜泪

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03/集いし願い

 『時械神』の効果を防げないのならば、場にモンスターを置いておく必要は無いという大胆不敵な戦術――確かに、如何に全能の『時械神』と言えども13000ものライフを一気に削り切る手段は限られている。

 

「私のターン、ドロー! そしてスタンバイフェイズ、3体の『時械神』は自身の効果でデッキに戻る」

 

 そして『時械神』の中で随一の凶悪効果を持つ《時械神サンダイオン》はこのターンにデッキに戻ってしまい――否、デッキに戻ってしまうのならば再び引いてしまえば良い。

 

「魔法カード『暗黒界の取引』発動、互いのプレイヤーは1枚ドローし、1枚捨てる。永続罠『便乗』の効果で私は更に2枚ドローする!」

 

 Z-ONE

 LP5400

 手札5→7→9→11→12→11→12→11→13

  無し

 魔法・罠カード

  永続罠『便乗』

  永続罠『無限械アイン・ソフ』

 

 『暗黒界の取引』と『便乗』の効果で新たに3枚ドローし――デッキに戻った《時械神サンダイオン》が再び『彼』の手に舞い戻った。

 

「魔法カード『ハーピィの羽根帚』を発動、相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する! これで貴方の『希望』も終わりだ……!」

 

 その前に、前のターンに伏せられた最後の希望を摘み取る為にフィールドの魔法・罠カードを一掃する無慈悲な魔法カードを発動させる。

 これが通れば、『混沌』はもう何も出来ずに終わりだ――!

 

『永続罠『王宮の勅命』発動! このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上の魔法カードの効果を無効にする。このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に700ポイント支払うか、支払わずにこのカードを破壊するか、選択出来る』

 

 これ一枚で魔法カード全てを封殺する問答無用のパワーカード、だが『彼』の手札には更なる速攻魔法が握られている――!

 

「チェーンして速攻魔法『サイクロン』発動! 対象は『王宮の勅命』! これで『ハーピィの羽根帚』が通って全ての魔法・罠カードが――」

『――それは通さない。カウンター罠『神の宣告』発動! ライフを半分支払い、魔法・罠カードの発動を無効にして破壊する!』

 

 ???

 LP13100→6550

 

 ライフ半分という大きすぎるコストを支払ってまで『サイクロン』を阻止し、『王宮の勅命』を死守し、『彼』の『ハーピィの羽根帚』は効力を発揮出来ずに霧散した。

 

「――ならばっ! 永続罠『無限械アイン・ソフ』を墓地に送り、永続罠『無限光アイン・ソフ・オウル』を発動ッ!」

 

 二つの輪っかが光となって消えて、三つの輪っかとなって復活する。

 

「『無限光アイン・ソフ・オウル』の効果により、手札の『時械神』5体を特殊召喚する!」

 

 『彼』の『D-ホイール』に外付けされた機械仕掛けの腕が5枚もの『時械神』を一気に投げ――光の輪っかを通って5体の『時械神』達はフィールドに降誕する。

 

「――見るが良い、『時械神』の無限の力を! 現われろ《時械神ガブリオン》《時械神ザフィオン》《時械神メタイオン》《時械神ミチオン》、そして《時械神サンダイオン》!」

 

 Z-ONE

 LP5400

 手札13→12→11→10→5

 《時械神ガブリオン》星10/水属性/天使族/攻0/守0

 《時械神ザフィオン》星10/水属性/天使族/攻0/守0

 《時械神メタイオン》星10/炎属性/天使族/攻0/守0

 《時械神ミチオン》星10/炎属性/天使族/攻0/守0

 《時械神サンダイオン》星10/光属性/天使族/攻4000/守4000

 魔法・罠カード

  永続罠『便乗』

  永続罠『無限光アイン・ソフ・オウル』

 

 ――圧巻、まさにその一言に尽きる。

 

 1体でも下手な『神』よりも強大な『神』たる『時械神』が、一気に5体も並ぶ。更には――。

 

「永続罠『無限光アイン・ソフ・オウル』の効果は手札のレベル10以上のモンスターを特殊召喚する事が出来るだけではなく、『時械神』と名のついたモンスターを1体以上存在する事が出来、更にスタンバイフェイズにデッキに戻る効果を無効にする。――『無限械アイン・ソフ』にあった攻撃力を0にする効果は無い。よって《時械神サンダイオン》の攻撃力は4000!」

 

