遊戯王ARC-Ⅴ 混沌統べる覇者 -舞網チャンピオンシップ・バトルロワイヤル編-   作:咲夜泪

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 『禁じられた聖杯』
 速攻魔法
 フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。
 エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は400ポイントアップし、効果は無効化される

「《エフェクト・ヴェーラー》はともかく、『禁じられた聖杯』は無いのか、だって? ふざけるな凌牙ァ! テメェの先行なのに速攻魔法を伏せられるかァッ!」

 此処での前書きは作者がやらかした作中での失敗&矛盾集になっております。


01/最古の亡霊

 ――舞網チャンピオンシップ。

 

 表向きはプロへの登竜門扱いの世界的なアクションデュエル大会。

 従来ならば個人対抗のトーナメント制なのだが、主催者側の思惑によって三回戦目から二十四時間耐久のバトルロイヤルモードに変更される。

 元より今回の大会の真の目的はこの世界『スタンダード次元』への侵攻を目論む『融合次元』への尖兵『ランサーズ』の選抜試験であり――『融合次元』の決闘者の乱入を予測した赤馬零児は主催者権限で大会ルールを変更し、『ランサーズ』の候補者をもって迎え撃つという一石二鳥の算段を打つ。

 

 ――だが、その思惑は一つの『異分子(イレギュラー)』によって御破算になる。

 

 

 

 

「火山エリアに、別の一団が現れました!」

「――ユースチームを向かわせろ」

 

 舞網市全域を監視する『LDS(レオ・デュエル・スクール)』のビルにあるオペレーションルームにて、黒服にサングラスの大男、秘書である中島の報告を受けた赤馬零児は間髪入れず指示を下す。

 火山エリアに現れた『融合次元』からの刺客『オベリスクフォース』は六名、現在バトルロイヤルを行っているジュニアユースよりも一つ上のランク――ベスト8まで勝ち残ったユースチーム八名ならば何とかなる筈である。

 

 ――尤も、あの相手程度で勝ち残れないようでは『ランサーズ』に相応しくない。

 

 新召喚法、ペンデュラム召喚を生み出した榊遊矢世代より一つ上の世代――新概念のペンデュラムと最も近くて最も遠い『決闘者(デュエリスト)』が使える戦力か否か、赤馬零児は冷酷に見定めようとしていた。

 

 ユースチームとは別に、あの場にいた『融合次元』の重要人物であるセレナと、その彼女と瓜二つの少女でありバトルロイヤル参加者の柊柚子を避難させる為に送った風魔一族の忍者の末裔の二人が仕事を行う前に――猛々しい警告音が響き渡った。

 

「何だ!? まだ何か――」

「お、同じく火山エリアに反応! これまでにない高反応ですっ!」

 

 そして中央のモニターには同じ仮面を被った『オベリスクフォース』六名とセレナ・柊柚子の間に――見るも悍ましい『混沌』の具現が人の形として現出したのだった。

 

 

 

 

「な、何だ貴様は!?」

 

 ――異様、まさにその一言に尽きる。

 

 目の前の『混沌』が人の形になっただけの異形の貌には目も鼻も口も無い。まさしく無貌の少年/少女であり、衣服らしき影も絶えず流動して移ろいでいる。

 見るからに温度の高い火山エリアにも関わらず、あの『混沌』が出現してから寒気が止まらない。

 同じ仮面を被った六名の乱入者よりも、後に現れた『混沌』の方が柊柚子には恐ろしく思えたのだ。

 

『――さぁ、一体何だろうね。それは私自身も忘れ果ててしまった……でも、そんなに重要な事でもあるまい。人間以外でもカードと囀る口があればデュエルは出来るだろう?』

 

 少年とも少女とも老人とも思えるような奇妙極まる聲が響き――『混沌』の右腕に漆黒の闇が集い、異形のデュエルディスクと化す。

 デッキに収められたカードの枚数は厚さ的に四十枚より遥かに上、デッキ上限枚数である六十枚に限り無く近い。それにも驚きだが、それ以上に見ているだけで威圧感・圧迫感を覚えるのは何故だろうか?

