遊戯王ARC-Ⅴ 混沌統べる覇者 -舞網チャンピオンシップ・バトルロワイヤル編- 作:咲夜泪
『――そういえば、あの4つ以上の『次元』は1つの大元の本流が枝分かれした世界線。同じ人間の別の可能性が観測出来るのも当然と言えば当然か』
其処は『光』と『闇』の狭間、世界から隔離された者が永遠に彷徨う魔境にて、人の形しかしていない『混沌』は退屈を持て余したのか、寝そべりながら考察する。
『――もしかしたら、万が一、億が一、兆が一、京が一、那由多の彼方に揺蕩っているぐらいの可能性で、私の別の可能性がいるのかもしれないな』
恐らくは欠片も無いであろう可能性の話、仮定に仮定を重ねる与太話である。
そもそも、もう『混沌』には自分の出身次元が何処だったのかさえ思い出せない。探し当てて帰還したとしても悲しい事に実感すら出来ないだろう。
そして、かつての人間時代の自分の姿すら記憶に残っていない。那由多の彼方に揺蕩う可能性を探し当てたとしても、それがかつての己の別の可能性なのか、当人には認識すら出来ないだろう。……そもそも、男性だったのか、女性だったのか、それすら今の『混沌』には解らない。
――故に、この話は意味の無い妄想に過ぎない。
ifにifを重ねる、無価値な物語である事を最初に明記しておこう。
『……ふむ、それならば『融合次元』の『私』は――』
「――エクシーズ滅ぶべし! 『プトレ・ノヴァ・インフィ』絶対に許さねぇ! 裏切り者のサイバー流に裁きの鉄槌をッ!」
……此処には全く関係無い怨念をもって八つ当たりする決闘者は、意味不明な口実を叫び散らしながら『エクシーズ次元』の残党と決闘する。
「永続罠『便乗』発動、相手がドローフェイズ以外でカードをドローする度に自分のデッキからカードを2枚ドローする。……ドロー、ドロー、ドロー、永続罠『デモンズ・チェーン』を2つ発動、フィールドの効果モンスター1体を対象に発動、このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、その表側表示モンスターは攻撃出来ず、効果は無効化される。そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される」
???
LP4000
手札2→4→6→8
無し
魔法・罠カード
永続罠『便乗』
永続罠『デモンズ・チェーン』
永続罠『デモンズ・チェーン』
モンスターもおらず、がら空きだったが、『エクシーズ次元』のレジスタンスの決闘者は2体ものエクシーズモンスターを展開したものの、一切攻め切れずに「……ターンエンド!」と悔しげにターンを渡してしまう。
「私のターン、ドロー! ――おや、終わったようだね。まずは下準備にフィールド魔法《神縛りの塚》発動、フィールドのレベル10以上のモンスターは効果の対象にならず、効果では破壊されない。またフィールドのレベル10以上のモンスターが戦闘でモンスターを破壊し墓地に送った場合、破壊されたモンスターのコントローラーは1000ダメージを受ける」
???
LP4000
手札8→9→8
無し
魔法・罠カード
永続罠『便乗』
永続罠『デモンズ・チェーン』
永続罠『デモンズ・チェーン』
フィールド魔法『神縛りの塚』
「私の場には永続罠カードが3枚――罠カード3枚を墓地に送り、第一の幻魔《神炎皇ウリア》を特殊召喚する!」
???
LP4000
手札8→7
《神炎皇ウリア》星10/炎属性/炎族/攻0/守0
魔法・罠カード
無し
フィールド魔法『神縛りの塚』
3つの永続罠が砕け散って、巨大な炎の柱が立ち上り、現れたのは巨大な赤き龍だった。
「3枚の永続罠をリリースして攻撃力0……!?」
「このカードは通常召喚出来ない。自分フィールド上に表側表示で存在する罠カード3枚を墓地に送った場合のみ特殊召喚する事が出来る。――このカードの攻撃力は、自分の墓地の永続罠カード1枚につき1000ポイントアップする。よって3000となる。更に1ターンに1度だけ相手フィールド上にセットされている魔法・罠カード1枚を破壊する事が出来る。この効果の初動に対して魔法・罠カードを発動する事は出来ない。――トラップディストラクション!」
???
