遊戯王ARC-Ⅴ 混沌統べる覇者 -舞網チャンピオンシップ・バトルロワイヤル編-   作:咲夜泪

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03/神の決闘

 

 

「わ、我はこれでターンエンド……!」

『――サモサモキャットベルンベルン』

「またかっ! またそれか……!」

 

 ???

 LP4000

 手札6→5→4→3

 《召喚僧サモンプリースト》星4/闇属性/魔法使い族/攻800/守1600

 《召喚僧サモンプリースト》星4/闇属性/魔法使い族/攻800/守1600

 《X-セイバー エアベルン》星3/地属性/獣族/攻1600/守200

 《X-セイバー エアベルン》星3/地属性/獣族/攻1600/守200

 魔法・罠カード

  無し

 

 また『混沌』が絶望の呪文を唱え、手札3枚消費でレベル7シンクロを二回行える場が完成する。

 また『ダーク・ダイブ・ボンバー』かとドン・サウザンドが身構える中、『混沌』は敢えて使わず、違うシンクロモンスターを呼び寄せる。

 

『レベル4の《召喚僧サモンプリースト》にレベル3のチューナーモンスター《X-セイバー エアベルン》をチューニング。――聖なる守護の光、今交わりて永久の命となる。シンクロ召喚! 降誕せよ《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》!』

 

 ???

 LP4000

 手札3

 《召喚僧サモンプリースト》星4/闇属性/魔法使い族/攻800/守1600

 《X-セイバー エアベルン》星3/地属性/獣族/攻1600/守200

 《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》星7/光属性/ドラゴン族/攻2100/守3000

 魔法・罠カード

  無し

 

 鰻みたいな緑色の竜はシグナー達の竜が一つ、他力本願竜と名高いソリティアドラゴン――このデッキには入ってないフィールド魔法『霞の谷の神風』と組み合わせる事で成功率80%前後を誇る1ターンキルが有名である。

 

 ――『混沌』のデッキにおいてはその役割は小さいが、ドン・サウザンドの『ヌメロン』デッキにとって生粋の天敵と呼べるカードである。

 

『《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》の効果発動、1ターンに1度、自分メインフェイズ時にフィールド上のフィールド魔法カード全て破壊し、自分のライフを1000回復する。その後、デッキからフィールド魔法カード1枚を手札に加える事が出来る』

「……っ、またしても『ヌメロン・ネットワーク』を……! だが、ただではやらせん! その破壊効果にチェーンして『ヌメロン・ネットワーク』の効果発動! 魔法カード『ヌメロン・ダイレクト』を墓地に送り、その効果を発動させる! フィールド上に『ヌメロン・ネットワーク』が表側表示で存在する場合、自分のエクストラデッキから攻撃力1000以下の『ヌメロン』と名のついたモンスターエクシーズ4体を自分フィールド上に特殊召喚する! この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時にゲームから除外される!」

 

 この通り、フィールド魔法を破壊して1000回復してサーチする効果を確定で使える為である。

 フィールド魔法が起点で1ターンキルを狙うデッキにとって、この効果を先行1ターン目から必ず使用出来るのはボーナスゲーム以外の何物でもない。

 

「我が召喚するのは最初に地上へ降りた4体のナンバーズ! 現われろ《No.4 ゲート・オブ・ヌメロン-チャトゥヴァーリ》《No.3 ゲート・オブ・ヌメロン-トゥリーニ》《No.2 ゲート・オブ・ヌメロン-ドゥヴェー》《No.1 ゲート・オブ・ヌメロン-エーカム》!」

『人のターンに4体のエクシーズ召喚とか、これまたインチキ効果を……』

 

 場に特殊召喚されるエクシーズモンスターは全て表側守備表示――実に厄介な壁である。

 

「……くくっ、はははははは! 『No.』は『No.』と名の付くモンスター以外との戦闘では破壊されないカード! 守備表示のナンバーズ4体を戦闘破壊する事が出来ない今、このターンで我のライフを0には出来まい!」