 そのデュエルディスクを見た途端、仮面の男達は即座に自らのデュエルディスクを起動させて一斉に構えた。

 

 

『一対六のバトルロイヤルモード。初期手札五枚でライフ4000、先行だけは私が貰おう。先行の私は攻撃宣言を行えないが、それ以降は初手のターンから攻撃可能、ドローも可能――それが君達の流儀なのだろう?』

 

 

 正気の沙汰じゃないほど不平等な条件でデュエルが成立する。

 ただでさえ一対六と数が違うのに、彼(?)以外のプレイヤーが初手から攻撃出来るのならば結果など見るまでも無いだろう。

 自分達の圧倒的な有利の前に、仮面の男達は安堵の笑顔を見せるも――そんな不利な条件を自分から設定するという事は、数の利など簡単に覆せるという事では無いだろうか?

 

『……ふむ、どうやらこのデュエルの敗者はカード化される『闇のゲーム』の一種なのか。郷に入っては郷に従え。私もそのレギュレーションに従うとしよう』

 

 ――不吉な宣言をするが、大多数の人は目の前の未知の現象――『混沌』の人からソリッドビジョンじゃない闇の波動みたいな粒子が放たれ――この一対六という変則バトルロイヤルデュエルが静かに開始されたのだった。

 

 

『私のターン。手札から魔法カード『苦渋の選択』を発動。このカードは自分のデッキからカードを五枚選択して相手に見せ、相手が選択したカード一枚のみを手札に加えて残りのカードを墓地に捨てる。私はこの五枚を選択する』

 

 

 『混沌』の人のデッキから五枚のカードが独りでに舞い飛び、五芒星を象るように表示される。

 

 《処刑人-マキュラ-》

 《処刑人-マキュラ-》

 《混沌の黒魔術師》

 《異次元の女戦士》

 《異次元の女戦士》

 

 どれも見慣れないカードであるが、体の震えが止まらない。

 その五枚はいずれも見てるだけで嫌な予感が生じるほどの何かを持っているように見えた――。

 

「オレは《異次元の女戦士》を選択する!」

『……まぁどれを選んでも結末が変わらないから苦渋の選択なんだがね』

 

 《異次元の女戦士》だけ『混沌』の人の手札に収まり、残りは墓地に送られる。

 この時点で柊柚子は気づいた。この魔法カード、一見してサーチ手段としては確実性が無いように見えるが、単純なデッキ圧縮効果、墓地肥やし能力が余りにも高すぎる事に。

 

(……あれ? これって言いかえれば相手にとって『五枚中四枚選んで墓地に送らなければならない』って事じゃ……?)

 

 デュエルモンスターズにおいて墓地は第二の手札も同然であり――柚子の予想は正鵠を得ていた。

 

『《処刑人-マキュラ-》が墓地に落ちたターン、そのプレイヤーは手札から罠カードを発動する事が出来る。私は手札から罠カード『第六感』を発動させる』

「手札から罠カードを発動させるだとォ!?」

 

 対戦者からの驚愕は当然の事だったが、『混沌』の人は反応せずカード効果の処理を続ける。

 

『1~6の数字のうち、二つ宣言する。私は4と6を選択。相手プレイヤーはサイコロを一回振り、宣言した数字が出ればその数字の枚数分ドロー出来る。外れた場合は出た目の枚数分デッキの上からカードを墓地に送る』

 

 六人の仮面の男達の前にソリッドビジョンで出来た大きいサイコロが表示される。

 

「……っ、カード単体のパワーが違いすぎる……? 頼む、外れろ……!」

 

 急かさず待ち侘びる『混沌』の人に不気味さを覚えた仮面の男の一人は意を決して賽を振る。己の運命を決める一投を。

 

 サイコロは宙を転がり――止まった目は無情にも『6』だった。

 

『出た目は『6』。よって私は六枚ドローする』

 

 『混沌』の手札が四枚から十枚となる。

 

『更に魔法カード『強欲な壺』を発動、二枚ドローする』

「ちょっと待って! それ禁止カードの……!」

 

 デュエルをしていない柚子が遮ってしまうのも無理は無い。そのカードは余りにも有名過ぎた禁止カードである。

 手札から発動条件もコストも無しに無条件で手札を増やせる元祖ドローソースカードであり、かつての黎明期においてデッキ投入率100%を誇ったこのカードが禁止制限に叩き込まれたのは当然の事だった。