LP4000
手札7
《神炎皇ウリア》星10/炎属性/炎族/攻0→3000/守0
魔法・罠カード
無し
フィールド魔法『神縛りの塚』
「ぐっ、『聖なるバリア -ミラーフォース』が……!」
仕事をしない事に定評のある罠が無情に破壊され、2体のエクシーズモンスターが永続罠『デモンズ・チェーン』から開放されたものの、その2体を上回る攻撃力を持つ最上級モンスターの登場に尻込みする。
だが、このモンスターだけならばまだ返せる。次のターンでの反逆の機会を『エクシーズ次元』のレジスタンスは虎視眈々と待ち受ける。
「永続魔法『天変地異』発動、このカードがフィールド上に存在する限りお互いのプレイヤーはデッキを裏返しにしてデュエルを進行する。更に永続魔法『デーモンの宣告』発動、1ターンに1度、500ポイントのライフを支払い、カード名を宣言する。自分のデッキの一番上のカードをめくり、宣言したカードだった場合手札に加える。違った場合はめくったカードを墓地に送る。――私が宣言するカードは《降雷皇ハモン》」
???
LP4000→3500
手札7→6→5→6
《神炎皇ウリア》星10/炎属性/炎族/攻3000/守0
魔法・罠カード
永続魔法『天変地異』
永続魔法『デーモンの宣告』
フィールド魔法『神縛りの塚』
また、嫌な予感がするほどの邪気を放つカードが『融合次元』の決闘者の手札に行き――。
「更に永続魔法『平和の使者』発動――まぁ効果を発動しないから説明は省く。これで場に永続魔法が3枚揃った! 3枚の永続魔法をリリースして第二の幻魔《降雷皇ハモン》を特殊召喚する!」
???
LP3500
手札6→5→4
《神炎皇ウリア》星10/炎属性/炎族/攻3000/守0
《降雷皇ハモン》星10/光属性/雷族/攻4000/守4000
魔法・罠カード
無し
フィールド魔法『神縛りの塚』
3枚の永続魔法が瞬間氷結して砕け散り、迸る稲妻を轟かせて黄色の悪魔が降誕する。
「攻撃力4000の最上級モンスターだと?!」
「このカードは通常召喚出来ない。自分フィールド上に表側表示で存在する永続魔法カード3枚を墓地に送った場合のみ特殊召喚する事が出来る。――このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地に送った時、相手ライフに1000ポイントのダメージを与える。このカードが自分フィールド上に表側守備表示で存在する場合、相手は他のモンスターを攻撃対象に選択出来ない」
立て続けに出てきた最上級モンスターに心折れそうになるが、まだ、このターンで死ぬ事は無い。
フィールドは粉々に粉砕されるが、微かにライフは残る。その儚い希望を寄る辺に、震える両の足に活を入れる。
そして『融合次元』の決闘者はというと――敵対する決闘者など眼中に無く、そのデュエルは悪い意味で一人で完結していた。
「《幻銃士》を通常召喚する。このカードが召喚・反転召喚に成功した時、自分フィールド上に存在するモンスターの数まで自分フィールド上に《銃士トークン》(悪魔・闇・星4・攻/守500)を特殊召喚する事が出来る。私の場に存在するモンスターは合計3体、よって2体まで《銃士トークン》を特殊召喚する――これで悪魔族モンスターが3体揃った」
???
LP3500
手札4→3
《神炎皇ウリア》星10/炎属性/炎族/攻3000/守0
《降雷皇ハモン》星10/光属性/雷族/攻4000/守4000
《幻銃士》星4/闇属性/悪魔族/攻1100/守800
《銃士トークン》星4/闇属性/悪魔族/攻500/守500
《銃士トークン》星4/闇属性/悪魔族/攻500/守500
魔法・罠カード
無し
フィールド魔法『神縛りの塚』
「3体の悪魔族モンスターをリリースし、最後の幻魔《幻魔皇ラビエル》を特殊召喚する!」
そして天より蒼き光が降り注ぎ、地を破砕して現れるは巨大な蒼き悪魔であり――。
「このカードは通常召喚出来ない。自分フィールド上に存在する悪魔族モンスター3体をリリースした場合のみ特殊召喚する事が出来る。相手がモンスターを召喚する度に自分フィールド上に《幻魔トークン》(悪魔族・闇・星1・攻/守1000)を1体特殊召喚する。このトークンは攻撃宣言を行う事が出来ない。――1ターンに1度だけ、自分フィールド上のモンスター1体をリリースする事でこのターンのエンドフェイズ時までこのカードの攻撃力はリリースしたモンスターの元々の攻撃力分アップする」
???