 

 忘れた頃に面倒な戦闘破壊耐性、それが4体も並べらられては手が届かない。

 既に《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》の効果で『ヌメロン・ネットワーク』が破壊され、次のターンでの棒立ちが確定しているドン・サウザンドだが、もう自棄っぱちにそう叫び――。

 

 

『――それはどうかな?』

 

 

 そう言われれば意地でも覆したくなるのが人の性である。もう『混沌』は人ですらないけれども。

 

『《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》の効果で《神縛りの塚》をサーチする』

 

 行き掛けの駄賃で『神縛りの塚』をサーチするが、今回は使われる事は無いだろう。

 

『手札を1枚捨て――絶対無敵、融合極めし『覇王』の力を解き放て! 速攻魔法『超融合』発動!』

 

 今までで一回も使用されていない魔法カードの出現に、ドン・サウザンドは警戒心を強くする。

 

『――自分・相手フィールドから融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地に送り、融合召喚する。私が選択するのは展開に邪魔な《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》と《No.1 ゲート・オブ・ヌメロン-エーカム》だ』

「何だとォ!?」

『この融合モンスターの素材はエクシーズモンスターまたはシンクロモンスターと、エクシーズモンスターまたはシンクロモンスター、その合計2体によって融合される。現われろ環境の破壊者《旧神ノーデン》!』

 

 次元すら歪める猛威が解き放たれ、一瞬にして《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》と《No.1 ゲート・オブ・ヌメロン-エーカム》を融合させ――現れるはそれら2体のモンスターの面影一つすら無い《旧神ノーデン》だった。

 

『このカードが特殊召喚に成功した時、自分の墓地のレベル4以下のモンスターを効果を無効にして特殊召喚する。なおこのカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは除外される――私は『超融合』のコストとして墓地に捨てた《エフェクト・ヴェーラー》を蘇生する』

 

 ???

 LP4000→5000

 手札3→4→2

 《召喚僧サモンプリースト》星4/闇属性/魔法使い族/攻800/守1600

 《X-セイバー エアベルン》星3/地属性/獣族/攻1600/守200

 《旧神ノーデン》星4/水属性/天使族/攻2000/守2200

 《エフェクト・ヴェーラー》星1/光属性/魔法使い族/攻0/守0

 魔法・罠カード

  無し

 

 またもや《旧神ノーデン》と《エフェクト・ヴェーラー》が並んでしまい、此処から来るシンクロ召喚の大量展開に歯軋りをあげる。

 

『レベル4の《旧神ノーデン》にレベル1の《エフェクト・ヴェーラー》をチューニング――シンクロ召喚! 現われろ《TG ハイパー・ライブラリアン》!』

 

 ???

 LP5000

 手札2

 《召喚僧サモンプリースト》星4/闇属性/魔法使い族/攻800/守1600

 《X-セイバー エアベルン》星3/地属性/獣族/攻1600/守200

 《TG ハイパー・ライブラリアン》星5/闇属性/魔法使い族/攻2400/守1800

 魔法・罠カード

  無し

 

 早速現れたシンクロ召喚限定でドロー加速させる鬼畜魔術師――。

 

『このカードがフィールドに存在し、自分または相手がこのカード以外のシンクロモンスターのシンクロ召喚に成功した場合、デッキからカードを1枚ドローする』

 

 エクシーズモンスターにはエクシーズ召喚に成功した時にドローさせてくれるモンスターが居ない癖にシンクロモンスターにはあるという理不尽さを、誰に文句言えば良いのだろうか。

 

『レベル4の《召喚僧サモンプリースト》にレベル3のチューナーモンスター《X-セイバー エアベルン》をチューニング。世界の平和を守る為、勇気と力をドッキング! シンクロ召喚――愛と正義の使者《パワー・ツール・ドラゴン》!』

 

 またもや物騒な文房具を持つドラゴン族じゃない機械族のシンクロモンスターが召喚される。

 一体どれほどこのデッキにはキルルートが積まれているのか、ドン・サウザンドは「ぐぬぬ」と顔を歪ませる。

 

『《TG ハイパー・ライブラリアン》の効果で1枚ドロー。《パワー・ツール・ドラゴン》の効果発動、諸々省略して装備魔法『早すぎた埋葬』を手札に加える』

 

 ???