 

 

『――悪いが此処の『次元』のリミットレギュレーションなど知らない。同様に今デュエルしている君達の『次元』での禁止制限もな。私とデュエルする限り、禁止制限は自動的に無制限となっている』

 

 

 ほぼ事後承諾だったが振り向かずとも律儀に対応し――禁止カードを平然と使っている者に律儀も何も無いが――新たに二枚ドローして手札が脅威の十一枚となる。

 

『更に魔法カード『天使の施し』発動、三枚ドローして手札から二枚捨てる。私は《混沌の黒魔術師》二枚を墓地に送る』

 

 仮面の男達の顔色が更に悪くなる。これもまた圧倒的な力を誇る問答無用のパワーカード。手札交換・墓地肥やし・デッキ圧縮を一枚でこなす破格のカードである。

 

 

『手札から魔法カード『死者蘇生』発動、蘇らせるのは《混沌の黒魔術師》』

 

 

 光と闇が集い、目を焼き尽くさんばかりの閃光を放って墓地より復活したのは、圧倒的な存在感を誇る至高の黒魔術師だった。

 

 ???

 LP4000

 手札:5→4→5→4→10→11→10

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 魔法・罠カード

  無し

 

 攻撃力2800という打点の高さにも目が行くが、それだけでは済まないという柚子の予感はまたしても的中していた。

 

『――《混沌の黒魔術師》の効果発動。このカードが召喚、または特殊召喚に成功した際、自分の墓地から魔法カードを一枚手札に加える事が出来る。私は『死者蘇生』を選択してサルベージする』

「な、なんだとぉっ!? インチキ効果もいい加減にしろッ!」

『これが『混沌(カオス)』全盛期の力だから仕方あるまい。……手札誘発効果のカードを使用しないのならば次に進める』

 

 制限カードの『死者蘇生』を使っておきながら、復活させた《混沌の黒魔術師》の効果で即座に回収する。

 《混沌の黒魔術師》は『苦渋の選択』と『天使の施し』の効果で墓地にあと二体落ちている。ならば――。

 

『『死者蘇生』発動、二枚目の《混沌の黒魔術師》を復活させて『死者蘇生』をサルベージ。再び『死者蘇生』を発動、三枚目の《混沌の黒魔術師》を復活させて『死者蘇生』を選択して手札に戻す』

 

 ???

 LP4000

 手札:10→11

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 魔法・罠カード

  無し

 

「なっ、1ターン目で攻撃力2800の最上級モンスターが三体だとぉ!?」

 

 ……一瞬にして最上級モンスターが三体場に並んだのに関わらず、手札が一枚増えているという理不尽極まる布陣が1ターン目で構築された。

 そして恐ろしいのは、この時点でまだ通常召喚権を使用していなかった点である。

 

 

『そして3体のモンスターを生贄に――『神』を見せてやろう』

「3体のモンスターをリリース!? そんな特殊な召喚条件なんて――あれ、《混沌の黒魔術師》が墓地じゃなく……?」

『なお《混沌の黒魔術師》は自身の効果により、フィールドから離れた時にゲームから除外される』

 

 観客と化している柚子に対し、『混沌』の人は律儀に補足説明をする。

 自らの効果で除外された《混沌の黒魔術師》をデメリットだと勘違いした柚子だが、すぐさまその認識を覆す事となる。

 そして三体の黒魔術師をリリースして現れたのは、まさしく『神』の名に相応しきカードだった。

 

「……な、何だこのモンスターはッ!?」

 

 雷鳴轟き、雲が割れる。天を引き裂いて現れた赤き巨竜は二つ顎から咆哮をあげた。

 

「この衝撃、は……!? これがスタンダードのものなのか……!?」

 

 ただそれだけで衝撃となって風が吹き荒み、敵対する六名の仮面の男達は吹き飛ばされないように踏み留まるだけで精一杯だった。

 

『このカードを通常召喚する場合、3体のモンスターを生贄にして召喚しなければならない。このカードの召喚は無効化されない。このカードの召喚時には魔法・罠・モンスターの効果は発動出来ない。――『三幻神』が一柱《オシリスの天空竜》の攻撃力・守備力は自身の手札の枚数×1000となる』

 

 ???