LP3500
手札3→2
《神炎皇ウリア》星10/炎属性/炎族/攻3000/守0
《降雷皇ハモン》星10/光属性/雷族/攻4000/守4000
《幻魔皇ラビエル》星10/闇属性/悪魔族/攻4000/守4000
魔法・罠カード
無し
フィールド魔法『神縛りの塚』
「攻撃力4000のモンスターがまた……!?」
「まだだァ! ――そしてフィールドに『三幻魔』が全て揃った。3体の『幻魔』を除外し、究極の『幻魔』を融合召喚する!」
存在するだけで世界の全てが死滅しかねない邪悪を孕んだ『三幻魔』が除外され――『融合次元』の決闘者は両手の指と指を組み合わせ、『融合次元』特有の融合召喚する際のポーズを取る。
「――次元融合殺! 三つの『幻魔』の力を融合させ、混沌の闇より現出せよ《混沌幻魔アーミタイル》!」
迸る三つの邪気が融合されて召喚された悪神は、3体の『幻魔』が歪に融合合体した超巨大な威容だった。
「このカードは自分フィールド上に存在する《神炎皇ウリア》《降雷皇ハモン》《幻魔皇ラビエル》をゲームから除外した場合のみエクストラデッキから融合魔法カードを必要とせずに特殊召喚が可能。このカードは戦闘によって破壊されず、フィールド上に表側表示で存在する限りこのカードの攻撃力は自分のターンのみ10000ポイントアップする」
???
LP3500
手札2
《混沌幻魔アーミタイル》星12/闇属性/悪魔族/攻0→10000/守0
魔法・罠カード
無し
フィールド魔法『神縛りの塚』
「こ、攻撃力1万だとぉっ!?」
「バトル! 《混沌幻魔アーミタイル》で攻撃! 全土滅殺・転生波ァッ!」
『……無いわぁ。3体融合でむしろ弱体化するロマンカード使うとかマジ無いわぁ。というか『三幻魔』を正規召喚するとかエンタメ過ぎるだろうに――』
……『混沌』のメインデッキに眠るとある『モンスターカード』は、弱体化して見る影も無くなった『三幻神』と究極のロマンカードに過ぎない『自身』を今尚使う『混沌』らしい内容だと思ったが、敢えて突っ込まなかった。
……どうせ普段は『三幻魔』で遊んでいても「――ちょっと本気を出そうかな」なんて『融合次元』の決闘者お決まりの台詞を言って、ガチになったら『超融合』からの《旧神ノーデン》、速攻魔法『マスク・チェンジ』からの《M・HERO ダーク・ロウ》&永続罠『虚無空間』を繰り出して本気で潰しに掛かってくるだろう。
『……ふむ、そうなると『エクシーズ次元』の『私』は――』
「魔法カード『ソーラー・エクスチェンジ』発動! 手札から『ライトロード』と名のついたモンスター1体を捨ててデッキから2枚ドローし、その後自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送る。墓地に落ちた《ライトロード・ビースト ウォルフ》の効果発動、このカードがデッキから墓地へ送られた時、墓地から特殊召喚する」
???
LP4000
手札5→4→3→5
《ライトロード・ビースト ウォルフ》星4/光属性/獣戦士族/攻2100/守300
魔法・罠カード
無し
『融合次元』からの尖兵『アカデミア』所属のエリート部隊『オベリスク・フォース』は今日も『エクシーズ次元』の残党狩りに勤しんでいた。
彼等にとって『エクシーズ狩り』などただの単純作業、鼻歌混じりで行えるハンティングゲーム同然であり――奇しくもその隠れもせず堂々と表に歩いていた『エクシーズ次元の残党』の決闘者もまた同様の心持ちだった。
「更に2枚目の『ソーラー・エクスチェンジ』発動! 『ライトロード』と名のつくモンスターを1体捨てて2枚ドロー、デッキから2枚墓地に送り、3枚目の『ソーラー・エクスチェンジ』発動! 『ライトロード』を1枚捨てて2枚ドロー、デッキから2枚墓地に送る」
???