 LP5000

 手札2→3→4

 《TG ハイパー・ライブラリアン》星5/闇属性/魔法使い族/攻2400/守1800

 《パワー・ツール・ドラゴン》星7/地属性/機械族/攻2300/守2500

 魔法・罠カード

  無し

 

『装備魔法『早すぎた埋葬』を発動、ライフを800ポイント支払い、墓地の《旧神ノーデン》を蘇生させ、効果発動して《エフェクト・ヴェーラー》を釣り上げる。レベル4の《旧神ノーデン》にレベル1の《エフェクト・ヴェーラー》をチューニング――シンクロ召喚! 集いし願いが新たな速度の地平へ誘う。強き闇よ光を照らせ! シンクロ召喚! 希望の力、シンクロチューナー《アクセル・シンクロン》!』

 

 次にシンクロ召喚されるのはレベル5のシンクロチューナー《アクセル・シンクロン》であり、あのレベル12の至高の恒星龍ルートではないようだ。

 

『《TG ハイパー・ライブラリアン》の効果で1枚ドロー。手札から魔法カード『おろかな埋葬』発動、デッキからモンスター1体を墓地に送る。私が墓地に送るのはレベル1の《バトルフェーダー》だ』

 

 ???

 LP5000→4200

 手札4→3→4→3

 《TG ハイパー・ライブラリアン》星5/闇属性/魔法使い族/攻2400/守1800

 《パワー・ツール・ドラゴン》星7/地属性/機械族/攻2300/守2500

 《アクセル・シンクロン》星5/闇属性/機械族/攻500/守2100

 魔法・罠カード

  無し

 

 何やら先程とは違い、奇妙な動きを見せる。一体何を仕出かすのか――。

 

『魔法カード『死者蘇生』発動、《旧神ノーデン》を復活させて《バトルフェーダー》を釣り上げる――レベル4の《旧神ノーデン》とレベル1の《バトルフェーダー》にレベル5の闇属性チューナー《アクセル・シンクロン》をチューニング!』

 

 闇属性チューナー+チューナ以外のモンスター2体以上という難易度の高い素材条件をもってそのシンクロモンスターは召喚される。

 

『――地を這いし億万の蛆虫よ、その身をやつし天を埋めよ! 全ての世界は我らの掌中にあり、君臨せよ! 《魔王超龍 ベエルゼウス》!』

 

 

 ???

 LP4200

 手札3→2

 《TG ハイパー・ライブラリアン》星5/闇属性/魔法使い族/攻2400/守1800

 《パワー・ツール・ドラゴン》星7/地属性/機械族/攻2300/守2500

 《魔王超龍 ベエルゼウス》星10/闇属性/ドラゴン族/攻4000/守4000

 魔法・罠カード

  無し

 

 現れるのは漆黒の鱗に覆われた三つ首の、全ての世界を掌握せし魔王、攻撃力4000のシンクロモンスターであり――。

 

『《TG ハイパー・ライブラリアン》の効果で1枚ドロー――あーあ、来てしまったようだね『神』さま』

 

 戦闘での破壊耐性を持つナンバーズ3体を屠るカードは『混沌』のデッキに2枚眠っている。

 一つは問答無用の禁止カード『サンダーボルト』、これが引ければ相手モンスターだけ全体除去出来たが、今回は引けなかった。もう1枚は――。

 

『――魔法カード『ブラック・ホール』発動、フィールドのモンスターを全て破壊する!』

「なっ、『神縛りの塚』を使用せずにだと!? それではそのシンクロモンスターが――」

 

 ドン・サウザンドの場に残っていた3体のエクシーズモンスターは為す術無く飲み込まれ、『混沌』の場にいた《TG ハイパー・ライブラリアン》と《パワー・ツール・ドラゴン》も重力の極点に飲み込まれて破壊されるも――。