 先程は攻撃力0だった《時械神サンダイオン》が真の力を取り戻し、圧倒的な威容を誇る。

 

「バトル――これで終わりですね。残念です、貴方の言う『希望』など、私の前では無に等しい……!」

 

 《時械神サンダイオン》の攻撃が通っただけで4000、効果で更に4000なのに、他にも即死級の効果を持つ『時械神』があと4体もおり――。

 

 

『――そう、このターンで私のライフを0にしたくば、『時械神』を出し惜しみせず『3体』以上出すしかあるまい。賭けの部分が若干強かったけどね』

 

 

 残り2枚の伏せカードがある以上、『彼』が全力を尽くすのは当然の事であり――。

 

『永続罠『血の代償』を発動! ライフを500ポイント支払う事でモンスター1体を通常召喚する。この効果は自分のメインフェイズ時及び相手のバトルフェイズ時にのみ発動出来る!』

 

 『混沌』がライフを半分削ってまで死守した罠カードは相手のターンでも通常召喚出来る特異な罠カード、だが――。

 

「だが、この『時械神』を打ち破れるモンスターなど――」

『私は500ポイントのライフを支払い――君の《時械神サンダイオン》《時械神メタイオン》《時械神ミチオン》を生贄に捧げ、君の場に《ラーの翼神竜-球体形》を通常召喚する!』

 

 如何に完全耐性を誇っていようが、リリース出来るのならば『神』も普通のモンスターも同じ扱いである。

 3体の『時械神』を強制的に生贄に捧げられ――光り輝くほど目映い黄金の球体が、『彼』のフィールドに降誕した。

 

「何だと!? 私の『時械神』を生贄に……!?」

『《ラーの翼神竜-球体形》は特殊召喚出来ず、通常召喚する場合、自分フィールドのモンスター3体を生贄に捧げて自分フィールドに召喚するか、相手フィールドのモンスター3体を生贄に相手フィールドに召喚しなければならない。召喚したこのカードのコントロールは次のターンのエンドフェイズにならければ元々の持ち主たる私の場に戻らないが――更に永続罠『洗脳解除』発動! このカードがフィールド上に存在する限り、自分と相手のフィールド上に存在する全てのモンスターのコントロールは元々の持ち主に戻る! 我がフィールドに舞い戻れ《ラーの翼神竜-球体形》!』

 

 ???

 LP13100→6550→6050

 手札6

 《ラーの翼神竜-球体形》星10/神属性/幻神獣族/攻?→0/守?→0

 魔法・罠カード

  永続魔法『魔力倹約術』

  永続罠『血の代償』

  永続罠『洗脳解除』

  永続罠『王宮の勅命』

 

「っ、だが、私の場にはまだ《時械神ガブリオン》《時械神ザフィオン》がいる! バトル!」

『残念だが、《ラーの翼神竜-球体形》は攻撃出来ず――更に相手の攻撃・効果の対象にならない。私の場には《ラーの翼神竜-球体形》のみ、よって君の『時械神』は攻撃出来ない――攻撃出来ないのならば、その厄介な効果も発動出来ない!』

 

 残り2体の『時械神』も攻撃力0の黄金の球体を前に困惑したように立ち往生してしまい――攻撃する事さえ出来ず、残りの『時械神』は真価を発揮する事無くバトルフェイズは無情に終了してしまう。

 

「……っ、私は《時械神ガブリオン》《時械神ザフィオン》をリリースして《時械神カミオン》をアドバンス召喚、更に永続罠『無限光アイン・ソフ・オウル』の効果で《時械神サディオン》を特殊召喚する――」

 

 そして9種類目の『時械神』を敢えてアドバンス召喚し、10種類目の『時械神』を召喚し――条件が整ってしまった。

 

「永続罠『無限光アイン・ソフ・オウル』には、10種類の『時械神』を自分フィールドに召喚・特殊召喚している時、発動出来る効果がある!』

 

 『無限光アイン・ソフ・オウル』の三つの光の輪っかが共鳴し、一つに重なり――まるでシンクロ召喚の際に見られるチューニングモンスターの円陣のように――天空高く蒼い巨光を発する。

 蒼い柱が枝分かれし――10に枝分かれし、巨大な神樹を形成する。

 

「10の光からなる『時械神』の先に選ばれた聖者のみ扱う事が許される隠されたダァトがある! ――無は無限となり、無限の光から生まれる究極の時械神! 『無限光アイン・ソフ・オウル』の効果発動! このカードを墓地に送り、デッキ・手札・墓地から《究極時械神セフィロン》を特殊召喚する!」