LP4000
手札5→4→3→5→4→3→5
《ライトロード・ビースト ウォルフ》星4/光属性/獣戦士族/攻2100/守300
魔法・罠カード
無し
超高速に自身のデッキを墓地に落としていく様に、『オベリスク・フォース』の決闘者は不審に思う。
早くもデッキの残り枚数が23枚、もう半分切る勢いでデッキが消えていっている。自分で自分のデッキを破壊し尽くす様を小馬鹿にする前に、言い知れぬ恐怖を抱く。
「墓地に落ちた《Emトリック・クラウン》の効果発動! 1ターンに1度、このカードが墓地に送られた場合、自分の墓地の『Em』モンスター1体を攻撃力0にして特殊召喚し、その後、自分は1000ダメージを受ける。――ダメージを受けた事で墓地の《H・C サウザンド・ブレード》の効果発動、1ターンに1度、このカードが墓地に存在し、戦闘・効果で自分がダメージを受けた時、このカードを墓地から攻撃表示で特殊召喚する」
???
LP4000→3000
手札5
《ライトロード・ビースト ウォルフ》星4/光属性/獣戦士族/攻2100/守300
《Emトリック・クラウン》星4/光属性/魔法使い族/攻1600→0/守1200→0
《H・C サウザンド・ブレード》星4/地属性/戦士族/攻1300/守1100
魔法・罠カード
無し
「なっ、召喚権も使ってないのにレベル4のモンスターが早くも3体だとぉ!? ……っ、来るか……!」
「レベル4の《Emトリック・クラウン》と《H・C サウザンド・ブレード》でオーバーレイ! エクシーズ召喚! 現われろランク4《ライトロード・セイント ミネルバ》!」
???
LP3000
手札5
《ライトロード・ビースト ウォルフ》星4/光属性/獣戦士族/攻2100/守300
《ライトロード・セイント ミネルバ》ランク4/光属性/天使族/攻2000/守800 ORU2
魔法・罠カード
無し
エクシーズ召喚されるは白い聖衣を纏い、右手に光輝く黄金の杖、左手に穢れ一つ無き純白の梟を従わせる天使族の聖女であり、その憂鬱気な顔は一体何を思っているのか――。
「《ライトロード・セイント ミネルバ》の効果発動、1ターンに1度、オーバーレイユニットを一つ使い、自分のデッキの上から3枚墓地に送り、その中に『ライトロード』カードがあった場合、その数だけ自分はデッキからドローする!」
「何だと? まだ自分のデッキを圧縮するつもりか……!?」
この時点で『オベリスク・フォース』の決闘者がこのデッキは自身のデッキを墓地に送る事で規格外の早さでモンスターを高速展開をするものだと気づいた。
「墓地に落ちたのは罠カード『ライトロードの裁き』、《ライトロード・アーチャー フェリス》が2枚、よって3枚ドローする。更に墓地に落ちた3枚の効果発動! 『ライトロードの裁き』が『ライトロード』モンスターの効果でデッキから墓地へ送られた場合、デッキから《裁きの龍》1体を手札に加える。《ライトロード・アーチャー フェリス》の効果発動、このカードがモンスターの効果でデッキから墓地へ送られた場合、このカードを特殊召喚する!」
???
LP3000
手札5→8→9
《ライトロード・ビースト ウォルフ》星4/光属性/獣戦士族/攻2100/守300
《ライトロード・セイント ミネルバ》ランク4/光属性/天使族/攻2000/守800 ORU2→1
《ライトロード・アーチャー フェリス》星4/光属性/獣戦士族/攻1100/守2000
《ライトロード・アーチャー フェリス》星4/光属性/獣戦士族/攻1100/守2000
魔法・罠カード
無し
そして、場にはレベル4のモンスターがまた3体揃ってしまった。
揃ってしまったからには、来るのは間違いなく『奴』である。
「レベル4の《ライトロード・ビースト ウォルフ》と《ライトロード・アーチャー フェリス》2体でオーバーレイ! 3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚! 現われろ希望の力、ランク4《星守の騎士 プトレマイオス》!」
???