 LP4000

 手札:11→10

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻?→10000/守?→10000

 魔法・罠カード

  無し

 

「こ、攻撃力10000だとぉっ!?」

 

 凡百のカードでは決して届かない数値に仮面の男達は戦慄する。

 直接戦っていない柚子もあのモンスターからの圧迫感で息苦しく、直接対峙する彼等の精神的負担は計り知れないだろう。

 

「だが、エンドフェイズで手札が七枚以上の時、六枚になるまで捨てなければならない以上、あのモンスターの攻撃力は6000か――」

 

 しかし、横に居た自分と瓜二つの少女だけは気負されずに冷静に分析する。

 それはつまり、あと手札を四枚使い切っても良い以上、あの超級モンスターを召喚しただけでは止まらない事を意味していた。

 

『魔法カード『次元融合』発動。ライフ2000を支払い、お互いに除外されたモンスターをそれぞれのフィールド上に可能な限り特殊召喚する。私は三体の《混沌の黒魔術師》を特殊召喚する』

「っ、馬鹿なっ、召喚する為にリリースした《混沌の黒魔術師》三体がそのまま戻るだと!? デメリット効果じゃなかったのか!?」

 

 ???

 LP4000→2000

 手札:10→9

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻10000→9000/守10000→9000

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 魔法・罠カード

  無し

 

 

『――特殊召喚された《混沌の黒魔術師》の効果発動、墓地から『次元融合』『強欲な壺』『天使の施し』を回収する』

 

 ???

 LP2000

 手札:9→12

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻9000→12000/守9000→12000

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 魔法・罠カード

  無し

 

『『強欲な壺』を発動、2枚ドローする。『天使の施し』を発動、三枚ドローして二枚捨てる』

 

 手札が13枚となり、更に墓地も肥える。一体彼のターンは何処まで続くのだろうか――。

 

『私はレベル8の《混沌の黒魔術師》と《混沌の黒魔術師》でオーバーレイ、二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!』

 

 二体の《混沌の黒魔術師》が閃光となって解け、更なる混沌を齎す魔のフィールドを構築する。

 

「エクシーズ……!」

『現われろ、ランク8《No.22 不乱健》』

 

 柚子と瓜二つの少女の顔が鬼気迫るものとなり、現れたエクシーズモンスターは顔布に『22』とナンバーが刺繍された不死の怪物だった。

 

 ???

 LP2000

 手札:12→13

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻12000→13000/守12000→13000

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 《No.22 不乱健》ランク8/闇属性/アンデット族/攻4500/守1000 ORU2

 魔法・罠カード

  無し

 

「攻撃力4500のエクシーズモンスター!?」

「お、おい、待て! 場から離れたのに《混沌の黒魔術師》が除外されてないぞ!?」

『《混沌の黒魔術師》がエクシーズ召喚の素材として使用された場合、表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に除外される効果は適用されない。同様にエクシーズ素材になっている《混沌の黒魔術師》が取り除かれた場合でも表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に除外される効果は適用されない』

 

 つまり《混沌の黒魔術師》をエクシーズで使い回す分には除外されず、オーバーレイユニットとして消費した都度に『死者蘇生』で使い回せる事に柚子は恐怖する。

 ……それと同時に不謹慎だが、墓地に置いても除外されても過労死するほど使い回される枠だと《混沌の黒魔術師》に心底同情する。

 

『墓地から光属性の《異次元の女戦士》と闇属性の《処刑人-マキュラ-》を除外して――《混沌帝龍-終焉の使者-》を特殊召喚する』

 

 ???