 

 Z-ONE

 LP5400

 手札5→4→3

 《時械神カミオン》星10/地属性/天使族/攻0/守0

 《時械神サディオン》星10/風属性/天使族/攻0/守0

 《究極時械神セフィロン》星10/光属性/天使族/攻4000/守4000

 魔法・罠カード

  永続罠『便乗』

 

 『彼』の場に降臨するは正真正銘、究極の『神』――。

 

「《究極時械神セフィロン》の効果発動! 1ターンに1度、自分のデッキ・手札・墓地に存在する『時械神』を攻撃力4000にして可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する! 現われろ《時械神サンダイオン》《時械神ミチオン》!」

『なっ、効果も無効化せずに『時械神』が攻撃力4000で並ぶだとッ!?』

 

 流石の『混沌』も驚愕する。ただでさえ1体でも厄介な『時械神』を蘇生させ、更には攻撃力4000で再配置するなど、今までの全ての努力を無に帰する勢いである。

 

「《究極時械神セフィロン》の攻撃力はフィールドに存在する『時械神』の合計となる!」

 

 Z-ONE

 LP5400

 手札3

 《時械神カミオン》星10/地属性/天使族/攻0/守0

 《時械神サディオン》星10/風属性/天使族/攻0/守0

 《究極時械神セフィロン》星10/光属性/天使族/攻4000→12000/守4000

 《時械神ミチオン》星10/炎属性/天使族/攻0→4000/守0

 《時械神サンダイオン》星10/光属性/天使族/攻4000/守4000

 魔法・罠カード

  永続罠『便乗』

 

『攻撃力12000……!?』

「次のターンで終わりだ、私はこれでターンエンド!」

 

 永続罠『無限光アイン・ソフ・オウル』が消えた事で『時械神』達は次のターンの『彼』のスタンバイフェイズ、デッキに戻るが――《究極時械神セフィロン》の効果でまた4体特殊召喚され、今度は攻撃力20000となって立ち塞がるだろう。

 

 《ラーの翼神竜-球体形》の効果で凌げるだけ凌ぐ――否、この効果は『ブレイクスルー・スキル』などでモンスター効果を無効化されただけで詰む。次のターンで打開されると考えてまず間違いないだろう。

 

 目の前にいるのは『混沌』が出遭った中でも最強級の決闘者、ならば――次が事実上、最後のターンとなるだろう。

 

 

『――さて、今日は引けるかな? 私のターン、ドローッッ!』

 

 

 デッキのトップが光輝き、『混沌』は全身全霊を賭けてドローする。

 

 ――あの時は引けなかった。またあの時は引けなかった。逆転の一手ほど、『混沌』は引く事が出来ない。

 

 だが、それで諦めるのかと言われれば、否、否である。

 次こそは、次こそはと、何度でも、何度でも挑戦し続ける。だからこそ、『混沌』は強き決闘者とのデュエルを求める。

 自身の限界を超える為に、不可能だと定められた『運命』をその手で変える為に――今度こそ、あの時ドロー出来なかった逆転のカードをその手に引く為に。

 

 そして引いたカードは――『勝利の女神』は文字通り、珍しく『混沌』に微笑んだ。

 

 ???

 LP6050

 手札5→6

 《ラーの翼神竜-球体形》星10/神属性/幻神獣族/攻0/守0

 魔法・罠カード

  永続魔法『魔力倹約術』

  永続罠『血の代償』

  永続罠『洗脳解除』

  永続罠『王宮の勅命』

 

『――スタンバイフェイズ、永続罠『王宮の勅命』のライフコストを支払わない事で破壊される』

 

 『王宮の勅命』が自壊し――それは封じられていた魔法カードの解禁を意味していた。

 

『《ファントム・オブ・カオス》を通常召喚、このカードは自分の墓地に存在する効果モンスター1体を選択し、ゲームから除外する事でエンドフェイズまで同名カードとして扱い、選択したモンスターと同じ攻撃力とモンスター効果を得る。この効果は1ターンに1度しか使用出来ない。このモンスターの戦闘によって発生する相手プレイヤーへの戦闘ダメージは0となる。私が選択するのは《オシリスの天空竜》であり、除外される』

 

 泥のような液状のモンスターが朧気ながら《オシリスの天空竜》を象り――。

 

『魔法カード『次元融合』発動! 2体の《混沌の黒魔術師》と《オシリスの天空竜》を特殊召喚する。三度降誕せよ《オシリスの天空竜》!』

 

 ???