LP3000
手札9
《ライトロード・セイント ミネルバ》ランク4/光属性/天使族/攻2000/守800 ORU1
《星守の騎士 プトレマイオス》ランク4/光属性/戦士族/攻550/守2600 ORU3
魔法・罠カード
無し
エクシーズ召喚されたのは文字通り人馬一体となった白銀の星の鎧騎士であり、このデュエル、早くも終了である。
「《星守の騎士 プトレマイオス》の効果発動! このカードのオーバーレイユニットを3つ使って発動、『No.』モンスター以外の、このカードよりランクの1つ高いエクシーズモンスター1体を自分フィールドのこのモンスターに重ねてエクシーズ召喚扱いでエクストラデッキから特殊召喚する! 『サイバー流』が到達した新たな地平! ランク5《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》!」
???
LP3000
手札9
《ライトロード・セイント ミネルバ》ランク4/光属性/天使族/攻2000/守800 ORU1
《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》ランク5/光属性/機械族/攻2100/守1600 ORU1
魔法・罠カード
無し
出てきたのは白銀の躯に狂気の光が煌めく機械仕掛けのドラゴン、鋼の翼を羽撃かせて咆哮する。
尚、この『エクシーズ次元』の決闘者に『下敷き』の効果を説明する気が欠片も無いが、1ターンに1度、このカードのオーバーレイユニットを1つ使って自分の墓地の《サイバー・ドラゴン》1体を選択して特殊召喚する効果と、1ターンに1度、相手のターンでも自分の手札・フィールド上の《サイバー・ドラゴン》1体を除外してこのカードの攻撃力をエンドフェイズまで2100ポイントアップする速効性の効果を持っている。
……この『下敷き』の段階で排除しようものなら、最後の隠されていない効果、相手の効果によって墓地に送られた場合、機械族の融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する効果があり――最後っ屁で攻撃力4000の貫通効果持ちの《サイバー・エンド・ドラゴン》の降臨を招きかねない。
――まぁ、これから出てくる史上最悪の『エクシーズモンスター』と比べるなら、たかが攻撃力4000なだけの脳筋モンスターなど比べるに足らぬほどマシであるが。
「更に私はランク5の《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》でオーバーレイ! 1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築する! エクシーズチェンジ! これが新たな『サイバー流』の天地開闢! エクシーズによる希望の未来! ランク6《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》!」
更に禍々しく、攻撃的なフォルムになった《サイバー・ドラゴン》の最終形態がフィールドに降臨してしまう。
……これが現代の破滅の呪文『プトレ・ノヴァ・インフィ』である。
???
LP3000
手札9
《ライトロード・セイント ミネルバ》ランク4/光属性/天使族/攻2000/守800 ORU1
《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》ランク6/光属性/機械族/攻2100→2500/守1600 ORU2
魔法・罠カード
無し
「《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》は1ターンに1度、自分フィールドの『サイバー・ドラゴン・ノヴァ』の上に重ねてエクシーズ召喚する事も出来る。このカードの攻撃力はこのカードのオーバーレイユニットの数×200アップする。――1ターンに1度、フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象に、そのモンスターをこのカードの下に重ねてオーバーレイユニットとする。また、1ターンに1度、カードの効果が発動した時、このカードのオーバーレイユニットを1つ使ってその発動を無効にして破壊する」
「――は……?」
……『融合次元』の決闘者が絶句するのも無理はない。
この《サイバー・ドラゴン》は今まで『パワーボンド』や『リミッター解除』を引いて殺すか引けずに死ぬかだった『サイバー流』に足りなかった(物凄いレベルでオーバースペック過ぎて『サイバー流』じゃなくても使われる類の)戦線を維持する大型モンスターである。
第一の効果であるオーバーレイユニットの数だけ火力上昇、これは1つにつき200しかアップしない為、おまけのような効果であるが、プトレ・ノヴァ・インフィと重ねるだけで2つは確定しているので攻撃力2500――1つ敵モンスターを吸収したら2700という嫌がらせ以外の何物でもない数字になってしまっている。……今の時代に攻撃力2800で寝取り効果を持っている《ゴヨウ・ガーディアン》がいれば、ヤツの跳梁跋扈に少しは歯止めを……。
第二の効果、攻撃表示モンスターをオーバーレイユニットとして吸収するもの。
殴り殺すだけだった『サイバー流』に与えられた突然変異の超凶悪効果であり、同じような効果を持っている『No.101』よりも条件が緩く広い。
そして第三の効果、オーバーレイユニットを1つ使い、1ターンに1度、あらゆるカードの効果を無効にして破壊する。
……なんで1つでも凶悪無比なる効果を2つ併せ持ち、更に弱点を補っているのだろうか、これをデザインした者は疑問に思わなかったのだろうか……?