 

『とんだロマンチストだね! 《魔王超龍 ベエルゼウス》は戦闘・効果では破壊されない!』

 

 《魔王超龍 ベエルゼウス》は魔法カード『ブラック・ホール』を一切影響無くやり過ごし、殺意の咆哮をあげる。

 

 あと、このボスじみた効果を持っている《魔王超龍 ベエルゼウス》には、このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカード以外の自分のモンスターは攻撃出来ないというデメリット効果と、1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象に、そのモンスターの攻撃力を0にし、元々の攻撃力分だけLPを回復する効果を持つ。……尤も、それを発動させたターン、このカードの戦闘によって発生する相手プレイヤーへの戦闘ダメージは半分になってしまうが。

 

 厳しい素材制限でシンクロ召喚出来る機会は極めて少ないが、それに見合った破格の耐性・効果を持ち得ているのである。……何処かの『神』とは違って。デッキの中で、出番の無い『神』がまた悲しみの悲鳴をあげた気がした。

 

『――バトル、《魔王超龍 ベエルゼウス》でダイレクトアタック、蠅王殲滅覇軍(ベエルゼウス・ジェノサイダー)!』

 

 ドン・サウザンド

 LP4000→0

 

 

 

 

「……何故だ、何故貴様はこうも我のデッキを知り尽くしている……?! 今思えば、あの『一回目』のデュエル、此方の手の内を全て読み切った上でのプレイングだった……!」

 

 ……此処に至って、ドン・サウザンドは二つの事実を認めざるを得ない。

 一つは『混沌』のデッキに眠るカード、そのほぼ全てが問答無用のパワーカード、たった1枚で勝負を決めかねないほどの危険極まる力を有している――。

 

 ――その無慈悲で暴虐極まる力、ドン・サウザンドの切り札と比べても何一つ遜色無い処か凌駕している節さえある。

 

 そしてもう一つは、『混沌』がドン・サウザンドのデッキの全てを知り尽くした上でプレイングしている事――。

 

 これが説明つかない。そんなの、全てを見通せる『神』の如き視点が無ければ――。

 

『そりゃそうさ。君にとっては『一回目』のデュエルだったかもしれないけど、私にとっては『十回目』より先のデュエルだったからね』

 

 『混沌』から衝撃の新事実があっさりと暴露される。

 ドン・サウザンドは目を点にする。それは一体、どういう事なのか――。

 

『……自分の敷いたルールで消滅する度に記憶を引き継がないとか、難儀よねぇ。人……もとい『神』さまの性癖にとやかく言わないけどドMなのかな? ああ、此処最近のデュエルで消滅せずに済んでいるのは私がデュエル決着後の裁定を書き換えているからだよ』

 

 またまた明かされる衝撃の新事実に、理解が追いつかなくなる。

 ――だが、デュエルで敗北したのに消滅しない理由がそれならば納得が行く。

 

 しかし、これでまた根本が覆ってしまう。あの『混沌』の力を我が物にする為にデュエルを行っていたのに、其処が書き換えられているという事は――。

 

『敗者は勝者の『糧』になるとか、勝っても負けても消滅するルールなんて止めた方が良いと思うよ?』

「どういう、事だ――?」

 

 ドン・サウザンドのデュエルとは彼一人の為のもの。勝者が全てを勝ち取り、敗者は全て失う。

 デュエルの勝敗が決した後に立っているのは勝者だけ。それは孤高の覇者たる混沌の神の生き様そのモノであり、変える事の出来ない『摂理』に他ならない。

 

『――世界から否定されている私を『エクシーズ素材』にしたら、君の存在も否定されて跡形も無く『除外』されるだけじゃないか。君には『除外』されてから発動する効果なんて無いんだから自殺と何ら変わらないよ』

 