 LP6050

 手札6→5→4

 《ラーの翼神竜-球体形》星10/神属性/幻神獣族/攻0/守0

 《ファントム・オブ・カオス》星4/闇属性/悪魔族/攻0→4000/守0→4000

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻?→4000/守?→4000

 魔法・罠カード

  永続魔法『魔力倹約術』

  永続罠『血の代償』

  永続罠『洗脳解除』

 

「此処でまた《オシリスの天空竜》だと……!? だが、そのモンスターでは《究極時械神セフィロン》には太刀打ち出来まい!」

『――尚、特殊召喚された《オシリスの天空竜》は自身の効果でエンドフェイズ時に墓地に送られる。《混沌の黒魔術師》の効果で『次元融合』だけ回収する』

 

 1ターンで自壊する『神』を何故今呼び出したのか――『彼』の疑問が氷解しない内に『混沌』は先を進める。

 

『ライフを500払って永続罠『血の代償』の効果発動、《ファントム・オブ・カオス》と2体の《混沌の黒魔術師》を生贄に――第二の『三幻神』《オベリスクの巨神兵》を召喚する!』

 

 ???

 LP6050→5550

 手札4→5→4

 《ラーの翼神竜-球体形》星10/神属性/幻神獣族/攻0/守0

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000

 《オベリスクの巨神兵》星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000

 魔法・罠カード

  永続魔法『魔力倹約術』

  永続罠『血の代償』

  永続罠『洗脳解除』

 

 瓦礫の山を木っ端微塵に粉砕して召喚されるは蒼き破壊神、『時械神』に匹敵するほどの威容と神性を秘めた『神』であり――。

 

『そして《ラーの翼神竜-球体形》の最後の効果発動! このカードを生贄に捧げ、手札・デッキから《ラーの翼神竜》を召喚条件を無視し、攻撃力・守備力を4000にして特殊召喚する! いでよ最後の『三幻神』――《ラーの翼神竜》ッ!』

 

 黄金の球体の内部から太陽の如き光が生じ――音を立てて変形し、組み上がっていく。

 そして現れるは黄金の不死鳥、最強の『神』が今、此処に降臨する――。

 

 ???

 LP5550

 手札4

 《ラーの翼神竜》星10/神属性/幻神獣族/攻?→4000/守?→4000

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000

 《オベリスクの巨神兵》星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000

 魔法・罠カード

  永続魔法『魔力倹約術』

  永続罠『血の代償』

  永続罠『洗脳解除』

 

「――これは、単なるモンスターではない……!? 『時械神』に匹敵する、『神』――?」

 

 黄金の不死鳥《ラーの翼神竜》、天空舞う巨竜《オシリスの天空竜》、全てを薙ぎ払う破壊神《オベリスクの巨神兵》が、《究極時械神セフィロン》を筆頭とした5体の『時械神』達と対峙する。

 

『――此処に全ての『三幻神』が揃った、これより『神』を束ねる! 私は《オシリスの天空竜》《オベリスクの巨神兵》《ラーの翼神竜》を生贄に捧げ――《光の創造神 ホルアクティ》を特殊召喚する!』

 

 そしてこのカードが、『混沌』が引き当てた『勝利の女神』だった――。

 

 ???

 LP5550

 手札4→3

 《光の創造神 ホルアクティ》星12/神属性/創造神族/攻?/守?

 魔法・罠カード

  永続魔法『魔力倹約術』

  永続罠『血の代償』

  永続罠『洗脳解除』

 

 《ラーの翼神竜》《オシリスの天空竜》《オベリスクの巨神兵》が暖かい光と共に消えて――全てを超越した『勝利の女神』がフィールドに降臨する。

 

 

 ――それは本来、『混沌』のデッキには無いもの、『混沌』を打ち破った決闘者から貰った『希望』がカードとして結実したもの――。

 

 

『このカードは通常召喚出来ず、自分のフィールド上の、元々のカード名が《オシリスの天空竜》《オベリスクの巨神兵》《ラーの翼神竜》となるモンスターをそれぞれ1体ずつ生贄に捧げた時のみ特殊召喚出来る。このカードの特殊召喚は無効化されず、このカードを特殊召喚したプレイヤーはデュエルに勝利する!』