つまりは、片っ端から相手の効果を無効にして破壊しつつも攻撃表示のモンスターをオーバーレイユニットにして(敵が攻撃表示で出さなくても、自分から攻撃表示のモンスターを出して吸収させる事も出来る)戦線維持どころかこれ1体で戦線制圧する『戦略兵器』となってしまっているのだ。
……こんなのが禁止制限に叩き込まれずに無制限で生き生きとしているのだから、デュエルモンスターズの抱える闇は深い。
《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》を出されてしまったからには膨大なアド損を覚悟して叩き潰しに行かねばならず、他の罠などで妨害されて果たせなかった時は完全に詰んでゲームセットになる。
「手札から《ブリキンギョ》を通常召喚、このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4モンスター1体を特殊召喚出来る。私はレベル4の《ライトロード・アサシン ライデン》を特殊召喚する」
???
LP3000
手札9→8→7
《ライトロード・セイント ミネルバ》ランク4/光属性/天使族/攻2000/守800 ORU1
《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》ランク6/光属性/機械族/攻2500/守1600 ORU2
《ブリキンギョ》星4/水属性/機械族/攻800/守2000
《ライトロード・アサシン ライデン》星4/光属性/戦士族/攻1700/守1000
魔法・罠カード
無し
さて、残念なお知らせをする事になるが、まだこの『エクシーズ次元』の負け犬決闘者、通常召喚権を使用せずに《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》を繰り出していた。
そう、この決闘者の展開はまだまだ終わらないのである。
「レベル4の《ブリキンギョ》と《ライトロード・アサシン ライデン》でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! ――我が闘いは此処より始まる。白き翼に望みを託せ! 現われろ光の使者、ランク4《No.39 希望皇ホープ》!」
???
LP3000
手札7
《ライトロード・セイント ミネルバ》ランク4/光属性/天使族/攻2000/守800 ORU1
《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》ランク6/光属性/機械族/攻2500/守1600 ORU2
《No.39 希望皇ホープ》ランク4/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU2
魔法・罠カード
無し
『ホープ!』と自身の名を叫びながら、光の巨人みたいな機械仕掛けの戦士が降誕する。
このエクシーズモンスターを召喚する度に『エクシーズ次元』の決闘者は思う。もしもこの『No.』なるエクシーズモンスターを使っていた決闘者達がこの『エクシーズ次元』に居てくれたのならば、『融合次元』の侵略程度など笑いながら打破してくれただろうに、と――。
「更に《No.39 希望皇ホープ》でオーバーレイ! 1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築! カオス・エクシーズチェンジ! 混沌を光に変える使者! ランク4《CNo.39 希望皇ホープレイ》!」
???
LP3000
手札7
《ライトロード・セイント ミネルバ》ランク4/光属性/天使族/攻2000/守800 ORU1
《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》ランク6/光属性/機械族/攻2500/守1600 ORU2
《CNo.39 希望皇ホープレイ》ランク4/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU3
魔法・罠カード
無し
《希望皇ホープ》が純白から一変して暗い銀色にチェンジし――。
「手札から『RUM-ヌメロン・フォース』を捨てて、オーバーレイ! 1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築ッ! シャイニング・エクシーズチェンジ! ――縦横無尽なる希望の力、踊れ天地開闢! ランク0《SNo.0 ホープ・ゼアル》!」
――彼等そのモノと呼べるカードをエクシーズ召喚し、彼等が居なくても『かっとビングだ!』と弱った自らの心を叱咤する。
「ルール上、このカードのランクは1として扱う。このカードは手札の『RUM』通常魔法カードを1枚捨て、自分フィールドの『希望皇ホープ』モンスターの上に重ねてエクシーズ召喚する事も出来る。――このカードのエクシーズ召喚は無効化されない。このカードのエクシーズ召喚成功時には相手は効果を発動出来ない。このカードの攻撃力・守備力はこのカードのオーバーレイユニットの数×1000、よって4000となる。――相手のターンに1度、このカードのオーバーレイユニットを1つ使い、そのターン、相手は効果を発動出来なくする」
???