 LP2000

 手札:13→12

 《オシリスの天空竜》星10/神属性/幻神獣族/攻13000→12000/守13000→12000

 《混沌の黒魔術師》星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600

 《No.22 不乱健》ランク8/闇属性/アンデット族/攻4500/守1000 ORU2

 《混沌帝龍-終焉の使者-》星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

 魔法・罠カード

  無し

 

「……嘘、墓地の光属性一体と闇属性一体除外しただけで攻撃力3000のモンスターを特殊召喚!? 召喚条件が緩いのにこれは……!」

 

 光と闇が溢れ返り、混沌を支配する最強の帝龍が次元の狭間を打ち砕いて召喚される。その混沌より生まれしドラゴンは激しく咆哮する。

 攻撃力3000というのも脅威だが、あの異形のドラゴンにはまだ何かあると、柊柚子の中の決闘者としての直感が警告を鳴らしていた。

 

『《混沌帝龍-終焉の使者-》の効果発動、1000ポイントのライフを支払う事で互いの手札、フィールド上に存在する全てのカードを墓地に送る。この効果で墓地に送ったカード一枚につき相手ライフに300ポイントのダメージを与える』

「な、なんだとォ!? 1000ライフで全体除去と即死級のバーンダメージ!? 何だそのインチキ効果はッッ?!」

 

 場に4体のモンスター、『混沌』の人の手札は12枚、更に更にこのデュエルは一対六、六人の手札は合計30枚――当然、こんなの通った瞬間に何人いようが問答無用に1ターンキルである。

 

『……手札から《エフェクト・ヴェーラー》の効果を発動させて《混沌帝龍-終焉の使者-》の効果を無効化する者は?』

 

 勝手に効果処理に入らず、長々と待っていた『混沌』の人が律儀に聞いてくる。見た目の異質さと使うカードの凶悪さと反比例してちぐはぐな印象を柚子に与える。

 無論、そう思える余裕があるのは彼(?)とデュエルしてなくて――処刑台の十三段目に片足を踏み入れていないからである。

 

「え、《エフェクト・ヴェーラー》……?」

『一人ぐらいは持っているだろう。止められる前提でそっちの6ターンを耐え切れる布陣を整えている最中なのだが――まさか無いのか? それならば持ってない方が悪い』

「ま、待て、待ってくれ! そんなの食らったら――」

 

 チェーン無しと判断した『混沌』の人は酷く退屈気に溜息を吐いたように見えた。

 口も鼻も表情すらも無いので、その感想は柚子のものに過ぎないが――。

 

『墓地に送られるカードは合計46枚、よって君達全員に13800のダメージを受けて貰う。……尚、このデュエルは君達の流儀通りの『闇のゲーム』であり、デュエルでのダメージは現実化する。この『過剰殺傷(ダメージ)』で死亡した場合はカード化出来ないので頑張って耐えて欲しい――セメタリー・オブ・ファイヤー』

 

 全てのフィールド、全ての手札までも一掃する必滅の光が混沌帝龍から生じて――対戦相手の掠れるような悲鳴は巻き起こる轟音によって完全に打ち消される。

 鼓膜を破きかねない衝撃の後に残ったのは『混沌』の人、唯一人であり、仮面の男六人の痕跡は一欠片も残らず消滅していたのだった――。

 

 

 




 本日の禁止カード

 『苦渋の選択』
 通常魔法(禁止カード)
 自分のデッキからカードを5枚選択して相手に見せる。
 相手はその中から1枚を選択する。
 相手が選択したカード1枚を自分の手札に加え、
 残りのカードを墓地へ捨てる。

 墓地肥やしとサーチを兼ねたインチキカードその1。
 このデッキにおいてメインエンジンの《混沌の黒魔術師》や《処刑人 -マキュラ-》を即座に複数、墓地に叩き込む絶望の一手。

 《処刑人-マキュラ-》 ※2枚積み
 効果モンスター(禁止カード)
 星4/闇属性/戦士族/攻1600/守1200
 このカードが墓地へ送られたターン、
 このカードの持ち主は手札から罠カードを発動する事ができる。

 手札から罠カードを幾らでも発動出来るようになる、ルールの根本に関わるインチキカードその2。
 昔の決闘者はこれが墓地に落ちた瞬間、1ターンキルを覚悟した。

 『第六感』 ※3枚積み
 通常罠(禁止カード)
 自分は1から6までの数字の内2つを宣言する。
 相手がサイコロを1回振り、宣言した数字の内どちらか1つが出た場合、
 その枚数自分はカードをドローする。
 ハズレの場合、出た目の枚数デッキの上からカードを墓地へ送る。

 施しで マキュラ落とし 第六感
 アドバンテージの塊。当たれば5~6枚ドローし、外れても最大4枚まで墓地を肥やせる。
 このカードが現役だった時代の遊戯王は『サイコロゲー』だった。