「なっ、特殊、勝利――!?」

 

 《光の創造神 ホルアクティ》は『――『光創世(ジェセル)!』と宣言し、全ての『時械神』はその暖かく柔らかな光に飲み込まれ、静かに消えて行ったのだった――。

 

 

 

 

「――結局、私では、『不動遊星』になれなかった、という事ですか……?」

 

 まさかの敗北を経て、心底消沈しながら『彼』は『混沌』に問う。

 所詮は名無しの研究者が『英雄』を真似た処で『英雄』にはなれない。『混沌』が『足りない』と言ったのはそういう事であり――。

 

 ――『混沌』は迷いなく首を横に振って否定した。

 

『それは違う。確かに君は『英雄』になろうとした『誰か』だけど、『本物』になろうとする『偽物』が『本物』以下とは限るまい。『本物』以上に『本物』たらんとするからこそ『偽物』でも『本物』以上に光り輝ける事もある』

 

 『混沌』から発せられた声は何処までも優しく――。

 

 

『――もう、今の君にはあるよ。今も君の胸に残っていて輝いている。あの時、私が『足りない』と言ったものが――』

 

 

 まるで我が事を誇るように『混沌』は語る。

 

「……それは、一体……?」

『――『英雄』とは唯一人で『英雄』に成り得るものなのかな? 否、そうじゃないと私は思う。唯一人の『英雄』なんて脆くて弱い。そんな独り善がりに『運命』を変えられる筈があるまい。ならばこそ『英雄』を『英雄』たらしめる最大の要因は――『仲間との絆』じゃないかな?』

 

 そう、例え先立たれようとも――アンチノミー、アポリア、パラドックス――『仲間との絆』こそ『彼』を最後の最期まで支えてきた『希望』であり――。

 

『――私は見届ける事しか出来ないけど、まぁきっと何とかなるさ。何せこの世界の『破滅の運命』を変えようとする『英雄』は――』

 

 

 ――『英雄』は、『二人』もいるのだから――。

 

 

 希望に満ち溢れた言葉を言い残して、『混沌』はこの世界から消え果てた。

 最初の時と同じように予告無く、余韻すら残さず――。

 

「……言うだけ言って、勝手に消える。貴方はあの時と何一つ変わってないのですね――」

 

 ……やる事は何一つ変わらない。

 この『アーク・クレイドル』を『ネオ童実野シティ』に落とし、破滅の元凶たる『モーメント』ごと跡形も無く吹き飛ばす。

 

「……もしも、彼等『チーム5D's』が、『不動遊星』が私を止めれるまでに進化していたならば――」

 

 その過程で、もしも『チーム5D's』が、本物の『不動遊星』が自分を止める事が出来たのならば――『彼』は絶望しかなかった人生の最期に、一筋の流星の如く目映い『希望』を見い出せるに違いない。

 

 

 vsゾーン編――完。

 




 本日の禁止カード

 『血の代償』
 永続罠(禁止カード)
 500ライフポイントを払う事で、モンスター1体を通常召喚する。
 この効果は自分のメインフェイズ時及び
 相手のバトルフェイズ時にのみ発動できる。

 意外な事に、このカード、14/04/01まで使えた。
 初登場から禁止化されるまでの期間は実に14年9ヶ月と、禁止カードの中では歴代最長記録だったりする。
 ライフの続く限りガジェットを展開し続ける『代償ガジェット』の中核。

 《王宮の勅命》
 永続罠(禁止カード)
 このカードがフィールド上に存在する限り、
 フィールド上の魔法カードの効果を無効にする。
 このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に700ライフポイントを払う。
 または、700ライフポイント払わずにこのカードを破壊する。

 vsドン・サウザンドで使っていたような気がするが、紹介するのを忘れていた問答無用のパワーカード。
 ゲームの根幹に関わる魔法カードを完全封殺する効果でありながら、自分のスタンバイフェイズに任意で自壊させる事が出来る。
 こんなのを、時には《処刑人-マキュラ》の効果で手札から発動させてくる。

 尚、今現在、このカードが現役だったのならば、ペンデュラムゾーンに配置されたペンデュラムカードの効果は無効化出来るが、ペンデュラム召喚までは封じれない。
 そもそもペンデュラムゾーンに設置する事を許さない『魔封じの芳香』のメタ能力の方がペンデュラムにとって天敵である。

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