LP3000
手札7
《ライトロード・セイント ミネルバ》ランク4/光属性/天使族/攻2000/守800 ORU1
《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》ランク6/光属性/機械族/攻2500/守1600 ORU2
《SNo.0 ホープ・ゼアル》ランク0/光属性/戦士族/攻?→4000/守?→4000 ORU4
魔法・罠カード
無し
これが現在における殺意溢れる『ホープ一族』の新星、何をトチ狂ったのか、ガチ『No.』である《No.16 色の支配者ショック・ルーラー》の(モンスター・魔法・罠のどれか一種類の)拘束効果を全部、尚且つ相手のみ押し付けるという「もう何もしなくて良いんだ」と言わんばかりの新たな殺意のベクトルの具現である。
「自分の墓地に『ライトロード』と名のついたモンスターが4種類以上、よって《裁きの龍》を特殊召喚する!」
次のターン、何も出来ずに既に死亡確定した『融合次元』の決闘者の事を放置して、『ライトロード』の切り札である白き巨龍を僅か1ターン目で降臨させる。
「このカードは通常召喚出来ない。自分の墓地の『ライトロード』と名のついたモンスターが4種類以上の場合のみ特殊召喚出来る。自分のメインフェイズ時に1000ライフ支払う事でこのカード以外のフィールド上のカードを全て破壊する。また、自分のエンドフェイズに自分のデッキの上から4枚墓地に送る」
???
LP3000
手札7→6
《ライトロード・セイント ミネルバ》ランク4/光属性/天使族/攻2000/守800 ORU1
《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》ランク6/光属性/機械族/攻2500/守1600 ORU2
《SNo.0 ホープ・ゼアル》ランク0/光属性/戦士族/攻4000/守4000 ORU4
《裁きの龍》星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2600
魔法・罠カード
無し
尚、《裁きの龍》の全体除去効果には1ターンに1度という制限は無く、ライフの尽きぬ限り撃てるので、一回破壊しても戻ってくる程度ならばもう1度全体除去されて更地にされる未来が待っている。
「私の墓地にモンスターが10体以上――無は無限となり、無限の光から生まれる究極の時械神《究極時械神セフィロン》を特殊召喚する!」
???
LP3000
手札6→5
《ライトロード・セイント ミネルバ》ランク4/光属性/天使族/攻2000/守800 ORU1
《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》ランク6/光属性/機械族/攻2500/守1600 ORU2
《SNo.0 ホープ・ゼアル》ランク0/光属性/戦士族/攻4000/守4000 ORU4
《裁きの龍》星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2600
《究極時械神セフィロン》星10/光属性/天使族/攻4000/守4000
魔法・罠カード
無し
最後に現れたのは超巨大な機械仕掛けの媒体に憑依する歴戦の古強者の貌が浮かぶ『神』と呼ぶに相応しい威光を持つ存在であり――。
「このカードは通常召喚出来ない。自分の墓地にモンスターが10体以上存在する場合のみ特殊召喚する事が出来る。1ターンに1度、レベル8以上の天使族モンスター1体を自分の手札・墓地から特殊召喚する事が出来る。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃力は4000となるが、まぁこのデッキにレベル8以上の天使族モンスターはいないから死んでいる効果だね」
オリジナルの効果はトチ狂っていたなぁと、感慨深く呟く。そして――。
「――これが私の希望の力だ、ターンエンド。エンドフェイズに《裁きの龍》の効果で自分のデッキの上からカードを4枚墓地に送る。――そして君のスタンバイフェイズに《SNo.0 ホープ・ゼアル》の効果発動、オーバーレイユニットを1つ使い、このターン、相手は効果を発動出来ない」
『……これは酷い。ロマンカードが《究極時械神セフィロン》ぐらいしか――あれ、何の話だっけ?』
『混沌』は何か違うような、と首を傾げる。
とある『モンスターカード』はそっと『話が脱線してますよ』と優しく諭す。
『……ふぅむ、これなら『シンクロ次元』の『私』は――』