 『強欲な壺』
 通常魔法(禁止カード)
 デッキからカードを2枚ドローする。

 皆大好き『強欲な壺』。たびたび制限に行ったり禁止に戻ったりしている。

 『天使の施し』
 通常魔法(禁止カード)
 自分のデッキからカードを3枚ドローし、その後手札を2枚選択して捨てる。

 手札チェンジしつつ、墓地も肥やせる万能カード。
 このデッキの場合、マキュラを落として罠カードを手札から発動可能にする為に使うか、手札に来てしまった《混沌の黒魔術師》を墓地に落とす為に使われる。

 《混沌の黒魔術師》 ※3枚積み
 効果モンスター(禁止カード)
 星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600
 このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
 自分の墓地から魔法カード1枚を選択して手札に加える事ができる。
 このカードが戦闘によって破壊したモンスターは墓地へは行かず
 ゲームから除外される。
 このカードはフィールド上から離れた場合、ゲームから除外される。

 絶望の呪文「カードは書き換える(エラッタ)前」
 この『混沌』デッキのメインエンジンにして過労死枠。墓地に落ちようが除外されようが何度でも何度でも舞い戻ってくる。
 エラッタされた後は魔法カードを手札に加える効果が1ターンに1度のみとなり、効果が発動するタイミングがエンドフェイズとなった。

 『次元融合』
 通常魔法(禁止カード)
 2000ライフポイントを払う。
 お互いに除外されたモンスターをそれぞれのフィールド上に可能な限り特殊召喚する。

 LP4000のアニメ世界ではライフコストが重いが、大抵の場合は『魔力倹約術』でライフコストが踏み倒される。
 遊戯王史上最悪の暗黒期を築いたカードの一枚。これによって除外ゾーンが第三の手札と化してしまった。

 《混沌帝龍-終焉の使者-》
 特殊召喚・効果モンスター(禁止カード)
 星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
 このカードは通常召喚できない。
 自分の墓地の光属性と闇属性モンスターを1体ずつゲームから除外して特殊召喚する。
 1000ライフポイントを払う事で、
 お互いの手札とフィールド上に存在する全てのカードを墓地に送る。
 この効果で墓地に送ったカード1枚につき相手ライフに
 300ポイントダメージを与える。

 絶望の呪文「カードは書き換える(エラッタ)前」
 遊戯王に最初の暗黒期を齎した元凶。コイツの特殊召喚=相手は死ぬ。
 LP4000である以上、合計14枚であの世行きとなる。
 最近エラッタされて釈放された元終身刑カード。
 エラッタ後の性能は

 このカードの効果を発動するターン、自分は他の効果を発動できない。
 (1):1ターンに1度、1000LPを払って発動できる。
 お互いの手札・フィールドのカードを全て墓地へ送る。
 その後、この効果で相手の墓地へ送ったカードの数×300ダメージを相手に与える。

 と、全除去した後は動けないようになり、おまけのバーンダメージも自分の分を数えないマイルド仕様になっている。




 本日の事故枠

 《オシリスの天空竜》
 効果モンスター
 星10/神属性/幻神獣族/攻 ?/守 ?
 このカードを通常召喚する場合、
 3体をリリースして召喚しなければならない。
 (1):このカードの召喚は無効化されない。
 (2):このカードの召喚成功時には、魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。
 (3):このカードの攻撃力・守備力は自分の手札の数×1000アップする。
 (4):相手モンスターが攻撃表示で召喚・特殊召喚に成功した場合に発動する。
 そのモンスターの攻撃力を2000ダウンさせ、
 0になった場合そのモンスターを破壊する。
 (5):このカードが特殊召喚されている場合、エンドフェイズに発動する。
 このカードを墓地へ送る。
 
 初代遊戯王に出てきた神のカードの一枚。
 《オベリスクの巨神兵》と違って対象に取る効果への耐性が無い為、簡単に除去られる運命にある。
 だが、相手モンスターが攻撃表示で召喚された際に強制発動する『召雷弾』による場の制圧能力は優秀であり、シンクロ召喚やエクシーズ召喚をある程度抑制出来る。

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