 恐ろしい事実がさらりと述べられ――この『混沌』は、『ヌメロンコード』の力を得て『神』となったドン・サウザンドを超越する次元違いの力を持ちながら、自分という『個』を持てずに表現すら出来なくなっている理由の一端が明かされる。

 

『あと君と私は奇しくも《旧神ノーデン》と同じ裁定だよ。《旧神ノーデン》が先に場から離れれば《旧神ノーデン》の効果で蘇生されているモンスターは『除外』されるだけさ』

「――待て、今、何と言った……?」

 

 《旧神ノーデン》の効果は召喚・特殊召喚された時に墓地のレベル4以下のモンスターを蘇生する効果。今はこのレベル4以下のモンスターという項目について目を瞑り――墓地から蘇生する効果。つまりは――。

 

 

『――覚えてないの? そのシーンだけは見ていたよ。攻撃力20万4000のモンスターに討たれるなんて超レアな体験していたじゃないか。実に羨ましい』

 

 

 そう、ドン・サウザンドはアストラル世界の存亡を賭けてアストラル・九十九遊馬、そしてナッシュとのデュエルで敗北し――消滅した。

 

『私が思うに、君に足りなかったものは二つ。一つは『敗北』の受け入れ方じゃないかな?』

 

 自身の消滅を認識したドン・サウザンドに、『混沌』は淡々と語りかける。

 

『消え去るだけで何も残らないなんて寂しい事をやってるから――数多の『敗北』を糧に成長し、決して屈しなかった決闘者に負けるのは必然だったんじゃないかな?』

「……戯言を」

 

 今更言った処で、既に終焉を迎えた彼に与えられる救いは何一つ無い。

 彼は彼が望むままに世界を邪悪に謳歌し、彼の敷いた摂理通りに滅びた、其処に何一つ間違いなど無い。

 

 

『もう一つは――デュエルは勝っても負けても楽しいって事さ』

 

 

 だから『混沌』は彼には無かった価値観を一つ提示する。

 それは告げるには余りにも遅すぎた、ドン・サウザンドが一切顧みずに取り零した価値観である。

 

『確かに負けるのは悔しい。でも、次はああしよう、こうしようと試行錯誤を重ねる事はとてもとても楽しい事――負けたって良いのさ』

 

 更なる力を求めるばかりにアストラル世界から切り捨てられ、捨てた者達への復讐の為に這い上がろうとし、アストラルに敗れてバリアン世界の最果てに封じられ、敗北の屈辱を晴らす為に虎視眈々と復活への布石を打ち続けて――いつの間にか、一番大切な事を忘れ果ててしまっていた事に、今更気づいたのだった。

 

 どうして忘れていたのだろうか。

 あのカードを1枚ドローする度に味わえた高揚感を。未知なる可能性に挑戦する期待感を。あの心躍る『天地開闢(ワクワク)』を――!

 

 

『――此処は泡沫の夢、刹那に消える混沌の幻、君の世界での結末を無かった事には出来ないけれども、君の気が済むまでは付き合えるよ?』

 

 

 ドン・サウザンドは立ち上がり、待ち侘びる『混沌』と正面から対峙する。

 『神』などと独り善がりしていた自分が馬鹿みたいだと自嘲する。そんなモノなど寄せ付けない遥か高みの絶対強者が今、自分の目の前にいる。

 

 ――ああ、このドン・サウザンドを前にそんな存在がいるなど、到底許せない事だ……!

 

「――フン、勝ち逃げなどさせん。必ずや貴様を打ち破って這いつくばらせてやる……!」

『――良いね、私好みの答えだ!』

 

 互いにデュエルデュスクを構え、対峙する。

 当たり前過ぎる事だったが、デュエルは『二人』、自分と相手がいなければ出来ない。こんな当たり前過ぎる事を、どうして疎かにして見落としたいたのか――。

 

 

「――このデュエルを、『神』のデュエルとしよう」

 

 

 だからこそ――『神』のデュエルなんてモノがあるとすれば、それはその域に到達した決闘者二人が居てこそ、初めて成立するに違いない。

 

 

 vsドン・サウザンド編――完。


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